死のうと思っていたら悪役令嬢になったのでバッドエンドを目指します

夜納木ナヤ

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アリスと王子と好意の真実

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頑張ろうと決めたからと言って、人は急に変われるはずはない。
アリスがどれだけ私のことを可愛いと言ってくれても、すんなり受け入れることはできない。

美しいと言ってくれるなら、クリスティーナならそうだと納得できる。
だけど可愛いの意味は、どれだけ考えても分からなかった。

考えているうちに、もうひとつ疑問が浮かび上がってきた。
それはヴァリーン王子のことだ。

なぜ王子はあんなにも、クリスティーナな私に好意的だったのだろうか。
髪を切り、好みの外見になったからといって、中身の極悪さは知っているはずだ。

悪役令嬢と名高いクリスティーナの性格の悪さは、不仲の原因そのものだ。
などと考えていると、昼休みを迎えた。

「クリスティーナ様、私には分からないことがあります」
「なにかしら?」

ついには取り巻きの姿を見かけなくなり、今日は朝からアリスとふたりだ。

「クリスティーナ様の噂についてです。学園に入る前のことを聞いて回ったのですが、今のクリスティーナ様とはまるで別人です」
「そ、そうかしら……?」

クリスティーナらしく振る舞えていないことは自分でも感じていた。
だが、力説されるほどのものとは思ってもいなかった。

「そうです!クリスティーナ様の魂の光は噂の人物とは全くの別人です!」

魂の光。それはアリスの持っている魔力可視化の能力だ。

心臓の周囲が光って見えて、悪意を持っている人は黒く染まる。

ゲーム中では、アリスから見たクリスティーナは、常に真っ黒。
それ以前もそれ以降も出会ったことのないくらいに、漆黒に染まっていたとされている。

「それはまあ……気のせいでは?」
「私の目は誤魔化せません!」

比喩でもなんでもなく、能力として見えていてるのだから間違えようもない。

ちなみにこの能力を持っている人物はもうひとりいる。
クリスティーナの婚約者であるヴァリーン第一王子だ。

ヴァリーン王子は立場上、その地位を利用しようとする人物と常に接している。
王子という色眼鏡で見られることも多い。

相手がどれぐらい利用しようとしているかの度合いによっては、頭のてっぺんからつま先の先端まで黒く見えるほど。

王子にとってのクリスティーナは全身真っ黒。彼女がいくら美しい顔立ちをしていて、真っ黒で見えてない。

魔物以上に凶悪に見えている存在のはずだ。

……って、ちょっと待って。

じゃあ今のクリスティーナ……つまりは私は、王子にはどう見えているのだろうか。

王子に地位に興味はない。
外見がいいのは確かだが、だからといってお近づきになりたいとも思っていない。

「おやクリスティーナ。今日も美しいね」

振り返るとそこには、ヴァリーン王子がいた。
本来ならアリスに向けられるはずの優しげな笑みが、今は私に向けられている。

「すまない。昼食に誘おうと思っていたのだが、用事があって間に合わなかった」
「なぜ私が王子と食事をしなければならないのですか?」

今更である気もするが、頑張って悪役令嬢感を出してみた。

「もしかして照れているのかい?そうだったら嬉しいよ」
「勝手なことを言わないでくださるかしら」

悪役令嬢感を出しているはずなのだが……これはなにか違う気がする。

「そうだ、週末は空いているかな?よければ一緒にでかけたいのだが……」
「王子であれば、私の許可などいらないのでは?」

これはなんというか……タダのツンデレキャラでは?
そしてなぜか、クリスは可愛いものを見つめる時の優しい目をしている。

「王子としてではなく、一人の男として君と一緒にいたいんだ。だめかな?」
「は?何を仰っているんですか?」

好感度高すぎでしょ……いえ、これは確かめるいい機会かもしれない。

「ヴァリーン王子、私からもいいでしょうか」
「なんだい、クリスティーナ」
「あなたの目には、私はどんな風に見えているのですか?」

その瞬間、王子の優しげな笑みが消えた。
好きな女性の前に立つ男ではなく、王子としての姿があった。

「君は知っているのかい?」
「知っているとは?」
「そうか……クリスティーナ、すまない。予定変更だ。後で正式な命を送るが、週末は空けておいてくれ」

そう言い残すと、ヴァリーン王子は立ち去っていた。
そして、約束の週末まで私の前に姿を現すことはなかった。
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