魔力を失ってもいいんですか?パーティーを追い出された魔力回路師は気ままに生きる

夜納木ナヤ

文字の大きさ
41 / 42

【エイラ視点】パパと呼んでもいいのかしら

しおりを挟む
【エイラ】

 目が覚めると、知らない景色だった。
 一面が黄緑色の草で作られた床で、後ろから体を抱きしめられている。
 
 私よりも大きな腕と手。男のものだ。
 それが誰かなんて考えるまでもなかった。

 身をよじらせ、体を180度動かして向きを変える。
 すると、眠っているミキヤがいた。

 心配になるぐらいに悪意を全く感じない。

 そういえば精霊さんお母さんはどうなったのだろうか?
 …まあ、いいか。

 気持ちよさそうな寝顔は、やり切った感満載だ。
 きっとうまくやってくれたのだろう。

「お父さん…か」

 思えば、父親に抱きしめられた記憶はない。
 子育てはお母様や乳母に任され、お父様は関わってこなかった。

「お父さん…ううん、パパのほうがしっくり来るかな?」

 気づけば腰に手を回し、胸に顔を押し付けていた。
 見た目以上に、体はしっかりしていて、胸板は厚かった。

 この時間がずっと続けばいい。
 いつのまにかそう願っていた。

 だが、終わりは唐突に訪れた。


 ガタガタガタ。
 激しく物が落ちる音がして、思わず飛びのいた。

「おっと、すまぬ、邪魔をしてしまったか」
「え?え?えええええええええええええええええ」


 畳の上には大量の魔具が転がっていて、中心にはコネが立っていた。
 もしかして、ずっと見ていた!?見られていた!?

 自分でもわかるぐらいに顔が熱い。

「心配するな。そういう趣味の人間がいることも知っておる」
「ち、ち、違うわよ!」
「なんだよ騒がしいな…」

 ミキヤはもぞもぞと動くと、体を起こそうとする。
 まずい、こんな顔を見せるわけにはいかない。

「な、なんでもないわ!」
「がはっ」

 気が付くと顔面を殴っていて、ミキヤは気絶した。

「あ、ごめん…」

 謝る声は多分届いていない。

「これも愛のなせる業じゃな」

 うんうんとコネが頷いているけど、ツッコむ気も起きない。

「はあ…何やってるんだろ、私…そうだコネ、精霊はどうなったの?」
「妾にも詳しいことは分からぬが、ミキヤの奴、気が抜けて意識が飛んだんじゃ。成功したに決まっておろう」
「随分と信頼しているのね」
「当然じゃ」

 ふと、コネが真面目な顔をした。

「ミキヤは我々魔族を救ってくれた人物じゃ。もし裏切られて全滅させられたとして文句を言うつもりはない」

 人が魔族を救ったなんて話、聞いたことがない。
 
「ちなみにこのことは秘密じゃぞ。ギルドから追放されるじゃろうからな」
「なんでそんな話を私に?」
「ミキヤはお主に期待しておった。妾もお主が嫌いではない。期待させてもらうぞ」

 コネはそう言うと、魔具の片づけを始めた。

「ミキヤが起きたら山を下るぞ。旨いキノコがあるのじゃろ?」
「そう言えばそんなことを言っていたわね」
「ふっふっふ、これで魔王に自慢できるいうモノじゃ」
「魔王ってもしかして、馬鹿にされてるの?」
「そんなことはない。が、愛玩動物に近いかもしれぬな」

 魔王とその部下のことがますます分からなくなっていく。
 私たち人間の常識は、実は何一つ正しくはないんじゃないだろうか?

 コネを見ているとそんな気さえしてくる。

「ねえ、もし私がミキヤをパパって呼んだら、どんな顔をするかしら?」
「呼んでみればいいではないか」

 コネはそう答えると、ミキヤの背中を見た。

「そうよね、機会があったらそうしてみるわ」

 感謝を正しく伝える方法を私は知らない。
 だったら、思ったことを実践してみればいい。
 ミキヤならきっと、許してくれる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

処理中です...