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第一章
プライド
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私は男子が苦手。というか、嫌い。
小さい頃からそうだったのか?と聞かれたら、そういうわけではないけど…
『雨宮!付き合え!』
ある日、あんまり話をしたことのない、同じクラスの男子にそう告げられた。
『え?ごめんなさい、あなたのこと知らない』
その次の日から私は、告白をしてきた男子を中心に、クラスの男子にいじめられた。
日が経つにつれて、男子のことが嫌いになっていった。近くに居ることさえも出来なくなった。
だから、私には好きな人は出来ないって、そう思っていたのに…
『俺、杉戸尾零夜!よろしく』
違う小学校出身で、いじめられているっていう噂を聞いたはずなのに、爽やかな笑顔で私に話しかけてくれた。
たまたま中1で同じクラスになって、席は前後。
自然とお互いに話すようになっていった。
でも、女子よりも男子と話す方が彼は笑っていた。
女子苦手なのかな?とか思っていた。
けど、同じクラスの星野美香ちゃんと仲が良かった。
部活後は一緒に帰って、よく噂をされていた。
付き合っているんじゃないかって。
その時期は辛かった。
男子がふざけて杉戸尾と美香ちゃんをわざとくっつけようとしていたから。
だから、私は杉戸尾が好きなんだって気がついた。
でも、彼には好きな人がいるのか分からない。
モテるから……もしかしたら、付き合っているんじゃないかって思ってもいた。
だから、
『杉戸尾って、好きな人……居るの?』
聞いてみた。
初めて男の子を好きになったから、大切にしてみたいって思った。
『いないよ。雨宮さんは?』
杉戸尾の大きな瞳をじっと見つめた。
私、杉戸尾のこと好きになってもいいかな?
『……杉戸尾が好き』
思わず言ってしまった言葉。
後ですぐに後悔はしたけど、もう言ってしまったから仕方がないと思い、再び真っ直ぐに彼を見つめた。
もちろん彼はビックリしてしまった。
でも、ゆっくりと私の目を見つめた。
『いいよ。誰にも言わないんだったら』
私達はこの瞬間から付き合い始めた。
誰にも言わなかったから、杉戸尾が告白される回数は変わらなかった。
でも、私だけ特別なんだって思うと嬉しかった。
しばらく経ってから、お互いにあんまり話さなくなって、いつしか自然消滅していた。
だけど、やっぱり杉戸尾はなんだか特別で、他の男子とは何かが違う。
側に居ると、無意識に鼓動が高鳴ってしまう。
杉戸尾がまだ好きなんだと心の底からそう感じていた。
杉戸尾はまだ付き合っている人は私以外に居ないから、もしかしたら、零夜と同じ気持ち?と、思っていた。
だけど、零夜に特別な人が出来てしまってた。
移動教室で、たまたま7組の近くを歩いていた時、一ノ瀬さんが必死に零夜の腕を掴んでいた。
思わず驚いてしまっていて、その場にたたずんだ。
『お願いします……お願いします………』
少し泣きそうな顔をしながらも、一ノ瀬さんは零夜に言葉を何回も伝えていた。
『無理』
『お願いします、お願いします…………』
何か知らないけど、最後まで何か伝えようとしている。
一ノ瀬さんは……確か、1年生の時の入学式、目立っていた人だっけ?
美人でかわいらしい女の子で、大人しい子。
周りは何人か騒いでいたし、何回も告白されてた。
でも、なんで杉戸尾の近くに?
この前、男子と話している時の会話を聞いていたら、敬語をたくさん使って、ビクビク怯えていた。
多分、人見知りなんだろう。
それか、男子苦手とか?と、そんな事を考えていたら、いつの間にか杉戸尾と一ノ瀬さんは7組の教室の方に向かっていた。
何だったんだろうと気になって、追いかけてみたら、7組の教室の近くの廊下で、
『杉戸尾くん!あの、あ、ありがとう!』
一ノ瀬さんが嬉しそうに杉戸尾の方に近づいて行った。
『杉戸尾くんって、優しいね』
私がこの前聞いていた、一ノ瀬さんが男子と話す話し方とはなんだか違っていて、ごく自然だった。
もしかして、一ノ瀬さんは杉戸尾のこと好きなの?と、胸がチクッと傷んだ。
杉戸尾の顔をそっと見ると、いつの間にか真っ赤に染まっていた。
遠くから見ていても分かるぐらい。
あんな杉戸尾の顔、見たことない。
一ノ瀬さんよりも側にいたのに。
『その笑顔いいぞ、もっと見せろ』
な、何その言葉は......どういう意味なの?
2人はもしかして両思いなの?
この前からもおかしいと思っていた。
ーグイッ
「雨宮さん!」
杉戸尾の手に引かれて、体育館倉庫にすぐ隠れた。
すぐ近くに杉戸尾の顔があって、ドキドキした。
でも、杉戸尾は普段通りの顔。
一ノ瀬さんと話していた時のように、あんな真っ赤に染まっていなかった。
杉戸尾が雑巾を持って体育館倉庫に出た瞬間、一ノ瀬さんがゴミ袋を持って歩いて来ていた。
『一ノ瀬さん!あなた、何をやってるの?掃除は?サボってないで、やりなさい』
一ノ瀬さんはゴミを捨てに行っただけなのに、もしかして誤解されているの?
『担任の先生に言っておきます。あなたがそんな子だとは思っていなかったわ』
一ノ瀬さんは先生に言い返した後、何を言うのか考えていなかったみたいで、すぐに固まってしまっていた。
『先生。一ノ瀬さんは、ゴミ捨てに行っただけですよ』
杉戸尾が助けるとは思ってもいなかった。
こういう場面で、女子を助ける姿は見たことなかった。
特別なのは、私だけじゃなかったの?
2人はまだ付き合っていないけど、とっくに両思い。
私の恋は叶わない。
そう思うと、現実に目を向けたくない。
でも、一ノ瀬さんには譲れない。
今まで杉戸尾の側に居た、私のプライドをかけて。
小さい頃からそうだったのか?と聞かれたら、そういうわけではないけど…
『雨宮!付き合え!』
ある日、あんまり話をしたことのない、同じクラスの男子にそう告げられた。
『え?ごめんなさい、あなたのこと知らない』
その次の日から私は、告白をしてきた男子を中心に、クラスの男子にいじめられた。
日が経つにつれて、男子のことが嫌いになっていった。近くに居ることさえも出来なくなった。
だから、私には好きな人は出来ないって、そう思っていたのに…
『俺、杉戸尾零夜!よろしく』
違う小学校出身で、いじめられているっていう噂を聞いたはずなのに、爽やかな笑顔で私に話しかけてくれた。
たまたま中1で同じクラスになって、席は前後。
自然とお互いに話すようになっていった。
でも、女子よりも男子と話す方が彼は笑っていた。
女子苦手なのかな?とか思っていた。
けど、同じクラスの星野美香ちゃんと仲が良かった。
部活後は一緒に帰って、よく噂をされていた。
付き合っているんじゃないかって。
その時期は辛かった。
男子がふざけて杉戸尾と美香ちゃんをわざとくっつけようとしていたから。
だから、私は杉戸尾が好きなんだって気がついた。
でも、彼には好きな人がいるのか分からない。
モテるから……もしかしたら、付き合っているんじゃないかって思ってもいた。
だから、
『杉戸尾って、好きな人……居るの?』
聞いてみた。
初めて男の子を好きになったから、大切にしてみたいって思った。
『いないよ。雨宮さんは?』
杉戸尾の大きな瞳をじっと見つめた。
私、杉戸尾のこと好きになってもいいかな?
『……杉戸尾が好き』
思わず言ってしまった言葉。
後ですぐに後悔はしたけど、もう言ってしまったから仕方がないと思い、再び真っ直ぐに彼を見つめた。
もちろん彼はビックリしてしまった。
でも、ゆっくりと私の目を見つめた。
『いいよ。誰にも言わないんだったら』
私達はこの瞬間から付き合い始めた。
誰にも言わなかったから、杉戸尾が告白される回数は変わらなかった。
でも、私だけ特別なんだって思うと嬉しかった。
しばらく経ってから、お互いにあんまり話さなくなって、いつしか自然消滅していた。
だけど、やっぱり杉戸尾はなんだか特別で、他の男子とは何かが違う。
側に居ると、無意識に鼓動が高鳴ってしまう。
杉戸尾がまだ好きなんだと心の底からそう感じていた。
杉戸尾はまだ付き合っている人は私以外に居ないから、もしかしたら、零夜と同じ気持ち?と、思っていた。
だけど、零夜に特別な人が出来てしまってた。
移動教室で、たまたま7組の近くを歩いていた時、一ノ瀬さんが必死に零夜の腕を掴んでいた。
思わず驚いてしまっていて、その場にたたずんだ。
『お願いします……お願いします………』
少し泣きそうな顔をしながらも、一ノ瀬さんは零夜に言葉を何回も伝えていた。
『無理』
『お願いします、お願いします…………』
何か知らないけど、最後まで何か伝えようとしている。
一ノ瀬さんは……確か、1年生の時の入学式、目立っていた人だっけ?
美人でかわいらしい女の子で、大人しい子。
周りは何人か騒いでいたし、何回も告白されてた。
でも、なんで杉戸尾の近くに?
この前、男子と話している時の会話を聞いていたら、敬語をたくさん使って、ビクビク怯えていた。
多分、人見知りなんだろう。
それか、男子苦手とか?と、そんな事を考えていたら、いつの間にか杉戸尾と一ノ瀬さんは7組の教室の方に向かっていた。
何だったんだろうと気になって、追いかけてみたら、7組の教室の近くの廊下で、
『杉戸尾くん!あの、あ、ありがとう!』
一ノ瀬さんが嬉しそうに杉戸尾の方に近づいて行った。
『杉戸尾くんって、優しいね』
私がこの前聞いていた、一ノ瀬さんが男子と話す話し方とはなんだか違っていて、ごく自然だった。
もしかして、一ノ瀬さんは杉戸尾のこと好きなの?と、胸がチクッと傷んだ。
杉戸尾の顔をそっと見ると、いつの間にか真っ赤に染まっていた。
遠くから見ていても分かるぐらい。
あんな杉戸尾の顔、見たことない。
一ノ瀬さんよりも側にいたのに。
『その笑顔いいぞ、もっと見せろ』
な、何その言葉は......どういう意味なの?
2人はもしかして両思いなの?
この前からもおかしいと思っていた。
ーグイッ
「雨宮さん!」
杉戸尾の手に引かれて、体育館倉庫にすぐ隠れた。
すぐ近くに杉戸尾の顔があって、ドキドキした。
でも、杉戸尾は普段通りの顔。
一ノ瀬さんと話していた時のように、あんな真っ赤に染まっていなかった。
杉戸尾が雑巾を持って体育館倉庫に出た瞬間、一ノ瀬さんがゴミ袋を持って歩いて来ていた。
『一ノ瀬さん!あなた、何をやってるの?掃除は?サボってないで、やりなさい』
一ノ瀬さんはゴミを捨てに行っただけなのに、もしかして誤解されているの?
『担任の先生に言っておきます。あなたがそんな子だとは思っていなかったわ』
一ノ瀬さんは先生に言い返した後、何を言うのか考えていなかったみたいで、すぐに固まってしまっていた。
『先生。一ノ瀬さんは、ゴミ捨てに行っただけですよ』
杉戸尾が助けるとは思ってもいなかった。
こういう場面で、女子を助ける姿は見たことなかった。
特別なのは、私だけじゃなかったの?
2人はまだ付き合っていないけど、とっくに両思い。
私の恋は叶わない。
そう思うと、現実に目を向けたくない。
でも、一ノ瀬さんには譲れない。
今まで杉戸尾の側に居た、私のプライドをかけて。
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