長年のスレ違い

scarlet

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第二章

私の気持ちは?

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あの場から離れたものの、これからどうしたらいいのか全く分からない。

先輩は夜白先輩と付き合うんだろうな。
少し期待した私がバカだった。
先輩が期待させるような事を言うから……

『藍が転けた時、真っ先に助けに行こうとした』

だから、ちょっと期待してしまったんだ。
先輩は私のこと気になってるんだって。

好きになってくれる保証なんて全くないのに、
この前はずっと待ってるなんて約束したけど、
そんなの、そんなの、言葉だけだったんですね。

先輩は夜白先輩を選んだんだ。
私じゃなくて。
なんだか、悔しいような悲しいような………

自分の気持ちが全く分からなかった。
ただただ泣くことしか出来そうにない。

頭の中には先輩の笑顔が。
私に微笑みかけてくれるその真っ直ぐな笑顔。
私がどれだけドキドキしたのか、分からないですよね?

先輩の行動や言葉にも毎回ドキドキされっぱなしで、鼓動が休む暇なんてなかったんですよ。

一歩前を見て、進んで行く先輩の姿。
私の憧れでもあり、私の自慢でもありました。

先輩と付き合ってる時、少し不安でしたけど、先輩となら大丈夫だって笑い飛ばせたんですよ?

だから、先輩がいないと何も出来ませんよ………
だから、だから、先輩……私を選んでよ……

先輩の前で弱音を吐きたかったけど、吐けなかった。
先輩のためだって思って。
必死にこらえてた。

先輩の事が好きだから……大好きだから……

でも、もうこの思いが心の中に灯ることはない。
これから先、先輩と話せそうにないから。
遠くで2人を見守る事しか出来ないんだろうな。

とりあえず、競技の応援に行かないといけない。
今は気持ちを切り替えて、みんなのところに行こう。

出かけていた涙をそっと拭いて、外へと走った。

「藍!大丈夫!?」

静紅が私の姿に気がつき、走ってきてくれた。

「うん、大丈夫……だ、だよ?」

静紅を見ると、何故か安心してしまって、
応援をしないといけないのに、涙が再び溢れてきて、
自分の力では止められそうになかった。

ーグイッ

「ちょっと来て」

「え、え?応援しない……と……ぉ?」

応援しないといけないと言おうとした瞬間、静紅の目にはすぅーと涙がこぼれ落ちていた。

驚きを隠せず、思わず2度見してしまったけど、静紅の表情は全く変わらない。
なんで泣いているのか、全く理解が出来なかった。

「藍のバカ!なんで言ってくれないの?」

静紅は涙を必死にこらえようとしていたものの、こらえられなくて、大粒の涙が溢れて出てている。

その涙がついた髪の毛が顔にたくさんひっつき、顔がぐちゃぐちゃだった。

「藍が何か我慢してるのは分かってるよ」

静紅はいつもそうだった。
私のために必死に怒ってくれて、必死に守ってくれた。私の気持ちなんて、私以上に分かってくれてる。

「………先輩と何かあったんだよね?言ってよ!……藍の支えになりたいの、私は」

静紅……

「静紅、あのね、」

そこから先輩とした私にとって大切な約束、先輩と保健室であったことを全て正直に打ち明けた。

話の途中で泣きそうになったところもあったけど、静紅は無理に話さなくてもいいよ?
と背中を叩いて、そっと話しやすくしてくれた。

「………先輩の事、今も好きなんだよね?」

私は言葉に出すのが辛くて、ただうなずいた。

「先輩がキスした時……頭が追いつか、なくて。夜白先輩が……先輩のこと、す、好き、なら、私が引いた方が、先輩にと、とって、いいんじゃないかって………」

先輩の笑顔が再び頭の中に。

「でも、まだ……簡単に諦められないよぉお」

これが今の私の本当の本当の気持ちなんだ。
自分で言って、自分で分かった。

失恋しても先輩の事が好きなんだって。

「一発殴ってくるわ」

「や、やめて……!」

ーグイッ

思わず静紅の手を握り、自分に引き寄せた。

「あんなの、殴られて当然なんだよ!?」

静紅は私のために先輩に対して怒ってくれてるのは分かるけど、

「………殴っても、気持ちは、か、変わらない」

殴ったって、結局は私の気持ちしか届かないわけで、先輩の気持ちを聞くに聞けないよ。

「今まで、葵依ちゃんに……たくさん……迷惑かけたのに、私フラレちゃったんだよね。もう、葵依ちゃんの顔……見たくないよ。合わせる顔がないよ……」

今はただ落ち込むことしか出来そうにない。
私って、本当は何がし……

「藍!」

「は、はひぃ?」

突然の大きな声に驚いて、変な返事をしてしまう。

「そんな事思うんだったら、藍から動かないといけないよ!何も起こらない」

その言葉に正直イラッときた。
静紅が私のためを思って言ってくれてるのは分かるよ?

けど、静紅には私の気持ちなんて、

「……フラレるのに、告白して、意味あるの?」

分かんないよ。

告白するには勇気がいるんだよ?
それなのに、そんな簡単に言ってる。

「あるに決まってるでしょ!?何言ってるの?」

好きな人できたことないくせに。
こんな気持ち、一度も抱いたことないくせに……

「静紅に私の気持ち、分かるの!?」

思わず気持ちが爆発してしまって、

「……そんな事言うんだ。見損なった……もう知らない。もう勝手にすれば?」

静紅を怒らせてしまったけど、今のは静紅が悪いよね?

───────────────────────

私は藍の親友の、樫野静紅。

私には甘酸っぱい初恋があったんだ。
まぁ、今も続いているのか分からない、結構単純な気持ちだったのかもしれないけど。

「樫野さんだよね?」

「あ、はい。そーですけど」

突然、接点のない真山先輩から話しかけられた。

「宮坂って、好きな人いたりする?」

突然の質問に唖然としながらも、とりあえず返事。

「え?いないと思い……ますけどぉ?」

今思えば、藍とそーゆうの話したことないな。

「聞いといてくれない?」

「分かりました」

私も藍の好きな人は気になるし、真山先輩がなんでその質問をしたのか聞きたいから、なんとなく返事はした。

「す、好きな人!?」

「うん。いるのかなーって」

動揺している姿を見ていると、好きな人がいるんだなと応えられる前から分かった。

「……い、いるの、かなぁ?気になってる人はいるよ」

そう言い終わった後、藍の顔が真っ赤に染まったのが忘れられない。

「気になる人はいる感じですよ」

「そっか」

少し残念そうに向けせる視線。

「先輩は好きなんですか、藍の事」

もし、そうだったとしたら、なんでこんな質問をしたのか、全てがつながる。

「気になってる」

そこから藍の授業の様子とか性格を教えたり、先輩の相談をうけるようになっていった。

自分の思った事をはっきりと言っても、先輩は真っ直ぐに受け止めてくれた。

「静紅、私……好きな人に告白、してくる」

「え?」

その瞬間、先輩が頭の中に浮かんだ。
もし、藍が付き合ったら、先輩は……先輩は……と、思っても、藍を止められなかった。

先輩のところに真っ先に向かおうとした時、下駄箱で夜白先輩の姿が。
その手にはチョコレートが。
夜白先輩、好きな人いるんだ。

その雰囲気をぶち壊しにしないために、遠回りをしようと、階段を駆け上がろうとした時、

「せ、先輩の事……好きです」

藍の声が鼓膜にまではっきりと聞こえてきた。

「俺も好きです」

そして、真山先輩の声も。

藍の好きな人は真山先輩だったんだ。
そっか、そうだったんだ。
もう、真山先輩と話すきっかけがなくなったや。

そっか、そっか、そっか………私、真山先輩の事、いつの間にか好きになってたんだ。

好きになっちゃ、ダメなのに。

───────────────────────

静紅と初めて喧嘩してしまった。

今まで長い付き合いだったけど、
私が思った事をはっきり言ってなかったから、今まで喧嘩になってなかったのかもしれない。

無性に腹が立っても、心の底でグッと我慢んしていた。けど、あの時はなぜかいつも通りに我慢出来なかった。

静紅が悪って、私は思うから……謝りなんてしない。

「生徒会長と副会長付き合い始めたらしいよ」

「えー!副会長、好きだったのに……」

やっぱり、真山先輩と夜白先輩付き合ったんだ。
真山先輩の思いがしっかり届いてくれて、良かった。

でも、やっぱり私を選んで欲しかった......って、
もう区切りを付けたいのに、いけるのかなこのままで。

「あ、ほらやっぱり!」

その子の視線を私も追ってみると、そこには真山先輩と夜白先輩が手をつなぎながら登校していた。

2人とも楽しそうで、すっごくお似合い。
これ以上その姿を見ていられなくて、すぐさまその場から離れた。

あんなの、直射出来るわけないよ…...

ーガラッ

教室に入ると静紅の姿が見えて、声をかけそうになったけど、ぐっとこらえた。

話したらダメなんだった........と、自分の席に座った。

いつも教室に私が入ってくると静紅がすぐに来くれたけど、今はこっちを見向きもしていなかった。

やっぱり、静紅……怒ってるよね。
静紅が悪いと思ってても、喧嘩してる時は辛い。
大好きなのに、嫌でも避け続けないといけないから。
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