長年のスレ違い

scarlet

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第三章

前の私と、今のあなた

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最近、弘大が変。

私が弘大と居る時は、そんなに変わりはないけど、宮坂さんを目の前にすると、何か感じているような……
どこか、苦しい顔をしている。

……私が弘大と仮で付き合っている事で、何か弘大苦しめているんじゃないかって思った。
もしかしたら、宮坂さんの事……って、考える。

………宮坂さんに話をしてみよう。
今思えば、宮坂さんと特に話をしたことがない。
いつか少しでも話をしてみたいとは思っていたけど。

宮坂さんを探すために、2年生のフロアに向かった。

「あ。夜白先輩だ!」

「ほんとだー!間近で見ても、すっごく美人!」

「確か、真山先輩と付き合ってるんだよね~」

「ううん!すっごく、お似合いだよね!」

ただ廊下を歩いただけでも、さっきまで話していた内容から私の話へと移り変わる。

「あの」

「は、はい!」

私が不意に話しかけただけでもびっくりされる。
そんなに?って思うぐらいに。
まぁ、最初の頃とは違って、だいぶマシになったけど。

「宮坂藍さん、どこに居るか分かる?」

あれ?確かこの子、バスケがすっごく上手いって、この前何かの拍子に瑞希が言ってた気がする……

「えっと……あ!零夜、零夜!」

「なんだよ……」

少し面倒くさそうだけど、無視はせずにこっちに来た。この子も、バスケがずば抜けて上手い子だった気が……

「宮坂さんって、そっちのクラスに居る?」

「あ……宮坂か。まぁ、居るけど」

宮坂さんって、そんなに周りに知られてないんだ。
私と違って周りからの知名度と人気度が低い……
なんて、最低なことを思ってしまってる。

……きっと、それぐらい、焦りかけてる。

「多分、7組に居ると思います」

「そっか。ありがとう」

他のクラスとは違って、少し遠いな……

結局、7組に宮坂さんの姿が見あたらなくて、校舎内を歩き回ることにした。

普通の教室も特別教室も、体育館、職員室……
探したけど、宮坂さんの姿がない。
どこに居るんだろ……スレ違い、とか?

……あ。そーいえば、屋上はまだ探してない。
だとすると、屋上に宮坂さんが……

屋上のドアを開けると、そこには宮坂さんの姿が。
私が入ってきた事に気づいていないみたいだった。

声かけようとした時、

「もう嫌だよ……先輩、ちゃんと約束……守ってほしかった。もう、無理なんだ……全部が全部」

と、崩れ落ちるようにパタっと足が地面につき、手を顔をやりながらたくさんの涙を流していた。

「告白、だなんて……出来ないよ。夜白先輩と付き合っちゃった……から。私、何がしたいの?……分かんないよ。私が私みたいじゃないよ!」

なんて声をかければいいのか思いつかなくて、そのままドアの近くで突っ立っていた。

「一回諦めたよ?もう無理だって………だけど、諦められないんだよ……バカだから。先輩が笑ってる顔とか、全部全部……思い出しちゃんだよ……」

私も、宮坂さんと付き合い始めて、最初は今の宮坂さんみたいだった。
前の私と今の宮坂さん。どこか同じ思いがあったんだ。

「……花火大会も、本当は……さそ、誘いたいよ。け、けど……もう、弘大は………私のものじゃ……」

「私のものでもない!」

私の声で、私の存在に気づいたみたいで、びっくりしながら私の方に反射的にふり返っていた。

「や、夜白先輩!?な、なんで……」

目から出かけていた涙を無理やり引っ込めるために、私は涙を拭いた。
私が泣いたらダメだと。

「私、弘大が好き!ずっと前から好きだった。けど……宮坂さんもそれぐらい、弘大が好きなんだよね?諦め、られないんだよね……?私も、そ、そうだったの……」

「夜白先輩……」

自分の時と今の宮坂さんを重ねて言葉を聞いてたら、無性に何か泣けてきて……
そっと、涙がこぼれ落ちる。

「私、弘大と付き合ったけど、それは仮で。無理やりみたいな、感じだった……」

宮坂さんとは違って、私は無理やりだったんだよ。
と、訴えるような言い方をしてしまった……かな?

「弘大が何を考えているのか、分かんなくて………苦しくて、今、宮坂さんのところに来たの。直接聞くのが怖くて………私、意外と弱虫なところ、あるから……」

だんだん、話すにつれ自分が弱く感じてくる。

「真山先輩は夜白先輩の事、好きなんじゃ……」

「分かんない。だから、私と一緒に、判断させようよ。弘大に」

弘大の気持ちが聞きたいから。

「私と宮坂さん……どっちが好きなのかって。どっちを選ぶのかって……その勝負、正直怖いけど……」

弘大がその気持ちに気づいてほしいから。

「わ、私はしませんよ!そんな勝負……だって、どっちかがフラれるって、わけじゃないですか?そんなの、イヤですよ………」

私を避けるようにして、屋上から立ち去ろうとしていたその手を引き寄せた。

「イヤだけど、するの!もうこれ以上、弘大の姿に振りまわされないように!………それに、弘大の気持ちがわからないと、お互いに前に、進めないよ?」

私も前に、進みたいから……

「………でも、判断させようって、どうやって……」

「考えがあるの」
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