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第三章
後悔
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「美香ちゃん、まだ来てない?」
「うん。零夜もまだみただな」
そっか。今、2人っきりなんだ……
クローゼットから引っ張り出して浴衣着てきたけど、
……変じゃなかったかな?
久しぶりに浴衣なんて着たから……変に恥ずかしいな。
「……いーじゃん、浴衣」
「え?」
「似合ってるよ」
と、私の顔を見て微笑んでくれた。
そんな顔するなんて、ずるいよ。
もっと好きになっちゃうじゃんか……
こないだもそうだったけど、翼くんってそういうところちゃんと褒めてくれんだな…...
「ありがとう」
「ん」
この空気すっごく緊張する…
「翼」
「おー」
杉戸尾くん、私服黒なんだな……
まぁ、なんとなく予想はついてたけど。
部屋はシンプルで、家具とかそんなに置いてなさそう。
「あ、美香がまだだな」
「おまたせー」
「あ、来…」
「わー、私が最後かごめんごめん」
と、美香ちゃんが大人っぽい浴衣でこっちに来た。
「じゃあ行くか」
神社から屋台は近く、すぐに人混みに紛れ込んだ。
やっぱり花火大会は人が多いな……
「どうする?なんか、食べ物でも買いに行く?」
「そーだな。でも、場所取りしないといけないしな…」
毎年花火大会には人がたくさん見に来るから、
場所取らないと、花火が見えるところにはいられない。
と、翼くんは考えて言ったんだな……
食べ物を買ってる時に場所がなくなるかもしれない。
場所を取ってる時に食べ物が売り切れるかもしれない。
だからな……それが出来たら一気に……
「あ!……2人ずつに分かれてしたらどうかな?」
「確かにその方が良いね。じゃー、零夜行こっか。私達、場所取りでもしてるね」
と、美香ちゃんは翼くんと2人っきりにしてくれた。
今……告白、出来るよね?
美香ちゃんがチャンスをつくってくれたんだから、翼くんに伝えたいな……とは思うけど……
「じゃあ行くか」
「う、うん」
「人混みすごいな」
「そーだね」
………会話、続かないな。
もっと会話を弾ませる方法があったら教えてほしいよ。
美香ちゃんだったら、もっと話せてるんだろうな。
そんなの考えたくないけど、考えてしまう。
私だったらって考えられたらいいのに……
「葵依ってさ、零夜の事好きなの?」
「え、え?」
「いや、さっき零夜が来た時、嬉し…」
「違うよ!私、杉戸尾くんの事……好きじゃ……」
「そっか」
翼くんには勘違いされたくなかったのに。
なんで勘違いされるんだろ……
………私が想いを伝えてないから?
ふられる事とかそんなことよりも、
今は翼くんに勘違いしてほしくないって気持ちが……
花火大会に誘ったのは気持ちを伝えたいからであって、
こんなマイナスな事ばっかり考えたくない。
村田くんに告白されて、翼くんに私もこの想いを伝えたいって「答え」が出た。
美香ちゃんにも応援されて、きっと今、美香ちゃんも伝えようって頑張ってる。
なのに私は………私だけは……
口先だけなことばっかり言って、やってないじゃんか。
言わなきゃ、相手の気持ちは何にも分からないのに。
ーギュッ
と、翼くんのTシャツの裾を掴んだ。
「ん?どうした?」
ートクン
「あ……あのね。あの……」
ートクン
「私、翼くんが…」
「おーい!翼!」
と、遠くから声が聞こえて、その声に私の声はかき消されてしまった。
「え?って、健太!?久しぶりだな」
翼くんも私の話は何もなかったかのように、さっきまで私に向いていた目線を友達に向けた。
あともうちょっとだったのにな……
「おう。一ノ瀬も久しぶりだな」
「え…小林くん?」
小林健太くんは小学校までは一緒だったけど、試験を受けて、別の中学校に行ったんだ。
背は伸びてて、肌も黒くなった……なんか変わったな。
「そーそー。覚えてるか?」
「うん、覚えてるよ。もちろん」
いつも誰よりも目立ってたから印象に残ってる。
「なら良かった。ってか、翼もう言ったか!?」
「まだしてないけど………って、声でかいから」
なんだか2人が並んでるのを見ると、小学校の時に戻ったみたいだな。ほんと。
「わりーわり……星なんとかだっけ?小学校の頃からの翼の好きな人」
ートクン
今、小林くんは翼くんに何て言ったの?
私の聞き間違いじゃなかったら………
「星野だよ。星野」
………やっぱり、聞き間違いじゃなかった。
翼くんの好きな人美香ちゃん……なんだ。
なんで今まで分かんなかったんだろ。
誰よりも2人の近くに居た、はずなのに……
今、泣いちゃだめなのに。
どうしよう、ものすごく泣きたい気分……
「これ、本人には……って、一ノ瀬!?」
やばい!翼くんに涙見られ……
「え、ちょ、なんで!?」
私は今、翼くんの顔を見るのが辛くて。
声を聞くのが辛くて、思わず逃げてしまった。
そっか。そっか。
……翼くんの好きな人、美香ちゃんなんだ。
そっか。そっか………
「っ……」
好きな人とその好きな人を応援してあげたいけど、
私にはそんな事、できないよ。
私の気持ちどうしたらいいの?
今さら聞かない方が良かったなんて、
そんな「後悔」要らないよ……
あのままが良かった。
「うん。零夜もまだみただな」
そっか。今、2人っきりなんだ……
クローゼットから引っ張り出して浴衣着てきたけど、
……変じゃなかったかな?
久しぶりに浴衣なんて着たから……変に恥ずかしいな。
「……いーじゃん、浴衣」
「え?」
「似合ってるよ」
と、私の顔を見て微笑んでくれた。
そんな顔するなんて、ずるいよ。
もっと好きになっちゃうじゃんか……
こないだもそうだったけど、翼くんってそういうところちゃんと褒めてくれんだな…...
「ありがとう」
「ん」
この空気すっごく緊張する…
「翼」
「おー」
杉戸尾くん、私服黒なんだな……
まぁ、なんとなく予想はついてたけど。
部屋はシンプルで、家具とかそんなに置いてなさそう。
「あ、美香がまだだな」
「おまたせー」
「あ、来…」
「わー、私が最後かごめんごめん」
と、美香ちゃんが大人っぽい浴衣でこっちに来た。
「じゃあ行くか」
神社から屋台は近く、すぐに人混みに紛れ込んだ。
やっぱり花火大会は人が多いな……
「どうする?なんか、食べ物でも買いに行く?」
「そーだな。でも、場所取りしないといけないしな…」
毎年花火大会には人がたくさん見に来るから、
場所取らないと、花火が見えるところにはいられない。
と、翼くんは考えて言ったんだな……
食べ物を買ってる時に場所がなくなるかもしれない。
場所を取ってる時に食べ物が売り切れるかもしれない。
だからな……それが出来たら一気に……
「あ!……2人ずつに分かれてしたらどうかな?」
「確かにその方が良いね。じゃー、零夜行こっか。私達、場所取りでもしてるね」
と、美香ちゃんは翼くんと2人っきりにしてくれた。
今……告白、出来るよね?
美香ちゃんがチャンスをつくってくれたんだから、翼くんに伝えたいな……とは思うけど……
「じゃあ行くか」
「う、うん」
「人混みすごいな」
「そーだね」
………会話、続かないな。
もっと会話を弾ませる方法があったら教えてほしいよ。
美香ちゃんだったら、もっと話せてるんだろうな。
そんなの考えたくないけど、考えてしまう。
私だったらって考えられたらいいのに……
「葵依ってさ、零夜の事好きなの?」
「え、え?」
「いや、さっき零夜が来た時、嬉し…」
「違うよ!私、杉戸尾くんの事……好きじゃ……」
「そっか」
翼くんには勘違いされたくなかったのに。
なんで勘違いされるんだろ……
………私が想いを伝えてないから?
ふられる事とかそんなことよりも、
今は翼くんに勘違いしてほしくないって気持ちが……
花火大会に誘ったのは気持ちを伝えたいからであって、
こんなマイナスな事ばっかり考えたくない。
村田くんに告白されて、翼くんに私もこの想いを伝えたいって「答え」が出た。
美香ちゃんにも応援されて、きっと今、美香ちゃんも伝えようって頑張ってる。
なのに私は………私だけは……
口先だけなことばっかり言って、やってないじゃんか。
言わなきゃ、相手の気持ちは何にも分からないのに。
ーギュッ
と、翼くんのTシャツの裾を掴んだ。
「ん?どうした?」
ートクン
「あ……あのね。あの……」
ートクン
「私、翼くんが…」
「おーい!翼!」
と、遠くから声が聞こえて、その声に私の声はかき消されてしまった。
「え?って、健太!?久しぶりだな」
翼くんも私の話は何もなかったかのように、さっきまで私に向いていた目線を友達に向けた。
あともうちょっとだったのにな……
「おう。一ノ瀬も久しぶりだな」
「え…小林くん?」
小林健太くんは小学校までは一緒だったけど、試験を受けて、別の中学校に行ったんだ。
背は伸びてて、肌も黒くなった……なんか変わったな。
「そーそー。覚えてるか?」
「うん、覚えてるよ。もちろん」
いつも誰よりも目立ってたから印象に残ってる。
「なら良かった。ってか、翼もう言ったか!?」
「まだしてないけど………って、声でかいから」
なんだか2人が並んでるのを見ると、小学校の時に戻ったみたいだな。ほんと。
「わりーわり……星なんとかだっけ?小学校の頃からの翼の好きな人」
ートクン
今、小林くんは翼くんに何て言ったの?
私の聞き間違いじゃなかったら………
「星野だよ。星野」
………やっぱり、聞き間違いじゃなかった。
翼くんの好きな人美香ちゃん……なんだ。
なんで今まで分かんなかったんだろ。
誰よりも2人の近くに居た、はずなのに……
今、泣いちゃだめなのに。
どうしよう、ものすごく泣きたい気分……
「これ、本人には……って、一ノ瀬!?」
やばい!翼くんに涙見られ……
「え、ちょ、なんで!?」
私は今、翼くんの顔を見るのが辛くて。
声を聞くのが辛くて、思わず逃げてしまった。
そっか。そっか。
……翼くんの好きな人、美香ちゃんなんだ。
そっか。そっか………
「っ……」
好きな人とその好きな人を応援してあげたいけど、
私にはそんな事、できないよ。
私の気持ちどうしたらいいの?
今さら聞かない方が良かったなんて、
そんな「後悔」要らないよ……
あのままが良かった。
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