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異世界 〜不可解〜
抱きしめ合う幼馴染
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気付けば森に差し込む光が明るくなって村に近づいている事がわかる。
白虎様はスピードを変えずに走っていた。
俺も段々と景色を見れるくらいには慣れてくる。
しかし見渡す限りの森なので木々以外には何もない。
少し首を回すと赤い外装の建物が俺の視界に入った。
巫女様が住んでいる社だ。
白虎様は走るのを緩めて歩きに変わる。
5分もかからずに森の奥深くから出られるスピードに驚きながら俺は白虎様の背中から降りた。
「ここからは貴方1人で歩けますね」
「ありがとうございます」
「私はこれで失礼させていただきます」
「巫女様に会わないんですか?」
「ええ。今は特に用事はありませんから。…それではもう私と会わない事を願います」
白虎様はそう言って踵を返して歩き始める。
しかし俺には最後の言葉の意味がわからずにポカーンと突っ立っていた。
白虎様は一度振り返って鼻息をフンと出すと目を細める。
しかし笑っているのではなかった。
「もし次、会うときはきっと……貴方達を始末する時でしょう」
俺の顔はまた歪み始める。
白虎様はそんな俺顔を見てまた風を切りながら奥へと走り出して行った。
俺はギュッと手を強く握る。
少しだけ収まった怒りがぶり返した。
「くそっ……」
この世界に来た理由も、対処法も知らない俺は反抗することが出来ない。
それが悔しかったし悲しかった。
「「雅人!」」
突然後ろから声をかけられてきつく握っていた手の力が抜ける。
俺が後ろを向くと巫女様と美姫ちゃんが走ってやってきた。
2人とも髪を乱しながらこちらへ走る。
俺も2人の元へ歩き出そうとした時、上半身に衝撃が走った。
「み、美姫、ちゃん?」
「雅人……!」
美姫ちゃんは俺の胸に飛び込んで顔を擦り寄せる。
それだけで俺は怒りという感情が一気に冷めた。
何が起こっているんだとフリーズしてしまう。
美姫ちゃんはそれでも俺の存在を確かめるかのように背中に自分の手を回した。
そんな様子を巫女様はホッとしたように見ている。
「怪我は…?」
「無いよ」
「痛いところ、ない?」
「大丈夫」
「怖かったよね…」
「少しだけ」
「嘘つき」
「嘘じゃないよ」
美姫ちゃんは小さく細い声で何度も俺に問いかけながら名前を呼ぶ。
俺も応えるように相槌を打った。
美姫ちゃんの抱きしめる力が強くなる。
俺はそんな美姫ちゃんの背中に腕を回して優しく引き寄せた。
自然と出た行動だった。
「心配かけてごめんね」
「本当だよ…」
「泣かないで、美姫ちゃん」
「泣いてないし」
「そっか」
震え出す声と自分の服が濡れていくが俺はそれ以上何も言わない。
右手を美姫ちゃんの頭の上に乗せて壊れ物を扱うくらいの優しさで撫でると美姫ちゃんは少し肩を上げる。
でもすぐに力が抜けて俺に体を預けた。
チラッと美姫ちゃんの後ろ側にいる巫女様の顔を見るといつものように微笑んでいて俺達に背中を向けると指を社に差して戻っていく。
きっと気を遣って2人にしてくれたのだろう。
俺はまた美姫ちゃんの頭を撫で始めた。
ずっと出来なかった事が今なら自然に出来る。
それは白虎様が告げた事と関係しているからなのか。
怒りは出なかったけど、不安が俺の中で渦巻いていた。
白虎様はスピードを変えずに走っていた。
俺も段々と景色を見れるくらいには慣れてくる。
しかし見渡す限りの森なので木々以外には何もない。
少し首を回すと赤い外装の建物が俺の視界に入った。
巫女様が住んでいる社だ。
白虎様は走るのを緩めて歩きに変わる。
5分もかからずに森の奥深くから出られるスピードに驚きながら俺は白虎様の背中から降りた。
「ここからは貴方1人で歩けますね」
「ありがとうございます」
「私はこれで失礼させていただきます」
「巫女様に会わないんですか?」
「ええ。今は特に用事はありませんから。…それではもう私と会わない事を願います」
白虎様はそう言って踵を返して歩き始める。
しかし俺には最後の言葉の意味がわからずにポカーンと突っ立っていた。
白虎様は一度振り返って鼻息をフンと出すと目を細める。
しかし笑っているのではなかった。
「もし次、会うときはきっと……貴方達を始末する時でしょう」
俺の顔はまた歪み始める。
白虎様はそんな俺顔を見てまた風を切りながら奥へと走り出して行った。
俺はギュッと手を強く握る。
少しだけ収まった怒りがぶり返した。
「くそっ……」
この世界に来た理由も、対処法も知らない俺は反抗することが出来ない。
それが悔しかったし悲しかった。
「「雅人!」」
突然後ろから声をかけられてきつく握っていた手の力が抜ける。
俺が後ろを向くと巫女様と美姫ちゃんが走ってやってきた。
2人とも髪を乱しながらこちらへ走る。
俺も2人の元へ歩き出そうとした時、上半身に衝撃が走った。
「み、美姫、ちゃん?」
「雅人……!」
美姫ちゃんは俺の胸に飛び込んで顔を擦り寄せる。
それだけで俺は怒りという感情が一気に冷めた。
何が起こっているんだとフリーズしてしまう。
美姫ちゃんはそれでも俺の存在を確かめるかのように背中に自分の手を回した。
そんな様子を巫女様はホッとしたように見ている。
「怪我は…?」
「無いよ」
「痛いところ、ない?」
「大丈夫」
「怖かったよね…」
「少しだけ」
「嘘つき」
「嘘じゃないよ」
美姫ちゃんは小さく細い声で何度も俺に問いかけながら名前を呼ぶ。
俺も応えるように相槌を打った。
美姫ちゃんの抱きしめる力が強くなる。
俺はそんな美姫ちゃんの背中に腕を回して優しく引き寄せた。
自然と出た行動だった。
「心配かけてごめんね」
「本当だよ…」
「泣かないで、美姫ちゃん」
「泣いてないし」
「そっか」
震え出す声と自分の服が濡れていくが俺はそれ以上何も言わない。
右手を美姫ちゃんの頭の上に乗せて壊れ物を扱うくらいの優しさで撫でると美姫ちゃんは少し肩を上げる。
でもすぐに力が抜けて俺に体を預けた。
チラッと美姫ちゃんの後ろ側にいる巫女様の顔を見るといつものように微笑んでいて俺達に背中を向けると指を社に差して戻っていく。
きっと気を遣って2人にしてくれたのだろう。
俺はまた美姫ちゃんの頭を撫で始めた。
ずっと出来なかった事が今なら自然に出来る。
それは白虎様が告げた事と関係しているからなのか。
怒りは出なかったけど、不安が俺の中で渦巻いていた。
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