魔法武士・種子島時堯

克全

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本編

鷹司家後継者問題再燃

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1543年6月1日『京・種子島屋敷』種子島権大納言時堯・15歳

「今回も派手にやっているでおじゃるな」

 禅定太閤殿下が、アルコール度数45度の強烈な焼酎を片手に話しかけて来た。

「いつもの事前破壊でございます、これで大抵の国衆・地侍は降伏して臣従を誓ってくれますから」

「しかし今回は狂信的な本願寺もいるのだろう、近江国でも本願寺だけは反攻して来たのだな?」

 義父の関白鷹司忠冬殿下が、今日もブランデーを片手にしながらゆったりと話しかけて来た、義父はブランデーがお気に入りのようで、屋敷に来た時は大概ブランデーに甘いツマミを求められる。

「そうですね、今回は大岩を上空から叩き落とすことになるかもしれません」

「不謹慎なようだが、公家衆が皆で見物する訳にはいかんか?」

 義祖父の准三宮・鷹司兼輔殿下がとんでもない事を言いだされた!

 最近は義父だけでなく義祖父も毎日酒食にやって来るようになった。ちゃんと料理人と食材・酒類を送っているのだが、種子島家屋敷の方が料理も酒も美味いと言ってはばからない。まあ俺が食べる物を作る料理人だから、1番腕の良い者を連れて来ているから当然と言えば当然だ。

「何故そのような事を言われるのですか?」

「公家衆もその光景を見れば、権大納言殿に逆らう気など起こさなくなるだろう」

 なるほどそう言う事か!

 鷹司兼輔殿下からみれば、俺の事よりも鷹司家の事が大切なのだろう。鷹司家の養嗣子となった俺の力を朝廷内・公家衆に中で圧倒させたいのだろうが、何か腹に一物あるはずだよな?

「御爺様は何をなさりたいのですか?」

 俺は「法音院殿下」や「准三宮殿下」と呼ばず、あえて「御爺様」と呼び、鷹司家の養嗣子として質問することで、鷹司兼輔殿下の本音を引き出そうとした。

「ふむ、御爺様と呼んでくれるのなら本音で話そう。我が鷹司家に近年子に恵まれず、分家や養嗣子に行った者だけでなく嫁いでいった娘すらおらん。だから今平氏と陰で呼ばれる時堯殿を一時的に養嗣子に迎え、最終的には時堯と樵翁殿の妹・兼子殿との間に出来た子を跡継ぎとする事を後専称院は認めた。だがな、鷹司家は近衛家の分家なのだよ」

「そう言う事でございますか、私に近衛家から養嗣子を迎えろと言う事ですか?」

「いやそうでは無い、今近衛家は経済的に困窮し朝廷内でも孤立している。少し優しくしてやって貰いたいのだ」

「具体的にはどう言う事でございますか?」

「率直に言えば、近衛家からも妻を迎えて、その間に出来た子を鷹司家の後継者にして欲しいと言う事だ。だが唯でとは言わん、近衛家は私が責任を持って時堯殿に逆らわないようにさせる。だがそのためにも衝撃的な光景を近衛家の者にも、全ての公家衆にも見せつけて欲しいのだ」

「そう言う事でございますか、ではいい機会かもしれませんね。3ヵ所ほど許しがたい者がいますので、完全に公家衆の安全を確保したうえで見学して頂きましょう」

「そうか! そうしてくれるなら有り難い! 心から感謝する!」

 兼子・於富、ごめん!

「いえ、そういう事なら仕方のない事でございます」

「ところで樵翁殿、九条家は今のままでよいのか?」
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