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本編
伊勢長島炎上
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1548年6月:京・種子島屋敷
「今回の合戦にはずいぶん時間を掛けたでおじゃるな」
「狂信者の集まりですから、今までのような示威行為が使えません」
「それでも7割の一向衆が、本願寺から離れて佛光寺や専修寺に転属したのでおじゃろう?」
「はい、御陰様で殺傷を少なくする事が出来ました」
「殺傷? ほとんどの者を権大納言殿が直接伊勢長島に乗り込み、殺さずに捕虜にしたのでおじゃろう?」
「はい、確かに死んだ者は極僅かではございますが、全員無事とはいきませんでした」
「まあそれくらいはしかたないでおじゃるよ」
「ありがとうございます」
「それで捕虜にした者はどうするのでおじゃるか?」
「殺すと労働力を無駄にする事になりますから、九州や蝦夷の鉱山で働かせるつもりでございます」
「権大納言殿らしいの、見せしめに殺して晒さないのでおじゃるな」
「どうしても必要なら殺す事も厭いはしませんが、無駄な殺しは御上の名に傷をつけてしまいます」
「権大納言殿はいつも御上の事を考えてくれるのでおじゃるな」
「それが臣下の務めでございます」
「我ら摂家の者でもなかなか難しいことでおじゃる」
今回の伊勢長島攻めは、九条禅定太閤殿下が申されたように、武家相手とは違う難しさがあった。摂津や播磨の本願寺を攻めた時と同じように、不毛な殺し合いに発展する可能性が高かった。
だがここで、俺が長年かけて民百姓の生活向上に努力していた事が効果を表した。伊勢長島の人々の中にも、本願寺派の腐れ坊主の言う嘘に疑問を感じ、真相を突き止めようとする者が現れたのだ。彼らは同じ浄土真宗の専修寺高田派や佛光寺派に連絡を取り、事の真相を突き止めたのだ。
願証寺3世証恵はそれを反乱ととらえて、残虐な下間真頼・下間頼康に処罰を命じた。下間一族は本願寺でも特に力を持ち、本願寺総領家執事職などの要職を占め、特に武家の出であるために、戦国大名化した本願寺の戦闘司令官として活躍していた。
下間一族
「宮内卿家」
下間光頼
下間真頼
下間融慶
「刑部卿家」
下間頼康
「少進家」
下間頼照
下間真頼は、加賀越中でも行われた幽閉して餓死させると言う方法をとろうとしたが、半籠城中で殺気立っている願証寺では、指導者層と下級信徒の間で深刻な対立が始まっており、この行動は直ぐに下級信徒の間で広まった。
男の女房が、幼い子供を抱きながら夫の無実を訴えに下間に面会を求めたが、下間の側近に足蹴にされてしまった。なおも詰め寄る女房に側近はいらだったのだろう、事もあろうに刀を抜いて斬りつけたのだ!
女房はとっさに幼い子供を庇ったものの、努力も虚しく子供共々斬られてしまった。ハラハラしながら見ていた下級信徒たちだが、さすがにこれには我慢できず側近に襲い掛かり、血で血を洗う戦いに発展した。
空を翔け巡回していた俺は、戦いの直後にその事に気づき急ぎ駆けつけて、心配してついて来ていた仲間に介抱されている女房を魔法で治癒させた。
この奇跡を見ていた者達が直ぐさま集まり、下間一族の横暴と本願寺の嘘偽りに気が付く事になった。治した女房から夫の事を聞いた俺は、急ぎ願証寺内部を探し回り夫を助け出した。だがその間に武装した僧兵や、高価な僧衣に身を包んだ者達の四肢を叩き折り、その場に放置して置いた。
敵対するものの多くを叩きのめし、捕えられていた夫と色々な話をし、今後の相談にも乗ってやった。俺が聞いた話が余りに酷いものだったから、種子島家の待遇を話してやり、逃げてくるように話した上で、四肢を叩き折って放置していた上級僧・上級僧兵を本願寺の屋根に括りつけて晒し者にした。
「皆の者よく聞け! この者どもは信徒から税を搾り取り、酒食と女色を貪りながら、自らは戦う事もせず、信徒たちを死地に送り込んでいた。更にそれに疑問を感じた信徒を幽閉し、残酷にも餓死させようとした上に、女房と幼い子供まで斬り殺そうとした!」
「「「「「おおおおおお」」」」」
「このような者に親鸞聖人の教えを伝える資格はない! 浄土真宗の教えを捨てろとは言わぬ、真の教えを伝える佛光寺や専修寺に転属するがよい」
「「「「「おおおおおお」」」」」
俺がキスをして刀傷を治すと言う奇跡を眼にし、日頃から不満に思っていた横暴な僧兵をぶちのめしてもらい、信仰を否定されるのではなく現世指導者の不正を正してもらえ、新たな未来への道筋を示してもらえたのだ。下級信徒たちは目から鱗が落ちる思いだったのだろう、涙を流しながら叫んでくれていた。
だがそれでも全ての信徒が感激してくれた訳では無く、比較的上級の信徒は、下級信徒からの徴税や異教徒・異宗旨への略奪や拉致で好い思いをしていたので、今のままの体制を支持していた。
取りあえず逆らう者は全て叩きのめし、願証寺3世証恵と下間真頼を両脇に抱きかかえて、北伊勢の最前線拠点・茂福城に移送した。だがこのわずかな時間に、既得権益を持つ上級信徒が逆撃を始めてしまった。
俺が戻った時には願証寺と門前町を火炎に包まれ、信徒同士が殺し合う地獄絵図とかしていた。急いで下級信徒たちに逃げるように指示し、上級信徒たちを叩きのめして行った。長島内の砦や村々で、元の信徒同士の殺し合いが始まり、それを文字通り飛び回って下級信徒を助けて回った。
結果的に下級信徒たちは長島を逃げ出し、上級信徒が最後まで籠城をし、俺は毎日長島を襲撃して逃げたくても逃げれない下級信徒を助けて回った。1カ月かかって長島内の敵味方をキッチリ分けて、その後で第1軍10万と伊勢志摩勢に、長島に攻め込ませて占領した。
このような顛末があったため、摂津本願寺攻めに続いて、種子島家では考えられない死傷者を出す戦いとなってしまった。もっとも死傷者は敵がほとんどなのだが、敵味方共に死傷者を出さない種子島家としては異例の事であった。
それでも、長年戦乱を見てきた九条禅定太閤殿下には、極僅かと言っても納得してもらえる数なのだろうな。
「今回の合戦にはずいぶん時間を掛けたでおじゃるな」
「狂信者の集まりですから、今までのような示威行為が使えません」
「それでも7割の一向衆が、本願寺から離れて佛光寺や専修寺に転属したのでおじゃろう?」
「はい、御陰様で殺傷を少なくする事が出来ました」
「殺傷? ほとんどの者を権大納言殿が直接伊勢長島に乗り込み、殺さずに捕虜にしたのでおじゃろう?」
「はい、確かに死んだ者は極僅かではございますが、全員無事とはいきませんでした」
「まあそれくらいはしかたないでおじゃるよ」
「ありがとうございます」
「それで捕虜にした者はどうするのでおじゃるか?」
「殺すと労働力を無駄にする事になりますから、九州や蝦夷の鉱山で働かせるつもりでございます」
「権大納言殿らしいの、見せしめに殺して晒さないのでおじゃるな」
「どうしても必要なら殺す事も厭いはしませんが、無駄な殺しは御上の名に傷をつけてしまいます」
「権大納言殿はいつも御上の事を考えてくれるのでおじゃるな」
「それが臣下の務めでございます」
「我ら摂家の者でもなかなか難しいことでおじゃる」
今回の伊勢長島攻めは、九条禅定太閤殿下が申されたように、武家相手とは違う難しさがあった。摂津や播磨の本願寺を攻めた時と同じように、不毛な殺し合いに発展する可能性が高かった。
だがここで、俺が長年かけて民百姓の生活向上に努力していた事が効果を表した。伊勢長島の人々の中にも、本願寺派の腐れ坊主の言う嘘に疑問を感じ、真相を突き止めようとする者が現れたのだ。彼らは同じ浄土真宗の専修寺高田派や佛光寺派に連絡を取り、事の真相を突き止めたのだ。
願証寺3世証恵はそれを反乱ととらえて、残虐な下間真頼・下間頼康に処罰を命じた。下間一族は本願寺でも特に力を持ち、本願寺総領家執事職などの要職を占め、特に武家の出であるために、戦国大名化した本願寺の戦闘司令官として活躍していた。
下間一族
「宮内卿家」
下間光頼
下間真頼
下間融慶
「刑部卿家」
下間頼康
「少進家」
下間頼照
下間真頼は、加賀越中でも行われた幽閉して餓死させると言う方法をとろうとしたが、半籠城中で殺気立っている願証寺では、指導者層と下級信徒の間で深刻な対立が始まっており、この行動は直ぐに下級信徒の間で広まった。
男の女房が、幼い子供を抱きながら夫の無実を訴えに下間に面会を求めたが、下間の側近に足蹴にされてしまった。なおも詰め寄る女房に側近はいらだったのだろう、事もあろうに刀を抜いて斬りつけたのだ!
女房はとっさに幼い子供を庇ったものの、努力も虚しく子供共々斬られてしまった。ハラハラしながら見ていた下級信徒たちだが、さすがにこれには我慢できず側近に襲い掛かり、血で血を洗う戦いに発展した。
空を翔け巡回していた俺は、戦いの直後にその事に気づき急ぎ駆けつけて、心配してついて来ていた仲間に介抱されている女房を魔法で治癒させた。
この奇跡を見ていた者達が直ぐさま集まり、下間一族の横暴と本願寺の嘘偽りに気が付く事になった。治した女房から夫の事を聞いた俺は、急ぎ願証寺内部を探し回り夫を助け出した。だがその間に武装した僧兵や、高価な僧衣に身を包んだ者達の四肢を叩き折り、その場に放置して置いた。
敵対するものの多くを叩きのめし、捕えられていた夫と色々な話をし、今後の相談にも乗ってやった。俺が聞いた話が余りに酷いものだったから、種子島家の待遇を話してやり、逃げてくるように話した上で、四肢を叩き折って放置していた上級僧・上級僧兵を本願寺の屋根に括りつけて晒し者にした。
「皆の者よく聞け! この者どもは信徒から税を搾り取り、酒食と女色を貪りながら、自らは戦う事もせず、信徒たちを死地に送り込んでいた。更にそれに疑問を感じた信徒を幽閉し、残酷にも餓死させようとした上に、女房と幼い子供まで斬り殺そうとした!」
「「「「「おおおおおお」」」」」
「このような者に親鸞聖人の教えを伝える資格はない! 浄土真宗の教えを捨てろとは言わぬ、真の教えを伝える佛光寺や専修寺に転属するがよい」
「「「「「おおおおおお」」」」」
俺がキスをして刀傷を治すと言う奇跡を眼にし、日頃から不満に思っていた横暴な僧兵をぶちのめしてもらい、信仰を否定されるのではなく現世指導者の不正を正してもらえ、新たな未来への道筋を示してもらえたのだ。下級信徒たちは目から鱗が落ちる思いだったのだろう、涙を流しながら叫んでくれていた。
だがそれでも全ての信徒が感激してくれた訳では無く、比較的上級の信徒は、下級信徒からの徴税や異教徒・異宗旨への略奪や拉致で好い思いをしていたので、今のままの体制を支持していた。
取りあえず逆らう者は全て叩きのめし、願証寺3世証恵と下間真頼を両脇に抱きかかえて、北伊勢の最前線拠点・茂福城に移送した。だがこのわずかな時間に、既得権益を持つ上級信徒が逆撃を始めてしまった。
俺が戻った時には願証寺と門前町を火炎に包まれ、信徒同士が殺し合う地獄絵図とかしていた。急いで下級信徒たちに逃げるように指示し、上級信徒たちを叩きのめして行った。長島内の砦や村々で、元の信徒同士の殺し合いが始まり、それを文字通り飛び回って下級信徒を助けて回った。
結果的に下級信徒たちは長島を逃げ出し、上級信徒が最後まで籠城をし、俺は毎日長島を襲撃して逃げたくても逃げれない下級信徒を助けて回った。1カ月かかって長島内の敵味方をキッチリ分けて、その後で第1軍10万と伊勢志摩勢に、長島に攻め込ませて占領した。
このような顛末があったため、摂津本願寺攻めに続いて、種子島家では考えられない死傷者を出す戦いとなってしまった。もっとも死傷者は敵がほとんどなのだが、敵味方共に死傷者を出さない種子島家としては異例の事であった。
それでも、長年戦乱を見てきた九条禅定太閤殿下には、極僅かと言っても納得してもらえる数なのだろうな。
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