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第一章
第7話:お零れ
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六時丁度にダンジョン前に来たのだが、待っている人数の多さに驚きを隠せない。
ロイドの話では、孤児と浮浪者、初心者とロートルだったはずなのだが、現役の中堅どころからトップまで、ほぼ全員がそろっている。
ロイドのドラゴンファングまでいるのには開いた口が塞がらない。
「これはどういう事なんだ、ロイド?」
「メイガは俺達が潜れないような深さの魔獣まで捨てちまうからな。
できるだけ一緒についていって、おこぼれを拾う心算さ」
ロイドはなんの屈託もなく、笑顔で身も蓋もない事を口にする。
昨日聞いた話では、本当かどうか、貴族の私生児らしい。
その所為で幼い頃から相当苦労してきたと言っていた。
貴族の私生児というのは眉唾物だが、苦労してきたのは間違いないのだろう。
だからこそ拾える金は絶対に拾うし、拾った金を弱者に回す事も忘れない。
こんな男に笑顔で言われたら、文句など口にできなくなる。
「分かったよ、だけど、だからといってゆっくりはしないぞ。
全力で駆け抜け手当たり次第に魔獣を斬り殺す。
だが、トップや中堅まで加わったら、弱者救済にならんだろう?」
俺は不意に浮かんだ疑問を口にしてみた。
そもそもこれは弱者救済のために始めたことだ。
中堅どころやトップが浅層や中上層の素材を拾ってしまったら、弱者が素材を拾えなくなってしまう。
「ああ、それなら大丈夫だ、何の問題もない。
トップや中堅どころは中中層からしか拾わない約束になっている。
そもそもここに集まっているのは、普段から弱者救済のマナーを守っている連中だから、はしたない真似はしないよ」
他の人間の言う事、特に女の言う事は信じられないが、ロイドが言うなら間違いないだろう、これで何のわだかまりもなく魔獣を斬り斃す事ができる。
この時のために、魔法袋一杯に小石を拾ってきたのだ。
浅上層から中上層迄の魔獣なら、小石を指で弾くだけで斃すことができる。
中中層から深上層までの魔獣には、徐々に魔力を込めなければいけなくなるが、買い取り単価を考えれば、それほど無理をする必要もないだろう。
そもそもトップや中堅は、十分稼いでいるのだから。
「じゃあ、今から狩るからな、全力でついて来いよ」
俺はそう言い捨てると、いつも通り魔力を消費し過ぎない最速で駆けた。
魔獣などいないように、一直線で駆けながら、万が一の事態に備えて右手に槍を持ち、左手で小石を弾きながら。
恐らく無数の魔獣が急所を小石に貫かれて死んでいるのだろうが、はるか後方の出来事になっているので確認はできない。
トップ連中も必死で追いかけようとしていたようだが、俺の速さについて来れる者などいない。
斃した魔獣が他の魔獣に喰われる前に辿り着けよ。
ロイドの話では、孤児と浮浪者、初心者とロートルだったはずなのだが、現役の中堅どころからトップまで、ほぼ全員がそろっている。
ロイドのドラゴンファングまでいるのには開いた口が塞がらない。
「これはどういう事なんだ、ロイド?」
「メイガは俺達が潜れないような深さの魔獣まで捨てちまうからな。
できるだけ一緒についていって、おこぼれを拾う心算さ」
ロイドはなんの屈託もなく、笑顔で身も蓋もない事を口にする。
昨日聞いた話では、本当かどうか、貴族の私生児らしい。
その所為で幼い頃から相当苦労してきたと言っていた。
貴族の私生児というのは眉唾物だが、苦労してきたのは間違いないのだろう。
だからこそ拾える金は絶対に拾うし、拾った金を弱者に回す事も忘れない。
こんな男に笑顔で言われたら、文句など口にできなくなる。
「分かったよ、だけど、だからといってゆっくりはしないぞ。
全力で駆け抜け手当たり次第に魔獣を斬り殺す。
だが、トップや中堅まで加わったら、弱者救済にならんだろう?」
俺は不意に浮かんだ疑問を口にしてみた。
そもそもこれは弱者救済のために始めたことだ。
中堅どころやトップが浅層や中上層の素材を拾ってしまったら、弱者が素材を拾えなくなってしまう。
「ああ、それなら大丈夫だ、何の問題もない。
トップや中堅どころは中中層からしか拾わない約束になっている。
そもそもここに集まっているのは、普段から弱者救済のマナーを守っている連中だから、はしたない真似はしないよ」
他の人間の言う事、特に女の言う事は信じられないが、ロイドが言うなら間違いないだろう、これで何のわだかまりもなく魔獣を斬り斃す事ができる。
この時のために、魔法袋一杯に小石を拾ってきたのだ。
浅上層から中上層迄の魔獣なら、小石を指で弾くだけで斃すことができる。
中中層から深上層までの魔獣には、徐々に魔力を込めなければいけなくなるが、買い取り単価を考えれば、それほど無理をする必要もないだろう。
そもそもトップや中堅は、十分稼いでいるのだから。
「じゃあ、今から狩るからな、全力でついて来いよ」
俺はそう言い捨てると、いつも通り魔力を消費し過ぎない最速で駆けた。
魔獣などいないように、一直線で駆けながら、万が一の事態に備えて右手に槍を持ち、左手で小石を弾きながら。
恐らく無数の魔獣が急所を小石に貫かれて死んでいるのだろうが、はるか後方の出来事になっているので確認はできない。
トップ連中も必死で追いかけようとしていたようだが、俺の速さについて来れる者などいない。
斃した魔獣が他の魔獣に喰われる前に辿り着けよ。
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