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第3章:おかげ犬
第28話:拷問
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柘植定之丞の命を受けた家臣達は、木村左門を除いた四人が、二人一組となって博徒二人に襲い掛かった。
槍持ちの持っていた槍は、定之丞が手にしている。
それぞれが腰に差していた鉄芯入りの木刀を自在に扱っている。
とても下男とは思わない、厳しい鍛錬をした者の剣術だった。
度胸だけ、勢いだけで大脇差を振り回し、博徒同士の刃傷沙汰を乗り越えた程度では、とても太刀打ちできる腕ではなかった。
瞬く間に取り押さえられた二人の博徒は、縄をうたれて身動きできなくなった。
「左門は一人連れて影供を頼む」
「大丈夫でございますか」
「よほどの相手でなければ不覚は取らぬよ」
「信じております」
「信じているのなら行け」
「はっ、お前達、命を惜しむな」
「「「はっ」」」」
誰とも言わず、目だけで連れて行く一人を選んだ木村左門は、おかげ犬を追った。
「一人はお前が縄を持て」
定之丞に言われた手代風は諦めたような風情で博徒の縄を取る。
もう一人の縄は草履持ち中間が持っている。
定之丞の右側には槍持ちが位置している。
左側にいるのは馬の轡取りだ。
木村左門が先を進む博徒と縄持ちの間に入っている。
手代風が博徒を連れて逃げようとしたら、木村左門が一刀のもとに斬り捨てる。
そう言う位置取りになっていた。
磯の渡しに戻った定之丞一行を、渡し人達は驚きの表情で迎える。
参詣客も地元の人間も無料の渡しだから、誰もが遠慮なく利用しているので、常に宮川両岸に誰かがいる。
二人の博徒が捕らえられた話は瞬く間に広まる。
博徒を雇った商人はもちろん、黒幕の武士にも伝わる。
彼らが悪足搔きするだろう事は、誰にも分かる事だった。
「御奉行、おかげ犬を襲おうとした博徒を捕らえました。
在所を捨てた野非人と思われますが、黒幕がいると思われます。
厳しく取り調べたいのですが、宜しいでしょうか」
「御上の定めた範囲の取り調べにしろ。
それでも自白しないなら、幕府にお伺いを立ててから厳しくしろ」
「はっ、そのようにさせていただきます」
柘植定之丞は自ら取り調べたかったが、身分がそれを許さなかった。
強く出ればやれるのだが、それでは与力同心の役目を奪う事になる。
事件の取り調べは目付役与力が行い、表撰用与力が記録を取る。
よほど忙しければ主水同心の年寄がやる事もあるが、今回は見習支配皆組頭の柘植定之丞が直々に捕らえた博徒を取り調べるのだ。
万が一自殺でもされたら、柘植家に対する意趣遺恨、恨み妬みで死なせたと思われるかもしれない。
下手をすれば腹を切って責任を取らなければいけない。
そう思えばとても主水同心にはやらせられなかった。
最初の白州で御奉行から直々に、普通に取り調べて自白をさせられなければ、江戸の御老中に伺いを立てて厳しい拷問をすると言われているのだ。
拷問ができるのは殺人、放火、盗賊、関所破り、謀書謀判に限られており、それ以外の罪で拷問を行うには、評定所の許可が必要だった。
そもそも拷問をしなければいけないのは、目付役の手際が悪いからだとされているので、担当の与力たちは必死だった。
目付役与力は気合を込めた取り調べを重ねたが、太々しい二人の博徒は、のらりくらりと確信を話さずにいた。
二人は黙っていれば必ず助けが来ると思っていた。
博徒も親分はもちろん、二人が黒幕だと思っている、山田三方年寄家が表沙汰になるのを恐れ、どのような手段を使ってでも助けに来ると思っていた。
実際には、助けるのではなく口を封じようとしていた。
助けるのは難しいし、新たな証人を捕らえられてしまう。
それよりは毒殺した方が痕跡を辿られ難い。
黒幕たちは、そう考えて牢を管理している拝田衆に賄賂を渡して毒殺しようとしたのだが……
槍持ちの持っていた槍は、定之丞が手にしている。
それぞれが腰に差していた鉄芯入りの木刀を自在に扱っている。
とても下男とは思わない、厳しい鍛錬をした者の剣術だった。
度胸だけ、勢いだけで大脇差を振り回し、博徒同士の刃傷沙汰を乗り越えた程度では、とても太刀打ちできる腕ではなかった。
瞬く間に取り押さえられた二人の博徒は、縄をうたれて身動きできなくなった。
「左門は一人連れて影供を頼む」
「大丈夫でございますか」
「よほどの相手でなければ不覚は取らぬよ」
「信じております」
「信じているのなら行け」
「はっ、お前達、命を惜しむな」
「「「はっ」」」」
誰とも言わず、目だけで連れて行く一人を選んだ木村左門は、おかげ犬を追った。
「一人はお前が縄を持て」
定之丞に言われた手代風は諦めたような風情で博徒の縄を取る。
もう一人の縄は草履持ち中間が持っている。
定之丞の右側には槍持ちが位置している。
左側にいるのは馬の轡取りだ。
木村左門が先を進む博徒と縄持ちの間に入っている。
手代風が博徒を連れて逃げようとしたら、木村左門が一刀のもとに斬り捨てる。
そう言う位置取りになっていた。
磯の渡しに戻った定之丞一行を、渡し人達は驚きの表情で迎える。
参詣客も地元の人間も無料の渡しだから、誰もが遠慮なく利用しているので、常に宮川両岸に誰かがいる。
二人の博徒が捕らえられた話は瞬く間に広まる。
博徒を雇った商人はもちろん、黒幕の武士にも伝わる。
彼らが悪足搔きするだろう事は、誰にも分かる事だった。
「御奉行、おかげ犬を襲おうとした博徒を捕らえました。
在所を捨てた野非人と思われますが、黒幕がいると思われます。
厳しく取り調べたいのですが、宜しいでしょうか」
「御上の定めた範囲の取り調べにしろ。
それでも自白しないなら、幕府にお伺いを立ててから厳しくしろ」
「はっ、そのようにさせていただきます」
柘植定之丞は自ら取り調べたかったが、身分がそれを許さなかった。
強く出ればやれるのだが、それでは与力同心の役目を奪う事になる。
事件の取り調べは目付役与力が行い、表撰用与力が記録を取る。
よほど忙しければ主水同心の年寄がやる事もあるが、今回は見習支配皆組頭の柘植定之丞が直々に捕らえた博徒を取り調べるのだ。
万が一自殺でもされたら、柘植家に対する意趣遺恨、恨み妬みで死なせたと思われるかもしれない。
下手をすれば腹を切って責任を取らなければいけない。
そう思えばとても主水同心にはやらせられなかった。
最初の白州で御奉行から直々に、普通に取り調べて自白をさせられなければ、江戸の御老中に伺いを立てて厳しい拷問をすると言われているのだ。
拷問ができるのは殺人、放火、盗賊、関所破り、謀書謀判に限られており、それ以外の罪で拷問を行うには、評定所の許可が必要だった。
そもそも拷問をしなければいけないのは、目付役の手際が悪いからだとされているので、担当の与力たちは必死だった。
目付役与力は気合を込めた取り調べを重ねたが、太々しい二人の博徒は、のらりくらりと確信を話さずにいた。
二人は黙っていれば必ず助けが来ると思っていた。
博徒も親分はもちろん、二人が黒幕だと思っている、山田三方年寄家が表沙汰になるのを恐れ、どのような手段を使ってでも助けに来ると思っていた。
実際には、助けるのではなく口を封じようとしていた。
助けるのは難しいし、新たな証人を捕らえられてしまう。
それよりは毒殺した方が痕跡を辿られ難い。
黒幕たちは、そう考えて牢を管理している拝田衆に賄賂を渡して毒殺しようとしたのだが……
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