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第3章:おかげ犬
第34話:大捕物と取り調べ
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丁子屋重五郎は往生際がとても悪く、妓楼の裏口から山に逃げようとしたが、裏門を守っていた拝田衆に取り押さえられた。
子分衆は塀を乗り越えようとしたり、屋根に登って隣の妓楼に飛び移ろうとしたり、漢を売るどころか大恥を晒し、結局一人も残さず捕らえられ、そのまま奉行所まで連行された。
「正直に黒幕を話せば、私を殺そうとした罪を遠島で済ませてやる。
庇い立てたり嘘偽りを申したりしたら、磔獄門に処す」
普通なら捕らえた者の取り調べは目付与力が行うのだが、その目付与力の一人亀谷旅右衛門が丁子屋重五郎を目溢ししていたので、定之丞が直々に取り調べた。
「お約束でございますよ。
絶対に遠島で済ませてくださいね」
漢を売っていた博徒の親分とはとても思えない惰弱な態度だった。
「私は必ず約束を守る。
信じられないのなら、磔獄門を待つか、黒幕に毒殺されるのだな。
ここで正直に申さなければ、牢屋に入り事になるが、牢屋に入ったらまず間違いなく殺されるぞ」
「言います、言いますから、牢に入れないでください。
牢に入れられたら毒を盛られてしまいます」
丁子屋重五郎の命乞いはとても見苦しいものだった。
自分のために命懸けで旗本を殺そうとした子分を、牢番に金を渡して始末しようとする、とても一家の親分がやる事とは思えない悪事を自供した。
「足代勝大夫でございます、山田三方家の足代勝大夫に頼まれました。
裏にいたのは主水同心の岡田重蔵様でございます」
更に殺しを依頼した客まで売る始末だった。
死罪は免れても、遠島先でも博徒の世界でつまはじきにされるのは明らかだった。
「今の話、御奉行の前でもう一度言えるか。
今直ぐ言ったなら、牢ではなく我が家の屋敷に匿ってやる。
牢がどれほど危険なのか、お前が一番よく知っているであろう」
丁子屋重五郎は、拝田衆を買収して自分の配下を毒殺しようとしていた張本人だ。
自分が牢に入れられたら、黒幕たちがどれほど危険を冒してでも、自分の口を封じようとするのは明らかだった。
自分が教えられている黒幕は主水同心の岡田重蔵までだが、与力の亀谷旅右衛門がその上にいる事はまず間違いないと思っていた。
もしかしたら、支配組頭の誰かが加わっているかもしれない。
彼らがその気になれば、牢屋にいる自分はひと捻りだと怯えていた。
だから取り調べの場から御奉行の前に引き据えられても同じ事を繰り返した。
一方奉行の大岡美濃守忠移も、事が配下の柘植定之丞を殺そうとした事件だけに、取り調べが終わるまで起きていた。
「おのれ岡田重蔵、余の面目を潰しおって。
組屋敷に人をやって引捕らえよ。
組頭の亀谷旅右衛門も連れて参れ」
「足代勝大夫も捕らえたいのですが、宜しいでしょうか」
「構わぬ、人手が足らぬなら与力同心の別なく叩き起こして構わぬ」
面目を潰された大岡美濃守は激怒していた。
自分の配下が殺し合うなど、江戸表に知られたら大問題だった。
内々に済ましたいところだったが、柘植家から受け取った金が莫大過ぎた。
柘植家に配慮しつつ、自分の失点にならない裁きを考えていた。
与力の亀谷旅右衛門は、柘植家の若党木村左門に見張られながら、与力に割り当てられた屋敷から御用部屋にやって来た。
主水同心の岡田重蔵は、縄目の恥辱を受けると言う、奉行所にとっても面目が潰れる状態で定之丞に連行された。
足代勝大夫は、拝田衆の十手持ちに捕らえられ、御用部屋から廊下を挟んだ中庭の砂利に引き据えられていた。
更にそこに丁子屋重五郎を始めとした博徒一味が連れてこられたが、定之丞を殺そうとした十人が戸板に乗せられてやって来た。
足の骨を砕かれているので、自分で歩いては来れなかった。
証人として拝田衆、毒殺を依頼された牢番も入って来た。
「御奉行の御前である、一同控えおろう」
「「「「「はっ」」」」」
「御奉行に成り代わって私が話を聞く。
嘘偽りなく本当の事を申せ」
「丁子屋重五郎、その方、足代勝大夫に頼まれて奉行所の見習支配組頭、柘植定之丞を何度も殺そうとした事、間違いないか」
定之丞自身が自分を殺そうとした事件の取り調べを行う。
悲劇なのか喜劇なのか、観る者によって受け取り方が変わるだろう。
「間違いございません」
「足代勝大夫、丁子屋重五郎の申す事に間違いはないか」
「間違いでございます、嘘でございます、私を陥れようとする罠でございます」
「丁子屋重五郎、足代勝大夫の裏に岡田重蔵がいたと申したが、間違いないか」
「間違いございません」
「岡田重蔵、丁子屋重五郎の申す事に間違いはないか」
子分衆は塀を乗り越えようとしたり、屋根に登って隣の妓楼に飛び移ろうとしたり、漢を売るどころか大恥を晒し、結局一人も残さず捕らえられ、そのまま奉行所まで連行された。
「正直に黒幕を話せば、私を殺そうとした罪を遠島で済ませてやる。
庇い立てたり嘘偽りを申したりしたら、磔獄門に処す」
普通なら捕らえた者の取り調べは目付与力が行うのだが、その目付与力の一人亀谷旅右衛門が丁子屋重五郎を目溢ししていたので、定之丞が直々に取り調べた。
「お約束でございますよ。
絶対に遠島で済ませてくださいね」
漢を売っていた博徒の親分とはとても思えない惰弱な態度だった。
「私は必ず約束を守る。
信じられないのなら、磔獄門を待つか、黒幕に毒殺されるのだな。
ここで正直に申さなければ、牢屋に入り事になるが、牢屋に入ったらまず間違いなく殺されるぞ」
「言います、言いますから、牢に入れないでください。
牢に入れられたら毒を盛られてしまいます」
丁子屋重五郎の命乞いはとても見苦しいものだった。
自分のために命懸けで旗本を殺そうとした子分を、牢番に金を渡して始末しようとする、とても一家の親分がやる事とは思えない悪事を自供した。
「足代勝大夫でございます、山田三方家の足代勝大夫に頼まれました。
裏にいたのは主水同心の岡田重蔵様でございます」
更に殺しを依頼した客まで売る始末だった。
死罪は免れても、遠島先でも博徒の世界でつまはじきにされるのは明らかだった。
「今の話、御奉行の前でもう一度言えるか。
今直ぐ言ったなら、牢ではなく我が家の屋敷に匿ってやる。
牢がどれほど危険なのか、お前が一番よく知っているであろう」
丁子屋重五郎は、拝田衆を買収して自分の配下を毒殺しようとしていた張本人だ。
自分が牢に入れられたら、黒幕たちがどれほど危険を冒してでも、自分の口を封じようとするのは明らかだった。
自分が教えられている黒幕は主水同心の岡田重蔵までだが、与力の亀谷旅右衛門がその上にいる事はまず間違いないと思っていた。
もしかしたら、支配組頭の誰かが加わっているかもしれない。
彼らがその気になれば、牢屋にいる自分はひと捻りだと怯えていた。
だから取り調べの場から御奉行の前に引き据えられても同じ事を繰り返した。
一方奉行の大岡美濃守忠移も、事が配下の柘植定之丞を殺そうとした事件だけに、取り調べが終わるまで起きていた。
「おのれ岡田重蔵、余の面目を潰しおって。
組屋敷に人をやって引捕らえよ。
組頭の亀谷旅右衛門も連れて参れ」
「足代勝大夫も捕らえたいのですが、宜しいでしょうか」
「構わぬ、人手が足らぬなら与力同心の別なく叩き起こして構わぬ」
面目を潰された大岡美濃守は激怒していた。
自分の配下が殺し合うなど、江戸表に知られたら大問題だった。
内々に済ましたいところだったが、柘植家から受け取った金が莫大過ぎた。
柘植家に配慮しつつ、自分の失点にならない裁きを考えていた。
与力の亀谷旅右衛門は、柘植家の若党木村左門に見張られながら、与力に割り当てられた屋敷から御用部屋にやって来た。
主水同心の岡田重蔵は、縄目の恥辱を受けると言う、奉行所にとっても面目が潰れる状態で定之丞に連行された。
足代勝大夫は、拝田衆の十手持ちに捕らえられ、御用部屋から廊下を挟んだ中庭の砂利に引き据えられていた。
更にそこに丁子屋重五郎を始めとした博徒一味が連れてこられたが、定之丞を殺そうとした十人が戸板に乗せられてやって来た。
足の骨を砕かれているので、自分で歩いては来れなかった。
証人として拝田衆、毒殺を依頼された牢番も入って来た。
「御奉行の御前である、一同控えおろう」
「「「「「はっ」」」」」
「御奉行に成り代わって私が話を聞く。
嘘偽りなく本当の事を申せ」
「丁子屋重五郎、その方、足代勝大夫に頼まれて奉行所の見習支配組頭、柘植定之丞を何度も殺そうとした事、間違いないか」
定之丞自身が自分を殺そうとした事件の取り調べを行う。
悲劇なのか喜劇なのか、観る者によって受け取り方が変わるだろう。
「間違いございません」
「足代勝大夫、丁子屋重五郎の申す事に間違いはないか」
「間違いでございます、嘘でございます、私を陥れようとする罠でございます」
「丁子屋重五郎、足代勝大夫の裏に岡田重蔵がいたと申したが、間違いないか」
「間違いございません」
「岡田重蔵、丁子屋重五郎の申す事に間違いはないか」
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