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第4章:伊勢屋と共有田と金貸し
第46話:逆恨み
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柘植家の下忍で檜垣屋の手代でもある陣吉の活躍で、大阪西町奉行の興津忠通が死ぬ気になって枚岡鬼三郎一家を取り締まった。
興津忠通本人は太平寺村に向かって陣吉と八吉のご機嫌を取った。
枚岡鬼三郎一家には、奉行所の役目に悪影響を与えない範囲で与力同心捕方を総動員した。
だが、賄賂で堕落して憶病者になった与力同心では、命知らずの河内博徒をほとんど取り押さえられなかった。
数人の同心が致命傷を受け、数十人の捕方も致命傷を受けた。
それで捕らえられたのは枚岡鬼三郎一家の二割にも満たなかったのだから、大阪西町奉行の名誉は地に落ちていた。
河内平岡から逃げた鬼三郎一家は、京に上って兄弟分を頼った。
同じ大阪の博徒はしのぎを削って来た相手だから頼れない。
京博徒の力を借りて復讐する心算だった。
「おのれ、これまで散々賄賂を受け取っていた癖に、御師に脅された途端に手のひらを返しやがって、ぜったいに許さねぇ、必ず復讐してやる。
兄弟、どうか手を貸してくれ」
鬼三郎一家は兄弟分である賀茂虎太郎の屋敷に逃げ込んでいた。
虎太郎は、山城国一之宮である賀茂別雷神社と賀茂御祖神社を縄張りとしている。
京でも一二を争う大親分だった。
「手を貸すのは構わないが、まさか奉行所を襲う気じゃないだろうな」
「賄賂を受け取っておいて裏切るような奴は絶対に許せねぇ。
当然奉行所を襲う」
「それは駄目だ、流石に奉行所を襲うのは手伝えねぇ」
「なんだと、俺を見捨てるのか」
「兄弟分を見捨てたりはしない。
だが、奉行所を襲ったらもう二度と枚岡に戻れなくなる。
奉行所ではなく、個人を狙うんだ。
兄弟から直接金を受け取っていたのに裏切った、与力同心を殺す。
そうすれば、殺されるのを恐れた与力同心がまた尻尾を振ってくる」
「うぅぅぅぅ、納得はできんが、兄弟が言っている事は分かる。
しかたがねぇ、奉行所を襲うのは止める。
だが、兄弟が言うように、これまで散々甘い汁を吸ってきた与力同心は許さん。
地の果てまで追いかけてでも殺してやる。
手を貸してくれるんだろうな」
「任せろ、家の腕利きを貸してやるから、奉行所の連中を震え上がらせてやれ」
「おうよ、小便ちびるくらい怖がらしてやるぜ」
「確か鬼三郎の子分には、女を嬲るのが大好きな奴がいたな」
「おう、いるぜ。
腕も立って、奉行所との大立ち回りでは、八人の捕方を叩き斬りやがった」
「そいつに裏切者の女房娘を嬲らせればいい。
できれば与力同心を縛って、その前で想う様に嬲るんだ」
「おお、それはいい、それは愉快だ。
覚えてやがれ、俺様が受けた屈辱を倍にして返してやる」
賀茂虎太郎に厳しく注意された枚岡鬼三郎は、直ぐに与力同心屋敷に押し入りたいのをぐっと我慢して、執念深く与力同心の女房娘を狙い続けた。
危うく昼間の人通りの多い所で襲いそうになるのを、賀茂虎太郎が付けた助っ人に諫められ、腸の捻じ切れる思いで我慢した。
執念深く狙い続ける事三十日、遂にその時が来た。
枚岡鬼三郎から直接賄賂を受け取っていた同心の娘が、下女一人を供に同心屋敷を出て、近くの神社の縁日に出かけてしまった。
同心の娘が屋敷に帰らなかった日、同心は同僚や配下の十手持ちに頭を下げて、大阪中を虱潰しにした。
娘を心配して探し回るあまり、同心が単独行動する時間ができてしまった。
娘だけでなく、親の同心も行方不明になった。
十日後、淀川に拷問で傷だらけになった同心の水死体が浮かんだ。
顔だけは傷つけられていなかったが、身体中の骨がおられ、四肢の指の半数が失われていたが、残った指も爪がはがされ何かで叩き潰されていた。
ただ、娘の行方は分からずじまいだった。
枚岡鬼三郎一家は暗く執念深い逆恨みを成し遂げた。
だが復讐は一人では終わらなかった。
桜の花が咲く頃には、四組もの同心一家が犠牲になっていた。
二組目の犠牲者は、見習同心と新妻だった。
三組目の犠牲者も、見習同心と若妻だった。
四組目の犠牲者は、見習が取れたばかり同心と二人の子を持つ妻だった。
興津忠通本人は太平寺村に向かって陣吉と八吉のご機嫌を取った。
枚岡鬼三郎一家には、奉行所の役目に悪影響を与えない範囲で与力同心捕方を総動員した。
だが、賄賂で堕落して憶病者になった与力同心では、命知らずの河内博徒をほとんど取り押さえられなかった。
数人の同心が致命傷を受け、数十人の捕方も致命傷を受けた。
それで捕らえられたのは枚岡鬼三郎一家の二割にも満たなかったのだから、大阪西町奉行の名誉は地に落ちていた。
河内平岡から逃げた鬼三郎一家は、京に上って兄弟分を頼った。
同じ大阪の博徒はしのぎを削って来た相手だから頼れない。
京博徒の力を借りて復讐する心算だった。
「おのれ、これまで散々賄賂を受け取っていた癖に、御師に脅された途端に手のひらを返しやがって、ぜったいに許さねぇ、必ず復讐してやる。
兄弟、どうか手を貸してくれ」
鬼三郎一家は兄弟分である賀茂虎太郎の屋敷に逃げ込んでいた。
虎太郎は、山城国一之宮である賀茂別雷神社と賀茂御祖神社を縄張りとしている。
京でも一二を争う大親分だった。
「手を貸すのは構わないが、まさか奉行所を襲う気じゃないだろうな」
「賄賂を受け取っておいて裏切るような奴は絶対に許せねぇ。
当然奉行所を襲う」
「それは駄目だ、流石に奉行所を襲うのは手伝えねぇ」
「なんだと、俺を見捨てるのか」
「兄弟分を見捨てたりはしない。
だが、奉行所を襲ったらもう二度と枚岡に戻れなくなる。
奉行所ではなく、個人を狙うんだ。
兄弟から直接金を受け取っていたのに裏切った、与力同心を殺す。
そうすれば、殺されるのを恐れた与力同心がまた尻尾を振ってくる」
「うぅぅぅぅ、納得はできんが、兄弟が言っている事は分かる。
しかたがねぇ、奉行所を襲うのは止める。
だが、兄弟が言うように、これまで散々甘い汁を吸ってきた与力同心は許さん。
地の果てまで追いかけてでも殺してやる。
手を貸してくれるんだろうな」
「任せろ、家の腕利きを貸してやるから、奉行所の連中を震え上がらせてやれ」
「おうよ、小便ちびるくらい怖がらしてやるぜ」
「確か鬼三郎の子分には、女を嬲るのが大好きな奴がいたな」
「おう、いるぜ。
腕も立って、奉行所との大立ち回りでは、八人の捕方を叩き斬りやがった」
「そいつに裏切者の女房娘を嬲らせればいい。
できれば与力同心を縛って、その前で想う様に嬲るんだ」
「おお、それはいい、それは愉快だ。
覚えてやがれ、俺様が受けた屈辱を倍にして返してやる」
賀茂虎太郎に厳しく注意された枚岡鬼三郎は、直ぐに与力同心屋敷に押し入りたいのをぐっと我慢して、執念深く与力同心の女房娘を狙い続けた。
危うく昼間の人通りの多い所で襲いそうになるのを、賀茂虎太郎が付けた助っ人に諫められ、腸の捻じ切れる思いで我慢した。
執念深く狙い続ける事三十日、遂にその時が来た。
枚岡鬼三郎から直接賄賂を受け取っていた同心の娘が、下女一人を供に同心屋敷を出て、近くの神社の縁日に出かけてしまった。
同心の娘が屋敷に帰らなかった日、同心は同僚や配下の十手持ちに頭を下げて、大阪中を虱潰しにした。
娘を心配して探し回るあまり、同心が単独行動する時間ができてしまった。
娘だけでなく、親の同心も行方不明になった。
十日後、淀川に拷問で傷だらけになった同心の水死体が浮かんだ。
顔だけは傷つけられていなかったが、身体中の骨がおられ、四肢の指の半数が失われていたが、残った指も爪がはがされ何かで叩き潰されていた。
ただ、娘の行方は分からずじまいだった。
枚岡鬼三郎一家は暗く執念深い逆恨みを成し遂げた。
だが復讐は一人では終わらなかった。
桜の花が咲く頃には、四組もの同心一家が犠牲になっていた。
二組目の犠牲者は、見習同心と新妻だった。
三組目の犠牲者も、見習同心と若妻だった。
四組目の犠牲者は、見習が取れたばかり同心と二人の子を持つ妻だった。
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