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第一章
第13話:悪口陰口
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異世界召喚から36日目:佐藤克也(カーツ・サート)視点
国王は俺の言葉を受けて即座に決断した。
魔境に大規模なスタンピードの兆しがあると、王城の鐘が乱打させた。
全国民に、王都に籠ってスタンピードに備えるように知らされたのだ。
これは王都内や王都周辺にいる者だけに出されたのではない。
ダンジョンに入っている騎士団員や冒険者はもちろん、ファイフ王国との国境を護っている領主や騎士団長にまでに、騎馬の急使を送って参集を命じる。
国家存亡の危機にしか叩かれない大規模スタンピードに対する鐘だ。
参集しない者は卑怯下劣な叛逆者とされ、言い訳も許されず死刑にされるのだ。
ダンジョンに潜っている者は、全員狩りを止めて地上に上がる。
国境では関所を閉め、少数の騎士と従騎士だけを残す。
騎士長以上は全員、騎士も留守番以外の全員が騎馬を駆って王都に急行する。
ファイフ王国との国境は、左右を魔境のはさまれた細くて長い街道だ。
長いとは言っても、騎馬を駆けさせれば半日はかからない。
夜の浅い時間に急使を送れば、深夜を越えたくらいには関所にたどり着ける。
王都内、特に王城内では急速に魔獣討伐の準備が整えられていく。
特に歴戦のダンジョン騎士団の準備は早い。
騎士団長や副騎士団長はもちろん、百騎長も部隊編成を急ぐ。
普段のダンジョン騎士団には正騎士しかいない。
わずかに騎士の子弟が訓練を兼ねて従騎士になっているが、普段は極々少数だ。
9000騎いるはずの従騎士は、冒険者としてダンジョンに潜っている。
14万の民に必要な食糧を確保し、生活に必要な資源も確保するために、ゼルス王国の人々は老若男女問わずダンジョンに潜っている。
そんな屈強な冒険者が、非常時には従騎士として徴兵されるのだ。
そんな屈強な冒険者の中でも、特に強い者達がダンジョン騎士団に配属される。
現役で今現在魔獣と戦っている騎士でなければ、屈強な冒険者を従えられない。
最低限だけ鍛えて騎士となったような連中では、とても従わせられない。
国境警備の騎士団は対人戦が主なので、惰弱な貴族士族子弟がコネで配属される。
あるいは1番死傷の可能性が低い王都騎士団に配属される。
近衛騎士団は、採用されるには王の前で実力を披露しないといけないので、惰弱な貴族士族の子弟は避けている。
つまり、臨戦態勢を整えたダンジョン騎士団が最強なのだ。
覚悟を定めた国王に率いられたダンジョン騎士団が、普段は1割の1000騎しかいない国境騎士団を、定数を満たした1万騎で待ち構えていたのだ。
北門と北側城壁を護っていたライリー騎士団長は、わずかな2人の百騎長だけを城門と城壁に残して、副団長1人と百騎長8人を率いて王城に参集していた。
ライリー騎士団長は刻々と魔獣討伐の準備が整う中で、この状態での奇襲は不可能と考え、ファイフ王国に密使を送った。
奇襲はスタンピードが落ち着いて強制徴募が解かれてからにした方が良いと、自分が裏切るから確実に勝てる時に奇襲をした方が良いと、密使に伝えさせようとした。
★★★★★★
「急な参集の命令に驚かれたでしょう?」
昼となり、馬を駆けさせて王城に来た国境警備騎士団長のマディソンと、国境周辺の領主であるマクリントック伯爵に、ライリー王都騎士団長が話しかけている。
3人の周辺には、自然と裏切者が集まっている。
国王自らが選んだ宮中伯からは集まらないが、世襲貴族の半数が集まっていた。
能力が低い癖に何の努力もせず、プライドだけは高いクズ共。
命を惜しんでダンジョンにも潜らない憶病者だと王が教えてくれた連中だ。
「いやはや、魔境担当に騎士団の無能には驚かされますな。
専従で魔境の獣を狩っているというのに、数を増やしてしまうのですから」
索敵魔術であらゆる情報を集めている俺には、配下の百騎長や騎士長で壁を作っても何の意味もない。
どれほど遠く離れていても、ささやくような小声でも、全会話を聞く事ができる。
特に難しくもないので、国王と王族にも聞かせてやっている。
ここで決定的な裏切りの会話をしてくれればいいのだが、どうだろうか?
どれほどのバカでも、この場で裏切りの詳細を話す可能性は低いな。
「くっ、くっ、くっ、くっ。
世襲貴族の半数以上が裏切っているというのに、全く気がついていない。
こんな愚かな王に仕えていた自分が情けないですよ」
「マクリントック伯爵の申される通りだ。
尊き血統の貴族を大切にせず、平民冒険者を騎士や貴族の取立てるような王は、早々に死んでもらった方が良い。
貴族と平民、人と獣人の違いを知っておられる、カーネギー王家に支配していただいた方がこの国の為です」
「ライリー騎士団長の申される通りです。
貴君のように男爵家の血を受け継ぐ英傑が騎士団長にふさわしいのです。
平民冒険者が騎士団長に取立てられるなど、貴族の栄光が地に落ちます」
黙って聞いていると言いたい放題だ。
俺には他人事なので、特に腹は立たない。
それの俺は、こういう時代、こういう考えを経て自由平等が育つと知っている。
だが、直接悪し様に罵られている国王と魔境騎士団長は、怒りに身体を振るわせているのだから、この後の展開が楽しみだ。
「そう、そう、ファイフ王国にはスタンピードを抑え、強制徴募が解かれたから侵攻するように伝令を送りました」
「ライリー騎士団長も送られたのですか?
私の同じ内容の伝令をファイフ王国に送りました」
「私も同じ内容の伝令を送りましたよ」
「マディソン騎士団長とマクリントック伯爵も伝令を送られたのですか?
先の見える者は同じことを考えるようですね」
「「「ワッハハハハハ」」」
「ですが、私達以外の騎士団長にスタンピードを制圧できますかね?」
「ライリー騎士団長の心配はもっともです!
穢れた血の平民風情が指揮する騎士団では、魔獣に勝てるはずがない。
魔獣に殺されるのは必定。
王都が魔獣に囲まれる恐れがあります」
「やはり我々のような優秀な貴族が指揮を執ってやらねばなりませんな」
「ライリー騎士団長の申される通りだ。
我らが騎士団を率いて魔獣を討伐する事になるでしょう」
「……ご両所、いっそこの機会を上手く利用してはいかがか?」
「「上手く利用する?」」
「我ら3人は、ファイフ王国軍を王都に引き入れる事で伯爵位と領地を約束されたが、我ら3人の手で王都王城を占領すれば、もっと高い爵位と広い領地を得られるのではないか?」
「マクリントック伯爵の申される通りだ。
ダンジョン騎士団と魔境騎士団が壊滅した後なら、残っているのは近衛騎士団と国境騎士団、後は4つの王都騎士団だけだ。
王の事だから、民のためだと言って自ら近衛騎士団を率いかねない」
「ライリー騎士団長の申される通りだが、更に読める事があるぞ」
「「なんだ?」」
「王の事だから、王都を護る王都騎士団は残すだろう。
魔獣討伐は近衛騎士団と国境騎士団で行われる。
その時に、私が国境騎士団を率いて近衛騎士団を襲って王の首を取る。
ライリー騎士団長は配下の騎士団を率いて城門を確保する。
マクリントック伯爵は世襲貴族達と王城を占拠して王族を皆殺しにする。
これで我らの手柄は絶大となるぞ!
約束の伯爵どころか侯爵も夢ではないぞ!」
「なあ、いっそ3人でこの国を支配しないか?
ファイフ王国に、この豊かなダンジョンをやる必要などない。
我ら3人でダンジョンの上りを山分けすれば、小国の王に匹敵する富と権力を手にできるのではないか?」
あ、国王が剣に手をかけて走って行った。
近衛の連中も同じように剣に手をかけて走って行った。
あまりの言葉に怒りの限界を超えてしまったのだろう。
国王が逆臣に討たれるようなことがあっては最悪だが、大丈夫だろう。
逆臣連中のステータスなら、国王1人でも簡単に皆殺しにできるな。
国王は俺の言葉を受けて即座に決断した。
魔境に大規模なスタンピードの兆しがあると、王城の鐘が乱打させた。
全国民に、王都に籠ってスタンピードに備えるように知らされたのだ。
これは王都内や王都周辺にいる者だけに出されたのではない。
ダンジョンに入っている騎士団員や冒険者はもちろん、ファイフ王国との国境を護っている領主や騎士団長にまでに、騎馬の急使を送って参集を命じる。
国家存亡の危機にしか叩かれない大規模スタンピードに対する鐘だ。
参集しない者は卑怯下劣な叛逆者とされ、言い訳も許されず死刑にされるのだ。
ダンジョンに潜っている者は、全員狩りを止めて地上に上がる。
国境では関所を閉め、少数の騎士と従騎士だけを残す。
騎士長以上は全員、騎士も留守番以外の全員が騎馬を駆って王都に急行する。
ファイフ王国との国境は、左右を魔境のはさまれた細くて長い街道だ。
長いとは言っても、騎馬を駆けさせれば半日はかからない。
夜の浅い時間に急使を送れば、深夜を越えたくらいには関所にたどり着ける。
王都内、特に王城内では急速に魔獣討伐の準備が整えられていく。
特に歴戦のダンジョン騎士団の準備は早い。
騎士団長や副騎士団長はもちろん、百騎長も部隊編成を急ぐ。
普段のダンジョン騎士団には正騎士しかいない。
わずかに騎士の子弟が訓練を兼ねて従騎士になっているが、普段は極々少数だ。
9000騎いるはずの従騎士は、冒険者としてダンジョンに潜っている。
14万の民に必要な食糧を確保し、生活に必要な資源も確保するために、ゼルス王国の人々は老若男女問わずダンジョンに潜っている。
そんな屈強な冒険者が、非常時には従騎士として徴兵されるのだ。
そんな屈強な冒険者の中でも、特に強い者達がダンジョン騎士団に配属される。
現役で今現在魔獣と戦っている騎士でなければ、屈強な冒険者を従えられない。
最低限だけ鍛えて騎士となったような連中では、とても従わせられない。
国境警備の騎士団は対人戦が主なので、惰弱な貴族士族子弟がコネで配属される。
あるいは1番死傷の可能性が低い王都騎士団に配属される。
近衛騎士団は、採用されるには王の前で実力を披露しないといけないので、惰弱な貴族士族の子弟は避けている。
つまり、臨戦態勢を整えたダンジョン騎士団が最強なのだ。
覚悟を定めた国王に率いられたダンジョン騎士団が、普段は1割の1000騎しかいない国境騎士団を、定数を満たした1万騎で待ち構えていたのだ。
北門と北側城壁を護っていたライリー騎士団長は、わずかな2人の百騎長だけを城門と城壁に残して、副団長1人と百騎長8人を率いて王城に参集していた。
ライリー騎士団長は刻々と魔獣討伐の準備が整う中で、この状態での奇襲は不可能と考え、ファイフ王国に密使を送った。
奇襲はスタンピードが落ち着いて強制徴募が解かれてからにした方が良いと、自分が裏切るから確実に勝てる時に奇襲をした方が良いと、密使に伝えさせようとした。
★★★★★★
「急な参集の命令に驚かれたでしょう?」
昼となり、馬を駆けさせて王城に来た国境警備騎士団長のマディソンと、国境周辺の領主であるマクリントック伯爵に、ライリー王都騎士団長が話しかけている。
3人の周辺には、自然と裏切者が集まっている。
国王自らが選んだ宮中伯からは集まらないが、世襲貴族の半数が集まっていた。
能力が低い癖に何の努力もせず、プライドだけは高いクズ共。
命を惜しんでダンジョンにも潜らない憶病者だと王が教えてくれた連中だ。
「いやはや、魔境担当に騎士団の無能には驚かされますな。
専従で魔境の獣を狩っているというのに、数を増やしてしまうのですから」
索敵魔術であらゆる情報を集めている俺には、配下の百騎長や騎士長で壁を作っても何の意味もない。
どれほど遠く離れていても、ささやくような小声でも、全会話を聞く事ができる。
特に難しくもないので、国王と王族にも聞かせてやっている。
ここで決定的な裏切りの会話をしてくれればいいのだが、どうだろうか?
どれほどのバカでも、この場で裏切りの詳細を話す可能性は低いな。
「くっ、くっ、くっ、くっ。
世襲貴族の半数以上が裏切っているというのに、全く気がついていない。
こんな愚かな王に仕えていた自分が情けないですよ」
「マクリントック伯爵の申される通りだ。
尊き血統の貴族を大切にせず、平民冒険者を騎士や貴族の取立てるような王は、早々に死んでもらった方が良い。
貴族と平民、人と獣人の違いを知っておられる、カーネギー王家に支配していただいた方がこの国の為です」
「ライリー騎士団長の申される通りです。
貴君のように男爵家の血を受け継ぐ英傑が騎士団長にふさわしいのです。
平民冒険者が騎士団長に取立てられるなど、貴族の栄光が地に落ちます」
黙って聞いていると言いたい放題だ。
俺には他人事なので、特に腹は立たない。
それの俺は、こういう時代、こういう考えを経て自由平等が育つと知っている。
だが、直接悪し様に罵られている国王と魔境騎士団長は、怒りに身体を振るわせているのだから、この後の展開が楽しみだ。
「そう、そう、ファイフ王国にはスタンピードを抑え、強制徴募が解かれたから侵攻するように伝令を送りました」
「ライリー騎士団長も送られたのですか?
私の同じ内容の伝令をファイフ王国に送りました」
「私も同じ内容の伝令を送りましたよ」
「マディソン騎士団長とマクリントック伯爵も伝令を送られたのですか?
先の見える者は同じことを考えるようですね」
「「「ワッハハハハハ」」」
「ですが、私達以外の騎士団長にスタンピードを制圧できますかね?」
「ライリー騎士団長の心配はもっともです!
穢れた血の平民風情が指揮する騎士団では、魔獣に勝てるはずがない。
魔獣に殺されるのは必定。
王都が魔獣に囲まれる恐れがあります」
「やはり我々のような優秀な貴族が指揮を執ってやらねばなりませんな」
「ライリー騎士団長の申される通りだ。
我らが騎士団を率いて魔獣を討伐する事になるでしょう」
「……ご両所、いっそこの機会を上手く利用してはいかがか?」
「「上手く利用する?」」
「我ら3人は、ファイフ王国軍を王都に引き入れる事で伯爵位と領地を約束されたが、我ら3人の手で王都王城を占領すれば、もっと高い爵位と広い領地を得られるのではないか?」
「マクリントック伯爵の申される通りだ。
ダンジョン騎士団と魔境騎士団が壊滅した後なら、残っているのは近衛騎士団と国境騎士団、後は4つの王都騎士団だけだ。
王の事だから、民のためだと言って自ら近衛騎士団を率いかねない」
「ライリー騎士団長の申される通りだが、更に読める事があるぞ」
「「なんだ?」」
「王の事だから、王都を護る王都騎士団は残すだろう。
魔獣討伐は近衛騎士団と国境騎士団で行われる。
その時に、私が国境騎士団を率いて近衛騎士団を襲って王の首を取る。
ライリー騎士団長は配下の騎士団を率いて城門を確保する。
マクリントック伯爵は世襲貴族達と王城を占拠して王族を皆殺しにする。
これで我らの手柄は絶大となるぞ!
約束の伯爵どころか侯爵も夢ではないぞ!」
「なあ、いっそ3人でこの国を支配しないか?
ファイフ王国に、この豊かなダンジョンをやる必要などない。
我ら3人でダンジョンの上りを山分けすれば、小国の王に匹敵する富と権力を手にできるのではないか?」
あ、国王が剣に手をかけて走って行った。
近衛の連中も同じように剣に手をかけて走って行った。
あまりの言葉に怒りの限界を超えてしまったのだろう。
国王が逆臣に討たれるようなことがあっては最悪だが、大丈夫だろう。
逆臣連中のステータスなら、国王1人でも簡単に皆殺しにできるな。
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