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第一章

第三者視点

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 ルークはお姉ちゃんに会いたくて仕方がなかった。
 でもお仕事を投げ出すと、お姉ちゃんが哀しい顔をするから我慢していた。
 だけど国王がつけた同行者が攻撃してきた。
 これでお姉ちゃんの所に戻っても大丈夫だと安心した。
 同行者が攻撃して来たのに反撃で殺さないようにしたから、お姉ちゃんに褒められるかもしれないと、ちょっと楽しみだった。

「ねえ陛下、こいつら僕に攻撃して来た。
 だから蛙や豚や蚯蚓に変えたけど、いいよね。
 お姉ちゃんに怒られないよね。
 いいと言ってよ。
 言わないと陛下を蛙に変えるよ」

「言わない。
 絶対に言わない!
 そいつらは殺人未遂犯だから、殺しても大丈夫。
 だから蛙に変えないでくれ!」

 ルークは姿を変えた同行者を連れて、大魔境から一気に王宮に転移した。
 この世界で現在転移魔法を使えるのは、ルークだけだと言われてる。
 使える事を隠している魔導師や魔術士がいるかもしれないが、転移魔法を使えることを公表しているのはルークだけだ。
 それにしても、一度に三〇人前後の人間を転移させるなど、恐ろしい魔力量だ。

 そして王に、蛙や豚に変化させた同行者を突き出した。
 前日ルークの魔法で魔術士が爆散するのを直視した王は、まだそれが瞳に鮮明に焼きついていた。
 王は恐怖のあまり失禁脱糞しそうになったが、必死で耐えて返事をした。
 ルークを怒らす可能性のある返事など論外だった。

 ルークと会った時にどう言いくるめるかは考えていた。
 ダニエルとナオミを幽閉してから重臣達を集め、対抗策を話し合ったのだ。
 だが実際にルークが目の前に現れたら、事前の考えなど吹っ飛んでしまった。
 顔だけ残して色んな虫や動物に変えられた元人間を連れて、狂気を宿した満面の笑みを浮かべるルークが不意に目の前に現れたら、正気で対応など不可能だった。

 王は木偶人形も同然だった。
 ルークの言う事を承認するだけの存在になり果てていた。
 哀れな目で助けを求める元人間が視線の端に映るのが、王の恐怖を掻き立てた。
 一言間違ってルークを怒らせたら、自分も哀れな化物に変化させられる恐怖が、王の矜持を打ち砕いていた。

「じゃあ僕はお姉ちゃんの所に行くからね。
 駄目だと言っても駄目だからね。
 駄目だと言ったら陛下も疣蛙に変えちゃうよ。
 でも、陛下は疣豚の方が似合っているかな?
 ねえ、陛下は赤い疣蛙と青い疣豚のどっちがいい?」

「言わない。
 絶対に言わない。
 もう王宮に来なくていいから。
 来なくても給与はちゃんと払うから。
 給与でオリビアの好きなものを買って行ったら、オリビアも喜ぶよ!
 だからもう二度と来なくていいから!」

「そっか、ありがとね、陛下」
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