上 下
8 / 8
第一章

第8話天罰

しおりを挟む
「申し訳ありません、舞姫様。
 貴女様を追い出してまで権力を手に入れたのに、こんな事になってしまいました」

 ジプシーの踊り子が私の前で叩頭しています。
 心から私に詫びているのが分かりますが、私は全然気にしていません。
 あの腐りきった王国を正して操るなど、絶対に不可能だと分かっていました。
 普通に作物が実っていても、驕り高ぶった彼らの遊興のために、多くの税を奪われて、民は生きていけなくなっていました。

 それが、私を追放した事で、歴史的な凶作になり、人口も激減したのですから、民への収奪は想像を絶するモノになりました。
 私も救いの手を伸ばしましたが、助けられたのは十万人程度でした。
 この状況では、それでなくても差別されているジプシー達が、踊り子が王太子の心を掴んでいようとも、暴行略奪の標的にならない訳がないのです。
 いえ、聖なる舞姫の座を奪っているので、全責任を負わせられたのです。

 踊り子が王太子の心を掴んで以降、大陸中のジプシー達が、差別を逃れようとこの国にやってきましたが、この状態では怒りのはけ口になるだけでした。
 このまま虐殺されるのを見て見ぬ振りもできないので、オアシス都市に逃げてくるように誘い、このような状態となりました。
 結局オアシス都市には、元々の住人十万人と、ジプシー達十万人がいます。
 もし私がいなければ、ここでも殺し合いとなっていたでしょう。

「気にする事はありません、こうなる事は神様が定められた事です。
 この国を治める者たちは、神様を蔑ろにし過ぎたのです。
 もう天罰が下っている頃でしょう」

 神々の怒りは激烈で、今王都に集まっているオアシス都市侵略軍は、悲惨な死を迎える事が決まっています。
 神々が差し向けられた、疫病を持ったネズミの群れに襲われるのです。
 最初に激烈な痛みを伴う上げ下しに襲われ、我慢する事などできずに、衣服を汚し恥をかくことになります。

 絶え間ない痛みと上げ下しで、とても起きていれない状態になったところに、神の遣わしたネズミの襲われ、少しずつ身体を喰われて死んでいくことになるのです。
 その痛みと恐怖感は想像を絶するものがあります。
 考えてみてください、生きたまま目を喰われるのです。
 生きたまま腹を喰い破られ、直ぐに死ぬ事もできずに内臓を貪り喰われるのです。

 その恐怖と痛みは、神に救いを求めずにはおられないでしょうが、その時に神はこれが天罰であり、未来永劫この激痛地獄を続くと伝えるのです。
 その絶望は、人間の正気を失わせるほどのものでしょうが、神々の怒りはそんな楽を御許しにはなりません。
 まあ、そんな事は私が考えても仕方がありませんね。
 私が考えなければいけないのは、この国に元から住んでいた人とジプシーの融和。
 大変な仕事ですが、舞姫が逃げるわけにはいきません!
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

実質売られた私は次期侯爵の婚約者になりました?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:90

彼女を悪役だと宣うのなら、彼女に何をされたか言ってみろ!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:16,196pt お気に入り:110

いっぱいの豚汁

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:1,278pt お気に入り:0

転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:13,917pt お気に入り:7,589

重婚なんてお断り! 絶対に双子の王子を見分けてみせます!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,696pt お気に入り:44

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:9,396pt お気に入り:1,575

ある国の王の後悔

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,754pt お気に入り:102

処理中です...