14 / 64
第一章
第9話:村長ヤスミン
しおりを挟む
王歴327年2月6日:南大魔境のキャト族村グレタの家・クリスティアン視点
「入っていいか」
「ああ、入ってくれ、ヤスミン」
ヤスミン、この巨大なキャト族村の村長だったな。
「じゃまするよ。
悪かったな、グレタ。
家の不出来な娘がリンクス族の名誉を汚してしまったようだ」
「はは、ギャッ!」
「半人前以下の未熟者は黙っていろ!」
自分の娘の顔が潰れるほど殴りつけるのか!
キャット族の誇りを汚すととんでもない目に会うようだな。
「さて、詳しい事情を話してもらえるかな?」
キャット族の誇りを汚してはいけない事がよく分かった。
何度同じ話をする事になっても、誇りを汚すわけにはいかない。
『悪食』スキルを安全に検証するためにはキャット族の協力が不可欠なのだ。
「なるほど、そう言う事情ならば、確認しておかなければいけないな。
だが残念なことに村の雑用が多くて、私は直接確認できないのだ。
グレタには悪いが、デキの悪い娘を預かってもらわなければならない」
「分かっているよ、ヤスミン。
あんたは村を護るために多くの息子や娘を犠牲にしてきた。
最後の娘を死なせたくない気持ちはよく分かるよ。
少々手荒になるかもしれないが、生き抜く経験を積ませてやるよ」
「頼む、グレタ」
キャット族の中でもタイガー族の戦闘力は1・2を争う。
他の獣人族とナワバリを争って、1番先に死んでいったのだろう。
生き残っている最後の娘に多少甘くなるのはしかたがないな。
「それじゃあ、明日からイングリートには我々の狩りに加わってもらう」
目の前で自分を心から愛する母親の姿を見たのだ。
自分よりも戦闘力の低いリンクス族に頭まで下げて、生き残る術を娘に伝えようとしてくれている姿を見たのだ。
いくら孤高のタイガー族の若い娘でも、従うしかないだろう。
「……分かりました」
「クリスティアン、あんたから言っておく事はあるかい?」
ここでホモサピエンスの俺が不当な要求をすると、せっかく上手くまとまったキャット族の関係にヒビが張ってしまうかもしれない。
だが、それでも、今のうちに試しておきたい事がある。
「実は、俺は色々と魔力について研究していた事があるのだ。
特に、自分の意志で魔力の発生量を増やす事ができないかを研究していた。
これまでは神与の儀式の前だったので、やれなかった事があるのだ」
「ほう、それはいったいどういう研究なんだい?」
「魔力を使って減った場合は、普通なら腹一杯食べて自然に魔力が溜まるのを待つのだが、食べたモノを自分の意志で急いで吸収して早く魔力を回復する術だ」
「ほう、そんな研究があるのか。
もしそれが本当に実現できるのなら、圧倒的な魔力を手に入れる事ができる。
だが、魔力は自分のスキルにしか使えない。
どのようなスキルか分かっていない『悪食』スキルでは試しようがないだろう。
村の中でどのような危険があるか分からない『悪食』スキルを使う事は、いくらあたしでも許可できないぞ」
「大丈夫だよ、グレタ族長。
安心してほしいヤスミン村長。
魔力路と魔力器官を自由に動かすだけなら神与の儀式前に確かめている。
今日はもう『悪食』スキルを使ったから魔力も減っている。
その魔力を魔力器官一杯に回復させるだけだ」
「分かったと言いたいが、最近は食糧を確保するのも難しいのだ。
いくら命も恩人とはいえ、貴重な食糧を自然回復する魔力の為には使えない」
「オーク族との戦いで分かってくれているだろうが、俺は投擲をやれる。
矢を損なうことなく鳥獣を狩る事ができる。
明日変化の実験を行う前に、食べた分の食糧を狩って返す。
だから食糧を分けてもらえないだろうか?」
「入っていいか」
「ああ、入ってくれ、ヤスミン」
ヤスミン、この巨大なキャト族村の村長だったな。
「じゃまするよ。
悪かったな、グレタ。
家の不出来な娘がリンクス族の名誉を汚してしまったようだ」
「はは、ギャッ!」
「半人前以下の未熟者は黙っていろ!」
自分の娘の顔が潰れるほど殴りつけるのか!
キャット族の誇りを汚すととんでもない目に会うようだな。
「さて、詳しい事情を話してもらえるかな?」
キャット族の誇りを汚してはいけない事がよく分かった。
何度同じ話をする事になっても、誇りを汚すわけにはいかない。
『悪食』スキルを安全に検証するためにはキャット族の協力が不可欠なのだ。
「なるほど、そう言う事情ならば、確認しておかなければいけないな。
だが残念なことに村の雑用が多くて、私は直接確認できないのだ。
グレタには悪いが、デキの悪い娘を預かってもらわなければならない」
「分かっているよ、ヤスミン。
あんたは村を護るために多くの息子や娘を犠牲にしてきた。
最後の娘を死なせたくない気持ちはよく分かるよ。
少々手荒になるかもしれないが、生き抜く経験を積ませてやるよ」
「頼む、グレタ」
キャット族の中でもタイガー族の戦闘力は1・2を争う。
他の獣人族とナワバリを争って、1番先に死んでいったのだろう。
生き残っている最後の娘に多少甘くなるのはしかたがないな。
「それじゃあ、明日からイングリートには我々の狩りに加わってもらう」
目の前で自分を心から愛する母親の姿を見たのだ。
自分よりも戦闘力の低いリンクス族に頭まで下げて、生き残る術を娘に伝えようとしてくれている姿を見たのだ。
いくら孤高のタイガー族の若い娘でも、従うしかないだろう。
「……分かりました」
「クリスティアン、あんたから言っておく事はあるかい?」
ここでホモサピエンスの俺が不当な要求をすると、せっかく上手くまとまったキャット族の関係にヒビが張ってしまうかもしれない。
だが、それでも、今のうちに試しておきたい事がある。
「実は、俺は色々と魔力について研究していた事があるのだ。
特に、自分の意志で魔力の発生量を増やす事ができないかを研究していた。
これまでは神与の儀式の前だったので、やれなかった事があるのだ」
「ほう、それはいったいどういう研究なんだい?」
「魔力を使って減った場合は、普通なら腹一杯食べて自然に魔力が溜まるのを待つのだが、食べたモノを自分の意志で急いで吸収して早く魔力を回復する術だ」
「ほう、そんな研究があるのか。
もしそれが本当に実現できるのなら、圧倒的な魔力を手に入れる事ができる。
だが、魔力は自分のスキルにしか使えない。
どのようなスキルか分かっていない『悪食』スキルでは試しようがないだろう。
村の中でどのような危険があるか分からない『悪食』スキルを使う事は、いくらあたしでも許可できないぞ」
「大丈夫だよ、グレタ族長。
安心してほしいヤスミン村長。
魔力路と魔力器官を自由に動かすだけなら神与の儀式前に確かめている。
今日はもう『悪食』スキルを使ったから魔力も減っている。
その魔力を魔力器官一杯に回復させるだけだ」
「分かったと言いたいが、最近は食糧を確保するのも難しいのだ。
いくら命も恩人とはいえ、貴重な食糧を自然回復する魔力の為には使えない」
「オーク族との戦いで分かってくれているだろうが、俺は投擲をやれる。
矢を損なうことなく鳥獣を狩る事ができる。
明日変化の実験を行う前に、食べた分の食糧を狩って返す。
だから食糧を分けてもらえないだろうか?」
1
あなたにおすすめの小説
『ゴミ掃除』が役立たずと追放されたが、実は『存在抹消』級のチートだった。勇者一行がゴミで溺れているが、俺は辺境で美少女と温泉宿を経営中なので
eringi
ファンタジー
「悪いが、お前のスキル『ゴミ掃除』は魔王討伐の役には立たない。クビだ」
勇者パーティの雑用係だったアレクは、戦闘の役に立たないという理由で、ダンジョンの最深部手前で追放されてしまう。
しかし、勇者たちは気づいていなかった。
彼らの装備が常に新品同様だったのも、野営地が快適だったのも、襲い来る高レベルモンスターの死体が跡形もなく消えていたのも、すべてアレクが『掃除』していたからだということに。
アレクのスキルは単なる掃除ではない。対象を空間ごと削り取る『存在抹消』レベルの規格外チートだったのだ。
一人になったアレクは、気ままに生こうと辺境の廃村にたどり着く。
そこでボロボロになっていた伝説のフェンリル(美少女化)を『洗浄』して懐かれたり、呪われたエルフの姫君を『シミ抜き』して救ったりしているうちに、いつの間にかそこは世界最高峰の温泉宿になっていて……?
一方、アレクを失った勇者パーティは、武器は錆びつき、悪臭にまみれ、雑魚モンスターの処理すら追いつかず破滅の一途をたどっていた。
「今さら戻ってきてくれと言われても、俺はお客さん(美少女)の背中を流すのに忙しいんで」
これは、掃除屋の少年が無自覚に最強の座に君臨し、幸せなスローライフを送る物語。
【土壌改良】で死の荒野がSランク農園に!食べただけでレベルアップする野菜で、世界最強ギルド設立
黒崎隼人
ファンタジー
「え? これ、ただのトマトですよ?」
「いいえ、それは食べただけで魔力が全回復する『神の果実』です!」
ブラック企業で働き詰めだった青年は、異世界の名門貴族の三男・ノアとして転生する。
しかし、授かったスキルは【土壌改良】という地味なもの。
「攻撃魔法も使えない役立たず」と罵られ、魔物すら寄り付かない死の荒野へ追放されてしまう。
だが、彼らは知らなかった。
ノアのスキルは、現代の農業知識と合わせることで、荒れ果てた土地を「Sランク食材」が溢れる楽園に変えるチート能力だったことを!
伝説の魔獣(もふもふ)をキュウリ一本で手懐け、行き倒れた天才エルフを極上スープで救い出し、気づけば荒野には巨大な「農業ギルド」が誕生していた。
これは、本人がただ美味しい野菜を作ってのんびり暮らしたいだけなのに、周囲からは「世界を救う大賢者」と崇められてしまう、無自覚・最強の農業ファンタジー!
【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜
るあか
ファンタジー
僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。
でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。
どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。
そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。
家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
追放された荷物持ち、スキル【アイテムボックス・無限】で辺境スローライフを始めます
黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティーで「荷物持ち」として蔑まれ、全ての責任を押し付けられて追放された青年レオ。彼が持つスキル【アイテムボックス】は、誰もが「ゴミスキル」と笑うものだった。
しかし、そのスキルには「容量無限」「時間停止」「解析・分解」「合成・創造」というとんでもない力が秘められていたのだ。
全てを失い、流れ着いた辺境の村。そこで彼は、自分を犠牲にする生き方をやめ、自らの力で幸せなスローライフを掴み取ることを決意する。
超高品質なポーション、快適な家具、美味しい料理、果ては巨大な井戸や城壁まで!?
万能すぎる生産スキルで、心優しい仲間たちと共に寂れた村を豊かに発展させていく。
一方、彼を追放した勇者パーティーは、荷物持ちを失ったことで急速に崩壊していく。
「今からでもレオを連れ戻すべきだ!」
――もう遅い。彼はもう、君たちのための便利な道具じゃない。
これは、不遇だった青年が最高の仲間たちと出会い、世界一の生産職として成り上がり、幸せなスローライフを手に入れる物語。そして、傲慢な勇者たちが自業自得の末路を辿る、痛快な「ざまぁ」ストーリー!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる