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第一章
第9話:村長ヤスミン
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王歴327年2月6日:南大魔境のキャト族村グレタの家・クリスティアン視点
「入っていいか」
「ああ、入ってくれ、ヤスミン」
ヤスミン、この巨大なキャト族村の村長だったな。
「じゃまするよ。
悪かったな、グレタ。
家の不出来な娘がリンクス族の名誉を汚してしまったようだ」
「はは、ギャッ!」
「半人前以下の未熟者は黙っていろ!」
自分の娘の顔が潰れるほど殴りつけるのか!
キャット族の誇りを汚すととんでもない目に会うようだな。
「さて、詳しい事情を話してもらえるかな?」
キャット族の誇りを汚してはいけない事がよく分かった。
何度同じ話をする事になっても、誇りを汚すわけにはいかない。
『悪食』スキルを安全に検証するためにはキャット族の協力が不可欠なのだ。
「なるほど、そう言う事情ならば、確認しておかなければいけないな。
だが残念なことに村の雑用が多くて、私は直接確認できないのだ。
グレタには悪いが、デキの悪い娘を預かってもらわなければならない」
「分かっているよ、ヤスミン。
あんたは村を護るために多くの息子や娘を犠牲にしてきた。
最後の娘を死なせたくない気持ちはよく分かるよ。
少々手荒になるかもしれないが、生き抜く経験を積ませてやるよ」
「頼む、グレタ」
キャット族の中でもタイガー族の戦闘力は1・2を争う。
他の獣人族とナワバリを争って、1番先に死んでいったのだろう。
生き残っている最後の娘に多少甘くなるのはしかたがないな。
「それじゃあ、明日からイングリートには我々の狩りに加わってもらう」
目の前で自分を心から愛する母親の姿を見たのだ。
自分よりも戦闘力の低いリンクス族に頭まで下げて、生き残る術を娘に伝えようとしてくれている姿を見たのだ。
いくら孤高のタイガー族の若い娘でも、従うしかないだろう。
「……分かりました」
「クリスティアン、あんたから言っておく事はあるかい?」
ここでホモサピエンスの俺が不当な要求をすると、せっかく上手くまとまったキャット族の関係にヒビが張ってしまうかもしれない。
だが、それでも、今のうちに試しておきたい事がある。
「実は、俺は色々と魔力について研究していた事があるのだ。
特に、自分の意志で魔力の発生量を増やす事ができないかを研究していた。
これまでは神与の儀式の前だったので、やれなかった事があるのだ」
「ほう、それはいったいどういう研究なんだい?」
「魔力を使って減った場合は、普通なら腹一杯食べて自然に魔力が溜まるのを待つのだが、食べたモノを自分の意志で急いで吸収して早く魔力を回復する術だ」
「ほう、そんな研究があるのか。
もしそれが本当に実現できるのなら、圧倒的な魔力を手に入れる事ができる。
だが、魔力は自分のスキルにしか使えない。
どのようなスキルか分かっていない『悪食』スキルでは試しようがないだろう。
村の中でどのような危険があるか分からない『悪食』スキルを使う事は、いくらあたしでも許可できないぞ」
「大丈夫だよ、グレタ族長。
安心してほしいヤスミン村長。
魔力路と魔力器官を自由に動かすだけなら神与の儀式前に確かめている。
今日はもう『悪食』スキルを使ったから魔力も減っている。
その魔力を魔力器官一杯に回復させるだけだ」
「分かったと言いたいが、最近は食糧を確保するのも難しいのだ。
いくら命も恩人とはいえ、貴重な食糧を自然回復する魔力の為には使えない」
「オーク族との戦いで分かってくれているだろうが、俺は投擲をやれる。
矢を損なうことなく鳥獣を狩る事ができる。
明日変化の実験を行う前に、食べた分の食糧を狩って返す。
だから食糧を分けてもらえないだろうか?」
「入っていいか」
「ああ、入ってくれ、ヤスミン」
ヤスミン、この巨大なキャト族村の村長だったな。
「じゃまするよ。
悪かったな、グレタ。
家の不出来な娘がリンクス族の名誉を汚してしまったようだ」
「はは、ギャッ!」
「半人前以下の未熟者は黙っていろ!」
自分の娘の顔が潰れるほど殴りつけるのか!
キャット族の誇りを汚すととんでもない目に会うようだな。
「さて、詳しい事情を話してもらえるかな?」
キャット族の誇りを汚してはいけない事がよく分かった。
何度同じ話をする事になっても、誇りを汚すわけにはいかない。
『悪食』スキルを安全に検証するためにはキャット族の協力が不可欠なのだ。
「なるほど、そう言う事情ならば、確認しておかなければいけないな。
だが残念なことに村の雑用が多くて、私は直接確認できないのだ。
グレタには悪いが、デキの悪い娘を預かってもらわなければならない」
「分かっているよ、ヤスミン。
あんたは村を護るために多くの息子や娘を犠牲にしてきた。
最後の娘を死なせたくない気持ちはよく分かるよ。
少々手荒になるかもしれないが、生き抜く経験を積ませてやるよ」
「頼む、グレタ」
キャット族の中でもタイガー族の戦闘力は1・2を争う。
他の獣人族とナワバリを争って、1番先に死んでいったのだろう。
生き残っている最後の娘に多少甘くなるのはしかたがないな。
「それじゃあ、明日からイングリートには我々の狩りに加わってもらう」
目の前で自分を心から愛する母親の姿を見たのだ。
自分よりも戦闘力の低いリンクス族に頭まで下げて、生き残る術を娘に伝えようとしてくれている姿を見たのだ。
いくら孤高のタイガー族の若い娘でも、従うしかないだろう。
「……分かりました」
「クリスティアン、あんたから言っておく事はあるかい?」
ここでホモサピエンスの俺が不当な要求をすると、せっかく上手くまとまったキャット族の関係にヒビが張ってしまうかもしれない。
だが、それでも、今のうちに試しておきたい事がある。
「実は、俺は色々と魔力について研究していた事があるのだ。
特に、自分の意志で魔力の発生量を増やす事ができないかを研究していた。
これまでは神与の儀式の前だったので、やれなかった事があるのだ」
「ほう、それはいったいどういう研究なんだい?」
「魔力を使って減った場合は、普通なら腹一杯食べて自然に魔力が溜まるのを待つのだが、食べたモノを自分の意志で急いで吸収して早く魔力を回復する術だ」
「ほう、そんな研究があるのか。
もしそれが本当に実現できるのなら、圧倒的な魔力を手に入れる事ができる。
だが、魔力は自分のスキルにしか使えない。
どのようなスキルか分かっていない『悪食』スキルでは試しようがないだろう。
村の中でどのような危険があるか分からない『悪食』スキルを使う事は、いくらあたしでも許可できないぞ」
「大丈夫だよ、グレタ族長。
安心してほしいヤスミン村長。
魔力路と魔力器官を自由に動かすだけなら神与の儀式前に確かめている。
今日はもう『悪食』スキルを使ったから魔力も減っている。
その魔力を魔力器官一杯に回復させるだけだ」
「分かったと言いたいが、最近は食糧を確保するのも難しいのだ。
いくら命も恩人とはいえ、貴重な食糧を自然回復する魔力の為には使えない」
「オーク族との戦いで分かってくれているだろうが、俺は投擲をやれる。
矢を損なうことなく鳥獣を狩る事ができる。
明日変化の実験を行う前に、食べた分の食糧を狩って返す。
だから食糧を分けてもらえないだろうか?」
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