大公公子でしたが、神与スキルが『悪食』だったので、王太女には婚約破棄され大公家からは追放され弟には殺されかけましたが、幸せに生きています。

克全

文字の大きさ
24 / 64
第一章

第19話:負傷

しおりを挟む
王歴327年2月15日:南大魔境のキャト族村城門内・クリスティアン視点

 深夜になっているのに城門の内側には大勢に人が集まっていた。
 緊急を感じさせる声に手空きのキャット族が集まってきたのだろう。
 さすが夜行性の部族が多いキャット族だと思う。

「イングリート、直ぐにこれを飲みなさい」

 ただ1人生き残った娘が心配なのだろう。
 村長のヤスミンが真っ青な顔色でイングリートを介抱している。

「どいてくれ、ヒーリングでケガを治すのだ、だからどいてくれ」

 俺はイングリートとヤスミンの周りに集まっているキャット族を押しのけて前に進んだが、もうその時にはヤスミンがイングリートに体力回復薬を飲ませていた。

「よく来てくれた、クリスティアン。
 だがクリスティアンが作ってくれた体力回復薬をもう飲ませた」

 実験もかねて作った体力回復薬が大量にあったから、キャット族の印象をよくしようと、全ての部族に体力回復薬を配ってあった。
 大ケガをしていた者はもちろん、病気で寝込んでいた人にも渡したはずだが、それでもまだ余った体力回復薬があったのだろう。

「確かに体力回復薬は結構早く効きますが、ヒーリングほど早く効くわけではありませんし、イングリートの身体にケガを治すための材料がなければ意味がありません。
 血肉になる食べ物を大量に食べさせてください。
 ヒーリング、ヒーリング、ヒーリング、ヒーリング、ヒーリング」

 イングリートの左腕は肩の付け根から引きちぎられている。
 左脚は膝上あたりからなくなってしまっている。
 俺が作った体力回復薬だけでなく、ヒーリング程度では回復が不可能な大ケガだ。

「ヒーリング、ヒーリング、ヒーリング、ヒーリング、ヒーリング」

 回復魔術なら俺の体内にある魔力だけで発動する事ができる。
 ケガを治すための材料は回復魔術をかけてもらった本人が負担することになる。
 余分な素材がない場合は、健康な骨や肉をけずってケガを治すことになる。

「すまん、ありがとう、ありがとう、ありがとう」

 ヤスミンは感謝してくれているが、ヒーリング程度の下級回復魔術だと、傷口を治すくらいしかできない。
 失われた左腕と左脚を再生する事はかなわない。

「誰か肉と野菜をとってきてくれ。
 食べやすくミンチやジュースにしてくれると助かる」

 あ、キャット族の村が食糧不足になっている事を忘れていた。
 今村で十分な食糧を確保しているのはリンクス族だけだろう。
 俺の分を持ってくればよかったのだが、うっかりしてしまっていた。

「大丈夫だ、私が持って来ている」

 前世でも平穏無事な日本でのんきに生きてきた俺には胆力がない。
 非常時に冷静を保って適切な行動をとる事ができない。
 だが常に死と隣り合わせの魔境で生き延びてきたグレタは胆力十分だ。
 こんな状況で何が1番必要なのか理解し準備している。

「食糧どんどん口の中に入れてやってくれ。
 食べた分だけ身体を治す材料が確保できる。
 食べないと自分の骨や肉、内臓まで潰してケガを治そうとするぞ」

「分かった、だが食べさせて直ぐに身につくのか?」

「その辺が魔術の理不尽なところだ。
 内臓を無理矢理活性化させて、腹の中にあるモノを回復に使えるようにする。
 まあ、その代わり、魔術を使った者から普通よりも多くの魔力を奪うがな」

「そうか、クリスティアンがどれだけ魔力を使ってもイングリートを治すと言ってくれるのなら、家中の食糧をイングリートに食べさせてやろう」

「おい、おい、おい、ヒーリング程度の回復力に期待し過ぎないでくれ。
 傷口を治すことはできるが、失った手足の再生までは無理だ」
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

『ゴミ掃除』が役立たずと追放されたが、実は『存在抹消』級のチートだった。勇者一行がゴミで溺れているが、俺は辺境で美少女と温泉宿を経営中なので

eringi
ファンタジー
「悪いが、お前のスキル『ゴミ掃除』は魔王討伐の役には立たない。クビだ」 勇者パーティの雑用係だったアレクは、戦闘の役に立たないという理由で、ダンジョンの最深部手前で追放されてしまう。 しかし、勇者たちは気づいていなかった。 彼らの装備が常に新品同様だったのも、野営地が快適だったのも、襲い来る高レベルモンスターの死体が跡形もなく消えていたのも、すべてアレクが『掃除』していたからだということに。 アレクのスキルは単なる掃除ではない。対象を空間ごと削り取る『存在抹消』レベルの規格外チートだったのだ。 一人になったアレクは、気ままに生こうと辺境の廃村にたどり着く。 そこでボロボロになっていた伝説のフェンリル(美少女化)を『洗浄』して懐かれたり、呪われたエルフの姫君を『シミ抜き』して救ったりしているうちに、いつの間にかそこは世界最高峰の温泉宿になっていて……? 一方、アレクを失った勇者パーティは、武器は錆びつき、悪臭にまみれ、雑魚モンスターの処理すら追いつかず破滅の一途をたどっていた。 「今さら戻ってきてくれと言われても、俺はお客さん(美少女)の背中を流すのに忙しいんで」 これは、掃除屋の少年が無自覚に最強の座に君臨し、幸せなスローライフを送る物語。

【土壌改良】で死の荒野がSランク農園に!食べただけでレベルアップする野菜で、世界最強ギルド設立

黒崎隼人
ファンタジー
「え? これ、ただのトマトですよ?」 「いいえ、それは食べただけで魔力が全回復する『神の果実』です!」 ブラック企業で働き詰めだった青年は、異世界の名門貴族の三男・ノアとして転生する。 しかし、授かったスキルは【土壌改良】という地味なもの。 「攻撃魔法も使えない役立たず」と罵られ、魔物すら寄り付かない死の荒野へ追放されてしまう。 だが、彼らは知らなかった。 ノアのスキルは、現代の農業知識と合わせることで、荒れ果てた土地を「Sランク食材」が溢れる楽園に変えるチート能力だったことを! 伝説の魔獣(もふもふ)をキュウリ一本で手懐け、行き倒れた天才エルフを極上スープで救い出し、気づけば荒野には巨大な「農業ギルド」が誕生していた。 これは、本人がただ美味しい野菜を作ってのんびり暮らしたいだけなのに、周囲からは「世界を救う大賢者」と崇められてしまう、無自覚・最強の農業ファンタジー!

【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか
ファンタジー
 僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。  でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。  どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。  そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。  家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

追放された荷物持ち、スキル【アイテムボックス・無限】で辺境スローライフを始めます

黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティーで「荷物持ち」として蔑まれ、全ての責任を押し付けられて追放された青年レオ。彼が持つスキル【アイテムボックス】は、誰もが「ゴミスキル」と笑うものだった。 しかし、そのスキルには「容量無限」「時間停止」「解析・分解」「合成・創造」というとんでもない力が秘められていたのだ。 全てを失い、流れ着いた辺境の村。そこで彼は、自分を犠牲にする生き方をやめ、自らの力で幸せなスローライフを掴み取ることを決意する。 超高品質なポーション、快適な家具、美味しい料理、果ては巨大な井戸や城壁まで!? 万能すぎる生産スキルで、心優しい仲間たちと共に寂れた村を豊かに発展させていく。 一方、彼を追放した勇者パーティーは、荷物持ちを失ったことで急速に崩壊していく。 「今からでもレオを連れ戻すべきだ!」 ――もう遅い。彼はもう、君たちのための便利な道具じゃない。 これは、不遇だった青年が最高の仲間たちと出会い、世界一の生産職として成り上がり、幸せなスローライフを手に入れる物語。そして、傲慢な勇者たちが自業自得の末路を辿る、痛快な「ざまぁ」ストーリー!

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...