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第一章
第40話:マタタビエール
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王歴327年3月20日:南大魔境のキャット族村の治療所・クリスティアン視点
「オオオオオ、目を覚ましてくださいましたか、クリスティアン殿」
「先生、先生、先生、先生、先生」
「クリスティアン先生、私です、わかりますか、私です」
「信じていました、必ず無事に帰って来てくださると信じていました」
「待っていました、旦那様を信じて待っていました」
ええっと、俺はゴブリン族を斃すためにゴブリンの村に残ったのだよな。
いや、ゴブリンの村を見張るためのキャンプ地に残ったのだった。
1日待っていて、ホモカウ族がゴブリン族に見つかったから攻撃に踏み切った。
「ちょっと待ってやれ、クリスティアンは混乱しているようだ。
この状態で迫ったらクリスティアンに嫌われてしまうぞ。
ここは私に任せてクリスティアンの食事と用意しておけ。
誰が作るなんてささいな事で争うなよ。
『悪食』で作った料理は全部食べてもらうから安心しろ」
「「「「「はい」」」」」
すごい勢いで迫って来ていた嫁たちが部屋を出て行ってくれた。
俺の事を心から心配してくれているのは分かったし、その心はとてもうれしくて感謝もしているのだが、ちょっとついていけない所があった。
「クリスティアンはまだ混乱して分かっていないようだが、クリスティアンと私たちが別れてから、もう5日が経っているのだ。
私たちは昨日村に戻ったのだが、もうとっくにクリスティアンが村に戻っていると思っていたので、とても心配していたのだ」
「まだあまり頭が働いていないようで、どれほど大変な状況か分かっていないのだが、ずいぶんと心配かけたようだな」
「ああ、本当に心から心配していたのだぞ。
村長と相談して急いで救出部隊を編成しようとしたのだが、ロードを含む1万の軍勢と敵地で戦うのは不利だと言う意見も出て、直ぐに助けに行けなかったのだ」
「反対意見の方が正しいだろう」
「……ああ、心情は別にして、正しい判断だと思う。
だが幸いなことに、クリスティアンが戻ってきた」
「段々別れる前に話し合っていた事を思い出してきたぞ。
俺は鳥に変化して戻ってきたのか?」
「ああ、鳥に変化して戻ってきたが、戻ったとたんにホモサピエンスの姿になった。
しかも今回はいくら声をかけても気がつかない。
それどころか、抱きかかえてもベッドまで運んでも目を覚まさす、今の今まで昏々と眠っていたのだ」
「よほど疲れていたのだろうな」
「ああ、私もそう思うが、また記憶がないのだな?」
「そうだな、今のところホモカウ族がゴブリン族に見つかって襲われそうになったので、助けようとヒュージゴブリンに変化する呪文を唱えた所までしか思い出せない」
「変化してからホモサピエンスに戻るまでの記憶がなくなるのは分かっていた事だ。
大切な情報はホモカウ族がゴブリン族に見つかった事だ。
そしてそれ以上に大切な事は、クリスティアンが生きて帰ってきた事だ」
「気を失っている間に、俺はゴブリン族を全滅させられたのだろうか?」
「それは偵察部隊を放って調べればわかる事だ。
クリスティアンが生きて帰ってきているから、偵察を送る事に反対する者はいないだろうし、ホモカウ族の安否も確認しなければいけないからな」
「そろそろ塩が無くなるのだったな?」
「ああ、塩が無くなってもしばらくは生きて行けるだろうが、2年3年となると難しいから、誰かが塩を手に入れるために大魔境を出て買ってこなければいけなくなる」
「塩だけなら俺の知識で作る事もできるが、鉄が補給できなければ武器や狩りの道具を修理する事もできなくなるからな」
「なに、本当か、本当に塩を作る事ができるのか?!」
「ああ、大量の草を燃やして灰を作り、その灰の中から塩を集めると言う手間ひまがかかってしまうが、手間を惜しまなければ作れるぞ。
だが塩だけではダメなのだろう、鉄もいるのだろう?」
「いや、塩さえ手に入れる事ができるのなら、鉄の方は交渉次第で何とかなる。
とても気難しいドワーフ族と直接交渉しなければいけなくなるが、ドワーフ族が相手なら魔境からでなくてもいいからな」
「俺は文献でしか知らないが、ドワーフ族は酒好きだったよな?
アルコール濃度の高い酒を交渉材料に使えば、鉄を手に入れられるか?」
「クリスティアンは酒も作れるのか?!」
「ああ、だが今から造り初めるにしても、材料を集めてエールを発酵させるまでに10日はかかるし、そこからアルコール濃度を高めるのに更に10日ほどかかる。
それに俺1人では量が作れないから、多くのキャット族に作り方を覚えてもらわなければいけない」
「エールならキャット族の村でも造っている。
マタタビを加えたキャット族独特のエールだが、それでもいいなら直ぐに手に入るが、使えるか?」
「それはドワーフ族がマタタビの風味を好むか嫌うかで変わってくる。
マタタビエールがキャット族に必要なモノなら、無理に集めなくていいから、これからマタタビを使わないエールを輸出用に造ってくれ。
キャット族が飲む分以外のどれくらいのエールを作る事ができるのだ?」
「造れる量は専門家でなければ分からない。
これは私や村長の独断で決められる事じゃないな。
気がついたばかりで大変だろうが、これから緊急の部族長会議を開催するから、クリスティアンも参加してくれ」
「オオオオオ、目を覚ましてくださいましたか、クリスティアン殿」
「先生、先生、先生、先生、先生」
「クリスティアン先生、私です、わかりますか、私です」
「信じていました、必ず無事に帰って来てくださると信じていました」
「待っていました、旦那様を信じて待っていました」
ええっと、俺はゴブリン族を斃すためにゴブリンの村に残ったのだよな。
いや、ゴブリンの村を見張るためのキャンプ地に残ったのだった。
1日待っていて、ホモカウ族がゴブリン族に見つかったから攻撃に踏み切った。
「ちょっと待ってやれ、クリスティアンは混乱しているようだ。
この状態で迫ったらクリスティアンに嫌われてしまうぞ。
ここは私に任せてクリスティアンの食事と用意しておけ。
誰が作るなんてささいな事で争うなよ。
『悪食』で作った料理は全部食べてもらうから安心しろ」
「「「「「はい」」」」」
すごい勢いで迫って来ていた嫁たちが部屋を出て行ってくれた。
俺の事を心から心配してくれているのは分かったし、その心はとてもうれしくて感謝もしているのだが、ちょっとついていけない所があった。
「クリスティアンはまだ混乱して分かっていないようだが、クリスティアンと私たちが別れてから、もう5日が経っているのだ。
私たちは昨日村に戻ったのだが、もうとっくにクリスティアンが村に戻っていると思っていたので、とても心配していたのだ」
「まだあまり頭が働いていないようで、どれほど大変な状況か分かっていないのだが、ずいぶんと心配かけたようだな」
「ああ、本当に心から心配していたのだぞ。
村長と相談して急いで救出部隊を編成しようとしたのだが、ロードを含む1万の軍勢と敵地で戦うのは不利だと言う意見も出て、直ぐに助けに行けなかったのだ」
「反対意見の方が正しいだろう」
「……ああ、心情は別にして、正しい判断だと思う。
だが幸いなことに、クリスティアンが戻ってきた」
「段々別れる前に話し合っていた事を思い出してきたぞ。
俺は鳥に変化して戻ってきたのか?」
「ああ、鳥に変化して戻ってきたが、戻ったとたんにホモサピエンスの姿になった。
しかも今回はいくら声をかけても気がつかない。
それどころか、抱きかかえてもベッドまで運んでも目を覚まさす、今の今まで昏々と眠っていたのだ」
「よほど疲れていたのだろうな」
「ああ、私もそう思うが、また記憶がないのだな?」
「そうだな、今のところホモカウ族がゴブリン族に見つかって襲われそうになったので、助けようとヒュージゴブリンに変化する呪文を唱えた所までしか思い出せない」
「変化してからホモサピエンスに戻るまでの記憶がなくなるのは分かっていた事だ。
大切な情報はホモカウ族がゴブリン族に見つかった事だ。
そしてそれ以上に大切な事は、クリスティアンが生きて帰ってきた事だ」
「気を失っている間に、俺はゴブリン族を全滅させられたのだろうか?」
「それは偵察部隊を放って調べればわかる事だ。
クリスティアンが生きて帰ってきているから、偵察を送る事に反対する者はいないだろうし、ホモカウ族の安否も確認しなければいけないからな」
「そろそろ塩が無くなるのだったな?」
「ああ、塩が無くなってもしばらくは生きて行けるだろうが、2年3年となると難しいから、誰かが塩を手に入れるために大魔境を出て買ってこなければいけなくなる」
「塩だけなら俺の知識で作る事もできるが、鉄が補給できなければ武器や狩りの道具を修理する事もできなくなるからな」
「なに、本当か、本当に塩を作る事ができるのか?!」
「ああ、大量の草を燃やして灰を作り、その灰の中から塩を集めると言う手間ひまがかかってしまうが、手間を惜しまなければ作れるぞ。
だが塩だけではダメなのだろう、鉄もいるのだろう?」
「いや、塩さえ手に入れる事ができるのなら、鉄の方は交渉次第で何とかなる。
とても気難しいドワーフ族と直接交渉しなければいけなくなるが、ドワーフ族が相手なら魔境からでなくてもいいからな」
「俺は文献でしか知らないが、ドワーフ族は酒好きだったよな?
アルコール濃度の高い酒を交渉材料に使えば、鉄を手に入れられるか?」
「クリスティアンは酒も作れるのか?!」
「ああ、だが今から造り初めるにしても、材料を集めてエールを発酵させるまでに10日はかかるし、そこからアルコール濃度を高めるのに更に10日ほどかかる。
それに俺1人では量が作れないから、多くのキャット族に作り方を覚えてもらわなければいけない」
「エールならキャット族の村でも造っている。
マタタビを加えたキャット族独特のエールだが、それでもいいなら直ぐに手に入るが、使えるか?」
「それはドワーフ族がマタタビの風味を好むか嫌うかで変わってくる。
マタタビエールがキャット族に必要なモノなら、無理に集めなくていいから、これからマタタビを使わないエールを輸出用に造ってくれ。
キャット族が飲む分以外のどれくらいのエールを作る事ができるのだ?」
「造れる量は専門家でなければ分からない。
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