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第一章
第45話:不協和音
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王歴327年4月29日:南大魔境・新キャット族村・クリスティアン視点
俺が提案したら反発を受けるので、キャット族の本村村長であるヤスミンとホモカウ族の族長であるヨアヒムに種族会議を開いてもらった。
議題はもちろんロードゴブリンの対する同盟締結だった。
「クリスティアン殿、お役に立てなくて申し訳ない」
「いえ、ヨアヒム殿とヤスミン村長はよくやってくださいました。
最初から無理だと分かっていた同盟話です。
この新村に多くの種族が集まってくれただけで大成功です」
そうだ、会議を開く事ができただけで大成功なのだ。
これでキャット族が最後までゴブリン族と戦う決意でいる事と、他種族と対等の同盟を結ぶ用意がある事を、多くの種族に知らせる事ができた。
「それにしても、あれだけ多くの開拓村を襲われ同胞を殺されたというのに、ドッグ族の長はなぜ意地をはるのでしょうか?」
長年交易をおこなってきた種族だけあって、ホモカウ族は敵対しない限りとてもていねいな言葉づかいをする。
「やはりホモサピエンスのクリスティアン殿に対する意地だろうな。
それにドッグ族には、ロードゴブリンには敵わないが、ヒュージゴブリン程度なら斃している実績があるからな。
族長は自分ならロードゴブリンに勝てると思っているのでしょう」
ヨアヒム殿の判断が正しいと思う。
「だがこのままドッグ族だけが損害を受けるようなら、種族間の勢力が大きく変わってしまい、ロードゴブリンを滅ぼしてもナワバリを失う事になるぞ」
「ヤスミン村長の心配はもっともだが、ドッグ族にはドッグ族の勝算があるのさ」
「どのような勝算があると言うのだ、クリスティアン殿」
「ドッグ族が新たに手に入れたナワバリの大半はゴブリン族に奪われている。
だったら戦うことなく一部のナワバリを放棄して、ゴブリン族をキャット族とオーク族のナワバリに向かわせればいい」
「卑怯な事を考えているのだな、ドッグ族は!」
「村長や族長なら、種族や部族を護るためならあらゆる手を使う。
卑怯であろうと非道であろうと関係ない。
違うかい、ヤスミン村長」
「……確かにその通りだ、当然の決断だ。
それで、新村をゴブリン族に襲われる可能性が出てきたクリスティアン殿は、どういう対応をするつもりなのだ?」
「今までと変わらないよ。
新村と旧村の間に造っている地下道を完成させて、非常時に行き来できるようにすると同時に、スライムが進化できるようにする」
「地下道が完成するまでにロードゴブリンが攻め込んできた時はどうする?」
「たぶんだけれど、前回の戦いでロードゴブリンを喰っている。
だったらもう1度戦っても勝てるはずだ。
最初はロードゴブリンに変化して戦い、食糧を確保する」
「臭くて不味いゴブリンを食べるのか……」
「食糧不足になっている、他種族に輸出すればいい。
キャット族にナワバリを奪われたオーク族と、キャット族とゴブリン族にナワバリを奪われたドッグ族がよろこんで買ってくれるさ。
俺たちから買うのは誇りがゆるさなくても、ホモカウ族が交易品として持って行けば、誇りを傷つけられる事なく買えるだろうからね」
「その時はお任せください」
ヨアヒム殿が力強く引き受けてくれた。
「だが、本当にロードゴブリン同士で戦って勝てるのか?」
「危険だと思ったらスライムに変化するように戦術を練っておくよ。
これまでの経験から、事前に考えていた戦術は記憶がなくても実行されるみたいだから、安心してくれ、ヤスミン村長」
「……グレタは心配ではないのか?」
「もう何度も婿殿の戦いぶりは見ている。
まったく心配していないとは言わないが、信頼の方が大きい。
婿殿なら必ずロードゴブリンに勝つと信じている」
「グレタがそこまで言うのなら、もう何も言うまい。
キャット族の未来はクリスティアン殿に任せた、頼みましたぞ」
やれ、やれ、大事になってしまったな。
俺にとって1番大切なのは女房子供だから、最悪の場合、それ以外は切り捨てる。
だが、女房子供が安心して暮らすためには、キャット族自体にある程度の勢力や権力がなければならない。
「ええ、安心して任せてください。
ただ、グレタ殿とヨアヒム殿には以前話をして準備をしてもらっているのですが、最悪の可能性も考えているのです」
「最悪の可能性だと?!」
俺はヤスミン村長にキングゴブリンがいた場合の事を話した。
あって欲しくない事だが、最悪を考えておくのが長の役目だからしかたがない。
「わかった、私も最悪の事を考えて東大魔境に逃げる準備をしておこう」
ヤスミン村長が賢明でよかった。
これがホモサピエンスの指導者だったら、自分の地位や権力を維持する事にこだわって、批判されるような事は決定できない。
ホモサピエンスが滅びるような危険な状態でも保身に走る。
「ただ、相手がキングであろうと、最後に現れてくれるのなら何とかなる」
「それはどういうことだ?」
「キングゴブリンの下に10匹のロードゴブリンがいて、先に10匹のロードゴブリンが襲いかかってきてくれれば、全部喰っちまえば俺もキングゴブリン級に成れますから、余裕でキングゴブリンを斃せますよ」
「……キャット族の神にロードゴブリンから襲ってくれるように祈るよ」
俺が提案したら反発を受けるので、キャット族の本村村長であるヤスミンとホモカウ族の族長であるヨアヒムに種族会議を開いてもらった。
議題はもちろんロードゴブリンの対する同盟締結だった。
「クリスティアン殿、お役に立てなくて申し訳ない」
「いえ、ヨアヒム殿とヤスミン村長はよくやってくださいました。
最初から無理だと分かっていた同盟話です。
この新村に多くの種族が集まってくれただけで大成功です」
そうだ、会議を開く事ができただけで大成功なのだ。
これでキャット族が最後までゴブリン族と戦う決意でいる事と、他種族と対等の同盟を結ぶ用意がある事を、多くの種族に知らせる事ができた。
「それにしても、あれだけ多くの開拓村を襲われ同胞を殺されたというのに、ドッグ族の長はなぜ意地をはるのでしょうか?」
長年交易をおこなってきた種族だけあって、ホモカウ族は敵対しない限りとてもていねいな言葉づかいをする。
「やはりホモサピエンスのクリスティアン殿に対する意地だろうな。
それにドッグ族には、ロードゴブリンには敵わないが、ヒュージゴブリン程度なら斃している実績があるからな。
族長は自分ならロードゴブリンに勝てると思っているのでしょう」
ヨアヒム殿の判断が正しいと思う。
「だがこのままドッグ族だけが損害を受けるようなら、種族間の勢力が大きく変わってしまい、ロードゴブリンを滅ぼしてもナワバリを失う事になるぞ」
「ヤスミン村長の心配はもっともだが、ドッグ族にはドッグ族の勝算があるのさ」
「どのような勝算があると言うのだ、クリスティアン殿」
「ドッグ族が新たに手に入れたナワバリの大半はゴブリン族に奪われている。
だったら戦うことなく一部のナワバリを放棄して、ゴブリン族をキャット族とオーク族のナワバリに向かわせればいい」
「卑怯な事を考えているのだな、ドッグ族は!」
「村長や族長なら、種族や部族を護るためならあらゆる手を使う。
卑怯であろうと非道であろうと関係ない。
違うかい、ヤスミン村長」
「……確かにその通りだ、当然の決断だ。
それで、新村をゴブリン族に襲われる可能性が出てきたクリスティアン殿は、どういう対応をするつもりなのだ?」
「今までと変わらないよ。
新村と旧村の間に造っている地下道を完成させて、非常時に行き来できるようにすると同時に、スライムが進化できるようにする」
「地下道が完成するまでにロードゴブリンが攻め込んできた時はどうする?」
「たぶんだけれど、前回の戦いでロードゴブリンを喰っている。
だったらもう1度戦っても勝てるはずだ。
最初はロードゴブリンに変化して戦い、食糧を確保する」
「臭くて不味いゴブリンを食べるのか……」
「食糧不足になっている、他種族に輸出すればいい。
キャット族にナワバリを奪われたオーク族と、キャット族とゴブリン族にナワバリを奪われたドッグ族がよろこんで買ってくれるさ。
俺たちから買うのは誇りがゆるさなくても、ホモカウ族が交易品として持って行けば、誇りを傷つけられる事なく買えるだろうからね」
「その時はお任せください」
ヨアヒム殿が力強く引き受けてくれた。
「だが、本当にロードゴブリン同士で戦って勝てるのか?」
「危険だと思ったらスライムに変化するように戦術を練っておくよ。
これまでの経験から、事前に考えていた戦術は記憶がなくても実行されるみたいだから、安心してくれ、ヤスミン村長」
「……グレタは心配ではないのか?」
「もう何度も婿殿の戦いぶりは見ている。
まったく心配していないとは言わないが、信頼の方が大きい。
婿殿なら必ずロードゴブリンに勝つと信じている」
「グレタがそこまで言うのなら、もう何も言うまい。
キャット族の未来はクリスティアン殿に任せた、頼みましたぞ」
やれ、やれ、大事になってしまったな。
俺にとって1番大切なのは女房子供だから、最悪の場合、それ以外は切り捨てる。
だが、女房子供が安心して暮らすためには、キャット族自体にある程度の勢力や権力がなければならない。
「ええ、安心して任せてください。
ただ、グレタ殿とヨアヒム殿には以前話をして準備をしてもらっているのですが、最悪の可能性も考えているのです」
「最悪の可能性だと?!」
俺はヤスミン村長にキングゴブリンがいた場合の事を話した。
あって欲しくない事だが、最悪を考えておくのが長の役目だからしかたがない。
「わかった、私も最悪の事を考えて東大魔境に逃げる準備をしておこう」
ヤスミン村長が賢明でよかった。
これがホモサピエンスの指導者だったら、自分の地位や権力を維持する事にこだわって、批判されるような事は決定できない。
ホモサピエンスが滅びるような危険な状態でも保身に走る。
「ただ、相手がキングであろうと、最後に現れてくれるのなら何とかなる」
「それはどういうことだ?」
「キングゴブリンの下に10匹のロードゴブリンがいて、先に10匹のロードゴブリンが襲いかかってきてくれれば、全部喰っちまえば俺もキングゴブリン級に成れますから、余裕でキングゴブリンを斃せますよ」
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