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悪漢の村5

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「御腹すいていませんか」
「……すいています」
「ルイ様。ここで休んでいきましょう」
「そうですね。ゴロツキ共の相手は任せてください」
「はい。宜しくお願い致します」
 やれやれ。
 ガビは娘が可愛くて仕方ないようだ。
 不憫な育ちをしているから、慈しんであげたいのだろう。
 と同時に、この辺でゴロツキ共を待ち受けて、ぶちのめしなさいと言う事でもある。
 余達を追うのを諦めて、力ない村人に八つ当たりさせる訳にはいかないという事だな。
「温かい料理を出そうか」
「ここで料理してはいけませんか」
「いけないことはないけれど、バタバタして埃が立つかもしれない。何よりこの娘が空腹を抱えて待つ事になるよ」
「それはいけません。空腹は悲しい事です」
 ふむ。
 ガビの歳を聞くのは禁句だが、遥か昔に東国から流れてきたというミカサ一族だから、その時にはガビも困窮したのかもしれない。
 だがミカサ一族程の強者が、満足に狩りも出来なかったとは思えない。
 それとも、追っ手が余程強かったのだろうか。
 いや、詮索は止めよう。
 それよりも今は娘の空腹だ。
「魚が好きかい。それとも肉の方が好きかい」
「……肉が好き」
「牛と豚、羊と鶏ではどちらが好きだい。それとも魔獣がいいかな」
「御肉が食べられるのなら、なんでもいいです」
「そうか。じゃあ魔獣の肉にしようか」
「はい。有り難うございます」
 魔法袋に納めている料理は無数にあるけれど、余りに貴重で美味しい食材を食べさせてしまうと、口が肥えてこれから困る可能性がある。
 だからと言って、余りに程度の低い食材を食べさせるわけにはいかない。
 ガビの眼が少し厳しく余を見ている。
 狩りの上手い士族なら普通に食べているだろう、金級程度の魔獣を使った料理にしよう。
「はい。少し熱いかもしれないから、気を付けて食べるのだよ」
「あの、その、わたしがさきにたべていいのですか」
「大丈夫。一緒に食べるからね」
「そうそう。子供は気にしなくていいのだよ」
「でも、その、わたし、おつかえするって」
「それは屋敷に帰ってからでいいのよ。先に御食べなさい」
「あの、でも、その」
「ガビ。一緒に食べてあげなさい」
 このままではらちが明かないので、娘が遠慮しなくて済むように、ガビに一緒に食べるように勧めた。
 ガビが先にシチューに手を付けると、娘も安心して食べ始めた。
 最初は遠慮しながら一口食べたが、そのあまりの美味しさに貪るように食べだした。
 話の様子から、普段はほとんど肉を口に出来なかったようだ。
 たまに食べられたとしても、家畜の屑肉か、銅級魔獣でも美味しくない種の屑肉だったのだろう。
 宿屋の娘でこのような食糧事情なら、ゴロツキ以外の村人の食事は、とんでもなく貧しかったのだろうな。
 食い物の恨みは強いと言うから、余達がこの村を解放した後は、大きな報復があるだろう。
 いや、ゴロツキ共は全員鉱山送りになるだろうから、嫌な報復は起きない可能性もある。
 だが、嫌々ゴロツキ共に働かされていた人に、恨みが向くかもしれない。
 事後処理には、その辺の気配りも必要だな。
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