運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全

文字の大きさ
8 / 58
第1章

第8話:生薬

しおりを挟む
「ウォオオオオ、やったぞ、フェロウシャス・ボアを狩ったぞ!」

「「「「「ウォオオオオ!」」」」」

「どうした、何を泣いている、安心したのか?
 泣き止んで胸を張れ、ケーンは大手柄を立てたのだぞ!」

 お父さんはそう言ってほめてくれますが、生まれて初めて命を奪った罪の意識で、胸が激しく痛み吐き気がします。

 1度食べた大切な食糧を吐くのは悪い事なので、必死で我慢します。
 命を奪った上に食糧まで粗末に扱う訳にはいきません!

「どうした、魔力を使い過ぎたのか、横になっていろ」

「アラミス、ケーンは私が家まで運ぶわ。
 貴男はここに残ってフェロウシャス・ボアの解体をお願い。
 牙も毛皮も良い交換品になるから、価値を損なわないように解体しておいて」

「分かった、フェロウシャス・ボアは俺たちに任せてくれ、ケーンの事は任せたぞ」

 情けないですが、神与のスキルをもらったというのに、お母さんに抱きかかえられて家に運ばれました。

 この手で命を奪った罪の意識に耐えられず、その場で気絶してしまいました。
 起きた時には情けなくて泣いてしまったほどです。

 ここは地球とは違う、日本とは違う、分かっている心算でしたが、全然分かっていませんでした。

 自分の大切なモノを守るためなら、他の命を奪わないといけません。
 時には動物ではなく人の命まで奪わないといけません。
 僕もこれを機に覚悟を決めなければいけません!

 そう心に誓ってはみたものの、積極的に猛獣や魔獣を狩る気にはなれません。
 お父さんやお母さんからは、窒息魔術を使った狩りを期待されているのが分かりましたが、2人に危険がない限り使う気にはなれません。

 その代わり、村の人たちが求める果物を実らせました。
 交易商品として価値がありそうな、ドライフルーツを作れるように、柿と山ブドウとイチジクを実らせました。

「ケーン君、悪いが薬草を育ててくれないか?」

 10日ほど経ってフィンリー神官が話しかけてきました。

「果物よりも薬草の方が大切なのですが?」

「ああ、ケーンのお陰で食べ物の備蓄は十分できた。
 薬草も少しはあるのだが、もっと数があった方が良い。
 行商人と交換するのは酒よりも薬草の方が良いのだよ。
 特に干して小さく軽くなった薬草の方が沢山持って行ってもらえる」

「分かりました、直ぐに大きくしてきます」

「お父さんとお母さんに話してあるから、2人と一緒に行くんだよ。
 絶対に1人で行ってはいけないよ」

「はい、分かりました」

 僕は朝早くから、父さんとお母さんについて、里山から内山、内山から奥山へと入って行きました。

 奥山どころか内山に入るのも生まれて初めてです。
 1人でも来られるように道を覚えようと必死でした。

「フィンリー神官から頼まれた薬草は分かっているな?」

「うん、名前は全部覚えたけれど、どの草なのかはよく分からないよ」

「大丈夫よ、私たちが教えてあげるから、しっかりと覚えなさい」

 お父さんとお母さんが一緒に行くのは、僕を守るためだけではありません。
 見た事もない薬草を見分けるためにも一緒に行くのです。
 フィンリー神官から頼まれた薬草は以下の通りです。

クズ:鎮痛・止血・二日酔い
クコ:強壮・解熱作用・高血圧・動脈硬化
キク:抗炎症・咳止・結膜炎・上気道炎・鼻閉・視力低下・高血圧・めまい
シソ:疲労回復・解熱・鎮痛・鎮静・咳・喘息・便秘・嘔吐・食欲不振・神経痛
ヨモギ:止血・沈痛・痢止・扁桃炎・咳止・生理痛・生理不順・神経痛・リウマチ
カタバミ:皮膚病・止血
ゲンノショウコ:下痢・かぶれ

 僕はお父さんとお母さんの言う草木を生長させました。
 今後1人でも採りに来られるように、しっかりと覚えました。
 前世からの夢である世界中を自分の足で旅するには、薬草の知識は欠かせません。

「おとうさん、これは集めなくても良いの?」

 僕は前世の動画で見た事のあるドクダミを見つけて聞きました。
 血管強化・高血圧・腎臓・胃腸・利尿・便秘・解毒・化膿・腫瘍・鼻炎・蓄膿症・皮膚病と色々な効果が有り、別名十薬とまで呼ばれる万能薬草だったはずです。

「おおドクダミか、ドクダミは良く効く薬草だが、比較的何所でも採れる薬草だから、売り物にはならないんだ。
 それよりは1つの効果が強い薬草で、他の地に少ない薬草の方が価値があるから、行商人に売るならそっちの方が良いのだ」

 僕はそれからもお父さんとお母さんに色々教えてもらいました。
 神与のスキルを頂いたので、1人前になっているはずなのですが、お父さんとお母さんにはまだまだ子供扱いされていました。

 でも、フェロウシャス・ボアを狩ってからは1人前に扱ってもらえています。 
 1人立ちしても僕が暮らしていけるように、生きて行くのに必要な知識は全部教えてくれる気なのが分かりました。

 だから、時間がかかっても、フィンリー神官から頼まれていない薬草まで、特徴と薬効、どのような所に生えているのかまで教えてくれました。

「お、ユキノシタがあったぞ、これは火傷にも効くから覚えておけよ」

「はい、お父さん」

「火傷につかう時は、生の葉を軽く火で炙るかすりつぶしてから、火傷したところに塗るのですよ」

「はい、おかあさん」

「今日はもう遅くなったから家に帰りましょう。
 エヴィーたちが首を長くして待っていますよ」
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~

楓乃めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。 いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている. 気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。 途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。 「ドラゴンがお姉さんになった?」 「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」 変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。 ・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

中学生ユーチューバーの心霊スポットMAP

じゅん
児童書・童話
【第1回「きずな児童書大賞」大賞 受賞👑】  悪霊のいる場所では、居合わせた人に「霊障」を可視化させる体質を持つ「霊感少女」のアカリ(中学1年生)。  「ユーチューバーになりたい」幼なじみと、「心霊スポットMAPを作りたい」友達に巻き込まれて、心霊現象を検証することになる。  いくつか心霊スポットを回るうちに、最近増えている心霊現象の原因は、霊を悪霊化させている「ボス」のせいだとわかり――  クスっと笑えながらも、ゾッとする連作短編。

稀代の悪女は死してなお

朔雲みう (さくもみう)
児童書・童話
「めでたく、また首をはねられてしまったわ」 稀代の悪女は処刑されました。 しかし、彼女には思惑があるようで……? 悪女聖女物語、第2弾♪ タイトルには2通りの意味を込めましたが、他にもあるかも……? ※ イラストは、親友の朝美智晴さまに描いていただきました。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

処理中です...