幼い頃に魔境に捨てたくせに、今更戻れと言われて戻るはずがないでしょ!

克全

文字の大きさ
1 / 26
第一章

第1話:寿命・皇太子視点

しおりを挟む
「陛下、一大事でございます、聖女様がお倒れになられました!」

 皇宮と聖殿の連絡係が慌てて政務室に飛び込んできた。

「なに、直ぐに行く、医師は派遣したのか?」

 皇帝陛下が血相を変えて立ち上がられた。
 たぶん私の顔色も真っ青だろう。
 この国の要、繁栄の基礎となっているのは、聖女による護りだ。
 聖女の護りなくして魔獣の侵入は防げないし、聖女の恵みなくして一粒の実りも手に入らない、それが荒れ果てた大地に建国された皇国の定めなのだ。

「聖女ルミナス、気を確かに持ってくれ。
 今君に死なれてしまったら、皇国の民が死に絶えることになる」

 聖殿にある聖女の寝室に飛び込んだ皇帝陛下が、身も蓋もない事を言う。
 聖女の事を想い心配しているのではなく、身勝手にも皇国の民のために聖女に死ぬなと言っている。
 何とも非情な言葉だが、それが為政者としては正しい視点なのだろう。
 個々の命ではなく、国全体の命を考える義務と責任があるのだ。

「分かっております、護りと恵みを手薄にしてでも、命永らえねばなりません。
 今しばらくは生きてみせます。
 ですが、それにも限界がございます。
 随分と引き延ばしてきたのです、もうそろそろ限界でございます。
 長くても三年、短ければ一年の命でしょう。
 まだ、まだ見つかりませんか、十五年前に消えてしまった次代の聖女は!」

 聖女ルミナスが、血を吐くような想いを込めて皇帝陛下を詰問した。
 大陸一強大な皇国が、たった一人の人間も探せない事をなじっているのだ。
 だがそれも仕方のない事だと思う。
 本来死すべき運命なのに、それに逆らって寿命を延ばす、それがどれほどの苦痛を伴う事なのか、俺ごときには想像もできない事だ。

「すまぬ、申し訳ない、残念だがまだ見つからないのだ。
 だがなんとしてでも探し出す、もうなりふり構ってはおられない。
 懸賞金を、いや、皇太子の正妃の座をかけてでも、聖女を探し出して見せる」

 皇帝陛下が次代の聖女探しを秘密にしていた事は仕方がない。
 もし皇国に次代の聖女がいないと他国に知られたら、皇国を滅ぼしたいと思う国々が、躍起になって次代の聖女を殺そうとするだろう。
 皇国の庇護下にない聖女は本当に危険なのだ。
 だからといって皇国が聖女探しに手を抜いていたわけではない。
 密偵部門と外交部門を大増員して、次代の聖女が生まれたと聖女ルミナスが感じた、ダイザー王国を中心に探し回っていた。

「げっほっ!」
「聖女、聖女ルミナス!
 薬だ、早く薬を持て!」

 聖女ルミナスがどす黒い血を吐いた!
 寿命を延ばすためにの劇薬や呪文によって、身体がボロボロになっているのだ。
 我知らず涙が流れてしまう、止めようと思っても止められない。
 私にできる事は何だろうか?
 若年とはいえ、私は皇国の皇太子だ!
 国のため民のため、やれること、やらねばならない事があるはずだ!
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【完結】『妹の結婚の邪魔になる』と家族に殺されかけた妖精の愛し子の令嬢は、森の奥で引きこもり魔術師と出会いました。

夏灯みかん
恋愛
メリルはアジュール王国侯爵家の長女。幼いころから妖精の声が聞こえるということで、家族から気味悪がられ、屋敷から出ずにひっそりと暮らしていた。しかし、花の妖精の異名を持つ美しい妹アネッサが王太子と婚約したことで、両親はメリルを一族の恥と思い、人知れず殺そうとした。 妖精たちの助けで屋敷を出たメリルは、時間の止まったような不思議な森の奥の一軒家で暮らす魔術師のアルヴィンと出会い、一緒に暮らすことになった。

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

妹に婚約者を奪われたけど、婚約者の兄に拾われて幸せになる

ワールド
恋愛
妹のリリアナは私より可愛い。それに才色兼備で姉である私は公爵家の中で落ちこぼれだった。 でも、愛する婚約者マルナールがいるからリリアナや家族からの視線に耐えられた。 しかし、ある日リリアナに婚約者を奪われてしまう。 「すまん、別れてくれ」 「私の方が好きなんですって? お姉さま」 「お前はもういらない」 様々な人からの裏切りと告白で私は公爵家を追放された。 それは終わりであり始まりだった。 路頭に迷っていると、とても爽やかな顔立ちをした公爵に。 「なんだ? この可愛い……女性は?」 私は拾われた。そして、ここから逆襲が始まった。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

戻る場所がなくなったようなので別人として生きます

しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。 子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。 しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。 そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。 見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。 でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。 リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

【完結】私が愛されるのを見ていなさい

芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定) 公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。 絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。 ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。 完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。  立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。

幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。 そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。 たった一つボタンを掛け違えてしまったために、 最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。 主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?

処理中です...