幼い頃に魔境に捨てたくせに、今更戻れと言われて戻るはずがないでしょ!

克全

文字の大きさ
23 / 26
第一章

第23話:惰弱・皇太子視点

しおりを挟む
 眼の前には怯えた表情を浮かべて震えているニルラル公爵がいる。
 地位に相応しいと言うべきか、それとも相応しくないと言うべきか。
 惰弱としか言いようのない、腑抜けた男だ。
 先程からこいつが口にしているのは「全部妻がやった事です」と「妻が王妹だったので逆らえなかったんです」の二つだけだ。
 このような卑怯者は直ちに首を刎ねたいのだが、真聖女を大魔境に捨てさせた罪に相応しい罰が分からないので、今直ぐ殺すことができないでいる。

「城内を徹底的に調べさせておりますが、現在の所は公爵が自供した抜け道と隠し部屋以外発見されていません。
 ジーガン卿が城の従僕と侍女の協力させたいと申されておりますが、許可していただけるでしょうか?」

 なるほど、この城の事をよく知っている非戦闘員に協力させるのだな。
 戦闘力のある従僕や侍女もいるだろうが、そんな連中を自由にさせるジーガン卿ではないからな。
 それにしても、抜け道と隠し部屋か、公爵も色々用心していたのだな。
 まあ、当代とは限らないが。

「許可しよう、それで、拷問役はどうなっている?」

「ひぃいいい、お許しください、お許しください。
 本当に妻が全部やったのです、私は関係ないのです。
 公爵の私には、王妹に逆らうことができなかったのです」

 もう何度も同じことを聞かされて、いい加減腹も立たなくなってきた。
 こいつが良識的な先妻を疎んじて、積極的に殺害に走った事は、心ある従僕や侍女の証言で明らかになっている。
 真聖女を捨てることに関しても、既にビエンナが妊娠していたので、何の躊躇いもなしに捨てたという証言が集まっている。
 まあ、従僕や侍女が保身に走ってこちらが喜ぶ証言をしている可能性もあるがな。

「こいつを黙らせろ、耳が腐る。
 こいつを閉じ込めておく場所はまだ決まらないのか?」

「捜索に従僕や侍女が加わりましたら、監視の騎士を都合できるとジーガン卿が申されていましたから、今しばらくお待ちください」

 護衛の騎士がそう言うなり公爵を殴りつけて黙らせた。
 鍛え抜かれた騎士が本気で殴ると簡単に死ぬから、随分と手加減したようだ。
 ピクピクと痙攣しているが、死んでいないのは胸が上下しているのでわかる。
 だが、顎の骨は粉砕されているようで、みるみる下顎が血袋のようになっている。
 これくらい痛めつけたら拷問の代わりになるかもしれない。
 いっそ両足の骨を砕いてやろうか?
 骨を砕いて塔に放り込んでおけば、逃げる事はできないだろう。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【完結】『妹の結婚の邪魔になる』と家族に殺されかけた妖精の愛し子の令嬢は、森の奥で引きこもり魔術師と出会いました。

夏灯みかん
恋愛
メリルはアジュール王国侯爵家の長女。幼いころから妖精の声が聞こえるということで、家族から気味悪がられ、屋敷から出ずにひっそりと暮らしていた。しかし、花の妖精の異名を持つ美しい妹アネッサが王太子と婚約したことで、両親はメリルを一族の恥と思い、人知れず殺そうとした。 妖精たちの助けで屋敷を出たメリルは、時間の止まったような不思議な森の奥の一軒家で暮らす魔術師のアルヴィンと出会い、一緒に暮らすことになった。

妹に婚約者を奪われたけど、婚約者の兄に拾われて幸せになる

ワールド
恋愛
妹のリリアナは私より可愛い。それに才色兼備で姉である私は公爵家の中で落ちこぼれだった。 でも、愛する婚約者マルナールがいるからリリアナや家族からの視線に耐えられた。 しかし、ある日リリアナに婚約者を奪われてしまう。 「すまん、別れてくれ」 「私の方が好きなんですって? お姉さま」 「お前はもういらない」 様々な人からの裏切りと告白で私は公爵家を追放された。 それは終わりであり始まりだった。 路頭に迷っていると、とても爽やかな顔立ちをした公爵に。 「なんだ? この可愛い……女性は?」 私は拾われた。そして、ここから逆襲が始まった。

【完結】我儘で何でも欲しがる元病弱な妹の末路。私は王太子殿下と幸せに過ごしていますのでどうぞご勝手に。

白井ライス
恋愛
シャーリー・レインズ子爵令嬢には、1つ下の妹ラウラが居た。 ブラウンの髪と目をしている地味なシャーリーに比べてラウラは金髪に青い目という美しい見た目をしていた。 ラウラは幼少期身体が弱く両親はいつもラウラを優先していた。 それは大人になった今でも変わらなかった。 そのせいかラウラはとんでもなく我儘な女に成長してしまう。 そして、ラウラはとうとうシャーリーの婚約者ジェイク・カールソン子爵令息にまで手を出してしまう。 彼の子を宿してーー

【完結】妹ばかり愛され追い出された姉ですが、無口な夫と暮らす日々が幸せすぎます

コトミ
恋愛
 セラフィナは、実の親と、妹によって、家から追い出されることとなった。セラフィナがまだ幼い頃、両親は病弱なカタリナのため設備環境が良い王都に移り住んだ。姉のセラフィナは元々両親とともに住んでいた田舎に使用人のマーサの二人きりで暮らすこととなった。お金のない子爵家な上にカタリナのためお金を稼がなくてはならないため、子供二人を王都で暮らすには無理があるとセラフィナだけ残されたのだ。そしてセラフィナが19歳の時、3人が家へ戻ってきた。その理由はカタリナの婚約が上手くいかず王宮にいずらくなったためだ。やっと家族で暮らせると心待ちにしていたセラフィナは帰宅した父に思いがけないことを告げられる。 「お前はジェラール・モンフォール伯爵と結婚することになった。すぐに荷物をまとめるんだ。一週間後には結婚式だ」  困惑するセラフィナに対して、冷酷にも時間は進み続け、結婚生活が始まる。

完結 王子は貞操観念の無い妹君を溺愛してます

音爽(ネソウ)
恋愛
妹至上主義のシスコン王子、周囲に諌言されるが耳をを貸さない。 調子に乗る王女は王子に婚約者リリジュアについて大嘘を吹き込む。ほんの悪戯のつもりが王子は信じ込み婚約を破棄すると宣言する。 裏切ったおぼえがないと令嬢は反論した。しかし、その嘘を真実にしようと言い出す者が現れて「私と婚約してバカ王子を捨てないか?」 なんとその人物は隣国のフリードベル・インパジオ王太子だった。毒親にも見放されていたリリジュアはその提案に喜ぶ。だが王太子は我儘王女の想い人だった為に王女は激怒する。 後悔した王女は再び兄の婚約者へ戻すために画策するが肝心の兄テスタシモンが受け入れない。

醜い私は妹の恋人に騙され恥をかかされたので、好きな人と旅立つことにしました

つばめ
恋愛
幼い頃に妹により火傷をおわされた私はとても醜い。だから両親は妹ばかりをかわいがってきた。伯爵家の長女だけれど、こんな私に婿は来てくれないと思い、領地運営を手伝っている。 けれど婚約者を見つけるデェビュタントに参加できるのは今年が最後。どうしようか迷っていると、公爵家の次男の男性と出会い、火傷痕なんて気にしないで参加しようと誘われる。思い切って参加すると、その男性はなんと妹をエスコートしてきて……どうやら妹の恋人だったらしく、周りからお前ごときが略奪できると思ったのかと責められる。 会場から逃げ出し失意のどん底の私は、当てもなく王都をさ迷った。ぼろぼろになり路地裏にうずくまっていると、小さい頃に虐げられていたのをかばってくれた、商家の男性が現れて……

妹に婚約者を取られてしまい、家を追い出されました。しかしそれは幸せの始まりだったようです

hikari
恋愛
姉妹3人と弟1人の4人きょうだい。しかし、3番目の妹リサに婚約者である王太子を取られてしまう。二番目の妹アイーダだけは味方であるものの、次期公爵になる弟のヨハンがリサの味方。両親は無関心。ヨハンによってローサは追い出されてしまう。

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

処理中です...