土魔法で富国強兵?

克全

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始まりの章

襲撃2(第三者視点)

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『廃炭鉱前』

「殺すんじゃないぞ。黒幕を吐かせないといけない」
「了解です」
「君達は包囲されている。武器を棄てて投降しなさい」

 本当は油断している所を奇襲したかったが、今の日本の警察には許されない事だ。
 だから、敵が廃炭鉱の入り口に意識を集中し、機動隊の事に気が付いていないと言う、圧倒的に有利な状況を捨てて、警告をしなければいけない。

「糞。囲まれている」
「捕まったら何をされるか分からんぞ」
「自白剤を打たれるかもしれん」
「本国から暗殺団が送られるかもしれんぞ」

 北東の大国の手先は、慌てるあまり荒唐無稽な事を言いだしていた。
 日本の現状を理解していれば、自白剤を打たれる心配など不要だ。
 だが、彼らは本国のやり方を基準に考えてしまっていた。
 だからこそ、捕まったら本国から暗殺団が送られてきて、口封じされると思い込んでしまった。

「捕まるくらいなら、この場で射殺された方がマシだ」
「死を覚悟してここを突破する」
「「「「「おう」」」」」

 北東の大国から送られて来た工作員は、決死の覚悟で包囲網を突破しようとした。
 一方日本人の協力者は、それほど危機感をもっていなかった。
 北東の大国で何度も厳しい軍事訓練は受けていたが、日本の事を分かっていた。
 投降さえすれば、殺されることも拷問されることもない。
 多少は厳しい尋問を受けるかもしれないが、あくまでの日本の警察基準だ。

「俺達は殿を務める」
「そうか、感謝する。だが御前達はどうすのだ」
「なあに、俺達は日本人だ。逃げ隠れする場所はいくらでもある」
「そうか」

 工作員達は、立ち木に隠れながら海岸線に向かって逃げ出した。
 逮捕しようと前方に機動隊員が立ちふさがったが、拳銃を乱射して突破した。
 射撃訓練と実戦経験の差が如実に現れた。
 工作員は躊躇なく機動隊員を殺そうとし、機動隊員は工作員を殺さないようした。

「治安出動願います」
「分かりました。自衛隊に出動要請をします」

 機動隊の隊長は、躊躇うことなく知事に機動隊では鎮圧不可能と報告を入れた。
 初めから決まっていた手順だった。
 今回の件で、省庁間の縄張り争いなど起こらなかった。
 総額一兆円は埋蔵されていると言う報告は、北海道には福音以外の何者でもなかった。
 大規模な警備会社が設立され、予備自衛官と元警察官の採用が約束されていた。

「撃つな。投降する」
「黒幕の名を言え。そうすれば罪が軽くなるぞ」
「ふん、そんなおためごかしに騙されるモノか」
「今回の件は、国家間の紛争につながるテロ行為だ」
「馬鹿いいえ、俺達はただの強盗だ」
「既に自衛隊が治安出動している」
「何だと」
「今回工作活動を行った北東の大国の人間は便衣兵の疑いがある」
「そんな」
「御前達は、便衣兵に協力したテロリストか工作員とされる」
「嘘だ。違う。俺達は強盗だ」
「だったら、強盗の黒幕の名を言え」
「分かった」
 
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