愛しい義兄が追放されたので、聖女は国を見捨てる事にしました。

克全

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6話

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「エルア、もう許せない。
 王家を滅ぼしたい。
 月神様の御許しは頂けるだろうか?」

「それは、不可能ではありませんが、義兄上が大きな責任を負うことになります」

「構わない。
 これ以上民が苦しむ姿は見たくない」

 グレン義兄上がそう思い詰められる気持ちも分かります。
 悪徳貴族士族領の民も苦しんでいましたが、一番民を苦しめていたのは、王家直轄領の代官でした。
 そんな代官を任命したのは国王なのです。
 王家王国を滅ぼさなければ、民が救われないと思われたのでしょう。

 それに、国王が義父上討伐を決断されたのです。
 王国騎士団徒士団と諸侯軍の大軍が、リトリア公爵領に向かって進行しています。
 しかも、その軍には、多くの民が無理矢理徴兵されているのです。
 このまま戦いになれば、無理矢理兵士にされた民が死ぬことになります。
 そんな事を、義兄上が黙ってみているわけがないのです。

「今の王家を滅ぼしてしまうと、月神様の契約加護が失われます。
 義兄上が建国王になる覚悟はおありですか?」

「俺が建国王だと?
 俺ごときが建国王になれるのか?
 俺が建国王になり、民を救うことができるのなら、どのような試練もうけよう」

 よかった!
 事前に月神様に確認してお願いしておいてよかった。

「多くの人身御供が必要になります。
 民を喰いモノしていた者達を全て殺し、冥界に送らなければいけません」

「望むところだ。
 万余の敵であろうと、殺し尽くして見せる」

「月神様聖女である私を妻にしなければいけませんよ」

「それは、むしろ長年の願いがかなって、望むところだよ。
 義理とはいえ妹で聖女のエルアへの想いを、ずっと押し殺していたからね。
 エルア、私と結婚して欲しい」

「はい、グレン様」

 よかった!
 片想いではなく両想いだったのです!
 嘘をついてしまいましたが、互いに遠慮していたことが分かったのですから、許されますよね。

 私とグレン様は、王家諸侯連合軍が公爵領に入る前に、民が戦争に巻き込まれて死傷する前に、全てを片付けることにしました。
 王家を皆殺しにすることにしたのです。
 月神様の加護を失った王都王城の守りなど、紙同然の薄さでした。
 人身御供を捧げて潜在能力が高まったグレン様に対抗できる者など、誰一人いませんでした。

 月神様への人身御供ですから、残虐な殺し方はせず、私は矢で心臓を射抜き、グレン様一刀で首を刎ねました。
 王族を皆殺しにして、急いで殺さなかった廷臣を連合軍に送り、グレン様が建国王になったこと、全ては月神様の指示であったことを伝えました。
 これから多くの人身御供を捧げなければいけませんが、私達が何もしなければ死んでいた民の数よりは少ないでしょう。
 それに、グレン様と結婚できるのなら、どのような犠牲も厭いません。
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