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第一章冒険者偏

偽勅命

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「絶対に嫌です。
 強制仕官の上に属性竜を徴発されるなんて、納得できません!」

「その通りだ、父上に兄上。
 幾らなんでも理不尽すぎる。
 本当にこれが皇帝陛下の命令なのか?
 前のように皇族や重臣が騙った偽勅じゃないのか?!」

 私の怒りを引き受けるかのように、ダニエルが父親と兄に噛みついていますが、一族で争うことになるのは不幸です。
 だからといって、今回の勅命に従う気はもうとうありません。
 ゲイツ家から受けた恩を忘れたわけではありませんが、だからといって、ドウラの死に直結する素材の挑発に応じる気はありません。

「父上、兄上、どうなさるつもりですか。
 家と団を割って皇室に忠誠を誓われますか?
 それとも家と団で一致団結して、新天地を目指しますか?」

 普段冷静で天才肌のイヴァンが、父親と兄に決断を迫ります。
 イヴァンも今回の勅命には従えないと考えているようです。
 それどころか、大陸を離れて新天地を目指す覚悟のようです。
 それを聞いて、私も覚悟が定まりました。
 今の私達なら、皇国にもこの大陸にもこだわる必要はありません。
 どこでだって生きていけるはずです。

「今徒士目付組頭として建白書を出している。
 今回の勅命は恐らく偽勅であろう。
 だが皇帝陛下の真意は分からん。
 拒否された時の事を考えて、偽勅という体裁を整えた可能性もある。
 皇室であろうと、属性竜は喉から手が出るほど欲しいだろうからな。
 だがはっきりと拒否すれば、無理強いはできないだろう。
 これを無理強いしたら、冒険者が狩りをしなくなる。
 その影響は、皇国を揺るがすほどの大騒動になるだろうからな」

 確かにジョージ様の言う通りでしょう。
 それくらいは私にだって分かります。
 食べるだけで身体強化すると分かった、亜竜種を狩れる現役冒険者は、ゲイツクランの冒険者だけです。
 完全に敵に回すわけにはいかないでしょう。

 十年前二十年前には、亜竜種を狩れた冒険者はいましたが、全員皇室に強制仕官させられています。
 最悪彼らに狩りをさせるという方法もありますが、現役を離れて十年以上経つので、以前と同じように亜竜種を狩れるとは限りません。
 特に二十年前に現役を離れた人達は、体力も精神力も低下しているでしょうから、勘を取り戻す前に死んでしまう可能性が高いです。

 それと、一番の問題は厄竜の再来です。
 十年ごとに現れるとしたら、そろそろ現れてもおかしくはないのです。
 皇都の護りを疎かにしてまで、強制仕官させた元冒険者に、本当に成功するかどうかわからない、狩りをさせるとは思えません。

「さて、ではこちらの要求をすり合わせておこうか」

 ジョージ様になにか考えがあるようです。
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