持参金が用意できない貧乏士族令嬢は、幼馴染に婚約解消を申し込み、家族のために冒険者になる。

第二章貴族偏

慣らし

「いや、凄いね。
　圧倒されてしまうよ」

「殿下。
　そんな事を口にされる暇があるのなら、少しでも手数を増やして下さい。
　止めはこちらで刺しますから、せめてもう少し強い魔獣を傷つけてください」

　ジョージ様がレオン第四皇子をたしなめられています。
　確かにもう少し早く成長して欲しいものです。
　せめて亜竜種から単独で逃げ切れるようになってくだされば、もっと奥地にまで属性竜を探しに入れるのです。
　そうすれば、三頭目の属性竜を発見して狩れる機会が倍増します。
　
「分かっているよ。
　せっかく皆が集めてくれた魔獣だ、無駄にはしないよ」

　そう言いながら、レオン第四皇子なりに頑張って魔獣を傷つけておらます。
　魔兎、魔鼠といった弱い魔獣なら、一撃で斃せるようになっておられます。
　魔狗、魔蛇といった魔獣も、独力で狩れるくらいには強くなっておられます。
　さすがに魔虎や魔熊といった強力な魔獣には、一人で立ち向かえないようです。
　ですがパーティーを組めば十分斃せる実力にはなっておられます。

　信じられないくらい急速な成長です。
　まあ、金と権力にものをいわせて、毎日亜竜種の肉や属性竜の肉を食べていて、食べるだけで徐々に身体強化されているからです。
　武器や装備も、属性竜素材で作られた、皇室秘蔵の攻撃力も防御力も桁外れの物で、その力も大きく関係しているでしょう。

　私達が無差別に多数の亜竜種と魔獣を狩る影響で、冒険者達が魔獣を狩れなくなり、魔獣の相場も大きく低下してしまいました。
　大魔境の周辺部まで、魔獣の数が激減してしまい、冒険者の魔獣との遭遇率が低下してしまいました。
　しかも市場に多数の魔獣が出された事で、相場が下がってしまったのです。
　とても申し訳ない話です。

　早くレオン第四皇子が、確実に亜竜種を傷つけられるようになってくれればいいのですが、なかなか難しいでしょう。
　本当はレベルのあった冒険者や家臣と組んで、確実に魔獣を狩った方が成長が早いと思うのですが、レオン第四皇子は私達から離れようとされません。
　私達が皇族以外の貴族を接触するのを防ぐためなので、しかたないのは理解できるのですが、つい苛立ちを感じてしまいます。

「そんな事、簡単な解決策があるではないか。
　それなりの冒険者なら、数が減り相場が下がっても生活はできるであろう。
　生活の出来ないような初心者は、ゲイツクランで抱えてやればいい。
　どうせゲイツ家の家臣になるのだ。
　なんならラナのホセイ家で召し抱えてやればいい。
　ホセイ家も城伯なのだから、領民はともかく、家臣は千人くらい必要だぞ」