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武田義信
河原者の諜報力の秘密
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『躑躅ヶ崎館 小人郭 修学館』
「いんいちがいち、いんにがに、いんさんがさん、いんしがし。。。。。。」
「ねがいましては、1なり3なり9なり。。。。。。」
難民から小人に取り立てた子供達が勉強している、表では武芸組が修練に励んでいるだろう。5年後10年後には、産まれながらの武士以上の戦士に成ってくれるとありがたい。そんな騒がしい中で、俺は小机に向かって戦略書を書いていた。何時前世の記憶が消えても好いように、前世の記憶が消えないように、重要と思えることは繰り返し思い出し、今後の戦略とその戦略を予定した根拠を書き示している。記憶を無くした俺が、戦略書を荒唐無稽と無視することの無いようにだ。
俺の最大の力は、山窩・河原者の力、彼らの信頼と言うか忠誠心だ。彼らは素破兼荷役として働いてくれている、その諜報力と商売力無くして今の俺は無いし、今後の戦略も成立しない。ではなぜ彼ら諜報能力が桁外れに他の忍びより突出しているのか。それは、道々の者同士の横の繋がりで、俺の為の情報が有利に手にはいるからだ。俺と争っている国衆や守護、いや寺社や公家に繋がっている道々の者ですら俺に情報を流してくれる。
戦国の国衆や守護、兵力を持つ寺社にとって、武具甲冑を作る材料の皮革は必要不可欠なものなのだが、皮を鞣す技術は河原者の独占技術であり、鞣しに必要な大量な水は河原に住まなければ手に入らない。皮革職人は戦力を持つ集団との交流が有り、城砦への出入りは頻繁に行われているのだ。だから、彼らを味方につければ兵力を持つ者の情報が手に入るのだ。
この時代でも牛馬に関しては極力食べないようにしていた、他の獣は食料不足で食べる事に成っても、農業に役立つ牛馬は先ずは売って銭に換え、その銭で食料を購入していた。では、寿命や事故で死んだ牛馬の遺骸はどうするのか?
俺の知っている江戸時代の史実では、徳川幕府領では農民が死んだ牛馬を捨てる場所が決められていて、その近くに住む河原者が埋葬した牛馬を掘り出し皮革製品を作っていた、 史実では、牛馬を捨てた農民が、埋葬した牛馬を河原者が掘り起こしたことを幕府訴訟しているが、幕府は牛馬の掘り起こしは河原者の権利と却下している。その影響か、俺の前世でも全国津々浦々に等間隔で河原者の里が有る、それは、鎖国政策で海外から皮革製品の輸入が限られたため、有限な皮を全て活用するための政策だ。
俺はこれが徳川幕府の独自の案では無いと考えていた、昔から有った習慣を法化したものだと考えていたが、やはりその通りであった、全国津々浦々の河原に住む皮革職人が牛馬を買い取り、革製品を作り売って暮らしていた。だから、彼らを味方につければ全国津々浦々の情報が手に入るのだ。
もう一つは、穢れと祟りの思想だ。俺の知る史実では、平安時代の貴族や僧侶は、遺体に触れると穢れると、埋葬などの全てを出入りの河原者にさせていた、僧侶の癖に御遺体に触ると穢れると考えていたとは腐ってやがる。ある貴族などは、伊勢行幸の随行が決まっていた為、病の家人女房を布団ごと河原者に河原に運ばせ、そこで死ぬまで放置したそうだ、屋敷内で死人が出れば穢れたことになり、伊勢随行が出来なくなるからだ。
戦国の世だから、当たり前に人が人を殺し、飢饉の時には人肉さえ食べられている、戦って討ち取った敵将の首を対面・物頭や諸奉行クラスの騎馬武者の首を検分する場合も、討ち取った武士の婦女子が、首の血や泥を洗い、髪を整え、死に化粧を施していた。穢れ思想も払拭されかけているが、高位で由緒ある所はまだ残っているようだし、河原者の出入りも続いている。だから、彼らを味方につければ由緒正しい場所の情報が手に入るのだ。
では何故彼らは俺を支持し忠誠を示してくれるのか、それは俺が偶然彼らを助けたからだ。祖母の教えと不完全な良心回路を持つ俺は、飢え死にする民を見殺しする事が出来ず、彼らと共に狩猟漁労を行った事が端緒だった。続々と集まる難民を全て受け入れ、先頭に立って食料集めを行った事で信頼が厚くなっていった。更に、難民達が開墾した土地を彼らの物にするため、信玄と命懸の交渉を行い勝ち取った事で信頼が増した。
次に全員を小人に取り立て身分を確立した、技術の有る者・手柄を立てたものを武士に取り立てた。遂には、攻め落として手に入れた城の城代に修験者を取り立て、道々の者だけが住む城を創りだした。道々の者が土地を持ち、城を預かり、城内が自分たちの里になったのだ。形の上では、城代であり預かっただけだが、叛旗を翻せば自分たちの物に成る可能性も有る。俺がその危険性を知ったうえで、彼らを信頼して城を預けたことで信頼が忠誠心になったのだろう。
俺はその後も増え続く難民の為に、手に入れた城や放棄された城を修築して道々の者だけの城、故郷を創りだした。これが決定打だったのだろう、最初は甲斐近隣だけの情報しか集まらなかったが、今では全国津々浦々の情報が簡単に手に入る。武田と敵対する勢力と長年繋がりが有り、義理が有る河原者も、武田ではなく俺になら極秘情報を流してくれるようになった。
道々の者を取り立て立身出世させる、俺への純粋な好意も有るなのだろうが、実利として俺の勢力下に入れば河原ではなく城内に住めるのだ、能力が有れば土地を持ち城代に成りあがる事も可能なのだ。実際城代の中には、手柄では無く職人としての能力で選ばれた者もいる。焼酎の杜氏などは全員郭の主に成ってる。
彼らの忠誠心をこれからも維持するための戦略を書き記して置こう。
『要害山城 焼酎郭』
俺は、杜氏とその一族弟子家族に城の一角、独立した郭全てを与えた、そこは焼酎郭と呼ばれるようになった。城内の水の手、一番水利の良い場所に有る郭を与えたのだ。その為、移動させられた者達の中には、不満を抱く者もいたようだが、ハレの日に完成した焼酎が下されたことで不満は解消された。焼酎郭には、杜氏屋敷・酒蔵・家人屋敷・弟子屋敷が建ち並んでいる。
「茂作、焼酎造りは順調か?」
「これは若殿さま、態々来られるなど何の御用でございますか?」
「焼酎造りを見たかったのと、分家を立てられる一門がいるのか聞きたくてな。」
「申し訳ありません、まだ独り立ちして杜氏を務められる者は居りません。」
「一人前の者が現れたら言ってくれ、別の城に郭を与えて武士格に取り立てよう。」
「有り難い御言葉、1日でも早く独り立ちできる者を育てます。」
「それと、焼酎造りには水が大切と聞く、儂や御屋形様の直領ならどこでも構わん、言ってくれればそこに城を建てて、御前達に郭を与えよう」
「有り難き幸せ、今暇を見ては探しております、見つかり次第御知らせに上がります。それと、焼酎を水増しした偽物が出回っておると噂で聞きましたが?」
「気にするな、茂作が造った焼酎の酒精が強く、水増ししても売れるからだ。」
「焼酎の評判が落ちませんでしょうか?」
「その恐れは有るが、そうなれば甲斐に赴いて直接買うか、儂に使者を出して送ってくれと頭を下げねば原酒が買えなくなる、それはそれで力に成る。」
「愚かなことを申しました、お忘れください。」
「気にするな、これからも美味い焼酎を造ってくれ。」
「は、御任せ下さい。」
さて、史実でも日本酒の水増しは当たり前に行われていたと読んだ。灘を出た酒は、江戸っ子が飲むまでに3倍にまで薄められたそうだ。各流通段階で少しづつ水増ししたと読んだ事がある、でなければ、江戸っ子が斗酒も飲めるはずがない。俺の知る時代のアルコール濃度は15度位だが、江戸時代は5度位だったようだ。それを考慮すれば、焼酎は4倍に水増しして半値売っても倍儲かる、やらない訳が無い
『躑躅ヶ崎館 善信私室』
さて、徐々に入って来た戦況を整理すると。
細川晴元伯父上の元に援軍として四国から来た三好勢は、安宅冬康・三好実休・十河一存の軍船500船、兵2万の大軍であったそうだ。
河越夜戦で勝利した北条氏康の元には、次々と臣従する者が現れているようだ。
滝山城の大石定久は、主君上杉憲政を見限って後北条氏に臣従したそうだ。その後、氏康の三男・氏照(7歳)を娘・比佐の婿養子として迎え入れて滝山城と武蔵守護代の座を譲り、入道して心月斎道俊と号し戸倉城に隠居したと知らせが入った。
天神山城を守っていた藤田重利も、北条氏康の攻撃を受けて降伏し、その家臣となったと知らせが入った。藤田重利も氏康の四男・乙千代丸(氏邦)に娘(大福御前)を娶らせ、藤田氏の家督を譲るそうだ。そして自らは用土城に居城を移し、用土に苗字を改めると噂もある。
はてさて、俺はどう動くべきか?転換点は決めているが、下手に動いたら史実通りの動きが無くなってしまうかもしれない。今のところ、大きな違いが無いようだが。。。。。。。
「いんいちがいち、いんにがに、いんさんがさん、いんしがし。。。。。。」
「ねがいましては、1なり3なり9なり。。。。。。」
難民から小人に取り立てた子供達が勉強している、表では武芸組が修練に励んでいるだろう。5年後10年後には、産まれながらの武士以上の戦士に成ってくれるとありがたい。そんな騒がしい中で、俺は小机に向かって戦略書を書いていた。何時前世の記憶が消えても好いように、前世の記憶が消えないように、重要と思えることは繰り返し思い出し、今後の戦略とその戦略を予定した根拠を書き示している。記憶を無くした俺が、戦略書を荒唐無稽と無視することの無いようにだ。
俺の最大の力は、山窩・河原者の力、彼らの信頼と言うか忠誠心だ。彼らは素破兼荷役として働いてくれている、その諜報力と商売力無くして今の俺は無いし、今後の戦略も成立しない。ではなぜ彼ら諜報能力が桁外れに他の忍びより突出しているのか。それは、道々の者同士の横の繋がりで、俺の為の情報が有利に手にはいるからだ。俺と争っている国衆や守護、いや寺社や公家に繋がっている道々の者ですら俺に情報を流してくれる。
戦国の国衆や守護、兵力を持つ寺社にとって、武具甲冑を作る材料の皮革は必要不可欠なものなのだが、皮を鞣す技術は河原者の独占技術であり、鞣しに必要な大量な水は河原に住まなければ手に入らない。皮革職人は戦力を持つ集団との交流が有り、城砦への出入りは頻繁に行われているのだ。だから、彼らを味方につければ兵力を持つ者の情報が手に入るのだ。
この時代でも牛馬に関しては極力食べないようにしていた、他の獣は食料不足で食べる事に成っても、農業に役立つ牛馬は先ずは売って銭に換え、その銭で食料を購入していた。では、寿命や事故で死んだ牛馬の遺骸はどうするのか?
俺の知っている江戸時代の史実では、徳川幕府領では農民が死んだ牛馬を捨てる場所が決められていて、その近くに住む河原者が埋葬した牛馬を掘り出し皮革製品を作っていた、 史実では、牛馬を捨てた農民が、埋葬した牛馬を河原者が掘り起こしたことを幕府訴訟しているが、幕府は牛馬の掘り起こしは河原者の権利と却下している。その影響か、俺の前世でも全国津々浦々に等間隔で河原者の里が有る、それは、鎖国政策で海外から皮革製品の輸入が限られたため、有限な皮を全て活用するための政策だ。
俺はこれが徳川幕府の独自の案では無いと考えていた、昔から有った習慣を法化したものだと考えていたが、やはりその通りであった、全国津々浦々の河原に住む皮革職人が牛馬を買い取り、革製品を作り売って暮らしていた。だから、彼らを味方につければ全国津々浦々の情報が手に入るのだ。
もう一つは、穢れと祟りの思想だ。俺の知る史実では、平安時代の貴族や僧侶は、遺体に触れると穢れると、埋葬などの全てを出入りの河原者にさせていた、僧侶の癖に御遺体に触ると穢れると考えていたとは腐ってやがる。ある貴族などは、伊勢行幸の随行が決まっていた為、病の家人女房を布団ごと河原者に河原に運ばせ、そこで死ぬまで放置したそうだ、屋敷内で死人が出れば穢れたことになり、伊勢随行が出来なくなるからだ。
戦国の世だから、当たり前に人が人を殺し、飢饉の時には人肉さえ食べられている、戦って討ち取った敵将の首を対面・物頭や諸奉行クラスの騎馬武者の首を検分する場合も、討ち取った武士の婦女子が、首の血や泥を洗い、髪を整え、死に化粧を施していた。穢れ思想も払拭されかけているが、高位で由緒ある所はまだ残っているようだし、河原者の出入りも続いている。だから、彼らを味方につければ由緒正しい場所の情報が手に入るのだ。
では何故彼らは俺を支持し忠誠を示してくれるのか、それは俺が偶然彼らを助けたからだ。祖母の教えと不完全な良心回路を持つ俺は、飢え死にする民を見殺しする事が出来ず、彼らと共に狩猟漁労を行った事が端緒だった。続々と集まる難民を全て受け入れ、先頭に立って食料集めを行った事で信頼が厚くなっていった。更に、難民達が開墾した土地を彼らの物にするため、信玄と命懸の交渉を行い勝ち取った事で信頼が増した。
次に全員を小人に取り立て身分を確立した、技術の有る者・手柄を立てたものを武士に取り立てた。遂には、攻め落として手に入れた城の城代に修験者を取り立て、道々の者だけが住む城を創りだした。道々の者が土地を持ち、城を預かり、城内が自分たちの里になったのだ。形の上では、城代であり預かっただけだが、叛旗を翻せば自分たちの物に成る可能性も有る。俺がその危険性を知ったうえで、彼らを信頼して城を預けたことで信頼が忠誠心になったのだろう。
俺はその後も増え続く難民の為に、手に入れた城や放棄された城を修築して道々の者だけの城、故郷を創りだした。これが決定打だったのだろう、最初は甲斐近隣だけの情報しか集まらなかったが、今では全国津々浦々の情報が簡単に手に入る。武田と敵対する勢力と長年繋がりが有り、義理が有る河原者も、武田ではなく俺になら極秘情報を流してくれるようになった。
道々の者を取り立て立身出世させる、俺への純粋な好意も有るなのだろうが、実利として俺の勢力下に入れば河原ではなく城内に住めるのだ、能力が有れば土地を持ち城代に成りあがる事も可能なのだ。実際城代の中には、手柄では無く職人としての能力で選ばれた者もいる。焼酎の杜氏などは全員郭の主に成ってる。
彼らの忠誠心をこれからも維持するための戦略を書き記して置こう。
『要害山城 焼酎郭』
俺は、杜氏とその一族弟子家族に城の一角、独立した郭全てを与えた、そこは焼酎郭と呼ばれるようになった。城内の水の手、一番水利の良い場所に有る郭を与えたのだ。その為、移動させられた者達の中には、不満を抱く者もいたようだが、ハレの日に完成した焼酎が下されたことで不満は解消された。焼酎郭には、杜氏屋敷・酒蔵・家人屋敷・弟子屋敷が建ち並んでいる。
「茂作、焼酎造りは順調か?」
「これは若殿さま、態々来られるなど何の御用でございますか?」
「焼酎造りを見たかったのと、分家を立てられる一門がいるのか聞きたくてな。」
「申し訳ありません、まだ独り立ちして杜氏を務められる者は居りません。」
「一人前の者が現れたら言ってくれ、別の城に郭を与えて武士格に取り立てよう。」
「有り難い御言葉、1日でも早く独り立ちできる者を育てます。」
「それと、焼酎造りには水が大切と聞く、儂や御屋形様の直領ならどこでも構わん、言ってくれればそこに城を建てて、御前達に郭を与えよう」
「有り難き幸せ、今暇を見ては探しております、見つかり次第御知らせに上がります。それと、焼酎を水増しした偽物が出回っておると噂で聞きましたが?」
「気にするな、茂作が造った焼酎の酒精が強く、水増ししても売れるからだ。」
「焼酎の評判が落ちませんでしょうか?」
「その恐れは有るが、そうなれば甲斐に赴いて直接買うか、儂に使者を出して送ってくれと頭を下げねば原酒が買えなくなる、それはそれで力に成る。」
「愚かなことを申しました、お忘れください。」
「気にするな、これからも美味い焼酎を造ってくれ。」
「は、御任せ下さい。」
さて、史実でも日本酒の水増しは当たり前に行われていたと読んだ。灘を出た酒は、江戸っ子が飲むまでに3倍にまで薄められたそうだ。各流通段階で少しづつ水増ししたと読んだ事がある、でなければ、江戸っ子が斗酒も飲めるはずがない。俺の知る時代のアルコール濃度は15度位だが、江戸時代は5度位だったようだ。それを考慮すれば、焼酎は4倍に水増しして半値売っても倍儲かる、やらない訳が無い
『躑躅ヶ崎館 善信私室』
さて、徐々に入って来た戦況を整理すると。
細川晴元伯父上の元に援軍として四国から来た三好勢は、安宅冬康・三好実休・十河一存の軍船500船、兵2万の大軍であったそうだ。
河越夜戦で勝利した北条氏康の元には、次々と臣従する者が現れているようだ。
滝山城の大石定久は、主君上杉憲政を見限って後北条氏に臣従したそうだ。その後、氏康の三男・氏照(7歳)を娘・比佐の婿養子として迎え入れて滝山城と武蔵守護代の座を譲り、入道して心月斎道俊と号し戸倉城に隠居したと知らせが入った。
天神山城を守っていた藤田重利も、北条氏康の攻撃を受けて降伏し、その家臣となったと知らせが入った。藤田重利も氏康の四男・乙千代丸(氏邦)に娘(大福御前)を娶らせ、藤田氏の家督を譲るそうだ。そして自らは用土城に居城を移し、用土に苗字を改めると噂もある。
はてさて、俺はどう動くべきか?転換点は決めているが、下手に動いたら史実通りの動きが無くなってしまうかもしれない。今のところ、大きな違いが無いようだが。。。。。。。
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