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第一章
第9話:ハンバーグと灰汁抜きと魔術
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転移2日目:山本光司(ミーツ)視点
バカ天使の話しでは、この世界では基本1日2食だそうだ。
穀物の栽培が安定せず、狩猟漁猟に頼っているからだろう。
特に内陸部では塩が貴重で、肉類を塩蔵できないのだろう。
「ネイ、お昼ご飯に戻るぞ」
だが俺は1日3食の習慣を破る気はない。
午前だけで大量の食肉を確保した俺に、食糧不足の心配は関係ない。
保存の問題も、亜空間で時を止めて保管できるから大丈夫だ。
まあ、それ以前に、亜空間スーパーがあるから狩りができなくても問題ない。
「は、い」
廃村の廃屋に戻った俺とネイは直ぐに昼飯にした。
ネイには昨日作っておいたポークハンバーグとスクランブルエッグを出す。
パン粉や片栗粉のつなぎは使わない、塩だけでつないだハンバーグだ。
「こ、れ、も、た、べ、る?」
ネイはスクランブルエッグだけを食べたいようだ。
やはり今まで食べてきた肉は不味かったのだろう。
「大丈夫だよ、美味しくなかったら残していいよ」
俺がそう言うと、渋々手づかみでハンバーグを食べだした。
口に入れるまでは渋々だったが、口に入れたとたん乏しい表情が喜びに変わる。
ちゃんと血抜きされた日本の食肉はとても美味しいのだ!
「お、い、し、い」
ネイがパクパクとハンバーグを食べている。
もしかしたら、生まれて初めて美味しい肉を食べたのかもしれない。
それくらいの勢いでハンバーグだけを食べている。
「たくさんあるからゆっくり食べなさい」
そうは言ったが、大ご馳走を食べるネイの勢いは止まらない。
危険な食事時間は、短くする習慣が身についているのかもしれない。
そんなネイを横目に俺も食事をする事にした。
薪でゆっくりと焼き上げたローストポークの数々。
モモ、ウデ、ロース、肩ロースの1kgブロックをナイフで切り分けていく。
ブロック肉はできるだけ大きな塊に喰らいつくのが美味しいのだ。
貧乏人の舌ではなく、心が美味しいと思える喰らい方で食べる。
喰らっている間に、狩猟中に食べる豚タンと豚ガツを一口大に切り分ける。
魔術の習熟度を上げるためには、できるだけ魔術を使わなければいけない。
魔術を使うためには、魔力を回復させなければいけない。
魔力を回復させるには、沢山食べてカロリーと栄養を補充しなければいけない。
「く、る、し、い」
一気に食べたから、胃の容量を上回るハンバーグを食べてしまったのだろう。
これくらいの歳の子にはありがちな事だ。
少なくとも俺は、成人してからも同じ過ちを何度も繰り返してきた。
「苦しかったら魔術を使ってみなさい。
失敗しても魔術を使ったらお腹が空くぞ」
難しい事を言ってもネイには理解できない。
それよりは、魔力を使ったらお腹が空いて、また美味しい物を食べられると思ってくれた方が良い。
「わ、かっ、た」
「俺の言う通りマネしなさい。
消化、ダイジェスチョン、吸収、アブソープション」
「しょ、う、か、ダ、イ、ジェ、ス、チョ、ン。
きゅ、う、しゅ、う、ア、ブ、ソー、プ、ショ、ン」
ネイが魔術を練習している間にゆっくりと食事をする。
食べ終わったら、ネイが気に入ってくれた豚挽き肉の大量購入だ。
10㎏単位で送料が増えるから、20kgを1万6500円で購入。
「ら、く」
食べ過ぎて苦しがっていたネイがすっきりとした表情になっている。
普通の人間には表情が乏し過ぎて分からないだろうが、俺には分かるのだ。
俺が食事を終えるまでの短時間に魔術の発動に成功したようだ。
バカ天使は、ネイの事を才能がないとか運が悪いとか言っていたが、やはりバカ天使の言う事など全く当てにならない。
アニメやラノベの常識から判断すると、かなりの才能があると思う。
この調子なら意外と早く独立してくれるかもしれない。
「だったら次は他の魔術を練習しよう。
温かくなれ、ウォーム」
俺はきれいにしたジャグジーを亜空間から取り出した。
汚水は魔術練習を兼ねてピュアを何度もかけてある。
ピュアで汚水を奇麗にできると分かった事は大発見だ。
「あ、た、た、か、く、な、れ、ウォ、ム」
ネイがウォームの練習をしている間に料理の作り置きだ。
ハンバーグが美味しいと知ったネイのために大量に作っておく。
煮込みハンバーグの方が子供向きなのだろうが、今はまだ塩胡椒だけだ。
煮込みハンバーグは、この世界にデミグラスソースやホワイトソースがあると分かってから作らないと、ネイの舌が肥え過ぎて不幸になってしまう。
いや、作り方を教えて料理で生活できるようにしてやった方が良いか?
「あ、た、た、か、く、な、れ、ウォー、ム」
大きなジャグジーを適温にまで温めるには、結構な魔力が必要だ。
ネイの魔術練習にはちょうどいい。
完全失敗したら魔力が減らないし、成功したら魔力を有効利用できる。
「あ、た、た、か、く、なれ、ウォー、ム」
何より大切なのが、言葉のリハビリだ。
人間嫌いの俺は、ネイとの会話が苦痛なのだ。
だが会話をしなければネイの言語能力は回復しない。
「あ、た、た、か、く、なれ、ウォー、ム」
魔術練習で呪文を唱える事で、ネイの言葉がスムーズになればいい。
何もしなければ霧散する魔力が活用できて、魔術の練習になって、言葉のリハビリにもなるのだから、一石三鳥と言えるのではないだろうか?
「あ、た、た、か、く、なれ、ウォー、ム」
「ステータス・オープン」
ネイの負担にならないように、料理を作りながらステータスも確認しておく。
MPが17/83になっている。
結構な回数魔術の発動に成功している。
ネイには魔術に失敗しても魔力を消費すると言ったが、それは嘘だ。
魔力を消費して失敗する事もあれば、消費する事もなく失敗する事もある。
ネイの状態を知るために小まめにステータス・オープンを使って分かった。
「よくやった、何度も魔術に成功しているぞ。
こんなに短時間で魔術を覚えられるのは凄い。
ネイには魔術師の才能が有るのかもしれない」
バカ天使は、俺に与える知識を前世の能力から換算していると言っていた。
前世の俺は偏った人間だったが、小説を書くために広く浅く色々調べ覚えている。
だから魔術に関する知識はもっと有って当然なのに!
あの腐れ神の事だから、氏神様と仏様の目を盗んで意地悪したのだろう。
自分の信徒以外は平気で虐殺する身勝手で残忍な神だからな。
まあ、社会常識や人付き合いが極端に劣っていた事は認めるが……
「……」
ネイの表情はほとんど変わらないが、うれしそうに照れている心が伝わってくる。
できる事なら、俺が使える魔術は全て教えてあげたい。
そう思うと同時に、できるだけ早く独りになりたい気持ちもある。
「次は魔術ではなく山菜を美味しく食べる為の灰汁抜きを教えるぞ。
ネイが集めてくれた山菜を使うからな」
俺は買っておいた陶器の壺を亜空間から出す。
内容量9リットルの漬物甕を100個49万5000円で買っておいたのだ。
プラスチック製が使えるなら、40リットルを1616円で買える。
木製なら18リットルを8139円で買える。
だが木製もタガの部分がプラスチック製なので、この世界では使えない。
「は、い」
自分の集めた山菜が使われる。
自分が役に立てている。
ネイにはそれがうれしいようだ。
「灰汁抜きにはいくつかの方法があるが、簡単なのは水に浸けておく、熱湯で茹でる、米ぬか、米のとぎ汁、重曹のどれかを加えて煮るだ。
だがここに米ぬか、米のとぎ汁、重曹はない」
俺がそう言うと、ネイが何も分からないと言う表情をする。
「分からなくても大丈夫だぞ。
これから実際にやって見せるからな」
ネイが集めてくれた27種の山菜の内、水に浸けるだけで大丈夫な山菜と、熱湯で茹でるだけで大丈夫な山菜を処理してみせる。
「試しに食べて見なさい」
「お、い、し、い」
これまでは料理をする道具がないから、生で食べていたのだろう。
山菜を生で食べたら苦くて美味しくないのは当然だ。
それでも生きるために食べていたのだろう。
「これから何度も練習してもらうから、1度で覚えなくてもいいぞ」
「は、い」
「火を使った時に出る灰を使った灰汁抜きをやって見せるぞ。
何度失敗してもいいから同じようにやればいいぞ」
「は、い」
俺がやって見せた後で1度やらせる。
「次に火を使った時にできる炭を使った灰汁抜きを教えるぞ」
「は、い」
俺がやって見せた後で1度やらせる。
1度やらせただけで覚えられるはずがない。
ましていくつも同時に覚えさせているのだから当然混乱する。
「最後に塩漬けしたら灰汁が抜ける山菜を教えるぞ。
塩漬けしたら長期間保存できるし、雨が降っても猟に失敗しても大丈夫になるから、できるだけ練習して覚えような」
「は、い」
ネイが集めた山菜で、他の灰汁抜きで使わなかったモノを全て塩蔵する。
そのために100個もの陶器甕を購入して廃屋に置いてあるのだ。
この辺が内陸部で塩が手に入り難いのなら、灰塩の作り方を教えればいい。
「疲れたのならお昼寝しなさい。
起きたらまた魔術の練習をしてもらうから、寝られる時に寝ておきなさい」
次々と新しい事をやらされるから、疲れるのは当然だ。
これくらいの歳の子なら、寝る事が仕事と言ってももいいくらいだ。
やらせている俺が言うのもおかしいが、俺自身が矛盾しているからしかたがない。
「バカ天使、この子に危険が近づかないように見張っていろ」
ウレタンマットの上でスヤスヤと眠るネイをバカ天使に任せる。
俺が廃村の周囲にいるから大丈夫だとは思うが、ラノベやアニメの世界では、亜空間から現れる敵もいるから油断できない。
「ファイア・ストーム」
森の破壊に各属性魔術を使うと木々や岩が痛んでしまう事がある。
収納して販売する事を考えると値下がりの危険がある。
だが少々の値下がりよりも魔術の習熟度を上げる方が大切だ。
「収納、ストレージ」
俺が森を破壊した事で散乱している木々や岩、土砂を収納した。
将来畑として使えるように、小石や木の根まで結構丁寧に収納した。
俺には亜空間スーパーがあるので不要だが、ネイには必要になるかもしれない。
「エア・ランス、エア・ソード、エア・アロー、エア・ランス……」
獣も午前中と同じように狩った。
換金可能な商品は多ければ多いほどいい。
ネイが町や村で暮らしたいと言った時にお金が必要になる。
「光司さん、狼です、ウルフです、肉食獣の群れが近づいてきます!」
何で廃村の周囲の事に気を使っているバカ天使?!
俺はネイを護っていろと言っておいたはずだぞ!
怒りたいが、俺に先んじて危険を察知してくれたので怒るに怒れない。
「何頭くらいの群れだ?!」
「軽く千頭は越えています。
信じられないくらい大きな群れです。
これほどの群れなのに、強大なリーダーがいません。
光司さんの魔術が放つ轟音に危機感を感じて集まったのかもしれません」
バカ天使の言っている事が本当だとすると、全ての責任は俺にある。
ネイを巻き込むわけにはいかない。
かと言って今のネイを放り出す事もできない。
「バカ天使、ウルフが破壊出来ないような壁や天井を創り出す魔術はあるのか?」
「創造魔術では時間も魔力も足らないと思います。
召喚魔術と強化魔術で強固に圧縮した、壁や屋根を作った方が良いです」
「分かった。
土圧縮強化壁、ソイル・コンプレッション・エンチャント・ウォール。
土圧縮強化屋根、ソイル・コンプレッション・エンチャント・ルーフ」
俺はまず廃屋を守るための壁と屋根を創り出した。
「消化吸収、ダイジェスチョン・アブソープション」
飲み食いしては消化吸収する。
「魔力回復、マジック・リカバリー。
土圧縮強化壁、ソイル・コンプレッション・エンチャント・ウォール。
土圧縮強化屋根、ソイル・コンプレッション・エンチャント・ルーフ」
魔力を回復させては廃村全体を護る壁と屋根を造る。
必要な魔力量は膨大で、買いためておいたスポーツ飲料や、作り置きしていた肉料理だけでは足らないくらいだった。
「光司様、ウルフに周囲を囲まれています。
一斉に襲って強い光司様を狩るつもりです!」
バカ天使の話しでは、この世界では基本1日2食だそうだ。
穀物の栽培が安定せず、狩猟漁猟に頼っているからだろう。
特に内陸部では塩が貴重で、肉類を塩蔵できないのだろう。
「ネイ、お昼ご飯に戻るぞ」
だが俺は1日3食の習慣を破る気はない。
午前だけで大量の食肉を確保した俺に、食糧不足の心配は関係ない。
保存の問題も、亜空間で時を止めて保管できるから大丈夫だ。
まあ、それ以前に、亜空間スーパーがあるから狩りができなくても問題ない。
「は、い」
廃村の廃屋に戻った俺とネイは直ぐに昼飯にした。
ネイには昨日作っておいたポークハンバーグとスクランブルエッグを出す。
パン粉や片栗粉のつなぎは使わない、塩だけでつないだハンバーグだ。
「こ、れ、も、た、べ、る?」
ネイはスクランブルエッグだけを食べたいようだ。
やはり今まで食べてきた肉は不味かったのだろう。
「大丈夫だよ、美味しくなかったら残していいよ」
俺がそう言うと、渋々手づかみでハンバーグを食べだした。
口に入れるまでは渋々だったが、口に入れたとたん乏しい表情が喜びに変わる。
ちゃんと血抜きされた日本の食肉はとても美味しいのだ!
「お、い、し、い」
ネイがパクパクとハンバーグを食べている。
もしかしたら、生まれて初めて美味しい肉を食べたのかもしれない。
それくらいの勢いでハンバーグだけを食べている。
「たくさんあるからゆっくり食べなさい」
そうは言ったが、大ご馳走を食べるネイの勢いは止まらない。
危険な食事時間は、短くする習慣が身についているのかもしれない。
そんなネイを横目に俺も食事をする事にした。
薪でゆっくりと焼き上げたローストポークの数々。
モモ、ウデ、ロース、肩ロースの1kgブロックをナイフで切り分けていく。
ブロック肉はできるだけ大きな塊に喰らいつくのが美味しいのだ。
貧乏人の舌ではなく、心が美味しいと思える喰らい方で食べる。
喰らっている間に、狩猟中に食べる豚タンと豚ガツを一口大に切り分ける。
魔術の習熟度を上げるためには、できるだけ魔術を使わなければいけない。
魔術を使うためには、魔力を回復させなければいけない。
魔力を回復させるには、沢山食べてカロリーと栄養を補充しなければいけない。
「く、る、し、い」
一気に食べたから、胃の容量を上回るハンバーグを食べてしまったのだろう。
これくらいの歳の子にはありがちな事だ。
少なくとも俺は、成人してからも同じ過ちを何度も繰り返してきた。
「苦しかったら魔術を使ってみなさい。
失敗しても魔術を使ったらお腹が空くぞ」
難しい事を言ってもネイには理解できない。
それよりは、魔力を使ったらお腹が空いて、また美味しい物を食べられると思ってくれた方が良い。
「わ、かっ、た」
「俺の言う通りマネしなさい。
消化、ダイジェスチョン、吸収、アブソープション」
「しょ、う、か、ダ、イ、ジェ、ス、チョ、ン。
きゅ、う、しゅ、う、ア、ブ、ソー、プ、ショ、ン」
ネイが魔術を練習している間にゆっくりと食事をする。
食べ終わったら、ネイが気に入ってくれた豚挽き肉の大量購入だ。
10㎏単位で送料が増えるから、20kgを1万6500円で購入。
「ら、く」
食べ過ぎて苦しがっていたネイがすっきりとした表情になっている。
普通の人間には表情が乏し過ぎて分からないだろうが、俺には分かるのだ。
俺が食事を終えるまでの短時間に魔術の発動に成功したようだ。
バカ天使は、ネイの事を才能がないとか運が悪いとか言っていたが、やはりバカ天使の言う事など全く当てにならない。
アニメやラノベの常識から判断すると、かなりの才能があると思う。
この調子なら意外と早く独立してくれるかもしれない。
「だったら次は他の魔術を練習しよう。
温かくなれ、ウォーム」
俺はきれいにしたジャグジーを亜空間から取り出した。
汚水は魔術練習を兼ねてピュアを何度もかけてある。
ピュアで汚水を奇麗にできると分かった事は大発見だ。
「あ、た、た、か、く、な、れ、ウォ、ム」
ネイがウォームの練習をしている間に料理の作り置きだ。
ハンバーグが美味しいと知ったネイのために大量に作っておく。
煮込みハンバーグの方が子供向きなのだろうが、今はまだ塩胡椒だけだ。
煮込みハンバーグは、この世界にデミグラスソースやホワイトソースがあると分かってから作らないと、ネイの舌が肥え過ぎて不幸になってしまう。
いや、作り方を教えて料理で生活できるようにしてやった方が良いか?
「あ、た、た、か、く、な、れ、ウォー、ム」
大きなジャグジーを適温にまで温めるには、結構な魔力が必要だ。
ネイの魔術練習にはちょうどいい。
完全失敗したら魔力が減らないし、成功したら魔力を有効利用できる。
「あ、た、た、か、く、なれ、ウォー、ム」
何より大切なのが、言葉のリハビリだ。
人間嫌いの俺は、ネイとの会話が苦痛なのだ。
だが会話をしなければネイの言語能力は回復しない。
「あ、た、た、か、く、なれ、ウォー、ム」
魔術練習で呪文を唱える事で、ネイの言葉がスムーズになればいい。
何もしなければ霧散する魔力が活用できて、魔術の練習になって、言葉のリハビリにもなるのだから、一石三鳥と言えるのではないだろうか?
「あ、た、た、か、く、なれ、ウォー、ム」
「ステータス・オープン」
ネイの負担にならないように、料理を作りながらステータスも確認しておく。
MPが17/83になっている。
結構な回数魔術の発動に成功している。
ネイには魔術に失敗しても魔力を消費すると言ったが、それは嘘だ。
魔力を消費して失敗する事もあれば、消費する事もなく失敗する事もある。
ネイの状態を知るために小まめにステータス・オープンを使って分かった。
「よくやった、何度も魔術に成功しているぞ。
こんなに短時間で魔術を覚えられるのは凄い。
ネイには魔術師の才能が有るのかもしれない」
バカ天使は、俺に与える知識を前世の能力から換算していると言っていた。
前世の俺は偏った人間だったが、小説を書くために広く浅く色々調べ覚えている。
だから魔術に関する知識はもっと有って当然なのに!
あの腐れ神の事だから、氏神様と仏様の目を盗んで意地悪したのだろう。
自分の信徒以外は平気で虐殺する身勝手で残忍な神だからな。
まあ、社会常識や人付き合いが極端に劣っていた事は認めるが……
「……」
ネイの表情はほとんど変わらないが、うれしそうに照れている心が伝わってくる。
できる事なら、俺が使える魔術は全て教えてあげたい。
そう思うと同時に、できるだけ早く独りになりたい気持ちもある。
「次は魔術ではなく山菜を美味しく食べる為の灰汁抜きを教えるぞ。
ネイが集めてくれた山菜を使うからな」
俺は買っておいた陶器の壺を亜空間から出す。
内容量9リットルの漬物甕を100個49万5000円で買っておいたのだ。
プラスチック製が使えるなら、40リットルを1616円で買える。
木製なら18リットルを8139円で買える。
だが木製もタガの部分がプラスチック製なので、この世界では使えない。
「は、い」
自分の集めた山菜が使われる。
自分が役に立てている。
ネイにはそれがうれしいようだ。
「灰汁抜きにはいくつかの方法があるが、簡単なのは水に浸けておく、熱湯で茹でる、米ぬか、米のとぎ汁、重曹のどれかを加えて煮るだ。
だがここに米ぬか、米のとぎ汁、重曹はない」
俺がそう言うと、ネイが何も分からないと言う表情をする。
「分からなくても大丈夫だぞ。
これから実際にやって見せるからな」
ネイが集めてくれた27種の山菜の内、水に浸けるだけで大丈夫な山菜と、熱湯で茹でるだけで大丈夫な山菜を処理してみせる。
「試しに食べて見なさい」
「お、い、し、い」
これまでは料理をする道具がないから、生で食べていたのだろう。
山菜を生で食べたら苦くて美味しくないのは当然だ。
それでも生きるために食べていたのだろう。
「これから何度も練習してもらうから、1度で覚えなくてもいいぞ」
「は、い」
「火を使った時に出る灰を使った灰汁抜きをやって見せるぞ。
何度失敗してもいいから同じようにやればいいぞ」
「は、い」
俺がやって見せた後で1度やらせる。
「次に火を使った時にできる炭を使った灰汁抜きを教えるぞ」
「は、い」
俺がやって見せた後で1度やらせる。
1度やらせただけで覚えられるはずがない。
ましていくつも同時に覚えさせているのだから当然混乱する。
「最後に塩漬けしたら灰汁が抜ける山菜を教えるぞ。
塩漬けしたら長期間保存できるし、雨が降っても猟に失敗しても大丈夫になるから、できるだけ練習して覚えような」
「は、い」
ネイが集めた山菜で、他の灰汁抜きで使わなかったモノを全て塩蔵する。
そのために100個もの陶器甕を購入して廃屋に置いてあるのだ。
この辺が内陸部で塩が手に入り難いのなら、灰塩の作り方を教えればいい。
「疲れたのならお昼寝しなさい。
起きたらまた魔術の練習をしてもらうから、寝られる時に寝ておきなさい」
次々と新しい事をやらされるから、疲れるのは当然だ。
これくらいの歳の子なら、寝る事が仕事と言ってももいいくらいだ。
やらせている俺が言うのもおかしいが、俺自身が矛盾しているからしかたがない。
「バカ天使、この子に危険が近づかないように見張っていろ」
ウレタンマットの上でスヤスヤと眠るネイをバカ天使に任せる。
俺が廃村の周囲にいるから大丈夫だとは思うが、ラノベやアニメの世界では、亜空間から現れる敵もいるから油断できない。
「ファイア・ストーム」
森の破壊に各属性魔術を使うと木々や岩が痛んでしまう事がある。
収納して販売する事を考えると値下がりの危険がある。
だが少々の値下がりよりも魔術の習熟度を上げる方が大切だ。
「収納、ストレージ」
俺が森を破壊した事で散乱している木々や岩、土砂を収納した。
将来畑として使えるように、小石や木の根まで結構丁寧に収納した。
俺には亜空間スーパーがあるので不要だが、ネイには必要になるかもしれない。
「エア・ランス、エア・ソード、エア・アロー、エア・ランス……」
獣も午前中と同じように狩った。
換金可能な商品は多ければ多いほどいい。
ネイが町や村で暮らしたいと言った時にお金が必要になる。
「光司さん、狼です、ウルフです、肉食獣の群れが近づいてきます!」
何で廃村の周囲の事に気を使っているバカ天使?!
俺はネイを護っていろと言っておいたはずだぞ!
怒りたいが、俺に先んじて危険を察知してくれたので怒るに怒れない。
「何頭くらいの群れだ?!」
「軽く千頭は越えています。
信じられないくらい大きな群れです。
これほどの群れなのに、強大なリーダーがいません。
光司さんの魔術が放つ轟音に危機感を感じて集まったのかもしれません」
バカ天使の言っている事が本当だとすると、全ての責任は俺にある。
ネイを巻き込むわけにはいかない。
かと言って今のネイを放り出す事もできない。
「バカ天使、ウルフが破壊出来ないような壁や天井を創り出す魔術はあるのか?」
「創造魔術では時間も魔力も足らないと思います。
召喚魔術と強化魔術で強固に圧縮した、壁や屋根を作った方が良いです」
「分かった。
土圧縮強化壁、ソイル・コンプレッション・エンチャント・ウォール。
土圧縮強化屋根、ソイル・コンプレッション・エンチャント・ルーフ」
俺はまず廃屋を守るための壁と屋根を創り出した。
「消化吸収、ダイジェスチョン・アブソープション」
飲み食いしては消化吸収する。
「魔力回復、マジック・リカバリー。
土圧縮強化壁、ソイル・コンプレッション・エンチャント・ウォール。
土圧縮強化屋根、ソイル・コンプレッション・エンチャント・ルーフ」
魔力を回復させては廃村全体を護る壁と屋根を造る。
必要な魔力量は膨大で、買いためておいたスポーツ飲料や、作り置きしていた肉料理だけでは足らないくらいだった。
「光司様、ウルフに周囲を囲まれています。
一斉に襲って強い光司様を狩るつもりです!」
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貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
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