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第一章
第3話:復讐成功の前提条件
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リジィ王国暦200年5月6日:王都ロッシ侯爵家屋敷
アリアは心配する父親を説得して全てを聞かせてもらった。
胡散臭い叡智の英霊の話は信用できないが、生まれた時から慈しんでくれた父親の話なら信用できる。
何度も聞き返し、質問も繰り返して、疑いようのない婚約者と親友と乳姉の裏切りを聞き終えたのは、日付が変わって1時間も経った頃だった。
「遅い時間までありがとうございました」
「いや、疑いを持ったら聞かずにはおられないだろう。
真実を知りたくて、眠ってなどいられないのも分かる。
怒りと悔しさで、眠気など吹き飛んでしまうのも分かる。
だが、相手は王太子だ。
悔しいが、家門に裏切られては戦いようがない。
もうこの国の社交界にはかかわらず、心静かに暮らしていこう」
為す術もなく家を没落させられ、5年間で諦めの境地に至った父親にそう言われても、たった今聞かされたばかりのアリアの怒りは収まらなかった。
だが、将来の王妃として帝王学を叩き込まれたアリアだ。
急激に年老い、やつれ果てた父親に厳しい事は言わない。
もう1度頑張りましょう等とも言わない。
疲れ果ててしまった父親に頼ることなく、自分の力だけで復讐しようと考えた。
「分かりましたわ。
5年間眠っていたのなら、私はもう23歳。
侯爵令嬢としての婚期は過ぎてしまっています。
嘲笑われるのが分かっていて、社交界に復帰する気はありません。
お父様が守られた領地に隠棲する事も考えてみます」
そう言ってアリアは自室に戻った。
(叡智の精霊殿、本当の事を教えてくださり、ありがとうございました)
アリアは自室に戻ると直ぐに心の中で念じた。
(礼には及ばんよ。
聖なる者が邪悪なモノに害されるのが気に食わなかっただけだ。
それに、礼を言うなら助けてやった事に感謝しろ。
あの毒は俺様でなければ死を免れないほどの邪悪な呪毒だったぞ)
(私が助かったのは叡智の精霊殿のお陰だったのですね。
お礼が遅れたばかりか、命の恩人を疑うような事を言ってしまいました。
本当に申し訳ありませんでした)
(気にするな。
それよりも俺様に正義が勝つ姿を見せるのだ。
そのためにこのタイミングで目覚めさせてやったのだ)
(このタイミングで目覚めさせてくださった?
直ぐに目覚めさせてくださらなかったのは、我が家だけでは王太子に勝てないからですか?)
(そうだ。
せっかく助けてやったのに、直ぐに殺されては何にもならない。
忌々しい決まりだが、強大な力を持つ神や精霊は、直接この世界に係わってはいけない事になっているのだ。
王太子だけでも、人間という矮小な存在のなかでは強い力を持っているが、アリアを毒殺してロッシ侯爵家を陥れるのを、王も黙認していたのだ。
そうでなければ、あれほど見え見えの悪事が処罰されない訳がないだろう)
(まさか、国王陛下まで加担されていたのですか?!)
(あの曲者が、直接手を下すわけがなかろう。
あの者は、この国で1番力を持っていたアリアの父親を邪魔だと思っていた。
いや、恐れていたと言ってもいい。
だから直接陰謀には加担せず、知っていて見逃していたのだ)
(……まさか、王太子の計画が失敗した時は、見殺しにする気だったのですか?!)
(そうだ、実の息子であろうと平気で見殺しにする。
あ奴はそう言う冷酷な性格なのだ)
(よくご存じなのですね。
何か係わりがおありなのですか?)
(あのような邪悪なモノと係わりなどない。
だが、俺様は叡智の精霊なのだ。
大嫌いな相手であろうと、全てを見通すことができる。
普段は、手出しが禁じられている邪悪で矮小な人間とは極力係わらないようにしている。
だが今回は、アリアを救ったから、復讐の対象になりそうなモノは全て調べておいたのだ)
(私の為に色々としてくださっていたのですね。
感謝の言葉もありません)
(気にするな、俺様が好きでやった事だ。
とはいえ、腹立たしい事に、神々の盟約で直接の介入が禁じられている。
俺様にできるのは助言だけだ)
(十分でございます。
叡智の精霊様に選ばれた者に相応しい復讐をお見せします)
(よくぞ申した!
気持ちの良くなるような復讐を期待しているぞ)
(はい!
話は戻りますが、このタイミングで目覚めさせてくださった理由を教えください)
(先ほども言ったが、この家だけでは勝てない。
だったらどうすればいいと思う?)
(独力で勝てないのなら、協力者を手に入れる、ですか?)
(そうだ、敵に勝てるだけの力を持った者に協力させればいい。
ただ、そのような力を持った者は滅多におらぬ。
力だけあっても、正義の心を持っていなければ助けてはくれぬ。
強大な力と正義の心を持つ者を待つのに5年かかったのだ)
(その方はどこにおられるのですか?)
(もう直ぐ屋敷の近くを通る。
その時に自殺に見せかけて水路に飛び込むのだ)
(自殺を自作自演しろと申されるのですか?!
正義の心を持った方を騙せと申されるのですか?!)
(人聞きの悪い事を申すな。
騙すのではない、試すのだ。
本当に正義の心を持っているのかを確かめる為に、命を賭けるのだ)
(……全てを見通すと申されたのは嘘だったのですか?)
(嘘ではない、旅人が正義の心を持っているのは本当だ。
だが、俺様が係わっている事は、アリア以外には知られない方が良い。
それに、何かの拍子に、なぜ自分に話を持ち掛けたと言われたらどうする?
俺様の事を話しても信じてもらえないぞ。
酷い悪戯をする妖精と勘違いされては全てがぶち壊しだぞ)
(そうですわよね、心に話しかけて頂いている私でも、最初は全然信じられませんでしたから、何の証拠もなくお話ししても信じてもらえないでしょうね)
(そうだ、だから、正義の心の有る方を探して、試すような事をして申し訳なかったが、命懸けで水路に飛び込むような事をしたのだと言うのだ。
もっとも、疑われない限り話さなくてもいい事だ。
最初は婚約者と親友、乳姉にまで裏切られ、毒殺されたのを儚んで、思わず発作的に水路に飛び込んでしまったと言えばいい)
(分かりました、そうさせていただきます)
アリアは心配する父親を説得して全てを聞かせてもらった。
胡散臭い叡智の英霊の話は信用できないが、生まれた時から慈しんでくれた父親の話なら信用できる。
何度も聞き返し、質問も繰り返して、疑いようのない婚約者と親友と乳姉の裏切りを聞き終えたのは、日付が変わって1時間も経った頃だった。
「遅い時間までありがとうございました」
「いや、疑いを持ったら聞かずにはおられないだろう。
真実を知りたくて、眠ってなどいられないのも分かる。
怒りと悔しさで、眠気など吹き飛んでしまうのも分かる。
だが、相手は王太子だ。
悔しいが、家門に裏切られては戦いようがない。
もうこの国の社交界にはかかわらず、心静かに暮らしていこう」
為す術もなく家を没落させられ、5年間で諦めの境地に至った父親にそう言われても、たった今聞かされたばかりのアリアの怒りは収まらなかった。
だが、将来の王妃として帝王学を叩き込まれたアリアだ。
急激に年老い、やつれ果てた父親に厳しい事は言わない。
もう1度頑張りましょう等とも言わない。
疲れ果ててしまった父親に頼ることなく、自分の力だけで復讐しようと考えた。
「分かりましたわ。
5年間眠っていたのなら、私はもう23歳。
侯爵令嬢としての婚期は過ぎてしまっています。
嘲笑われるのが分かっていて、社交界に復帰する気はありません。
お父様が守られた領地に隠棲する事も考えてみます」
そう言ってアリアは自室に戻った。
(叡智の精霊殿、本当の事を教えてくださり、ありがとうございました)
アリアは自室に戻ると直ぐに心の中で念じた。
(礼には及ばんよ。
聖なる者が邪悪なモノに害されるのが気に食わなかっただけだ。
それに、礼を言うなら助けてやった事に感謝しろ。
あの毒は俺様でなければ死を免れないほどの邪悪な呪毒だったぞ)
(私が助かったのは叡智の精霊殿のお陰だったのですね。
お礼が遅れたばかりか、命の恩人を疑うような事を言ってしまいました。
本当に申し訳ありませんでした)
(気にするな。
それよりも俺様に正義が勝つ姿を見せるのだ。
そのためにこのタイミングで目覚めさせてやったのだ)
(このタイミングで目覚めさせてくださった?
直ぐに目覚めさせてくださらなかったのは、我が家だけでは王太子に勝てないからですか?)
(そうだ。
せっかく助けてやったのに、直ぐに殺されては何にもならない。
忌々しい決まりだが、強大な力を持つ神や精霊は、直接この世界に係わってはいけない事になっているのだ。
王太子だけでも、人間という矮小な存在のなかでは強い力を持っているが、アリアを毒殺してロッシ侯爵家を陥れるのを、王も黙認していたのだ。
そうでなければ、あれほど見え見えの悪事が処罰されない訳がないだろう)
(まさか、国王陛下まで加担されていたのですか?!)
(あの曲者が、直接手を下すわけがなかろう。
あの者は、この国で1番力を持っていたアリアの父親を邪魔だと思っていた。
いや、恐れていたと言ってもいい。
だから直接陰謀には加担せず、知っていて見逃していたのだ)
(……まさか、王太子の計画が失敗した時は、見殺しにする気だったのですか?!)
(そうだ、実の息子であろうと平気で見殺しにする。
あ奴はそう言う冷酷な性格なのだ)
(よくご存じなのですね。
何か係わりがおありなのですか?)
(あのような邪悪なモノと係わりなどない。
だが、俺様は叡智の精霊なのだ。
大嫌いな相手であろうと、全てを見通すことができる。
普段は、手出しが禁じられている邪悪で矮小な人間とは極力係わらないようにしている。
だが今回は、アリアを救ったから、復讐の対象になりそうなモノは全て調べておいたのだ)
(私の為に色々としてくださっていたのですね。
感謝の言葉もありません)
(気にするな、俺様が好きでやった事だ。
とはいえ、腹立たしい事に、神々の盟約で直接の介入が禁じられている。
俺様にできるのは助言だけだ)
(十分でございます。
叡智の精霊様に選ばれた者に相応しい復讐をお見せします)
(よくぞ申した!
気持ちの良くなるような復讐を期待しているぞ)
(はい!
話は戻りますが、このタイミングで目覚めさせてくださった理由を教えください)
(先ほども言ったが、この家だけでは勝てない。
だったらどうすればいいと思う?)
(独力で勝てないのなら、協力者を手に入れる、ですか?)
(そうだ、敵に勝てるだけの力を持った者に協力させればいい。
ただ、そのような力を持った者は滅多におらぬ。
力だけあっても、正義の心を持っていなければ助けてはくれぬ。
強大な力と正義の心を持つ者を待つのに5年かかったのだ)
(その方はどこにおられるのですか?)
(もう直ぐ屋敷の近くを通る。
その時に自殺に見せかけて水路に飛び込むのだ)
(自殺を自作自演しろと申されるのですか?!
正義の心を持った方を騙せと申されるのですか?!)
(人聞きの悪い事を申すな。
騙すのではない、試すのだ。
本当に正義の心を持っているのかを確かめる為に、命を賭けるのだ)
(……全てを見通すと申されたのは嘘だったのですか?)
(嘘ではない、旅人が正義の心を持っているのは本当だ。
だが、俺様が係わっている事は、アリア以外には知られない方が良い。
それに、何かの拍子に、なぜ自分に話を持ち掛けたと言われたらどうする?
俺様の事を話しても信じてもらえないぞ。
酷い悪戯をする妖精と勘違いされては全てがぶち壊しだぞ)
(そうですわよね、心に話しかけて頂いている私でも、最初は全然信じられませんでしたから、何の証拠もなくお話ししても信じてもらえないでしょうね)
(そうだ、だから、正義の心の有る方を探して、試すような事をして申し訳なかったが、命懸けで水路に飛び込むような事をしたのだと言うのだ。
もっとも、疑われない限り話さなくてもいい事だ。
最初は婚約者と親友、乳姉にまで裏切られ、毒殺されたのを儚んで、思わず発作的に水路に飛び込んでしまったと言えばいい)
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