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第一章
第5話:大陸連合魔道学院
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リジィ王国暦200年5月7日:王都ロッシ侯爵家屋敷
気絶した振りをしているアリアは忸怩たる想いだった。
自作自演の入水自殺なのに、ためらう素振りなど全くなく水路に飛び込んで助けてくださった方を、騙し続けなければいけなかった。
ただ、本当は騙せていなかった。
若者は、アリアが気絶した振りをしているのに気がついていた。
それでも力ある者の責任として、弱者を助けようとしていただけだった。
若者にも多くの事情があり、命を狙われる事も多い。
アリアが刺客の可能性もあったのに、危険を顧みることなく助けた。
本当に困っている人を見殺しにするくらいなら、自らの命を危険に晒すのを厭わない、本当の騎士道精神に溢れた行動だった。
だが、若者は単なるお人好しではない。
28年の人生で何度も死線を潜り抜けている。
それだけに、ロッシ侯爵屋敷の現状には色々と想像できた。
想像して対策を考え、何があっても対処できると判断しているからこそ、威風堂々とした態度でいられたのだ。
「不躾な事をお聞きしますが、お嬢様が自殺を図られた原因は分かりますか?
原因を理解して対処しなければ、また同じ事が起こってしまいます。
偶然ではありますが、私も巻き込まれてしまいました。
また自殺されるかもしれないと思いながら出ていくのは嫌なのです。
全てを話して頂けませんか?
もしかしたら自殺の原因を取り除けるかもしれません」
若者は思っている事を一気に話した。
そうしなければ当主や夫人が何も話してくれないと思ったからだ。
それくらい2人の姿からは諦めの感情が伝わって来た。
「そこまで言ってくださるのなら、全てを話しましょう。
ですが、貴男が何処の何方でもどうにもできない事です。
それほど我が家の置かれている状況は悪いのです。
だから何もできないと分かっても嘆かないでください。
そして遠慮せずに我が家の逗留なされてください」
若者が神々の恩寵を受けた魔術の使い手であったこと。
言葉遣いと物腰から明らかに身分ある者だと分かったこと。
何より話し方と感情の込め方に心を揺るがされたこと。
多くの事が積み重なって、侯爵は全てを話した。
もちろん家臣使用人は全て部屋から追い出した。
長年連れ添った、政略結婚とは思えないほど仲の良い夫人は残っていた。
侯爵も王太子と伯爵が残した密偵がいる事くらい分かっていたのだ。
誰が密偵なのかも分かっていた。
だが処分してしまったら、新たな密偵が送られてくるか、他の家臣使用人が懐柔されて密偵になってしまう。
利で懐柔されるのならいいが、残っているのは忠臣ばかりだ。
敵の王太子達は、裏切らせる為なら家臣使用人の家族を誘拐しかねない悪党達だ。
密偵だと分かっていても放置するしかなかった。
そんな状況だから、最初は事情を話さずに愛娘の恩人として歓待する気だった。
今の侯爵にできる歓待など普通の侯爵家相当でしかないが、それでも精一杯歓待する心算だったのが、もしかしたら助けてもらえるかもしれないと思ってしまった。
「そうですか、そのような事情があったのですか。
私にどれだけの事ができるかは分かりません。
ですが、そのような事情を聴いて出て行けるほど薄情ではありません。
これでも多少の身分は持っています。
それが役に立つかどうかは分かりませんが、アリア嬢が復讐できるように手助けさせていただきます」
若者は何の衒いもなく淡々と助力を約束してくれた。
侯爵は信じられない思いだった。
夫人は気がついていないが、侯爵は国王の考えを分かっていた。
貴族院に提訴したのに全く認められなかったのだ。
王にその気があれば王太子と伯爵を咎められた事くらい分かっていたのだ。
「言葉遣いと身のこなしから、騎士以上の階級を持っておられるのは分かっていましたが、相手は1国の王太子です。
いえ、国王が黙認しているのも確かです。
それでも協力してくださるのですか?」
「自己紹介がまだでしたね。
私は大陸連合魔道学院で主任教授をさせて頂いているレオと言います」
「な、大陸連合魔道学院!
それも主任教授ですと?!」
侯爵が驚くのも当然の事だった。
大陸連合魔道学院と言えば、南北両大陸のほとんどの国が認めた、世俗を離れた魔術師が魔術の探求に励む学び舎だ。
神々の恩寵とも言われる魔術を極めようとする者達の集まりだ。
世の権力や欲から離れた聖人の集まりともいえる。
だが、ただの学び舎ではない。
聖人の集まりだからと言って力を持っていない訳ではない。
魔術を極めた者達が集まっているのだ。
過去、その魔術を私しようと学院を襲った国は地上から跡形もなく滅ぼされた。
だから、この国だけでなく、もっと強力は国々も学院には敬意を払っていた。
それは、南北両大陸を合わせても最強の軍事国家と言われているこの国の宗主国、
アウフィディウス帝国もだった。
帝国ですら大陸連合魔道学院の学院長を国王待遇で歓待している。
ただの学生ですら男爵待遇で歓待される。
レオが名乗っている主任教授と言えば、帝国公爵と同じ待遇で歓待されるのだ。
属国の侯爵でしかないマヌエルなど足元にも及ばない雲の上に人なのだ。
「大陸連合魔道学院」
学院長 :国王待遇
主任教授:公爵待遇
理事長 :公爵待遇
教授 :侯爵待遇
理事 :侯爵待遇
准教授 :伯爵待遇
助教 :子爵待遇
学生 :男爵待遇
「これまでの不遜な態度をお許しください。
学院の主任教授様に助けていただけるなど、アリアは果報者です」
「この国の王太子や貴族は礼儀知らずの馬鹿が多いようですから、学院の主任教授の身分がどれくらい効果があるのか分かりませんが、できる限りの事をしましょう。
つきましては、今後の為に資金を確保しておきたいのです。
学院で教鞭を執る合間に、魔境で魔獣を狩っていました。
それを売ってアリア嬢が復讐するための資金にしたいのです」
レオは金と地位で位攻めする気だった。
若くして学院で主任教授の地位を与えられるくらい才能に満ちたレオだ。
魔術を駆使すれば幾らでも金儲けができる。
完全武装の騎士団でも、入り込んだら皆殺しにされるのが魔境だ。
そんな魔境を簡単に走破して旅をしていたレオだ。
走破どころか、人間では絶対にかなわないと言われている魔獣を狩れるのだ。
魔獣からは、先史魔術文明時代には利用されていたという貴重な素材が取れる。
わずかに残された先史魔術文明時代の魔道具を使い続けるには、魔獣の素材が絶対に欠かせないからこそ、国は騎士団を全滅させてでも魔獣を狩ろうとするのだ。
そんな魔獣素材が市場に出たら、天井知らずの高値がつけられるのは間違いない。
ただ、それほど貴重な魔獣素材を売買できる存在は限られている。
高位貴族か大陸を股に掛ける大商会に限られているのだ。
「今の私にどれだけの事ができるか分かりませんが、集められるだけの高位貴族と商会を集めてみます」
目に希望の光が戻った侯爵が約束する。
「私も学院の主任教授としてできる事をしてみます」
気絶した振りをしているアリアは忸怩たる想いだった。
自作自演の入水自殺なのに、ためらう素振りなど全くなく水路に飛び込んで助けてくださった方を、騙し続けなければいけなかった。
ただ、本当は騙せていなかった。
若者は、アリアが気絶した振りをしているのに気がついていた。
それでも力ある者の責任として、弱者を助けようとしていただけだった。
若者にも多くの事情があり、命を狙われる事も多い。
アリアが刺客の可能性もあったのに、危険を顧みることなく助けた。
本当に困っている人を見殺しにするくらいなら、自らの命を危険に晒すのを厭わない、本当の騎士道精神に溢れた行動だった。
だが、若者は単なるお人好しではない。
28年の人生で何度も死線を潜り抜けている。
それだけに、ロッシ侯爵屋敷の現状には色々と想像できた。
想像して対策を考え、何があっても対処できると判断しているからこそ、威風堂々とした態度でいられたのだ。
「不躾な事をお聞きしますが、お嬢様が自殺を図られた原因は分かりますか?
原因を理解して対処しなければ、また同じ事が起こってしまいます。
偶然ではありますが、私も巻き込まれてしまいました。
また自殺されるかもしれないと思いながら出ていくのは嫌なのです。
全てを話して頂けませんか?
もしかしたら自殺の原因を取り除けるかもしれません」
若者は思っている事を一気に話した。
そうしなければ当主や夫人が何も話してくれないと思ったからだ。
それくらい2人の姿からは諦めの感情が伝わって来た。
「そこまで言ってくださるのなら、全てを話しましょう。
ですが、貴男が何処の何方でもどうにもできない事です。
それほど我が家の置かれている状況は悪いのです。
だから何もできないと分かっても嘆かないでください。
そして遠慮せずに我が家の逗留なされてください」
若者が神々の恩寵を受けた魔術の使い手であったこと。
言葉遣いと物腰から明らかに身分ある者だと分かったこと。
何より話し方と感情の込め方に心を揺るがされたこと。
多くの事が積み重なって、侯爵は全てを話した。
もちろん家臣使用人は全て部屋から追い出した。
長年連れ添った、政略結婚とは思えないほど仲の良い夫人は残っていた。
侯爵も王太子と伯爵が残した密偵がいる事くらい分かっていたのだ。
誰が密偵なのかも分かっていた。
だが処分してしまったら、新たな密偵が送られてくるか、他の家臣使用人が懐柔されて密偵になってしまう。
利で懐柔されるのならいいが、残っているのは忠臣ばかりだ。
敵の王太子達は、裏切らせる為なら家臣使用人の家族を誘拐しかねない悪党達だ。
密偵だと分かっていても放置するしかなかった。
そんな状況だから、最初は事情を話さずに愛娘の恩人として歓待する気だった。
今の侯爵にできる歓待など普通の侯爵家相当でしかないが、それでも精一杯歓待する心算だったのが、もしかしたら助けてもらえるかもしれないと思ってしまった。
「そうですか、そのような事情があったのですか。
私にどれだけの事ができるかは分かりません。
ですが、そのような事情を聴いて出て行けるほど薄情ではありません。
これでも多少の身分は持っています。
それが役に立つかどうかは分かりませんが、アリア嬢が復讐できるように手助けさせていただきます」
若者は何の衒いもなく淡々と助力を約束してくれた。
侯爵は信じられない思いだった。
夫人は気がついていないが、侯爵は国王の考えを分かっていた。
貴族院に提訴したのに全く認められなかったのだ。
王にその気があれば王太子と伯爵を咎められた事くらい分かっていたのだ。
「言葉遣いと身のこなしから、騎士以上の階級を持っておられるのは分かっていましたが、相手は1国の王太子です。
いえ、国王が黙認しているのも確かです。
それでも協力してくださるのですか?」
「自己紹介がまだでしたね。
私は大陸連合魔道学院で主任教授をさせて頂いているレオと言います」
「な、大陸連合魔道学院!
それも主任教授ですと?!」
侯爵が驚くのも当然の事だった。
大陸連合魔道学院と言えば、南北両大陸のほとんどの国が認めた、世俗を離れた魔術師が魔術の探求に励む学び舎だ。
神々の恩寵とも言われる魔術を極めようとする者達の集まりだ。
世の権力や欲から離れた聖人の集まりともいえる。
だが、ただの学び舎ではない。
聖人の集まりだからと言って力を持っていない訳ではない。
魔術を極めた者達が集まっているのだ。
過去、その魔術を私しようと学院を襲った国は地上から跡形もなく滅ぼされた。
だから、この国だけでなく、もっと強力は国々も学院には敬意を払っていた。
それは、南北両大陸を合わせても最強の軍事国家と言われているこの国の宗主国、
アウフィディウス帝国もだった。
帝国ですら大陸連合魔道学院の学院長を国王待遇で歓待している。
ただの学生ですら男爵待遇で歓待される。
レオが名乗っている主任教授と言えば、帝国公爵と同じ待遇で歓待されるのだ。
属国の侯爵でしかないマヌエルなど足元にも及ばない雲の上に人なのだ。
「大陸連合魔道学院」
学院長 :国王待遇
主任教授:公爵待遇
理事長 :公爵待遇
教授 :侯爵待遇
理事 :侯爵待遇
准教授 :伯爵待遇
助教 :子爵待遇
学生 :男爵待遇
「これまでの不遜な態度をお許しください。
学院の主任教授様に助けていただけるなど、アリアは果報者です」
「この国の王太子や貴族は礼儀知らずの馬鹿が多いようですから、学院の主任教授の身分がどれくらい効果があるのか分かりませんが、できる限りの事をしましょう。
つきましては、今後の為に資金を確保しておきたいのです。
学院で教鞭を執る合間に、魔境で魔獣を狩っていました。
それを売ってアリア嬢が復讐するための資金にしたいのです」
レオは金と地位で位攻めする気だった。
若くして学院で主任教授の地位を与えられるくらい才能に満ちたレオだ。
魔術を駆使すれば幾らでも金儲けができる。
完全武装の騎士団でも、入り込んだら皆殺しにされるのが魔境だ。
そんな魔境を簡単に走破して旅をしていたレオだ。
走破どころか、人間では絶対にかなわないと言われている魔獣を狩れるのだ。
魔獣からは、先史魔術文明時代には利用されていたという貴重な素材が取れる。
わずかに残された先史魔術文明時代の魔道具を使い続けるには、魔獣の素材が絶対に欠かせないからこそ、国は騎士団を全滅させてでも魔獣を狩ろうとするのだ。
そんな魔獣素材が市場に出たら、天井知らずの高値がつけられるのは間違いない。
ただ、それほど貴重な魔獣素材を売買できる存在は限られている。
高位貴族か大陸を股に掛ける大商会に限られているのだ。
「今の私にどれだけの事ができるか分かりませんが、集められるだけの高位貴族と商会を集めてみます」
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