親友、婚約者、乳姉、信じていた人達に裏切られて自殺を図りましたが、運命の人に助けられました。

克全

文字の大きさ
8 / 15
第一章

第8話:怒涛

しおりを挟む
リジィ王国暦200年5月11日:リジィ王国王都アウフィディウス帝国大使館

(叡智の精霊様、レオ閣下はあのように申されていましたが、本当に大丈夫なのでしょうか?
 殿下やヴィットーリアは憎くてたまりませんが、見たこともない幼子を殺すなんて、とてもできません)

(ふん、そんな事で1国の王太子や王太子妃に復讐ができるか、と言いたいところだが、その優しさは嫌いではない。
 今から俺様の事をソフィア閣下と呼ぶことを許す)

(ソフィア閣下でございますか?
 叡智の精霊様は女性なのでしょうか?)

(大精霊に性別などはない。
 遥か数万年前、俺様を見る事ができた娘が付けてくれた名前だ。
 気に入ったので、それ以降、俺様が認めた相手に呼ぶ事を許している)

(そうでございましたか。
 ではこれからはソフィア閣下と呼ばせていただきます。
 話を戻させていただきますが、レオ閣下に任せても大丈夫なのでしょうか?
 私は幼子を殺したくないのです)

(そんな心配はいらぬ。
 レオの本性は優しさでできている。
 厳しい育ちの所為で多少荒れているが、それも表面だけの事だ。
 背筋の凍るような脅しを口にしても、それは相手を殺さないためだ)

(演技という事でしょうか?
 社交や交易で使わなければいけない、はったりや威嚇なのでしょうか?
 だとしたらすっかり騙されてしまいました)

(実際にやれるだけの実力があり、必要ならやってのける行動力がある。
 だから完全な演技でもはったりでもないぞ。
 実力と行動力に裏打ちされた交渉術で、必要なら本当に実行する。
 だから油断するでないぞ)

(そんな!
 マッティーアとヴィットーリアが子供を1番大切に思っていたら、本当に子供を殺してしまうのですか?!)

(……その心配だけは無用だ。
 レオはアリアが復讐の主役だと分かっている。
 だからアリアが嫌がるような復讐方法は使わない。
 子供を殺すと脅かして連中を動揺させる事はあるだろうが、実行はしない。
 アリアの両親が受けた苦しみの何十分の一でも味合わそうとはするだろう。
 だが本当に殺すような事はない。
 どうしても殺す必要が出たとしても、アリアに確認してから行う)

(ソフィア閣下がそう言ってくださるのなら大丈夫なのでしょうが、まだ不安な気持ちがなくならないわ)

(分かったか。
 レオはそれくらい的確に相手の心をえぐる事ができる。
 助けようとしているアリアにさえそれほど衝撃を与えたのだ。
 アリアの復讐相手を狙い撃ちにした脅しなら、どれほど効果があるか……)

(うれしいような、怖いような……)

 アリアが叡智の精霊ソフィアに相談する事で心を奮い立たせてからの日々は、怒涛の勢いで侯爵家が復活を果たす為の序章だった。

 アウフィディウス帝国の大使に話したように、レオはリジィ王国にある全ての大使館を回って交渉したのだ。

 ここでもアリアは大陸連合魔道学院の威名を思い知る事になった。

 アウフィディウス帝国の後で立ち寄る事になったから、どの大使館も数時間後から数日後という急な面会予約になる。

 それなのに、全ての大使館が即座に面会を許可してくれた。
 大使の中には、以前から約束していた面会を急遽取り止めてくれた人もいた。

 某国大使がそんな恩着せがましい話をするのも交渉術の1つだろうが、そんな方法を使わないといけないほど、大陸連合魔道学院には力があるという事だった。

 レオは2番目の大使に会った時、自分個人の身分証明書以外に、アウフィディウス帝国の大使に書かせた身分保障の紹介状を持参していた。

 それだけでなく、2番目に会った大使にも身分保障の紹介状を書かせて、それを持って3番目に約束した大使の所に行ったのだ。

 結局レオは9カ国の大使から身分保障の紹介状を手に入れた。
 更に9カ国の大使から、魔獣素材を欲しがる母国の貴族や商会に、リジィ王国で魔獣の競売が行われるという知らせを送ってもらえた。

 本国に至急緊急で送られた知らせは、各国で蜂の巣を突いたような騒動を生んだ。
 騎士100騎、従士1000兵を全滅させてでも欲しい魔獣素材だ。
 それがある程度の量、まとまって競売に出されるのだ。

 最弱と言われる牙鼠や毒牙鼠の素材であっても、全くの損害なしに金だけで手に入るのなら、少々の時間や手間を惜しまない貴族や商会は多い。

 弱小貴族や小規模商人では手も足も出ないが、それなりの貴族や商会なら、他の商品の仕入れもかねて、やり手の仕入役をリジィ王国に派遣する。

 だがレオは相手任せにはしていなかった。
 小出しに情報を出して、レオとアリア、ロッシ侯爵家に注目を集めた。

 ここ数百年市場に出ていない、背黒魔狼の魔石と牙、皮と血を競売に出すという噂を流したのだから、市場の驚きと購入意欲は鰻登りだ。

 9カ国もの大使と、大使から情報を得た貴族や商会が、何者かが抜け駆けしないか鵜の目鷹の目で見張っていたのだ。

 これで王太子や王太子妃、国1番の権力者となったモレッティ伯爵も、ロッシ侯爵家に刺客を送ったり、無法に軍を派遣したりできなくなった。

 それは陰から王太子達を誘導していた王も同じで、悔しさと怒りで頭に血が上るだけでなく、誰かに八つ当たりするような精神状態だった。

 レオはその事を予測していたのだろう。
 復讐相手の神経を更に逆撫でするような事を行ったのだ。

「アリア嬢、競売を行う前に前夜祭を行いたいのです。
 各国の大使に事前に競売品を見てもらう意味もあります。
 遠方の国から来る貴族や商会がいるので、どうしても競売まで日にちがかかり、中だるみするのを防ぐという意味もあります。
 私とアリア嬢主催で舞踏会を開きましょう」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

婚約破棄して泥を投げつけた元婚約者が「無能」と笑う中、光り輝く幼なじみの王子に掠め取られました。

ムラサメ
恋愛
​「お前のような無能、我が家には不要だ。今すぐ消えろ!」 ​婚約者・エドワードのために身を粉にして尽くしてきたフィオナは、卒業パーティーの夜、雨の中に放り出される。 泥にまみれ、絶望に沈む彼女の前に現れたのは、かつての幼なじみであり、今や国中から愛される「黄金の王子」シリルだった。 ​「やっと見つけた。……ねえ、フィオナ。あんなゴミに君を傷つけさせるなんて、僕の落ち度だね」 ​汚れを厭わずフィオナを抱き上げたシリルは、彼女を自分の屋敷へと連れ帰る。 「自分には価値がない」と思い込むフィオナを、シリルは異常なまでの執着と甘い言葉で、とろけるように溺愛し始めて――。 ​一方で、フィオナを捨てたエドワードは気づいていなかった。 自分の手柄だと思っていた仕事も、領地の繁栄も、すべてはフィオナの才能によるものだったということに。 ボロボロになっていく元婚約者。美しく着飾られ、シリルの腕の中で幸せに微笑むフィオナ。 ​「僕の星を捨てた報い、たっぷりと受けてもらうよ?」 ​圧倒的な光を放つ幼なじみによる、最高に華やかな逆転劇がいま始まる!

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】私を捨てた皆様、どうぞその選択を後悔なさってください 〜婚約破棄された令嬢の、遅すぎる謝罪はお断りです〜

くろねこ
恋愛
王太子の婚約者として尽くしてきた公爵令嬢エリシアは、ある日突然、身に覚えのない罪で断罪され婚約破棄を言い渡される。 味方だと思っていた家族も友人も、誰一人として彼女を庇わなかった。 ――けれど、彼らは知らなかった。 彼女こそが国を支えていた“本当の功労者”だったことを。 すべてを失ったはずの令嬢が選んだのは、 復讐ではなく「関わらない」という選択。 だがその選択こそが、彼らにとって最も残酷な“ざまぁ”の始まりだった。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...