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第2話:仮面の背信・冷酷なる舞踏会の茶番劇

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「あら、珍しい方に会ったわね、貴女が舞踏会に来るなんて珍しいわね」

 プランプター伯爵家のジョセフィン嬢が話しかけてきました。

 彼女のドレスは、深い黒色のシルク生地で作られており、シンプルながらも洗練されたデザインが特徴です。

 胸元には小さなレースの飾りがあり、彼女の美しい肌をほのかに覗かせています。
 シルエットは、彼女の冷たく鋭い魅力を引き立てるように細身であり、ウエストラインがくっきりとくびれています。
 裾は広がりを持ち、地面をなぞるように優雅に広がっています。

 首元には銀の装飾品があり、襟元には小さなダイヤモンドが散りばめられ、腰には細い黒いベルトが巻かれ、その中央には大粒のオニキスが留められています。

 手には白いレースの手袋が優雅に装着され、指先には指輪が輝いています。
 指輪には、黒い宝石が留められており、その輝きはエミリアの冷たい眼差しを映し出しています。

 彼女の髪は黒い髪飾りでまとめられ、華やかなアップスタイルになっています。
 髪飾りには銀色の装飾が施され、中央には小さなダイヤモンドが輝いています。

「あの、ジョセフィン様。
 今夜の舞踏会は、フォーウッド男爵家のルーカス様と私の婚約を披露するための舞踏会ですので、私が出席しなければいけないのです」

「あら、そうでしたの、全く存じ上げませんでしたわ、ごめんなさいね」

 噂通り嫌味な方です。
 我がクリフォード子爵家の事情も、ルーカス様が本当はメギンチ家の五男で、お金でフォーウッド男爵家の籍を買ったことも、全て先刻ご承知なのです。

 友人の話では、社交界の噂は怖いものだそうです。
 どれほど秘密にしようとしても、隠し切れないのだそうです。
 でも、そんな噂をお金に換える
  プランプター伯爵家のジョセフィンは、噂をお金に換える方ではありません。
 生まれ持った美貌と色香をお金に換える方です。

 透き通るような白い肌も、綺麗に編み込まれた金髪も、王家御用達で仕立てられたドレスも、ジョセフィンに群がり取り巻く男性が貢ぐことで、日々グレードがアップしているのです。

「皆さんに聞いてもらいたいことがあります」

 ルーカスがジョセフィンをエスコートして壇上に上がったのは、私が一人で多くの貴族からお祝いの言葉を受け終わったころでした。

 父も母はもちろん、私も弟妹も、初めてといっていい豪華な舞踏会に、ルーカスはもちろんフォーウッド男爵にも何の挨拶もされなかったのに、全く疑念を抱いていませんでした。

 ですが、この状況を見れば、何かとんでもない事が起こっているのは分かります。
 父も母も私たちも、これから起こるであろう事を予想して、血の気が引き真っ青になっています。

「本来なら、この壇上には私とクリフォード子爵家のマチルダ嬢が立つはずでした。
 そのために、父のフォーウッド男爵も私も精一杯準備をしました。
 ところが、マチルダ嬢が裏切ったのです。
 あれほど固く約束していたのに、私を裏切ったのです。
 私は何も知りませんでした。
 マチルダ嬢を信じていたので、特に調査もしていませんでした。
 だから知らなかったのです、マチルダ嬢が社交界で浮気者だと言われている事を。
 私は騙され恥をかくところでした。
 それを救ってくれたのが、ここにいるプランプター伯爵家のジョセフィン嬢です。
 ジョセフィン嬢は私とフォーウッド男爵家の救世主です。
 だから私はジョセフィン嬢に御礼がしたいと言ったのです。
 ですがジョセフィン嬢は御礼などいらないと言ってくれました
 そして恥を忍んで打ち明けてくれたのです。
 私の事を愛していると、全ては愛ゆえに行ったことだと!」

 茶番です、どうしようもない大茶番劇です。
 私とクリフォード子爵家は、茶番劇に無理矢理引っ張りだされた、生贄の羊だったのです。
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