真実の愛に目覚めたと第三王子に婚約解消された私を救ってくれたのは。

克全

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第二章

第48話:祝勝会3

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「いいかげんな事を言って、自分の汚さを誤魔化そうとしても無駄よ。
 謀叛を起こしたヘンリー王子の婚約者だったくせに」

 アントニア嬢が伯爵家の娘とは思えない大声を出しています。
 痛い所を突かれたと思ったのか、自分の失言をなかった事にしようとして、私がヘンリー第三王子の婚約者だった事を大声で言い立てています。
 同じように大声を出すのは貴族の令嬢として美しくないです。
 でも、一方的に言い負かされるのは貴族として失格です。
 社交の場は戦いである事も、負けてはいけない事も、私は躾けられています。

「何度も同じ事を言わないでください、見苦しいですわよ、アントニア嬢。
 それに、ロジャー殿下の祝勝会で大声を出すなんて、それだけでも無礼ですよ。
 その程度の事もモーティマー伯爵や母上から教えられなかったのですか」

「何ですって、私だけでなく、父上や母上まで馬鹿にして、もう許さない」

 バッシーン。

 常軌を逸したアントニア嬢の平手打ちが私の頬を捕らえました。
 とは言っても、これでもダンジョンで狩りをした事のある身です。
 甘やかされて育った令嬢の平手打ちくらい、その気になれば何時でもかわせます。
 今回は、後々の利点を考えてわざと受けたのです。
 それも、会場中に平手打ちの音が響き渡るように、赤く腫れあがるけれど跡が残らないように、最高のタイミングで受けたのです。

「自分の立場を思い知りなさい、この売女」

「自分の立場を思いするのはお前だ、メス豚」

 国内のほとんどすべての貴族と騎士が集まってから、威厳を正して上段に現れるはずのロジャー第一王子が、いつの間にか私の横に立っています。
 王家所有の難関ダンジョンを完全制覇された方ですから、気配を断つ事も、音を立てる事なく接近する事も、不可能ではないでしょう。
 ですが、王子として、次期国王として、威厳を損なうような事をされるとは思ってもいませんでした。

「モーティマー伯爵」

「はっ、はぃい」

 自分の娘の愚かな言動を、少し離れた場所でにやにやと笑いながら見ていたモーティマー伯爵が、死神に死を宣告されたような表情で返事しました。

「貴族として最低限のマナーも躾けらないお前には失望した。
 もう二度と王都に入る事は許さない。
 王都の屋敷はは没収する、とっとと領地に戻って戦支度しろ」

「申し訳ございません、娘は少し精神を病んでおりまして。
 時々ありもしない事や考えてもいない事を口走ってしまうのでございます。
 どうか寛大な御心でご勘如願えませんでしょうか」

 ギャッフ

「伯爵の分際で、王子である俺に許せと命じるのは不遜すぎる。
 俺とビゴッドが、出来損ないのヘンリーの愚行と、国王陛下の失敗を償おうとしているアグネス嬢に対して、度重なる暴言に加えて暴力を振るった事も許し難い。
 よってこの場で断罪した、文句のある者はいるか」

 ロジャー第一王子が、祝勝会場にいる全ての貴族と騎士に言葉を放ちました。
 その足元には、殿下に斬り殺されたモーティマー伯爵が、頭から真っ二つになって血だまりに斃れています。
 祝勝会場にいる誰一人として言葉を発しません。
 ロジャー第一王子の強さと怒りに圧倒されています。

 ですが、大きな問題があります。
 私の記憶が確かなら、モーティマー伯爵はビゴッド第二王子に近かったはずです。
 この断罪をきっかけにして、ロジャー第一王子とビゴッド第二王子の戦いが始まってしまったら、とんでもない規模の内戦になってしまいます。
 両王子の迷惑な好意には辟易していますが、両王子の仲を取り持たないと、我が家の領民が戦争に巻き込まれてしまいます。
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