48 / 78
第二章
第48話:祝勝会3
しおりを挟む
「いいかげんな事を言って、自分の汚さを誤魔化そうとしても無駄よ。
謀叛を起こしたヘンリー王子の婚約者だったくせに」
アントニア嬢が伯爵家の娘とは思えない大声を出しています。
痛い所を突かれたと思ったのか、自分の失言をなかった事にしようとして、私がヘンリー第三王子の婚約者だった事を大声で言い立てています。
同じように大声を出すのは貴族の令嬢として美しくないです。
でも、一方的に言い負かされるのは貴族として失格です。
社交の場は戦いである事も、負けてはいけない事も、私は躾けられています。
「何度も同じ事を言わないでください、見苦しいですわよ、アントニア嬢。
それに、ロジャー殿下の祝勝会で大声を出すなんて、それだけでも無礼ですよ。
その程度の事もモーティマー伯爵や母上から教えられなかったのですか」
「何ですって、私だけでなく、父上や母上まで馬鹿にして、もう許さない」
バッシーン。
常軌を逸したアントニア嬢の平手打ちが私の頬を捕らえました。
とは言っても、これでもダンジョンで狩りをした事のある身です。
甘やかされて育った令嬢の平手打ちくらい、その気になれば何時でもかわせます。
今回は、後々の利点を考えてわざと受けたのです。
それも、会場中に平手打ちの音が響き渡るように、赤く腫れあがるけれど跡が残らないように、最高のタイミングで受けたのです。
「自分の立場を思い知りなさい、この売女」
「自分の立場を思いするのはお前だ、メス豚」
国内のほとんどすべての貴族と騎士が集まってから、威厳を正して上段に現れるはずのロジャー第一王子が、いつの間にか私の横に立っています。
王家所有の難関ダンジョンを完全制覇された方ですから、気配を断つ事も、音を立てる事なく接近する事も、不可能ではないでしょう。
ですが、王子として、次期国王として、威厳を損なうような事をされるとは思ってもいませんでした。
「モーティマー伯爵」
「はっ、はぃい」
自分の娘の愚かな言動を、少し離れた場所でにやにやと笑いながら見ていたモーティマー伯爵が、死神に死を宣告されたような表情で返事しました。
「貴族として最低限のマナーも躾けらないお前には失望した。
もう二度と王都に入る事は許さない。
王都の屋敷はは没収する、とっとと領地に戻って戦支度しろ」
「申し訳ございません、娘は少し精神を病んでおりまして。
時々ありもしない事や考えてもいない事を口走ってしまうのでございます。
どうか寛大な御心でご勘如願えませんでしょうか」
ギャッフ
「伯爵の分際で、王子である俺に許せと命じるのは不遜すぎる。
俺とビゴッドが、出来損ないのヘンリーの愚行と、国王陛下の失敗を償おうとしているアグネス嬢に対して、度重なる暴言に加えて暴力を振るった事も許し難い。
よってこの場で断罪した、文句のある者はいるか」
ロジャー第一王子が、祝勝会場にいる全ての貴族と騎士に言葉を放ちました。
その足元には、殿下に斬り殺されたモーティマー伯爵が、頭から真っ二つになって血だまりに斃れています。
祝勝会場にいる誰一人として言葉を発しません。
ロジャー第一王子の強さと怒りに圧倒されています。
ですが、大きな問題があります。
私の記憶が確かなら、モーティマー伯爵はビゴッド第二王子に近かったはずです。
この断罪をきっかけにして、ロジャー第一王子とビゴッド第二王子の戦いが始まってしまったら、とんでもない規模の内戦になってしまいます。
両王子の迷惑な好意には辟易していますが、両王子の仲を取り持たないと、我が家の領民が戦争に巻き込まれてしまいます。
謀叛を起こしたヘンリー王子の婚約者だったくせに」
アントニア嬢が伯爵家の娘とは思えない大声を出しています。
痛い所を突かれたと思ったのか、自分の失言をなかった事にしようとして、私がヘンリー第三王子の婚約者だった事を大声で言い立てています。
同じように大声を出すのは貴族の令嬢として美しくないです。
でも、一方的に言い負かされるのは貴族として失格です。
社交の場は戦いである事も、負けてはいけない事も、私は躾けられています。
「何度も同じ事を言わないでください、見苦しいですわよ、アントニア嬢。
それに、ロジャー殿下の祝勝会で大声を出すなんて、それだけでも無礼ですよ。
その程度の事もモーティマー伯爵や母上から教えられなかったのですか」
「何ですって、私だけでなく、父上や母上まで馬鹿にして、もう許さない」
バッシーン。
常軌を逸したアントニア嬢の平手打ちが私の頬を捕らえました。
とは言っても、これでもダンジョンで狩りをした事のある身です。
甘やかされて育った令嬢の平手打ちくらい、その気になれば何時でもかわせます。
今回は、後々の利点を考えてわざと受けたのです。
それも、会場中に平手打ちの音が響き渡るように、赤く腫れあがるけれど跡が残らないように、最高のタイミングで受けたのです。
「自分の立場を思い知りなさい、この売女」
「自分の立場を思いするのはお前だ、メス豚」
国内のほとんどすべての貴族と騎士が集まってから、威厳を正して上段に現れるはずのロジャー第一王子が、いつの間にか私の横に立っています。
王家所有の難関ダンジョンを完全制覇された方ですから、気配を断つ事も、音を立てる事なく接近する事も、不可能ではないでしょう。
ですが、王子として、次期国王として、威厳を損なうような事をされるとは思ってもいませんでした。
「モーティマー伯爵」
「はっ、はぃい」
自分の娘の愚かな言動を、少し離れた場所でにやにやと笑いながら見ていたモーティマー伯爵が、死神に死を宣告されたような表情で返事しました。
「貴族として最低限のマナーも躾けらないお前には失望した。
もう二度と王都に入る事は許さない。
王都の屋敷はは没収する、とっとと領地に戻って戦支度しろ」
「申し訳ございません、娘は少し精神を病んでおりまして。
時々ありもしない事や考えてもいない事を口走ってしまうのでございます。
どうか寛大な御心でご勘如願えませんでしょうか」
ギャッフ
「伯爵の分際で、王子である俺に許せと命じるのは不遜すぎる。
俺とビゴッドが、出来損ないのヘンリーの愚行と、国王陛下の失敗を償おうとしているアグネス嬢に対して、度重なる暴言に加えて暴力を振るった事も許し難い。
よってこの場で断罪した、文句のある者はいるか」
ロジャー第一王子が、祝勝会場にいる全ての貴族と騎士に言葉を放ちました。
その足元には、殿下に斬り殺されたモーティマー伯爵が、頭から真っ二つになって血だまりに斃れています。
祝勝会場にいる誰一人として言葉を発しません。
ロジャー第一王子の強さと怒りに圧倒されています。
ですが、大きな問題があります。
私の記憶が確かなら、モーティマー伯爵はビゴッド第二王子に近かったはずです。
この断罪をきっかけにして、ロジャー第一王子とビゴッド第二王子の戦いが始まってしまったら、とんでもない規模の内戦になってしまいます。
両王子の迷惑な好意には辟易していますが、両王子の仲を取り持たないと、我が家の領民が戦争に巻き込まれてしまいます。
0
あなたにおすすめの小説
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
白い結婚で結構ですわ。殿下より、私の自由のほうが大事ですので
鍛高譚
恋愛
「第二王子との婚約? でも殿下には平民の恋人がいるらしいんですけど?
――なら、私たち“白い結婚”で結構ですわ。お好きになさってくださいな、殿下」
自由気ままに読書とお茶を楽しむのがモットーの侯爵令嬢・ルージュ。
ある日、突然“第二王子リオネルとの政略結婚”を押しつけられてしまう。
ところが当の殿下は平民の恋人に夢中で、
「形式上の夫婦だから干渉しないでほしい」などと言い出す始末。
むしろ好都合とばかりに、ルージュは優雅な“独身気分”を満喫するはずが……
いつしか、リナという愛人と妙に仲良くなり、
彼女を巡る宮廷スキャンダルに巻き込まれ、
しまいには婚約が白紙になってしまって――!?
けれどこれは、ルージュが本当の幸せを掴む始まりにすぎなかった。
自分を心から大切にしてくれる“新しい旦那様”候補が現れて、
さあ、思い切り自由に愛されましょう!
……そして、かの王子様の結末は“ざまぁ”なのか“自業自得”なのか?
自由気ままな侯爵令嬢が切り開く、
“白い結婚破談”からの痛快ざまぁ&本当の恋愛譚、はじまります。
『婚約破棄されたので王太子女となります。殿下より上位です』
鷹 綾
恋愛
「君は王太子妃に相応しくない」
その一言で、私は婚約を破棄されました。
理由は“真実の愛”。選ばれたのは、可憐な令嬢。
……ええ、どうぞご自由に。
私は泣きません。縋りません。
なぜなら——王家は、私を手放せないから。
婚約は解消。
けれど家格、支持、実務能力、そして民の信頼。
失ったのは殿下の隣の席だけ。
代わりに私は、王太子女として王政補佐の任を命じられます。
最初は誰もが疑いました。
若い、女だ、感情的だ、と。
ならば証明しましょう。
怒らず、怯えず、排除せず。
反対も忠誠も受け止めながら、国を揺らさずに保つことを。
派手な革命は起こしません。
大逆転も叫びません。
ただ、静かに積み上げます。
そして気づけば——
“殿下の元婚約者”ではなく、
“揺れない王”と呼ばれるようになるのです。
これは、婚約破棄から始まる静かな逆転譚。
王冠の重みを受け入れた一人の女性が、
国を、そして自分の立場を塗り替えていく物語です。
お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!
にのまえ
恋愛
すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。
公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。
家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。
だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、
舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
老婆令嬢と呼ばれた私ですが、死んで灰になりました。~さあ、華麗なる復讐劇をお見せしましょうか!~
ミィタソ
恋愛
ノブルス子爵家の長女マーガレットは、幼い頃から頭の回転が早く、それでいて勉強を怠らない努力家。さらに、まだ少しも磨かれていないサファイアの原石を彷彿とさせる、深い美しさを秘めていた。
婚約者も決まっており、相手はなんと遥か格上の侯爵家。それも長男である。さらに加えて、王都で噂されるほどの美貌の持ち主らしい。田舎貴族のノブルス子爵家にとって、奇跡に等しい縁談であった。
そして二人は結婚し、いつまでも幸せに暮らしましたとさ……と、なればよかったのだが。
新婚旅行の当日、マーガレットは何者かに殺されてしまった。
しかし、その数日後、マーガレットは生き返ることになる。
全財産を使い、蘇りの秘薬を購入した人物が現れたのだ。
信頼できる仲間と共に復讐を誓い、マーガレットは王国のさらなる闇に踏み込んでいく。
********
展開遅めですが、最後までお付き合いいただければ、びっくりしてもらえるはず!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる