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本編
信長戦
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瀬名と関口が守る岩作東城と、松平と蒲原が守る御器所西を、織田信長は攻め込むことが出来なかった。
なぜなら下手に攻め込むと、廃城となった大草城を修築しつつ信長軍の背後を窺う、義直軍に隙を見せてしまうからだ。
『現段階の今川・織田の勢力』
「新たに義直が支配下に入れた城地」
星崎城:花井三河守
「義直軍が囲んでいる織田方の城」
市場城:山口左近太夫安盛
寺部城:山口盛重
「今川方の城」
岩崎城:丹羽氏勝
藤島城:丹羽氏職
「織田軍の援軍が出て行ってしまった城」
桜中村城 :成田弥六
鳥栖城 :成田助四郎
山崎城 :佐久間信盛の城代
戸部一色城:佐久間信盛
末森城 :信長の弟・信勝が謀殺された後は城主不在
「織田軍の援軍が新たに入った城」
上社城:柴田勝家一門の城:五千兵と織田信長
下社城:柴田勝家一門の城
一色城:柴田勝家一門の城
「義直の直轄城地」
戸部城:五千兵:井伊直盛
平島城:五百兵:井伊直元
名和城:五百兵:井伊直成
清水城:五百兵:中野直由
常滑城:五百兵:奥山朝利
「義直所領で代官預かり」
刈谷城主 :瀬名氏俊 :千兵
緒川城主 :関口親永 :千兵
宮津城主 :蒲原氏徳 :五百兵
富貴城主 :吉田氏好 :五百兵
布土城主 :由比正信 :五百兵
上野間城主:長谷川元長:五百兵
細目城主 :庵原之政 :五百兵
「後方配備」
沓掛城:五百兵:城代・浅井正敏・近藤景春
今川軍:五千兵
大将:今川義元
武将:松井宗信・庵原忠縁・庵原忠春
武将:富永氏繁・藤枝氏秋・一宮宗是
岡崎城 :千兵 :城代・山田景隆
鳴海城 :城代不在で以下が交代警備
中島砦 :五百兵:岡部長定
善照寺砦:五百兵:飯尾乗連
丹下砦 :五百兵:朝比奈秀詮
大高城 :城代不在で以下が交代警備
鷲津砦 :五百兵:朝比奈泰朝・朝比奈親徳
丸根砦 :五百兵:本多忠勝・本多忠真
『大草城・井伊直虎・しらね』
「直虎様、市場城の山口左近太夫安盛様と寺部城の山口盛重様が、義直様になら降伏臣従すると申しております」
「戸部城の父上に申し込んで来たのですね」
「はい、御隠居様には下れないが、義直様になら下れるとの事でした」
「御隠居様や御屋形様と争う事に成った時、頼りになる国衆だと言いたいのですね」
「はい。出入りさせている歩き巫女が集めて来た、城内や領内の噂話でも、御二人は信じられると思われます」
「ならば、御隠居様に許可を貰わねばなりませんね。ですがそれは、中々厳しいでしょう」
「はい。そのように思われます」
「元信殿と長照殿は、どう動くと思いますか」
「岡部元信様は御器所西城を落城させる功名を、鵜殿長照様は御器所東城を落城させる功名を、直虎様の御陰で手に入れております。山口左近太夫安盛様と山口盛重様が、義直様の家臣になる事を後押ししてくれると思われます」
「岩作東城は親永大叔父上、岩作西城は元康殿に譲るとして、瀬名殿と蒲原に御預けすべき城が、他に必要ですね」
「はい。御味方を増やすには、恩を施される必要がございます」
「流石にこれ以上の直轄領を義直が持つことは、御隠居様も許してくれないでしょうね」
しらねは黙って私の言葉を受け止めているが、沓掛城の義元の側に送り込んでいる白拍子からの情報を、頭の中で整理しているのだろう。
それに、駿河にいる氏真の動きにも注意が必要だ。
白拍子と歩き巫女共は、氏真達に顔を知られているから動き難い。
井伊家の血縁も警戒されているだろう。
女達が、秘かに閨で落とした男達から情報を集めるしかない。
「服部友貞殿は動かれますか」
「桶狭間の後で、熱田を焼き討ちしようとして失敗され、船で本拠の市江島に逃れられました。今は義直様の下知に従い、再度の出陣準備をしておられます」
史実の服部友貞は、織田氏の重要な拠点である、津島の南にある河内(海西郡)に勢力を持っていた。服部党の頭領で、木曽三川の中洲・市江島と呼ばれる輪中地帯に拠点があった。
院家として、東海地方の本願寺門徒を統括する、願証寺と協調関係であった。
「美濃の斎藤家の動きはどうです」
「義龍様に動きはなく、積極的な尾張侵攻は、考えておられないようでございます。稲葉山城下の噂では、義龍様は御病気と言う事でございます」
「それは困りましたね。信長には撤退して貰いたいのですが、斉藤家が動かないとなると、内部から切り崩すしかありませんね」
新居城 :織田家城代
米田城 :織田家城代
大森城 :織田家城代
猪子石城:横地秀次
龍泉寺城:信長の弟・信勝が謀殺された後は廃城
川村北城:牧長義が小林城を築いて移り廃城
川村南城:水野右京進清忠
小幡城 :織田信光が弘治元年(1555年)殺され廃城
「斯波義銀と石橋義忠を、味方に引き入れることは出来ませんか」
「共に信長に不満を持っていると言う噂です」
「噂が出ているとは、無能ですね。噂になっているなら、信長も備えているでしょうし、兵を挙げさせて大義名分を手に入れ、追放するかもしれません」
「左様でございますね。流石に主家を信長から攻めるのは大義名分が整わず、逆に周辺諸大名や国衆に、軍を進める大義名分を与える事になります」
石橋義忠:海部郡戸田庄の豪族衆
斯波義銀:清州城・尾張守護
「今出来るのは、服部殿を動かして、信長を撤退させる事。出来るだけ早く挙兵するように、服部殿に伝えて下さい」
「承りました」
三日後、庵原忠春が、義元の使者として大草城に来た。
岩作東城と岩作西城を落城させ、大草城を手に入れたこと。
御器所西城と御器所東城を、落城させる準備を整えた事への褒美。
山口左近太夫安盛と山口盛重を、義直の直臣とする許可だった。
ただし両山口には、桜中村城・鳥栖城・山崎城・戸部一色城の内から、それぞれ一城を落として、忠誠を示すことが降伏受け入れの条件だった。
これは義直が後援しなければ出来ない事で、義直に二人に恩を売れと言う指示でもある。
だが実際の合戦で二人を支援するのは、後見役の井伊直盛だ。
井伊直盛は、山口左近太夫安盛・山口盛重・花井三河守の軍勢を自軍に組み込み、星崎城・市場城・寺部城・戸部城には最小限の守備兵だけを残した。
そして六千兵となった軍勢を率い、佐久間信盛の守る戸部一色城に夜襲を仕掛けた。
戸部一色城の兵たちは、織田信長が五千兵を率いて桜中村城に入城して安心していたのに、信長が義直を追って出て行ってしまった。
戸部一色城の兵たちは不安に駆られていた。
そこに夜襲を受けた事で、雑兵と農民兵は狼狽して逃げ出してしまった。
城代の佐久間信盛は、「退き佐久間」と言われるくらい撤退戦が得意だ。
逆に言えば、討ち取られる危険を犯さず、早々に逃げ出すとも言える。
今回もあっさりと城を明け渡して、自分の本拠地である山崎城に逃げ出した。
山口左近太夫安盛と山口盛重は、家臣である桜中村城主の成田弥六と、鳥栖城主の成田助四郎に降伏の使者を送り、あっさりと味方に引き入れることに成功した。
元々が山口家の家臣である上に、四城の指揮官である佐久間信盛が、自分たちを見捨てて早々に逃亡したため、織田家への信頼をなくしていたのだ。
早々に三つの城を手に入れた直盛軍は、火のついたような勢いで山崎城に攻め掛かった。
相手が佐久間信盛と分かっているので、わざと逃げ口を用意して、さっさと城を放棄するように仕向けた。
案の定信盛は、大した抵抗をせず城を放棄して逃げ出した。
やはり「退き佐久間」は、撤退戦の指揮功名を褒め称えたのではなく、直ぐに逃げ出す信盛を蔑んでの陰口だったのだろう。
直盛は、早速沓掛城の義元に四城攻略の報告をした。
これに対して義元からは、桜中村城の成田弥六と鳥栖城の成田助四郎の本領安堵を認めた。
更に引き続き、山口家の家臣である事も認めた。
同時に山崎城と戸部一色城は義元の直轄城とし、瀬名氏俊と蒲原氏徳を城代とするよう指示を出してきた。
「義直の陪臣になった城」
桜中村城:成田弥六
鳥栖城 :成田助四郎
「直盛が攻め落とし義元の直轄城となり譜代衆が代官となった城」
山崎城 :瀬名氏俊
戸部一色城:蒲原氏徳
なぜなら下手に攻め込むと、廃城となった大草城を修築しつつ信長軍の背後を窺う、義直軍に隙を見せてしまうからだ。
『現段階の今川・織田の勢力』
「新たに義直が支配下に入れた城地」
星崎城:花井三河守
「義直軍が囲んでいる織田方の城」
市場城:山口左近太夫安盛
寺部城:山口盛重
「今川方の城」
岩崎城:丹羽氏勝
藤島城:丹羽氏職
「織田軍の援軍が出て行ってしまった城」
桜中村城 :成田弥六
鳥栖城 :成田助四郎
山崎城 :佐久間信盛の城代
戸部一色城:佐久間信盛
末森城 :信長の弟・信勝が謀殺された後は城主不在
「織田軍の援軍が新たに入った城」
上社城:柴田勝家一門の城:五千兵と織田信長
下社城:柴田勝家一門の城
一色城:柴田勝家一門の城
「義直の直轄城地」
戸部城:五千兵:井伊直盛
平島城:五百兵:井伊直元
名和城:五百兵:井伊直成
清水城:五百兵:中野直由
常滑城:五百兵:奥山朝利
「義直所領で代官預かり」
刈谷城主 :瀬名氏俊 :千兵
緒川城主 :関口親永 :千兵
宮津城主 :蒲原氏徳 :五百兵
富貴城主 :吉田氏好 :五百兵
布土城主 :由比正信 :五百兵
上野間城主:長谷川元長:五百兵
細目城主 :庵原之政 :五百兵
「後方配備」
沓掛城:五百兵:城代・浅井正敏・近藤景春
今川軍:五千兵
大将:今川義元
武将:松井宗信・庵原忠縁・庵原忠春
武将:富永氏繁・藤枝氏秋・一宮宗是
岡崎城 :千兵 :城代・山田景隆
鳴海城 :城代不在で以下が交代警備
中島砦 :五百兵:岡部長定
善照寺砦:五百兵:飯尾乗連
丹下砦 :五百兵:朝比奈秀詮
大高城 :城代不在で以下が交代警備
鷲津砦 :五百兵:朝比奈泰朝・朝比奈親徳
丸根砦 :五百兵:本多忠勝・本多忠真
『大草城・井伊直虎・しらね』
「直虎様、市場城の山口左近太夫安盛様と寺部城の山口盛重様が、義直様になら降伏臣従すると申しております」
「戸部城の父上に申し込んで来たのですね」
「はい、御隠居様には下れないが、義直様になら下れるとの事でした」
「御隠居様や御屋形様と争う事に成った時、頼りになる国衆だと言いたいのですね」
「はい。出入りさせている歩き巫女が集めて来た、城内や領内の噂話でも、御二人は信じられると思われます」
「ならば、御隠居様に許可を貰わねばなりませんね。ですがそれは、中々厳しいでしょう」
「はい。そのように思われます」
「元信殿と長照殿は、どう動くと思いますか」
「岡部元信様は御器所西城を落城させる功名を、鵜殿長照様は御器所東城を落城させる功名を、直虎様の御陰で手に入れております。山口左近太夫安盛様と山口盛重様が、義直様の家臣になる事を後押ししてくれると思われます」
「岩作東城は親永大叔父上、岩作西城は元康殿に譲るとして、瀬名殿と蒲原に御預けすべき城が、他に必要ですね」
「はい。御味方を増やすには、恩を施される必要がございます」
「流石にこれ以上の直轄領を義直が持つことは、御隠居様も許してくれないでしょうね」
しらねは黙って私の言葉を受け止めているが、沓掛城の義元の側に送り込んでいる白拍子からの情報を、頭の中で整理しているのだろう。
それに、駿河にいる氏真の動きにも注意が必要だ。
白拍子と歩き巫女共は、氏真達に顔を知られているから動き難い。
井伊家の血縁も警戒されているだろう。
女達が、秘かに閨で落とした男達から情報を集めるしかない。
「服部友貞殿は動かれますか」
「桶狭間の後で、熱田を焼き討ちしようとして失敗され、船で本拠の市江島に逃れられました。今は義直様の下知に従い、再度の出陣準備をしておられます」
史実の服部友貞は、織田氏の重要な拠点である、津島の南にある河内(海西郡)に勢力を持っていた。服部党の頭領で、木曽三川の中洲・市江島と呼ばれる輪中地帯に拠点があった。
院家として、東海地方の本願寺門徒を統括する、願証寺と協調関係であった。
「美濃の斎藤家の動きはどうです」
「義龍様に動きはなく、積極的な尾張侵攻は、考えておられないようでございます。稲葉山城下の噂では、義龍様は御病気と言う事でございます」
「それは困りましたね。信長には撤退して貰いたいのですが、斉藤家が動かないとなると、内部から切り崩すしかありませんね」
新居城 :織田家城代
米田城 :織田家城代
大森城 :織田家城代
猪子石城:横地秀次
龍泉寺城:信長の弟・信勝が謀殺された後は廃城
川村北城:牧長義が小林城を築いて移り廃城
川村南城:水野右京進清忠
小幡城 :織田信光が弘治元年(1555年)殺され廃城
「斯波義銀と石橋義忠を、味方に引き入れることは出来ませんか」
「共に信長に不満を持っていると言う噂です」
「噂が出ているとは、無能ですね。噂になっているなら、信長も備えているでしょうし、兵を挙げさせて大義名分を手に入れ、追放するかもしれません」
「左様でございますね。流石に主家を信長から攻めるのは大義名分が整わず、逆に周辺諸大名や国衆に、軍を進める大義名分を与える事になります」
石橋義忠:海部郡戸田庄の豪族衆
斯波義銀:清州城・尾張守護
「今出来るのは、服部殿を動かして、信長を撤退させる事。出来るだけ早く挙兵するように、服部殿に伝えて下さい」
「承りました」
三日後、庵原忠春が、義元の使者として大草城に来た。
岩作東城と岩作西城を落城させ、大草城を手に入れたこと。
御器所西城と御器所東城を、落城させる準備を整えた事への褒美。
山口左近太夫安盛と山口盛重を、義直の直臣とする許可だった。
ただし両山口には、桜中村城・鳥栖城・山崎城・戸部一色城の内から、それぞれ一城を落として、忠誠を示すことが降伏受け入れの条件だった。
これは義直が後援しなければ出来ない事で、義直に二人に恩を売れと言う指示でもある。
だが実際の合戦で二人を支援するのは、後見役の井伊直盛だ。
井伊直盛は、山口左近太夫安盛・山口盛重・花井三河守の軍勢を自軍に組み込み、星崎城・市場城・寺部城・戸部城には最小限の守備兵だけを残した。
そして六千兵となった軍勢を率い、佐久間信盛の守る戸部一色城に夜襲を仕掛けた。
戸部一色城の兵たちは、織田信長が五千兵を率いて桜中村城に入城して安心していたのに、信長が義直を追って出て行ってしまった。
戸部一色城の兵たちは不安に駆られていた。
そこに夜襲を受けた事で、雑兵と農民兵は狼狽して逃げ出してしまった。
城代の佐久間信盛は、「退き佐久間」と言われるくらい撤退戦が得意だ。
逆に言えば、討ち取られる危険を犯さず、早々に逃げ出すとも言える。
今回もあっさりと城を明け渡して、自分の本拠地である山崎城に逃げ出した。
山口左近太夫安盛と山口盛重は、家臣である桜中村城主の成田弥六と、鳥栖城主の成田助四郎に降伏の使者を送り、あっさりと味方に引き入れることに成功した。
元々が山口家の家臣である上に、四城の指揮官である佐久間信盛が、自分たちを見捨てて早々に逃亡したため、織田家への信頼をなくしていたのだ。
早々に三つの城を手に入れた直盛軍は、火のついたような勢いで山崎城に攻め掛かった。
相手が佐久間信盛と分かっているので、わざと逃げ口を用意して、さっさと城を放棄するように仕向けた。
案の定信盛は、大した抵抗をせず城を放棄して逃げ出した。
やはり「退き佐久間」は、撤退戦の指揮功名を褒め称えたのではなく、直ぐに逃げ出す信盛を蔑んでの陰口だったのだろう。
直盛は、早速沓掛城の義元に四城攻略の報告をした。
これに対して義元からは、桜中村城の成田弥六と鳥栖城の成田助四郎の本領安堵を認めた。
更に引き続き、山口家の家臣である事も認めた。
同時に山崎城と戸部一色城は義元の直轄城とし、瀬名氏俊と蒲原氏徳を城代とするよう指示を出してきた。
「義直の陪臣になった城」
桜中村城:成田弥六
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