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本編
大和・宇陀郡侵食
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『大和・宇陀郡・秋山城』
義直は、山内四箇郷の国衆の案内を受けて宇陀郡に侵攻した。そして秋山城に入って、国衆・地侍の挨拶を受けていた。
「義直様、この度は我が願いを御聞き入れ頂き、感謝の言葉も御座いません。」
「なに大した事では無い、それよりよくぞ参られた。房満殿の沢家は古より南朝に御仕えしていた、我が母の生家・井伊家も南朝として戦って来た。我が陣営には南朝として戦って来た国衆が多く参集しておる、出来る限りの支援を約束しよう。」
「有り難き幸せにございます。三好三人衆からも誘いを受けておりましたが、義直様の厚情を賜らんと、配下に馳せ参じさせて頂きました。」
「松永久秀とは話がついておる。房満殿の働き次第では、久秀の家臣・高山友照が入っている沢城と領地を、房満殿に反すことになっておる。」
「重ね重ねの厚情感謝に耐えません、義直様の御恩に報いるべく、身命を賭して働かせていただきます。」
「うむ、それでは三好三人衆に組し、筒井順慶に配下となった芳野城の芳野清兼を攻める先鋒を任せたい。」
「光栄にございます、南朝の武士(もののふ)に相応しい働きをさせて頂きます。」
「期待しておる。」
「秋山右近将監直国と申します。」
「うむ、よくぞ味方してくれた。直国殿が城を提供してくれたおかげで、大和の平定が一気に進む。」
「義直様は南朝を重視して下さっておられますが、この宇陀郡は同じ南朝の北畠家の支配を受けております。我が兄・教家も、三好長慶様の婿として権勢を奮い北畠具教殿の命に従わなかったため、先年長慶様がお亡くなりになられ間隙に、具教殿の攻撃を受けてしまいました。」
「父上・宗丹殿が大河内城で人質になられ、そこで病気になられ亡くなられておられるのだな、それは存じておる。」
「当主であった兄・教家も病で亡くなっておりますが、私は父も兄も具教殿に暗殺されたと思っております。沢源五郎殿も、北畠家先代・晴具殿によって自刃させられ、幼い沢房満が家督を相続することになっております。そのこと義直様はどうお考えになられますか。」
「さて、詳しいことが分からんから何とも申せんが、宇陀郡の国衆はどうしたいのだ?」
「義直様の元で働かせて頂きたいのです。」
「だが同じ南朝の北畠具教殿と争う事は出来ん、しかしながら、宇陀衆が不当に扱われ無いように話しはさせてもらおう。」
「何分よろしくお願い申し上げます。」
義直は宇陀衆・特に沢房満を先鋒に芳野城に攻め掛かった。細川家・畠山家・六角家・三好家・北畠家と、時代時代の有力者に翻弄された大和国衆だが、今回は今川家・三好家・北畠家の争いに巻き込まれる事になった。
本来は興福寺を中核に纏まるべきなのだが、三好家が一乗院覚慶(足利覚慶)を殺害する時の攻防で、興福寺は荒廃しその戦力は枯渇してしまっていた。興福寺の衆徒・国民の国衆・地侍は、各個に周辺の国衆・地侍と争い、勢力拡大に邁進していた。
「和州宇陀三人衆」
宇陀秋山城主・秋山家
沢城主・沢家
芳野城主・芳野家
秋山家は、国造が貢進したという伊勢神宮領大和国宇陀神戸の神戸社の神主家で、同神宮の被官であったと考えられる。神戸社が春日社の末社になると、秋山氏は春日神人の国民として興福寺被官にもなったと考えられる。宇陀秋山城を拠点とし、その家祖は甲斐源氏の秋山光朝と自称しているが、その証明はされていない。
沢家は、宇陀郡沢の沢に拠った国人で、出自は藤原氏という。
芳野家は、宇陀郡東郷の芳野城に拠った国人で、鎌倉時代末期の正和4年(1315)の春日若宮神主祐臣の「祭礼記」に「流鏑馬十騎、芳野二騎」とみえ、興福寺の配下にあったと考えられる。
宇陀三将のうち秋山家・沢家が南朝方であったことは『太平記』の「神南合戦」の条に「和田・楠・真木・佐和(沢)・秋山」により推測できる。
秋山宗丹・伊勢・北畠具教との抗争に破れ人質として北畠家に赴いたが大河内城で病没した。
秋山教家・三好長慶の婿として権勢を奮った。南朝
秋山右近将監直国・秋山宗丹の次男・通称次郎。
井足実栄・井足城主・秋山直国家臣。
鳥尾屋石見守・秋山右近将監直国家臣
諸木野弥三郎・秋山右近将監直国家臣
秋山萬助・秋山右近将監直国家臣
秋山志摩守・通称島之助・秋山右近将監直国家臣
黒木藤五郎・黒木城主・秋山宗丹家臣
曾爾播磨守・宇陀郡今井城主・秋山宗丹に属した。
沢源五郎・北畠晴具によって自刃させられ、幼い沢房満が家督を相続した。
沢房満・官途は兵部大輔・南朝
1562年「教興寺の戦い」では、畠山高政方に属して三好長慶方と戦うが敗北
沢城には松永久秀の家臣高山友照が入った
沢親満・沢房満の男・通称源六郎
沢満兼・沢親満の男・通称隼人正
沢満清・沢親満の次男・通称次郎九郎。
内牧内記・沢房満家臣
檜牧静秀・宇陀郡檜牧城主・沢房満の枝連衆・式内御井神社の神官
山糟林与・沢房満家臣
芳野清兼・官途は宮内少輔・筒井家の寄騎衆として筒井家中の重臣たちと並ぶ。
1562年畠山高政に従い畿内侵攻し三好軍と「教興寺の戦い」で戦功
丹生谷金兵衛・芳野清兼家臣
「宇陀郡七人衆」残り4人
赤埴満近・宇陀郡赤埴城主
伊勢国司北畠具教の強い影響を受け、北畠具教の政治的な動向に左右された。
北畠具房に仕える一方で、宇陀郡三人衆のひとりである沢房満にも属した。
赤埴信安・赤埴満近の男
井足実栄・井足城主・秋山直国家臣。
檜牧静秀・宇陀郡檜牧城主・沢房満の枝連衆・式内御井神社の神官
山辺康綱
山本外記・宇陀郡深野城主・北畠晴具家臣
義直は、山内四箇郷の国衆の案内を受けて宇陀郡に侵攻した。そして秋山城に入って、国衆・地侍の挨拶を受けていた。
「義直様、この度は我が願いを御聞き入れ頂き、感謝の言葉も御座いません。」
「なに大した事では無い、それよりよくぞ参られた。房満殿の沢家は古より南朝に御仕えしていた、我が母の生家・井伊家も南朝として戦って来た。我が陣営には南朝として戦って来た国衆が多く参集しておる、出来る限りの支援を約束しよう。」
「有り難き幸せにございます。三好三人衆からも誘いを受けておりましたが、義直様の厚情を賜らんと、配下に馳せ参じさせて頂きました。」
「松永久秀とは話がついておる。房満殿の働き次第では、久秀の家臣・高山友照が入っている沢城と領地を、房満殿に反すことになっておる。」
「重ね重ねの厚情感謝に耐えません、義直様の御恩に報いるべく、身命を賭して働かせていただきます。」
「うむ、それでは三好三人衆に組し、筒井順慶に配下となった芳野城の芳野清兼を攻める先鋒を任せたい。」
「光栄にございます、南朝の武士(もののふ)に相応しい働きをさせて頂きます。」
「期待しておる。」
「秋山右近将監直国と申します。」
「うむ、よくぞ味方してくれた。直国殿が城を提供してくれたおかげで、大和の平定が一気に進む。」
「義直様は南朝を重視して下さっておられますが、この宇陀郡は同じ南朝の北畠家の支配を受けております。我が兄・教家も、三好長慶様の婿として権勢を奮い北畠具教殿の命に従わなかったため、先年長慶様がお亡くなりになられ間隙に、具教殿の攻撃を受けてしまいました。」
「父上・宗丹殿が大河内城で人質になられ、そこで病気になられ亡くなられておられるのだな、それは存じておる。」
「当主であった兄・教家も病で亡くなっておりますが、私は父も兄も具教殿に暗殺されたと思っております。沢源五郎殿も、北畠家先代・晴具殿によって自刃させられ、幼い沢房満が家督を相続することになっております。そのこと義直様はどうお考えになられますか。」
「さて、詳しいことが分からんから何とも申せんが、宇陀郡の国衆はどうしたいのだ?」
「義直様の元で働かせて頂きたいのです。」
「だが同じ南朝の北畠具教殿と争う事は出来ん、しかしながら、宇陀衆が不当に扱われ無いように話しはさせてもらおう。」
「何分よろしくお願い申し上げます。」
義直は宇陀衆・特に沢房満を先鋒に芳野城に攻め掛かった。細川家・畠山家・六角家・三好家・北畠家と、時代時代の有力者に翻弄された大和国衆だが、今回は今川家・三好家・北畠家の争いに巻き込まれる事になった。
本来は興福寺を中核に纏まるべきなのだが、三好家が一乗院覚慶(足利覚慶)を殺害する時の攻防で、興福寺は荒廃しその戦力は枯渇してしまっていた。興福寺の衆徒・国民の国衆・地侍は、各個に周辺の国衆・地侍と争い、勢力拡大に邁進していた。
「和州宇陀三人衆」
宇陀秋山城主・秋山家
沢城主・沢家
芳野城主・芳野家
秋山家は、国造が貢進したという伊勢神宮領大和国宇陀神戸の神戸社の神主家で、同神宮の被官であったと考えられる。神戸社が春日社の末社になると、秋山氏は春日神人の国民として興福寺被官にもなったと考えられる。宇陀秋山城を拠点とし、その家祖は甲斐源氏の秋山光朝と自称しているが、その証明はされていない。
沢家は、宇陀郡沢の沢に拠った国人で、出自は藤原氏という。
芳野家は、宇陀郡東郷の芳野城に拠った国人で、鎌倉時代末期の正和4年(1315)の春日若宮神主祐臣の「祭礼記」に「流鏑馬十騎、芳野二騎」とみえ、興福寺の配下にあったと考えられる。
宇陀三将のうち秋山家・沢家が南朝方であったことは『太平記』の「神南合戦」の条に「和田・楠・真木・佐和(沢)・秋山」により推測できる。
秋山宗丹・伊勢・北畠具教との抗争に破れ人質として北畠家に赴いたが大河内城で病没した。
秋山教家・三好長慶の婿として権勢を奮った。南朝
秋山右近将監直国・秋山宗丹の次男・通称次郎。
井足実栄・井足城主・秋山直国家臣。
鳥尾屋石見守・秋山右近将監直国家臣
諸木野弥三郎・秋山右近将監直国家臣
秋山萬助・秋山右近将監直国家臣
秋山志摩守・通称島之助・秋山右近将監直国家臣
黒木藤五郎・黒木城主・秋山宗丹家臣
曾爾播磨守・宇陀郡今井城主・秋山宗丹に属した。
沢源五郎・北畠晴具によって自刃させられ、幼い沢房満が家督を相続した。
沢房満・官途は兵部大輔・南朝
1562年「教興寺の戦い」では、畠山高政方に属して三好長慶方と戦うが敗北
沢城には松永久秀の家臣高山友照が入った
沢親満・沢房満の男・通称源六郎
沢満兼・沢親満の男・通称隼人正
沢満清・沢親満の次男・通称次郎九郎。
内牧内記・沢房満家臣
檜牧静秀・宇陀郡檜牧城主・沢房満の枝連衆・式内御井神社の神官
山糟林与・沢房満家臣
芳野清兼・官途は宮内少輔・筒井家の寄騎衆として筒井家中の重臣たちと並ぶ。
1562年畠山高政に従い畿内侵攻し三好軍と「教興寺の戦い」で戦功
丹生谷金兵衛・芳野清兼家臣
「宇陀郡七人衆」残り4人
赤埴満近・宇陀郡赤埴城主
伊勢国司北畠具教の強い影響を受け、北畠具教の政治的な動向に左右された。
北畠具房に仕える一方で、宇陀郡三人衆のひとりである沢房満にも属した。
赤埴信安・赤埴満近の男
井足実栄・井足城主・秋山直国家臣。
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