83 / 119
本編
和泉侵攻
しおりを挟む
河内を制圧した直竜勢は、摂津に陣を構える三好三人衆を警戒しつつ、勢いを緩めることなく和泉に侵攻した。ただし三好三人衆を刺激しないように、摂津と和泉にまたがる位置にある、堺には近づかないようにした。
もちろん三好三人衆が摂津から動けないように、今川義元が大山崎に駐屯し続けていたし、京の将軍直属軍から2万が援軍に動いたという噂を流してもいた。これによって三好三人衆は動くに動けず、味方してくれていた畿内の国衆・地侍を見殺しにする結果となり、信用を失墜させてしまうことになった。
直竜の侵攻に対して、三好三人衆が援軍を出せなかったことで、和泉の国衆・地侍は草木が風になびくように直竜に降伏してきた。紀伊に近い地域は根来寺の影響が大きく、後々の統治に不都合が予想されたが、これは避けようがなかった。
直竜勢に同行している三好義継にとって大きかったのは、岸和田城主・松浦守の養嗣子となった、半弟の松浦肥前守信輝の城地が安堵されたことだった。
信輝は養嗣子に出されたことや、十河家を兄・十河存之ではなく、三好実休の息子で従兄弟の十河存保が継いだことに複雑な思いがあった。だがそれでも、兄・三好義継から情愛にこもった文を送られれば心も揺らぐ。何より三好三人衆と行動を共にしたら、松浦家自体が滅亡してしまうのだ、養家の一族一門譜代衆のことを考えれば降伏するしかなかった。
1568年『近江・観音寺城』今川義直・直虎
「母上様、幕府の御領所である河内十七箇所の代官職を、本当に三好義継に与えてよろしかったのですか」
「それでいいのです」
「ですが、基本的に幕府御領所は、私の直臣に任せることになっていましたよね」
「ですが公方様、三河や尾張・美濃では多くの国衆に代官職を任せたでしょ」
「あれはまだ覇権を獲得する前でしたし、今後は厳しく基準を設けることになったはずです」
「その通りです、ですがあの地は色々と因縁があるのです」
「あの地が原因で三好家が細川晴元と敵対したことや、三好長慶殿やその父親・三好元長が代官職を得ていたことですか」
「そうです、年貢さえしっかり納めてくれれば、三好家に入るのは1割程度です」
「面目を立てることで、与える領地を減らすということですか」
「そうです、弟の松浦信輝殿の所領を安堵した恩も与えています、義継殿に直接与える領地を減らすことが出来ます」
「もしかして、義継殿と信輝殿を相い争うわせるお心算ですか」
「義継殿が公方様に忠誠を尽くす限り、そのようなことはいたしませんよ」
もちろん三好三人衆が摂津から動けないように、今川義元が大山崎に駐屯し続けていたし、京の将軍直属軍から2万が援軍に動いたという噂を流してもいた。これによって三好三人衆は動くに動けず、味方してくれていた畿内の国衆・地侍を見殺しにする結果となり、信用を失墜させてしまうことになった。
直竜の侵攻に対して、三好三人衆が援軍を出せなかったことで、和泉の国衆・地侍は草木が風になびくように直竜に降伏してきた。紀伊に近い地域は根来寺の影響が大きく、後々の統治に不都合が予想されたが、これは避けようがなかった。
直竜勢に同行している三好義継にとって大きかったのは、岸和田城主・松浦守の養嗣子となった、半弟の松浦肥前守信輝の城地が安堵されたことだった。
信輝は養嗣子に出されたことや、十河家を兄・十河存之ではなく、三好実休の息子で従兄弟の十河存保が継いだことに複雑な思いがあった。だがそれでも、兄・三好義継から情愛にこもった文を送られれば心も揺らぐ。何より三好三人衆と行動を共にしたら、松浦家自体が滅亡してしまうのだ、養家の一族一門譜代衆のことを考えれば降伏するしかなかった。
1568年『近江・観音寺城』今川義直・直虎
「母上様、幕府の御領所である河内十七箇所の代官職を、本当に三好義継に与えてよろしかったのですか」
「それでいいのです」
「ですが、基本的に幕府御領所は、私の直臣に任せることになっていましたよね」
「ですが公方様、三河や尾張・美濃では多くの国衆に代官職を任せたでしょ」
「あれはまだ覇権を獲得する前でしたし、今後は厳しく基準を設けることになったはずです」
「その通りです、ですがあの地は色々と因縁があるのです」
「あの地が原因で三好家が細川晴元と敵対したことや、三好長慶殿やその父親・三好元長が代官職を得ていたことですか」
「そうです、年貢さえしっかり納めてくれれば、三好家に入るのは1割程度です」
「面目を立てることで、与える領地を減らすということですか」
「そうです、弟の松浦信輝殿の所領を安堵した恩も与えています、義継殿に直接与える領地を減らすことが出来ます」
「もしかして、義継殿と信輝殿を相い争うわせるお心算ですか」
「義継殿が公方様に忠誠を尽くす限り、そのようなことはいたしませんよ」
0
あなたにおすすめの小説
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
アブナイお殿様-月野家江戸屋敷騒動顛末-(R15版)
三矢由巳
歴史・時代
時は江戸、老中水野忠邦が失脚した頃のこと。
佳穂(かほ)は江戸の望月藩月野家上屋敷の奥方様に仕える中臈。
幼い頃に会った千代という少女に憧れ、奥での一生奉公を望んでいた。
ところが、若殿様が急死し事態は一変、分家から養子に入った慶温(よしはる)こと又四郎に侍ることに。
又四郎はずっと前にも会ったことがあると言うが、佳穂には心当たりがない。
海外の事情や英吉利語を教える又四郎に翻弄されるも、惹かれていく佳穂。
一方、二人の周辺では次々に不可解な事件が起きる。
事件の真相を追うのは又四郎や屋敷の人々、そしてスタンダードプードルのシロ。
果たして、佳穂は又四郎と結ばれるのか。
シロの鼻が真実を追い詰める!
別サイトで発表した作品のR15版です。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
改造空母機動艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。
そして、昭和一六年一二月。
日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。
「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる