女将軍 井伊直虎

克全

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本編

中国地方の攻防20

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古志豊長が味方についた原因が、小早川繁平の眼を潰した情け容赦のない外道な振る舞いであったことは述べた。これが以外に多くの国衆に影響を与えたことも述べたが、一番ありがたかったのは誇りを持ち忠誠心に溢れた武士が幕府軍に降伏臣従してきたことだった。

 実際問題として、今の毛利家は圧倒的に不利な状況に追い込まれていた。大内と尼子の対立から続く合戦の連続で、経済的にも食糧生産的にも限界に来ていた。生き残りをかけて北九州と伊予に攻め込んだが、大友は大内輝弘を周防に送り込み、尼子の残党も出雲に攻め込んできた。そこに圧倒的な戦力差で、幕府が討伐軍を送り込んできたのだ。

 毛利家は出雲と石見を完全に領地に加えたとしても、100万石に届かない状態で、民百姓を根こそぎ兵として動員しても5万兵に満たないのだ。それに対して幕府軍は、生産力に影響が出ないように、余裕を持って交代制度を取り入れたうえで9万の兵力を投入してきていた。いや、伯耆と備前・備中の国衆も幕府軍加わり、出雲・石見の尼子残党まで幕府軍と協力しているのだ。

 この状態なら誇りを持たない、いや、生き残る為なら何でもする普通の国衆・地侍なら幕府軍に寝返って当然だ。だが武士の誇りを持ち忠誠心に溢れる者は、この状態になろうとも毛利家を裏切りはしない、誇りを心に抱いて討ち死にしていくだろう。だがそんな武士こそ今後の幕府には必要不可欠であり、四国九州まで支配下に入れるには失いたくない貴重な存在だった。

 そんな誇り高い武士だからこそ、過去に親兄弟を殺し殺された事は水に流すこともできたし、卑劣な謀略も生き残り勝ち残る為と納得できた。だがいかに生き残る為の謀略とはいえ、主君のために討ち死にした者の子供の眼を潰し、家を乗っ取るようなまねだけは許せなかった。主君であり一族一門の党首である小早川繁平の眼を潰した、乃美家の者と肩を並べて戦うなど絶対に出来ないことだった。

 そんななかで比婆郡比叡尾山城を拠点とする三吉隆亮は、娘が毛利元就の側室となり椙杜元秋、出羽元倶、少輔七郎が産まれていこともあり、必死に配下の国衆・地侍を励まして篭城戦を展開していた。

 比婆郡甲山城を拠点とする山内隆通は、出雲に攻め込んでいる毛利主力軍への支援は勿論、今川直竜軍と戦う備後毛利勢への後詰として働いていた。毛利元就が当主を継いだ頃から味方していたこともあるが、立地的に裏切れば直ぐに討伐されるので、必死て毛利家のために働いていた。

 だが今川義元と武田直元が幕府軍を進めると、それにあわせて毛利家を見限る国衆・地侍が続出した。

世羅郡沼城:上原元祐
三谿郡南天山城:和智元郷
御調郡小童山城:渋川義満
芦田郡利鎌山城:福田盛雅
瀬賀山城:吉原元種
神石郡五品嶽城:宮景盛
小奴可盛常
備後本郷城:古志豊長
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