4 / 48
第一章
第4話:迷いと冤罪
しおりを挟む
サーニン皇太子はほんの一瞬だけ迷った。
振り返って正体が分かるようにして、ロバート王太子がこれ以上失言を重ねないように助けてやるべきか、それともこのまま奈落に落とすべきか。
直ぐに迷う事などないと判断した。
皇太子として大陸各国の王族や有力貴族の事は調べ記憶している。
ロバート王太子の下劣さをよく知っていたのだ。
マチルダ嬢とオリアンナ嬢の言動を見れば、これから起こる事は推測できた。
誰に味方すべきかなど考えるまでもない事だった。
マチルダ嬢を助けてロバート王太子を断罪する。
だがそのために皇国を争いに巻き込むわけにはいかない。
自分の名を輝かせるためにロバート王太子を断罪して戦争の原因となったら、確実に勝てるとしても敵味方に多くの死傷者が出てしまう。
そんな事をサーニン皇太子は望んでいなかった。
名前など売らなくても十分な地位にいる。
虚名を得るために家臣国民を苦しめる気など毛頭なかった。
だからロバート王太子が自滅するようにした。
「私は誇り高く勇敢なオリアンナ嬢を護る。
オリアンナ嬢を傷つけようとしている他国の卑怯者を許さん。
その卑劣漢を成敗してマチルダを断罪する。
だが平民や他国の密偵と不義密通を重ねる破廉恥な売女であろうと、オリアンナ嬢の姉でありファルド公爵家のモノである事は確かだ。
私の温情で命だけはとらないでいてやる。
私との婚約を破棄してこの国から追放するだけにしておいてやる」
ロバート王太子は自分の言動に酔っていた。
自分が芝居の主役になった気分でいた。
だから会場中がザワザワとしだしたのに全く気がつかなかった。
会場にいる王侯貴族の中には、背中だけのサーニン皇太子に気がつく者が現れていて、これはとんでもないことになりそうだと期待と不安で興奮していたのだ。
「さあマチルダ、自らの罪を告白して私の慈悲を請え。
そうするなら追放を国外から王家の直轄領に止めてやる。
ファルド公爵領で反省と祈りの日々を送るがいい」
気が弱く大人しいマチルダが反論できない事を知っての言動だった。
万が一マチルダが反論しそうになったら、オリアンナがマチルダを黙らせて謝る事になっていたから、何の不安もなく冤罪で断罪する心算だった。
だが嫉妬のあまり冤罪を被せた貴族家令息の始末に一瞬迷った。
自分で決闘を申し込んで殺せればカッコいいのだが、全く武芸に自信がない。
危険な事はしたくないし、痛い思いもしたくない。
だから確実に家臣に始末させることにしたのだった。
「オリバー、その密偵を捕らえて厳しく調べろ。
抵抗するようなら斬り殺して構わん」
ロバート王太子はそう言いながら守護騎士のオリバーに眼でサインを送った。
余計な事を言わないように殺してしまえと。
振り返って正体が分かるようにして、ロバート王太子がこれ以上失言を重ねないように助けてやるべきか、それともこのまま奈落に落とすべきか。
直ぐに迷う事などないと判断した。
皇太子として大陸各国の王族や有力貴族の事は調べ記憶している。
ロバート王太子の下劣さをよく知っていたのだ。
マチルダ嬢とオリアンナ嬢の言動を見れば、これから起こる事は推測できた。
誰に味方すべきかなど考えるまでもない事だった。
マチルダ嬢を助けてロバート王太子を断罪する。
だがそのために皇国を争いに巻き込むわけにはいかない。
自分の名を輝かせるためにロバート王太子を断罪して戦争の原因となったら、確実に勝てるとしても敵味方に多くの死傷者が出てしまう。
そんな事をサーニン皇太子は望んでいなかった。
名前など売らなくても十分な地位にいる。
虚名を得るために家臣国民を苦しめる気など毛頭なかった。
だからロバート王太子が自滅するようにした。
「私は誇り高く勇敢なオリアンナ嬢を護る。
オリアンナ嬢を傷つけようとしている他国の卑怯者を許さん。
その卑劣漢を成敗してマチルダを断罪する。
だが平民や他国の密偵と不義密通を重ねる破廉恥な売女であろうと、オリアンナ嬢の姉でありファルド公爵家のモノである事は確かだ。
私の温情で命だけはとらないでいてやる。
私との婚約を破棄してこの国から追放するだけにしておいてやる」
ロバート王太子は自分の言動に酔っていた。
自分が芝居の主役になった気分でいた。
だから会場中がザワザワとしだしたのに全く気がつかなかった。
会場にいる王侯貴族の中には、背中だけのサーニン皇太子に気がつく者が現れていて、これはとんでもないことになりそうだと期待と不安で興奮していたのだ。
「さあマチルダ、自らの罪を告白して私の慈悲を請え。
そうするなら追放を国外から王家の直轄領に止めてやる。
ファルド公爵領で反省と祈りの日々を送るがいい」
気が弱く大人しいマチルダが反論できない事を知っての言動だった。
万が一マチルダが反論しそうになったら、オリアンナがマチルダを黙らせて謝る事になっていたから、何の不安もなく冤罪で断罪する心算だった。
だが嫉妬のあまり冤罪を被せた貴族家令息の始末に一瞬迷った。
自分で決闘を申し込んで殺せればカッコいいのだが、全く武芸に自信がない。
危険な事はしたくないし、痛い思いもしたくない。
だから確実に家臣に始末させることにしたのだった。
「オリバー、その密偵を捕らえて厳しく調べろ。
抵抗するようなら斬り殺して構わん」
ロバート王太子はそう言いながら守護騎士のオリバーに眼でサインを送った。
余計な事を言わないように殺してしまえと。
12
あなたにおすすめの小説
【完結】猫を被ってる妹に悪役令嬢を押し付けられたお陰で人生180度変わりました。
本田ゆき
恋愛
「お姉様、可愛い妹のお願いです。」
そう妹のユーリに乗せられ、私はまんまと悪役令嬢として世に名前を覚えられ、終いには屋敷を追放されてしまった。
しかし、自由の身になった私に怖いものなんて何もない!
もともと好きでもない男と結婚なんてしたくなかったし堅苦しい屋敷も好きでなかった私にとってそれは幸運なことだった!?
※小説家になろうとカクヨムでも掲載しています。
3月20日
HOTランキング8位!?
何だか沢山の人に見て頂いたみたいでありがとうございます!!
感想あんまり返せてないですがちゃんと読んでます!
ありがとうございます!
3月21日
HOTランキング5位人気ランキング4位……
イッタイ ナニガ オコッテンダ……
ありがとうございます!!
婚約破棄はまだですか?─豊穣をもたらす伝説の公爵令嬢に転生したけど、王太子がなかなか婚約破棄してこない
nanahi
恋愛
火事のあと、私は王太子の婚約者:シンシア・ウォーレンに転生した。王国に豊穣をもたらすという伝説の黒髪黒眼の公爵令嬢だ。王太子は婚約者の私がいながら、男爵令嬢ケリーを愛していた。「王太子から婚約破棄されるパターンね」…私はつらい前世から解放された喜びから、破棄を進んで受け入れようと自由に振る舞っていた。ところが王太子はなかなか破棄を告げてこなくて…?
【完結】王太子に婚約破棄され、父親に修道院行きを命じられた公爵令嬢、もふもふ聖獣に溺愛される〜王太子が謝罪したいと思ったときには手遅れでした
まほりろ
恋愛
【完結済み】
公爵令嬢のアリーゼ・バイスは一学年の終わりの進級パーティーで、六年間婚約していた王太子から婚約破棄される。
壇上に立つ王太子の腕の中には桃色の髪と瞳の|庇護《ひご》欲をそそる愛らしい少女、男爵令嬢のレニ・ミュルべがいた。
アリーゼは男爵令嬢をいじめた|冤罪《えんざい》を着せられ、男爵令嬢の取り巻きの令息たちにののしられ、卵やジュースを投げつけられ、屈辱を味わいながらパーティー会場をあとにした。
家に帰ったアリーゼは父親から、貴族社会に向いてないと言われ修道院行きを命じられる。
修道院には人懐っこい仔猫がいて……アリーゼは仔猫の愛らしさにメロメロになる。
しかし仔猫の正体は聖獣で……。
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」
・ざまぁ有り(死ネタ有り)・ざまぁ回には「ざまぁ」と明記します。
・婚約破棄、アホ王子、モフモフ、猫耳、聖獣、溺愛。
2021/11/27HOTランキング3位、28日HOTランキング2位に入りました! 読んで下さった皆様、ありがとうございます!
誤字報告ありがとうございます! 大変助かっております!!
アルファポリスに先行投稿しています。他サイトにもアップしています。
虐げられたアンネマリーは逆転勝利する ~ 罪には罰を
柚屋志宇
恋愛
侯爵令嬢だったアンネマリーは、母の死後、後妻の命令で屋根裏部屋に押し込められ使用人より酷い生活をすることになった。
みすぼらしくなったアンネマリーは頼りにしていた婚約者クリストフに婚約破棄を宣言され、義妹イルザに婚約者までも奪われて絶望する。
虐げられ何もかも奪われたアンネマリーだが屋敷を脱出して立場を逆転させる。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
従姉妹に婚約者を奪われました。どうやら玉の輿婚がゆるせないようです
hikari
恋愛
公爵ご令息アルフレッドに婚約破棄を言い渡された男爵令嬢カトリーヌ。なんと、アルフレッドは従姉のルイーズと婚約していたのだ。
ルイーズは伯爵家。
「お前に侯爵夫人なんて分不相応だわ。お前なんか平民と結婚すればいいんだ!」
と言われてしまう。
その出来事に学園時代の同級生でラーマ王国の第五王子オスカルが心を痛める。
そしてオスカルはカトリーヌに惚れていく。
婚約者と家族に裏切られたので小さな反撃をしたら、大変なことになったみたいです
柚木ゆず
恋愛
コストール子爵令嬢マドゥレーヌ。彼女はある日、実父、継母、腹違いの妹、そして婚約者に裏切られ、コストール家を追放されることとなってしまいました。
ですがその際にマドゥレーヌが咄嗟に口にした『ある言葉』によって、マドゥレーヌが去ったあとのコストール家では大変なことが起きるのでした――。
妹に幼馴染の彼をとられて父に家を追放された「この家の真の当主は私です!」
佐藤 美奈
恋愛
母の温もりを失った冬の日、アリシア・フォン・ルクセンブルクは、まだ幼い心に深い悲しみを刻み付けていた。公爵家の嫡女として何不自由なく育ってきた彼女の日常は、母の死を境に音を立てて崩れ始めた。
父は、まるで悲しみを振り払うかのように、すぐに新しい妻を迎え入れた。その女性とその娘ローラが、ルクセンブルク公爵邸に足を踏み入れた日から、アリシアの運命は暗転する。
再婚相手とその娘ローラが公爵邸に住むようになり、父は実の娘であるアリシアに対して冷淡になった。継母とその娘ローラは、アリシアに対して日常的にそっけない態度をとっていた。さらに、ローラの策略によって、アリシアは婚約者である幼馴染のオリバーに婚約破棄されてしまう。
そして最終的に、父からも怒られ家を追い出されてしまうという非常に辛い状況に置かれてしまった。
婚約破棄された公爵令嬢は真の聖女でした ~偽りの妹を追放し、冷徹騎士団長に永遠を誓う~
鷹 綾
恋愛
公爵令嬢アプリリア・フォン・ロズウェルは、王太子ルキノ・エドワードとの幸せな婚約生活を夢見ていた。
しかし、王宮のパーティーで突然、ルキノから公衆の面前で婚約破棄を宣告される。
理由は「性格が悪い」「王妃にふさわしくない」という、にわかには信じがたいもの。
さらに、新しい婚約者候補として名指しされたのは、アプリリアの異母妹エテルナだった。
絶望の淵に突き落とされたアプリリア。
破棄の儀式の最中、突如として前世の記憶が蘇り、
彼女の中に眠っていた「真の聖女の力」――強力な治癒魔法と予知能力が覚醒する。
王宮を追われ、辺境の荒れた領地へ左遷されたアプリリアは、
そこで自立を誓い、聖女の力で領民を癒し、土地を豊かにしていく。
そんな彼女の前に現れたのは、王国最強の冷徹騎士団長ガイア・ヴァルハルト。
魔物の脅威から領地を守る彼との出会いが、アプリリアの運命を大きく変えていく。
一方、王宮ではエテルナの「偽りの聖女の力」が露呈し始め、
ルキノの無能さが明るみに出る。
エテルナの陰謀――偽手紙、刺客、魔物の誘導――が次々と暴かれ、
王国は混乱の渦に巻き込まれる。
アプリリアはガイアの愛を得て、強くなっていく。
やがて王宮に招かれた彼女は、聖女の力で王国を救い、
エテルナを永久追放、ルキノを王位剥奪へと導く。
偽りの妹は孤独な追放生活へ、
元婚約者は権力を失い後悔の日々へ、
取り巻きの貴族令嬢は家を没落させ貧困に陥る。
そしてアプリリアは、愛するガイアと結婚。
辺境の領地は王国一の繁栄地となり、
二人は子に恵まれ、永遠の幸せを手にしていく――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる