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第一章
第6話:血飛沫
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サーニン皇太子は素早くマチルダと身体を入れ替えた。
自ら望んで剣の下に身を躍らせた。
マチルダが密偵を庇って自ら犠牲になろうとした時には、オリバーの良心がズキリと疼いたが、次に貴族の令息がマチルダを庇おうとしたのを見て激しい良心の呵責を覚えたが、どうしようもなかった。
オリバーの家は代々王家に仕える騎士だ。
王太子の命令に逆らう事などできない。
それが例え悪逆非道な事であろうと犯罪であろうとだ。
逆らうのなら家族共々断罪されることを覚悟しなければいけない。
自分一人が家を捨てて許されるはずもない。
ロバート王太子なら残った家族を必ず陥れて惨殺する。
もし家族と一緒に家を捨て国を捨てたとしても追手が放たれる。
執念深いロバート王太子が、自分の悪行を知る人間を放置するわけがない。
地の果てまで追いかけさせることは明白だった。
国で上位十騎にはいる騎士でも、主家を裏切った者に再仕官の道などない。
追手から守ってくれる者もなく、収入の道も断たれて家族と共に逃亡する。
どう考えても犯罪者ギルドに入るしか生き延びる道はない。
どうせ罪を重ねるのなら主家の命令に従った方がマシだったのだ。
良心に激しい痛みを感じながらも、オリバーの剣は早く鋭かった。
振り返ったサーニン皇太子の顔を斬り裂き、激しい血飛沫を飛ばした。
オリバーはその時初めて自分が斬った相手がサーニン皇太子だと悟った。
同時にロバート王太子が断罪される事と、フランドル王国が窮地に陥る事を瞬時に悟った。
「「「「「キャアアアアアアアア」」」」」
会場中で悲鳴が巻き起こった。
多くの人が斬られて血塗れになっているのがサーニン皇太子だとと悟った。
顔を見分けた者もいれば、胸の印で分かった者もいた。
全員がフランドル王国が滅ぶと確信した。
それなりの戦力を誇るフランドル王国であろうと、皇太子を殺されて激怒したルーサン皇国の侵攻を止める事など不可能だ。
全員がロバート王太子の愚行を見ている。
誤魔化す方法など一切ない。
これほど大義名分がない状態で戦争になれば、国内貴族のほとんどが王家を見捨てて援軍を送らないだろう。
下手をすれば進んでルーサン皇国に味方して生き残りを図る。
「おのれロバート。
卑怯にも背後から守護騎士に襲させるとは、恥を知れ恥を。
このような卑劣な行いがフランドル王家の遣り口か。
皇室の名誉と騎士の誇りにかけてロバートとフランドル王家を許さん。
族滅させるまでは地の果てまで追いかる。
庇い立てする王侯貴族は一味同心と断じて同じく族滅させる。
そう覚えておけ」
サーニン皇太子は血塗れになりながら最初にロバートを睨みつけ、続いて会場中にいる王侯貴族を見渡し睨め付けながら断言した。
サーニン皇太子生きている事に会場中の者が驚き安堵した。
同時に自分達がどうすべきを急いで考え始めた。
自ら望んで剣の下に身を躍らせた。
マチルダが密偵を庇って自ら犠牲になろうとした時には、オリバーの良心がズキリと疼いたが、次に貴族の令息がマチルダを庇おうとしたのを見て激しい良心の呵責を覚えたが、どうしようもなかった。
オリバーの家は代々王家に仕える騎士だ。
王太子の命令に逆らう事などできない。
それが例え悪逆非道な事であろうと犯罪であろうとだ。
逆らうのなら家族共々断罪されることを覚悟しなければいけない。
自分一人が家を捨てて許されるはずもない。
ロバート王太子なら残った家族を必ず陥れて惨殺する。
もし家族と一緒に家を捨て国を捨てたとしても追手が放たれる。
執念深いロバート王太子が、自分の悪行を知る人間を放置するわけがない。
地の果てまで追いかけさせることは明白だった。
国で上位十騎にはいる騎士でも、主家を裏切った者に再仕官の道などない。
追手から守ってくれる者もなく、収入の道も断たれて家族と共に逃亡する。
どう考えても犯罪者ギルドに入るしか生き延びる道はない。
どうせ罪を重ねるのなら主家の命令に従った方がマシだったのだ。
良心に激しい痛みを感じながらも、オリバーの剣は早く鋭かった。
振り返ったサーニン皇太子の顔を斬り裂き、激しい血飛沫を飛ばした。
オリバーはその時初めて自分が斬った相手がサーニン皇太子だと悟った。
同時にロバート王太子が断罪される事と、フランドル王国が窮地に陥る事を瞬時に悟った。
「「「「「キャアアアアアアアア」」」」」
会場中で悲鳴が巻き起こった。
多くの人が斬られて血塗れになっているのがサーニン皇太子だとと悟った。
顔を見分けた者もいれば、胸の印で分かった者もいた。
全員がフランドル王国が滅ぶと確信した。
それなりの戦力を誇るフランドル王国であろうと、皇太子を殺されて激怒したルーサン皇国の侵攻を止める事など不可能だ。
全員がロバート王太子の愚行を見ている。
誤魔化す方法など一切ない。
これほど大義名分がない状態で戦争になれば、国内貴族のほとんどが王家を見捨てて援軍を送らないだろう。
下手をすれば進んでルーサン皇国に味方して生き残りを図る。
「おのれロバート。
卑怯にも背後から守護騎士に襲させるとは、恥を知れ恥を。
このような卑劣な行いがフランドル王家の遣り口か。
皇室の名誉と騎士の誇りにかけてロバートとフランドル王家を許さん。
族滅させるまでは地の果てまで追いかる。
庇い立てする王侯貴族は一味同心と断じて同じく族滅させる。
そう覚えておけ」
サーニン皇太子は血塗れになりながら最初にロバートを睨みつけ、続いて会場中にいる王侯貴族を見渡し睨め付けながら断言した。
サーニン皇太子生きている事に会場中の者が驚き安堵した。
同時に自分達がどうすべきを急いで考え始めた。
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