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第二章

第43話:強襲

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「逃がすな、誰一人逃がすんじゃない。
 降伏する者は厳重に縛り上げておけ。
 魔族が人間に化けている可能性もある。
 降伏してきた者にも気を許すな」

「「「「「おう」」」」」

 皇国軍は通達も警告もなく問答無用で修道院に襲い掛かった。
 完全な奇襲のはずだったが完全武装で迎撃された。
 まあ、事前に大規模儀式魔術と大規模儀式呪術が放たれている。
 王都での事を考えて修道院と邪神との繋がりを断つために行われた。
 だから事前に邪神教徒に察知されていても仕方がない事だった。
 修道院の修道士や修道女とは思えない戦闘力だった。
 実戦を潜り抜けた完全武装の騎士達でも簡単には斃せない強さだった。

「ふん、問答無用の襲撃とは、思い切りがいいな」

 邪神殿大神官ルードヴィヒが不敵な笑いを浮かべながらつぶやいた。

「どうなされますか」

 邪神殿神官長ラーガルスが面白そうに聞き返す。

「分かっているであろうに、今さら何を聞く事がある。
 修道院には怨嗟の感情や失われた命を力に変える魔法陣が描かれておる。
 精々殺し合ってもらうさ」

「その力は全て大神官殿の力になりますね」

「不服か、不服ならばリトラストのように袂を分かつか。
 私は別にかまわんぞ、邪神様を奉ずる拠点が増える事はよろこばしいからな」

「いえ、いえ、私は死ぬまで大神官殿と共にありますよ」

「くっくっくっくっ、私が死んだ後で全てを引き継ぐつもりか。
 確かにそれが一番効率的だな。
 だがそれではお前が一番になれる可能性は低いぞ」

「一番でなくても構いません。
 積極的に一番を目指して殺されては何の意味もありません。
 確実に二番を確保しつつ、大神官殿が死ぬような事があれば一番を手に入れる」

「ラーガルスらしいな、だが二番の確保するならそれなりに働いてもらう。
 オリアンナを使って皇国軍を皆殺しにしてもらおうか」

「宜しいのですか、邪神様の依り代にするのではありませんか」

「まだ上級魔族の召喚憑依に成功した程度だ。
 魔将軍や魔王など、まだまだ先は長い。
 オリアンナ程度を惜しんでケガをしたりせっかく蓄えた力を失ったりはできん。
 それにオリアンナが皇国軍を殺せば殺すほど力が手に入る。
 力が手に入ればオリアンナの代わりなどいくらでも手に入る」

「分かりました、では暴れさせてきましょう」

 リトラストはそう言うと大神官の前から消えた。
 その後は皇国軍が地獄を見ることになった。
 下級魔族と戦った時ですら一方的な惨殺になったのだ。
 相手が上級魔族では全く勝ち目がなかった。
 だが、今回は前回と違い魔術師と呪術師の支援があった。
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