44 / 48
第二章
第44話:それぞれの決断
「皇太子殿下、こちらに」
最側近達が目の見えなくなった皇太子を安全な場所に逃がそうとする。
桁外れの騎士であろうと急に失明してしまってはどうしようもない。
生れた時からの視覚障害者なら長年かけてそれなりの戦い方ができる。
時間があれは気配を感じて戦う術を覚えられたかもしれない。
だが今の皇太子にそんな事は不可能だった。
側近に勧められるまま逃げる以外に何の方法もない。
「マチルダ様、私の唱える詠唱と結印を覚えてください」
マチルダ嬢に呪術を教える役目の呪術侍女が小声で話しかける。
皇太子宮で奉公する侍女の大半が皇太子に救われた者達だ。
だから全てを捨ててでも恩返ししたいと思っている者が多い。
だが以前ケインが口にしたように、助けようとしても逆に皇太子の害になる。
後々の人のために、皇太子殿下が自傷行為をして今の状態よりも悪い状態にしてしまうかもしれないと思うと、何もできなくなってしまっていた。
だが今この状態ではそんな事も言っていられない。
上級魔族が襲い掛かって来ている状況では皇太子殿下の命が最優先だった。
一騎当千の守護騎士達でも防戦一方で皇太子に逃げてもらうような状況だ。
皇太子殿下が視力を失った状況では逃げることもままならない。
とにかく今は視力を回復させて逃げ延びてもらわなければいけない。
呪術侍女はそう覚悟を決めたのだ。
「貴女の決意は分かりました。
私では限られた攻撃や防御の呪術しか使えません。
皇太子殿下の視力は私が回復させます。
貴女は守護騎士の支援をお願いします」
「ギャアアアアア」
上級魔族を召喚憑依させられたオリアンナが、あの美しかった容姿のまま返り血で真っ赤に染まった姿で襲い掛かってきた。
皇太子守護騎士や選びぬかれた歴戦の護衛騎士を切り裂いて近づいてくる。
支援役の魔術師や呪術師がいなければ即死していただろうほどの重症だ。
最後まで皇太子を側で護るべき守護騎士ももうオルガしかいない。
ラルフなどの守護騎士は修道院に攻め込んでいた。
多くの反対を押し切って皇太子が決めた事だった。
「ラルフ達が敵に突破されなければ何も問題などない」と皇太子に言い切られては、できませんとは言えないのが騎士や戦士の矜持だった。
「オルガと戦闘侍女、魔術侍女や呪術侍女いる」と言われれば、側近達もそれ以上の反対を言いだし難かったのだ。
「私達が時間を稼ぎます。
オルガ殿は殿下を護って馬車で逃げてください」
最後の最後まで皇太子を護っていた侍女達が前に出た。
命を賭けて皇太子の盾になる心算なのだ。
彼女達も並の騎士を凌駕するほどの戦士ではある。
だが守護騎士すら簡単に引き裂く上級魔族と戦って生き延びられるわけがない。
マチルダ嬢は決断した。
最側近達が目の見えなくなった皇太子を安全な場所に逃がそうとする。
桁外れの騎士であろうと急に失明してしまってはどうしようもない。
生れた時からの視覚障害者なら長年かけてそれなりの戦い方ができる。
時間があれは気配を感じて戦う術を覚えられたかもしれない。
だが今の皇太子にそんな事は不可能だった。
側近に勧められるまま逃げる以外に何の方法もない。
「マチルダ様、私の唱える詠唱と結印を覚えてください」
マチルダ嬢に呪術を教える役目の呪術侍女が小声で話しかける。
皇太子宮で奉公する侍女の大半が皇太子に救われた者達だ。
だから全てを捨ててでも恩返ししたいと思っている者が多い。
だが以前ケインが口にしたように、助けようとしても逆に皇太子の害になる。
後々の人のために、皇太子殿下が自傷行為をして今の状態よりも悪い状態にしてしまうかもしれないと思うと、何もできなくなってしまっていた。
だが今この状態ではそんな事も言っていられない。
上級魔族が襲い掛かって来ている状況では皇太子殿下の命が最優先だった。
一騎当千の守護騎士達でも防戦一方で皇太子に逃げてもらうような状況だ。
皇太子殿下が視力を失った状況では逃げることもままならない。
とにかく今は視力を回復させて逃げ延びてもらわなければいけない。
呪術侍女はそう覚悟を決めたのだ。
「貴女の決意は分かりました。
私では限られた攻撃や防御の呪術しか使えません。
皇太子殿下の視力は私が回復させます。
貴女は守護騎士の支援をお願いします」
「ギャアアアアア」
上級魔族を召喚憑依させられたオリアンナが、あの美しかった容姿のまま返り血で真っ赤に染まった姿で襲い掛かってきた。
皇太子守護騎士や選びぬかれた歴戦の護衛騎士を切り裂いて近づいてくる。
支援役の魔術師や呪術師がいなければ即死していただろうほどの重症だ。
最後まで皇太子を側で護るべき守護騎士ももうオルガしかいない。
ラルフなどの守護騎士は修道院に攻め込んでいた。
多くの反対を押し切って皇太子が決めた事だった。
「ラルフ達が敵に突破されなければ何も問題などない」と皇太子に言い切られては、できませんとは言えないのが騎士や戦士の矜持だった。
「オルガと戦闘侍女、魔術侍女や呪術侍女いる」と言われれば、側近達もそれ以上の反対を言いだし難かったのだ。
「私達が時間を稼ぎます。
オルガ殿は殿下を護って馬車で逃げてください」
最後の最後まで皇太子を護っていた侍女達が前に出た。
命を賭けて皇太子の盾になる心算なのだ。
彼女達も並の騎士を凌駕するほどの戦士ではある。
だが守護騎士すら簡単に引き裂く上級魔族と戦って生き延びられるわけがない。
マチルダ嬢は決断した。
あなたにおすすめの小説
妹に幼馴染の彼をとられて父に家を追放された「この家の真の当主は私です!」
佐藤 美奈
恋愛
母の温もりを失った冬の日、アリシア・フォン・ルクセンブルクは、まだ幼い心に深い悲しみを刻み付けていた。公爵家の嫡女として何不自由なく育ってきた彼女の日常は、母の死を境に音を立てて崩れ始めた。
父は、まるで悲しみを振り払うかのように、すぐに新しい妻を迎え入れた。その女性とその娘ローラが、ルクセンブルク公爵邸に足を踏み入れた日から、アリシアの運命は暗転する。
再婚相手とその娘ローラが公爵邸に住むようになり、父は実の娘であるアリシアに対して冷淡になった。継母とその娘ローラは、アリシアに対して日常的にそっけない態度をとっていた。さらに、ローラの策略によって、アリシアは婚約者である幼馴染のオリバーに婚約破棄されてしまう。
そして最終的に、父からも怒られ家を追い出されてしまうという非常に辛い状況に置かれてしまった。
聖女で美人の姉と妹に婚約者の王子と幼馴染をとられて婚約破棄「辛い」私だけが恋愛できず仲間外れの毎日
佐藤 美奈
恋愛
「好きな人ができたから別れたいんだ」
「相手はフローラお姉様ですよね?」
「その通りだ」
「わかりました。今までありがとう」
公爵令嬢アメリア・ヴァレンシュタインは婚約者のクロフォード・シュヴァインシュタイガー王子に呼び出されて婚約破棄を言い渡された。アメリアは全く感情が乱されることなく婚約破棄を受け入れた。
アメリアは婚約破棄されることを分かっていた。なので動揺することはなかったが心に悔しさだけが残る。
三姉妹の次女として生まれ内気でおとなしい性格のアメリアは、気が強く図々しい性格の聖女である姉のフローラと妹のエリザベスに婚約者と幼馴染をとられてしまう。
信頼していた婚約者と幼馴染は性格に問題のある姉と妹と肉体関係を持って、アメリアに冷たい態度をとるようになる。アメリアだけが恋愛できず仲間外れにされる辛い毎日を過ごすことになった――
閲覧注意
【完結】無能な聖女はいらないと婚約破棄され、追放されたので自由に生きようと思います
黒幸
恋愛
辺境伯令嬢レイチェルは学園の卒業パーティーでイラリオ王子から、婚約破棄を告げられ、国外追放を言い渡されてしまう。
レイチェルは一言も言い返さないまま、パーティー会場から姿を消した。
邪魔者がいなくなったと我が世の春を謳歌するイラリオと新たな婚約者ヒメナ。
しかし、レイチェルが国からいなくなり、不可解な事態が起き始めるのだった。
章を分けるとかえって、ややこしいとの御指摘を受け、章分けを基に戻しました。
どうやら、作者がメダパニ状態だったようです。
表紙イラストはイラストAC様から、お借りしています。
「お前は妹の身代わりにすぎなかった」と捨てられた養女——でも領民が選んだのは、血の繋がらない姉の方だった
歩人
ファンタジー
孤児のフィーネは伯爵家に引き取られた。
病弱な令嬢エーデルの「代役」として。社交も、領地管理も、使用人の采配も——
全て「エーデル様」の名前で、完璧にこなしてきた。
十一年後。健康を取り戻したエーデルが屋敷に帰還した日、伯爵は言った。
「もう用済みだ、出ていけ」
フィーネは静かに屋敷を去った。
それから一月もしないうちに、領民たちが伯爵に詰め寄った。
「前のお嬢様を返してください」
偽者に奪われた聖女の地位、なんとしても取り返さ……なくていっか! ~奪ってくれてありがとう。これから私は自由に生きます~
日之影ソラ
恋愛
【小説家になろうにて先行公開中!】
https://ncode.syosetu.com/n9071il/
異世界で村娘に転生したイリアスには、聖女の力が宿っていた。本来スローレン公爵家に生まれるはずの聖女が一般人から生まれた事実を隠すべく、八歳の頃にスローレン公爵家に養子として迎え入れられるイリアス。
貴族としての振る舞い方や作法、聖女の在り方をみっちり教育され、家の人間や王族から厳しい目で見られ大変な日々を送る。そんなある日、事件は起こった。
イリアスと見た目はそっくり、聖女の力?も使えるもう一人のイリアスが現れ、自分こそが本物のイリアスだと主張し、婚約者の王子ですら彼女の味方をする。
このままじゃ聖女の地位が奪われてしまう。何とかして取り戻そう……ん?
別にいっか!
聖女じゃないなら自由に生きさせてもらいますね!
重圧、パワハラから解放された聖女の第二の人生がスタートする!!
【完結】婚約を解消して進路変更を希望いたします
宇水涼麻
ファンタジー
三ヶ月後に卒業を迎える学園の食堂では卒業後の進路についての話題がそここで繰り広げられている。
しかし、一つのテーブルそんなものは関係ないとばかりに四人の生徒が戯れていた。
そこへ美しく気品ある三人の女子生徒が近付いた。
彼女たちの卒業後の進路はどうなるのだろうか?
中世ヨーロッパ風のお話です。
HOTにランクインしました。ありがとうございます!
ファンタジーの週間人気部門で1位になりました。みなさまのおかげです!
ありがとうございます!
婚約破棄されたので、聖女になりました。けど、こんな国の為には働けません。自分の王国を建設します。
ぽっちゃりおっさん
恋愛
公爵であるアルフォンス家一人息子ボクリアと婚約していた貴族の娘サラ。
しかし公爵から一方的に婚約破棄を告げられる。
屈辱の日々を送っていたサラは、15歳の洗礼を受ける日に【聖女】としての啓示を受けた。
【聖女】としてのスタートを切るが、幸運を祈る相手が、あの憎っくきアルフォンス家であった。
差別主義者のアルフォンス家の為には、祈る気にはなれず、サラは国を飛び出してしまう。
そこでサラが取った決断は?
我が家の乗っ取りを企む婚約者とその幼馴染みに鉄槌を下します!
真理亜
恋愛
とある侯爵家で催された夜会、伯爵令嬢である私ことアンリエットは、婚約者である侯爵令息のギルバートと逸れてしまい、彼の姿を探して庭園の方に足を運んでいた。
そこで目撃してしまったのだ。
婚約者が幼馴染みの男爵令嬢キャロラインと愛し合っている場面を。しかもギルバートは私の家の乗っ取りを企んでいるらしい。
よろしい! おバカな二人に鉄槌を下しましょう!
長くなって来たので長編に変更しました。