激情の聖女、婚約破棄されて切れる

克全

文字の大きさ
5 / 5

第4話闘神視点

しおりを挟む
「やあ、初めまして。
 俺はブルートだ。
 このダンジョンに潜るなら、俺のような案内役が必要になるのは冒険者ギルドで説明されたね?
 だから最初は俺の指揮で動いてくれ。
 ギルドが認めてくれたら二人で狩りができるようになる」

 ついにこの時が来た。
 ずっと愛おしく思っていた、聖女ダイアナと一緒に戦うことができる。
 ようやく念願かなって胸が躍る思いだ。
 人間の身体に似せた現身を造っておいてよかった。

 二〇〇センチの堂々たる体躯に鋼の筋肉、鮮紅の怒髪と深紅瞳に赤銅色肌。
 闘神と呼ばれる我にふさわしいみごとな肉体である。
 問題は使う武器が蛇矛と剣という闘神が得意とする武器だから、そこから正体がバレる事だが、大雑把な聖女ダイアナなら問題ないだろう。

 本当に聖女ダイアナが単純で大雑把な性格でよかった。
 我の事を全く疑うことなくパーティーメンバーに受け入れてくれた。
 だが大雑把過ぎて、これほどの偉丈夫に全く魅力を感じてくれないのは、大きな計算違いだった。
 色恋沙汰に発展することを少しは期待してたのに。

 だが幸せな半年であったことは間違いない。
 我が創り出した前人未到のダンジョンを、わずか半年で人類最深階まで到達するのだから、さすが我が聖女である。
 この速さでここまで強くなるとは、我すら予測していなかった。

「すまないけれど、狩りは今日までよ。
 私にはやらなければいけない使命があるの。
 ここでこのパーティーは解散よ」

 とつぜん聖女ダイアナがパーティー解散を言いだした。
 こうなる事は分かったいた
 ラステ王国の惨状は、我は遠見で見聞きしているからよく分かっていたのだ。
 カミラに魅入られたジョージ国王が王族を皆殺しにして民を虐げ、永遠の美貌を求めるカミラのために、乙女の血風呂や生血ワインを与えているのだ。
 聖女ダイアナがそれを聞いて黙っているわけがない。

「私もお手伝いさせていただきます。
 戦い死んでいった闘神殿の仲間達の敵討ちです」

 我の神官達も信徒達も、正義のために戦い死んでいった。
 他の神の手前、神力で介入することは躊躇われたが、現身の身体なら文句も言われないだろうから、ここは敵を討ってやろう。

「俺も手伝わせてもらうよ。
 お前達と一緒に戦うのはとても面白いからな」

 ここでも聖女ダイアナの大雑把な性格がよかった。
 変に気を使う事もなく、来る者拒まず去る者追わずで、一緒に戦うことになったが、楽勝だった。
 我がつきっきりで鍛えた闘神殿の聖女ダイアナと、魔眼の持ち主で我の使徒グレンに、闘神の我がいるんだから、人間などに負けるはずがないのだ。

 ダイアナな戦いぶりは我の聖女に相応しい。
 不正義な復讐など一切加えない。
 だからカミラもジョージ国王も一緒に悪事を働いていた者も、一刀で殺していた。
 我は満足である。
 荒廃した国の復興など我の趣味ではないが、大雑把なダイアナが半泣きになりながら頑張っているいる以上、最後まで手伝ってやるしかあるまい。
しおりを挟む
感想 4

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(4件)

くろが
2020.06.16 くろが

開始10秒で王子が死んで吹いた

2020.06.16 克全

感想ありがとうございます。

新しいパターンを試してみましたが、不人気でした……

解除
かきくけお
2020.06.15 かきくけお

うわ闘神も大概ですね、私利私欲の塊に感じますよ。

2020.06.15 克全

感想ありがとうございます。

そうですね、力があるだけで身勝手ですね。

解除
ゆうちゃん
2020.06.15 ゆうちゃん

誤字報告です。
第4話の最後いるいると重複になってますよ。いるだけだと思いますよ。

2020.06.15 克全

感想ありがとうございます。

見直します。

解除

あなたにおすすめの小説

【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました

雨宮羽那
恋愛
 結婚して5年。リディアは悩んでいた。  夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。  ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。  どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。  そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。  すると、あら不思議。  いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。 「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」 (誰ですかあなた) ◇◇◇◇ ※全3話。 ※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
ヒロインがいない。 もう一度言おう。ヒロインがいない!! 乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。 ※ざまぁ展開あり

逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ

朝霞 花純@電子書籍発売中
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。 理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。 逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。 エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。

気絶した婚約者を置き去りにする男の踏み台になんてならない!

ひづき
恋愛
ヒロインにタックルされて気絶した。しかも婚約者は気絶した私を放置してヒロインと共に去りやがった。 え、コイツらを幸せにする為に私が悪役令嬢!?やってられるか!! それより気絶した私を運んでくれた恩人は誰だろう?

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。