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第1章
第31話:閑話・レディング辺境伯家副騎士団長
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剛剣の異名を持つ副団長は、実力的には騎士団の団長だった。
騎士団長は辺境伯の弟で、実力ではなく家柄で団長になっていた。
とはいえ、全くの無能でも弱者でもなく、副団長がいなければ、実力で団長になれるくらいの努力を重ねた人だ。
国内の名のある騎士団長にも王国騎士団長にも引けを取らない精強な騎士だ。
だからこそ副騎士団長は、安心して騎士団を団長に任せられた。
隣国への守りを任せて、自らヴァンパイア騒動に対処できた。
そうでなければ、実力も危機感も劣る騎士を派遣しなければいけなかった。
副騎士団長は子飼いの騎士たちを率いて人が消えた村や街を見て回った。
代々辺境伯家に仕えて、ささやかな領地を得ている副騎士団長の家は、領民ととても近い暮らしをしている。
冒険者や猟師になるしかない領民の次男三男の為に、自ら剣や弓の稽古をつけるほど、領民思いの領主だった。
そんな副騎士団長だから、剣や槍の才がある領民には、惜しむことなく支援した。
才があるのに鎧や馬がそろえられずに騎士になれない領民は、自分の従者にして共にダンジョンに潜り、騎士への道を切り開いてやった。
代々そんな領主が続いたので、ささやかな領地なのに、平民から辺境伯家の騎士に取立てられる者が数多くいたし、マンガン級以上の冒険者も数多くいた。
そんな領民冒険者から、ギルドの緊急指名依頼を聞かされたのだ。
背中を任せられる子飼いの騎士を引き連れて、直接調査に向かうのも当然だった。
「待て、お前たちは誰だ?!」
そんな副騎士団長が調査に選んだ街に向かっていると、半死半生の状態で領都への街道を進む、冒険者風の男たちと遭遇したのだ。
「「「「「ひぃいいいいい」」」」」
「安心しろ、私たちは辺境伯家の騎士だ」
「「「「「よかったぁ~」」」」」
副騎士団長が質問している間にも、遅れていたチタン級冒険者たちが次々と追いついていた。
パーティーでそろって逃げる者たちは信頼できるが、脚の遅い者を見捨てて先に逃げる冒険者は、とても信頼に値しない。
命が惜しいのは誰も同じで、人間らしいと言えば人間らしいが、志が高くて騎士になった者から見れば、醜悪としか言えない。
「落ち着いたのなら話せ、何があったのだ」
「街が、街がヴァンパイアに襲われて」
「ゾンビです、ゾンビとレブナントです」
「住民全員がゾンビとレブナントになっていました」
「お前たちは急いで領都に知らせろ!」
辺境伯家の副騎士団長はそう言うと、愛馬に拍車を入れて先を急いだ。
子飼いの騎士八騎が急いで後を追いかけて、左右と背後を固める。
指揮官である前に恩人である副騎士団長を奇襲させないという決意のもとに。
「ナイト・チャージ!」
「「「「「おう!」」」」」
街に急いだ副騎士団長が見たのは、オークとコボルトの群れだった。
ほんの少しだけ遅くて、ヴァンパイア・ハンターが殺された後だった。
肉食のコボルトが、遺体を貪り喰らう現場だった。
怒髪冠を衝くのを必死で抑えた副騎士団長は、静かに騎士突撃を命じた。
九騎の騎士が、ランスを構えて馬に拍車を入れた。
魔獣の血が流れる軍馬が、重戦車のように突っ込む。
タングステン級の冒険者で歴戦のヴァンパイア・ハンターでもある強者を、軽々と殺すリーダー・オークである。
血筋や金で地位を得た騎士なら、遭遇しただけで大小便を垂れ流して気絶する。
だが、副騎士団長と子飼いの騎士たちは全く動じることなく突撃する。
魔獣の血が流れているからこそ、強者に対する恐怖感、逃げる本能が強い軍馬が、臆することなく敵の群れに突撃する。
そん事ができるのは、副騎士団長に対する絶対の信頼があるからだ。
生死の狭間に立って自分を鍛え続ける副騎士団長の側で育ったからだ。
尊敬する副騎士団長、いや、主君の盾になりたいと想い続けてきたからだ。
ガッ、ゴーン!
副騎士団長が放つ必殺のランスと、強大なリーダー・オークが振り抜く丸太。
その二つが交差した時、大魔境産の丸太が鉄製のランスをへし曲げた。
だが、銀級冒険者に匹敵すると言われる副騎士団長は、流れるように二の太刀を繰り出していた。
左手で腰の剣を抜き、リーダー・オークの心臓を刺し貫いていた。
ヴァンパイア・ハンターの仲間が放った手裏剣では傷一つつけられなかった皮膚を貫き、緩衝材と変わらない脂肪層と鋼鉄よりも硬い筋肉層も貫いていた。
「ギャッフ!」
あれほど強大に思えたリーダー・オークを、たった一度のナイト・チャージで絶命させるのだから、副騎士団長の強さはこの国でも五指に入る。
「「「「「ギャッフ!」」」」」
副騎士団長の子飼いの騎士たちも負けてはいない。
リーダー・オークを守ろうとしたホブ・オークを防ぎ斃していた。
副騎士団長がリーダー・オークに専念できるように、ホブ・オークを斃していた。
最強のリーダー・オーク、リーダー・オークに次ぐホブ・オークを斃せば、後は草刈り場と同じだった。
見逃したら領民の災厄になると分かっている、オークやコボルトを逃がす副騎士団長や騎士たちではない。
一体も逃がさないように、徹底した殲滅を行った。
ヴァンパイア・ハンターが発見した時よりも数は減っていたが、それでも千体弱のオークとコボルトがいたが、その全てを斃して辺境の安全を確保した。
騎士団長は辺境伯の弟で、実力ではなく家柄で団長になっていた。
とはいえ、全くの無能でも弱者でもなく、副団長がいなければ、実力で団長になれるくらいの努力を重ねた人だ。
国内の名のある騎士団長にも王国騎士団長にも引けを取らない精強な騎士だ。
だからこそ副騎士団長は、安心して騎士団を団長に任せられた。
隣国への守りを任せて、自らヴァンパイア騒動に対処できた。
そうでなければ、実力も危機感も劣る騎士を派遣しなければいけなかった。
副騎士団長は子飼いの騎士たちを率いて人が消えた村や街を見て回った。
代々辺境伯家に仕えて、ささやかな領地を得ている副騎士団長の家は、領民ととても近い暮らしをしている。
冒険者や猟師になるしかない領民の次男三男の為に、自ら剣や弓の稽古をつけるほど、領民思いの領主だった。
そんな副騎士団長だから、剣や槍の才がある領民には、惜しむことなく支援した。
才があるのに鎧や馬がそろえられずに騎士になれない領民は、自分の従者にして共にダンジョンに潜り、騎士への道を切り開いてやった。
代々そんな領主が続いたので、ささやかな領地なのに、平民から辺境伯家の騎士に取立てられる者が数多くいたし、マンガン級以上の冒険者も数多くいた。
そんな領民冒険者から、ギルドの緊急指名依頼を聞かされたのだ。
背中を任せられる子飼いの騎士を引き連れて、直接調査に向かうのも当然だった。
「待て、お前たちは誰だ?!」
そんな副騎士団長が調査に選んだ街に向かっていると、半死半生の状態で領都への街道を進む、冒険者風の男たちと遭遇したのだ。
「「「「「ひぃいいいいい」」」」」
「安心しろ、私たちは辺境伯家の騎士だ」
「「「「「よかったぁ~」」」」」
副騎士団長が質問している間にも、遅れていたチタン級冒険者たちが次々と追いついていた。
パーティーでそろって逃げる者たちは信頼できるが、脚の遅い者を見捨てて先に逃げる冒険者は、とても信頼に値しない。
命が惜しいのは誰も同じで、人間らしいと言えば人間らしいが、志が高くて騎士になった者から見れば、醜悪としか言えない。
「落ち着いたのなら話せ、何があったのだ」
「街が、街がヴァンパイアに襲われて」
「ゾンビです、ゾンビとレブナントです」
「住民全員がゾンビとレブナントになっていました」
「お前たちは急いで領都に知らせろ!」
辺境伯家の副騎士団長はそう言うと、愛馬に拍車を入れて先を急いだ。
子飼いの騎士八騎が急いで後を追いかけて、左右と背後を固める。
指揮官である前に恩人である副騎士団長を奇襲させないという決意のもとに。
「ナイト・チャージ!」
「「「「「おう!」」」」」
街に急いだ副騎士団長が見たのは、オークとコボルトの群れだった。
ほんの少しだけ遅くて、ヴァンパイア・ハンターが殺された後だった。
肉食のコボルトが、遺体を貪り喰らう現場だった。
怒髪冠を衝くのを必死で抑えた副騎士団長は、静かに騎士突撃を命じた。
九騎の騎士が、ランスを構えて馬に拍車を入れた。
魔獣の血が流れる軍馬が、重戦車のように突っ込む。
タングステン級の冒険者で歴戦のヴァンパイア・ハンターでもある強者を、軽々と殺すリーダー・オークである。
血筋や金で地位を得た騎士なら、遭遇しただけで大小便を垂れ流して気絶する。
だが、副騎士団長と子飼いの騎士たちは全く動じることなく突撃する。
魔獣の血が流れているからこそ、強者に対する恐怖感、逃げる本能が強い軍馬が、臆することなく敵の群れに突撃する。
そん事ができるのは、副騎士団長に対する絶対の信頼があるからだ。
生死の狭間に立って自分を鍛え続ける副騎士団長の側で育ったからだ。
尊敬する副騎士団長、いや、主君の盾になりたいと想い続けてきたからだ。
ガッ、ゴーン!
副騎士団長が放つ必殺のランスと、強大なリーダー・オークが振り抜く丸太。
その二つが交差した時、大魔境産の丸太が鉄製のランスをへし曲げた。
だが、銀級冒険者に匹敵すると言われる副騎士団長は、流れるように二の太刀を繰り出していた。
左手で腰の剣を抜き、リーダー・オークの心臓を刺し貫いていた。
ヴァンパイア・ハンターの仲間が放った手裏剣では傷一つつけられなかった皮膚を貫き、緩衝材と変わらない脂肪層と鋼鉄よりも硬い筋肉層も貫いていた。
「ギャッフ!」
あれほど強大に思えたリーダー・オークを、たった一度のナイト・チャージで絶命させるのだから、副騎士団長の強さはこの国でも五指に入る。
「「「「「ギャッフ!」」」」」
副騎士団長の子飼いの騎士たちも負けてはいない。
リーダー・オークを守ろうとしたホブ・オークを防ぎ斃していた。
副騎士団長がリーダー・オークに専念できるように、ホブ・オークを斃していた。
最強のリーダー・オーク、リーダー・オークに次ぐホブ・オークを斃せば、後は草刈り場と同じだった。
見逃したら領民の災厄になると分かっている、オークやコボルトを逃がす副騎士団長や騎士たちではない。
一体も逃がさないように、徹底した殲滅を行った。
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