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10話

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 デイジーは田植えを手伝っていた。
 なにもせずに遊びほうけている事などできなかった。
 スケルトンと共に、苗を一本一本手植えしていた。
 だがとてもではないが、疲れ知らずのスケルトンと同じように植える事などできないので、デイジーの場所だけ遅れることになる。

 だが、それでも、スケルトンもデイジーもとても楽しそうだった。
 ルビーのような左瞳とサファイアのような右瞳を輝かせていた。
 雪のような純白の肌も、真銀のように光り輝く銀髪も、跳ねた泥にまみれていたが、こぼれんばかりの笑顔を浮かべていた。
 労働する喜びに満ちていた。

 思わず唄まで歌いだしていた。
 春の鳥の愛の囀りや、虫の音に合わせて、無意識に歌っていた。
 ハットなって歌うのをやめると、スケルトン達が哀しそうな表情を浮かべる。
 声帯のない彼らは、唄を歌いたくても歌えないのだ。
 スケルトン達の眼にうながされて、デイジーは再び歌いだした。

 スケルトン達に雰囲気を感じながら、多くの唄を歌った。
 生命の賛歌とも言える唄もあり、スケルトン達が気を悪くするかもしれないと、一瞬心配したデイジーだったが、スケルトン達は全然気にしていなかった。
 しかも、スケルトンによって好みが違うようで、一体一体歌う唄によって反応が違うのが面白い。

「やあ、愉しそうだねデイジー嬢。
 僕も歌っていいかな?」

「はい、騎士様。
 一緒に歌って頂けると嬉しいです」

 昨晩ローリー国王に残虐な拷問を加えた真金の騎士だったが、デイジーを匿っている領地にやってきたのは、昼も大きく過ぎてむしろ夕刻に近い時間だった。
 真金の騎士にも表の姿があり、やらねばならない仕事任務があるのだ。
 今晩も拷問を続けるとなると、自由に使える時間は少ないのだ。
 その僅かな時間を、真金の騎士はデイジーと過ごしたかったのだ。

 デイジーと真金の騎士のデュエットは、とても素晴らしかった。
 デイジーの独唱・ソロも、美女の美声を愉しみ聞き惚れる事ができる。
 だが、美男美女が、それぞれの美声を併せたり競い合わせたるする魅力も、捨てがたかった。

「デイジー嬢はこんな唄は知っているかな?」

 真金の騎士がそんな言葉をかけながら、デイジーの知らない唄を歌う。
 デイジーが知らないと答えると、教えてくれるというので、素直に教えてもらったが、スケルトンのなかには今まで以上に嬉しそうにしている者がいる。
 そのスケルトンは、前世でその唄をよく歌っていたのかもしれない。
 前世の母国の唄なのかも知れないと思ったデイジーは、真金の騎士がいない時でも一人で歌えるように、真剣に学んだ。
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