13 / 14
12話
しおりを挟む
「ケッケッケッケ。
何しに来た、腐れ使徒。
ここはお前の国ではない。
余計な事をしても何の得もないぞ」
神殿の屋根を破壊して侵入した真金の騎士の眼に入ってきたモノは、魔がライリー王太子を咥え込んでいる光景だった。
ライリー王太子は恍惚の表情を浮かべて、全ての理性も思考も捨てていた。
ライリー王太子だけでなく、デイジーの父親であるバンバリー公爵ディラン卿も、デイジーの兄であるカーター卿も、他の魔と交わって同じ状態だった。
正視に耐えない吐き気をもよおすような醜悪な情景だった。
「得?
舐めるなよ。
人間は損得だけで動くわけではない。
愛と正義のためなら命を賭けられるのも人間だ!
屑と一緒に死ねい!」
真金の騎士は一切の手加減をしなかった。
魔を一掃できるほどの強大な魔法を放って、一撃で全てを終わらそうとした。
だが、魔の力は真金の騎士が考えているよりも強大だった。
長年かけて腐敗した神殿は、神の力を抑え、魔の力を高める魔法陣で溢れていた。
それも、他人に知られないように、神殿の地下に密かに描いていた。
それだけではなかった。
真金の騎士が放った攻撃に倍する魔力が、真金の騎士を襲ったのだ。
神殿には、神に仕える者の攻撃を倍にして反撃に変えるという、とんでもない魔法陣まで描かれていたのだ。
その一撃を、真金の騎士はまともに受けてしまった。
「ケッケッケッケ。
腐れ使徒ごときに滅される我らではないわ。
お前達が攻撃してくることなど、最初から計算しておったのだ。
余計な事をするから早死にすることになるのよ。
黙っていれば、魔王様の降臨までは生き延びられたものを。
愚か者が!」
「誰が愚か者だって?
お前達魔のやりそうなことなど、こちらこそ計算していたさ。
さっきのは、ほんの小手調べだ。
今度こそ本気でやらせてもらう。
一切手加減なしの攻撃を加えさせてもらうぞ!」
真金の騎士は神の使徒だ。
それもただの神ではない。
既に人間には忘れ去られている、古の神。
古代神に選ばれた特別な存在だった。
その古代神の中でも特に戦闘力に優れた、古代戦闘神に選ばれた使徒なのだ。
だからといって戦闘一辺倒の愚か者ではない。
戦術も戦略も知る、知勇兼備の勇者英雄でもあるのだ。
だから、言葉では攻撃魔法を使うと言いながら、実際には破魔封魔の魔法を準備していたのだ。
真金の騎士が知る限り、破魔封魔の魔法を跳ね返す術はない。
古代神から与えられた知識なので、間違いなどありえない。
だがそれでも真金の騎士は慎重だった。
全力の魔力は使わない。
倍返しされてもいいように、全力の一割しか魔力を使わなかった。
それでも先ほどの攻撃の十倍の魔力だったのだが。
何しに来た、腐れ使徒。
ここはお前の国ではない。
余計な事をしても何の得もないぞ」
神殿の屋根を破壊して侵入した真金の騎士の眼に入ってきたモノは、魔がライリー王太子を咥え込んでいる光景だった。
ライリー王太子は恍惚の表情を浮かべて、全ての理性も思考も捨てていた。
ライリー王太子だけでなく、デイジーの父親であるバンバリー公爵ディラン卿も、デイジーの兄であるカーター卿も、他の魔と交わって同じ状態だった。
正視に耐えない吐き気をもよおすような醜悪な情景だった。
「得?
舐めるなよ。
人間は損得だけで動くわけではない。
愛と正義のためなら命を賭けられるのも人間だ!
屑と一緒に死ねい!」
真金の騎士は一切の手加減をしなかった。
魔を一掃できるほどの強大な魔法を放って、一撃で全てを終わらそうとした。
だが、魔の力は真金の騎士が考えているよりも強大だった。
長年かけて腐敗した神殿は、神の力を抑え、魔の力を高める魔法陣で溢れていた。
それも、他人に知られないように、神殿の地下に密かに描いていた。
それだけではなかった。
真金の騎士が放った攻撃に倍する魔力が、真金の騎士を襲ったのだ。
神殿には、神に仕える者の攻撃を倍にして反撃に変えるという、とんでもない魔法陣まで描かれていたのだ。
その一撃を、真金の騎士はまともに受けてしまった。
「ケッケッケッケ。
腐れ使徒ごときに滅される我らではないわ。
お前達が攻撃してくることなど、最初から計算しておったのだ。
余計な事をするから早死にすることになるのよ。
黙っていれば、魔王様の降臨までは生き延びられたものを。
愚か者が!」
「誰が愚か者だって?
お前達魔のやりそうなことなど、こちらこそ計算していたさ。
さっきのは、ほんの小手調べだ。
今度こそ本気でやらせてもらう。
一切手加減なしの攻撃を加えさせてもらうぞ!」
真金の騎士は神の使徒だ。
それもただの神ではない。
既に人間には忘れ去られている、古の神。
古代神に選ばれた特別な存在だった。
その古代神の中でも特に戦闘力に優れた、古代戦闘神に選ばれた使徒なのだ。
だからといって戦闘一辺倒の愚か者ではない。
戦術も戦略も知る、知勇兼備の勇者英雄でもあるのだ。
だから、言葉では攻撃魔法を使うと言いながら、実際には破魔封魔の魔法を準備していたのだ。
真金の騎士が知る限り、破魔封魔の魔法を跳ね返す術はない。
古代神から与えられた知識なので、間違いなどありえない。
だがそれでも真金の騎士は慎重だった。
全力の魔力は使わない。
倍返しされてもいいように、全力の一割しか魔力を使わなかった。
それでも先ほどの攻撃の十倍の魔力だったのだが。
383
あなたにおすすめの小説
妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。
もてあそんでくれたお礼に、貴方に最高の餞別を。婚約者さまと、どうかお幸せに。まぁ、幸せになれるものなら......ね?
当麻月菜
恋愛
次期当主になるべく、領地にて父親から仕事を学んでいた伯爵令息フレデリックは、ちょっとした出来心で領民の娘イルアに手を出した。
ただそれは、結婚するまでの繋ぎという、身体目的の軽い気持ちで。
対して領民の娘イルアは、本気だった。
もちろんイルアは、フレデリックとの間に身分差という越えられない壁があるのはわかっていた。そして、その時が来たら綺麗に幕を下ろそうと決めていた。
けれど、二人の関係の幕引きはあまりに酷いものだった。
誠意の欠片もないフレデリックの態度に、立ち直れないほど心に傷を受けたイルアは、彼に復讐することを誓った。
弄ばれた女が、捨てた男にとって最後で最高の女性でいられるための、本気の復讐劇。
自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?
長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。
王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、
「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」
あることないこと言われて、我慢の限界!
絶対にあなたなんかに王子様は渡さない!
これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー!
*旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。
*小説家になろうでも掲載しています。
幼い頃、義母に酸で顔を焼かれた公爵令嬢は、それでも愛してくれた王太子が冤罪で追放されたので、ついていくことにしました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
設定はゆるくなっています、気になる方は最初から読まないでください。
ウィンターレン公爵家令嬢ジェミーは、幼い頃に義母のアイラに酸で顔を焼かれてしまった。何とか命は助かったものの、とても社交界にデビューできるような顔ではなかった。だが不屈の精神力と仮面をつける事で、社交界にデビューを果たした。そんなジェミーを、心優しく人の本質を見抜ける王太子レオナルドが見初めた。王太子はジェミーを婚約者に選び、幸せな家庭を築くかに思われたが、王位を狙う邪悪な弟に冤罪を着せられ追放刑にされてしまった。
私の婚約者でも無いのに、婚約破棄とか何事ですか?
狼狼3
恋愛
「お前のような冷たくて愛想の無い女などと結婚出来るものか。もうお前とは絶交……そして、婚約破棄だ。じゃあな、グラッセマロン。」
「いやいや。私もう結婚してますし、貴方誰ですか?」
「俺を知らないだと………?冗談はよしてくれ。お前の愛するカーナトリエだぞ?」
「知らないですよ。……もしかして、夫の友達ですか?夫が帰ってくるまで家使いますか?……」
「だから、お前の夫が俺だって──」
少しずつ日差しが強くなっている頃。
昼食を作ろうと材料を買いに行こうとしたら、婚約者と名乗る人が居ました。
……誰コイツ。
愛しい義兄が罠に嵌められ追放されたので、聖女は祈りを止めてついていくことにしました。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
グレイスは元々孤児だった。孤児院前に捨てられたことで、何とか命を繋ぎ止めることができたが、孤児院の責任者は、領主の補助金を着服していた。人数によって助成金が支払われるため、餓死はさせないが、ギリギリの食糧で、最低限の生活をしていた。だがそこに、正義感に溢れる領主の若様が視察にやってきた。孤児達は救われた。その時からグレイスは若様に恋焦がれていた。だが、幸か不幸か、グレイスには並外れた魔力があった。しかも魔窟を封印する事のできる聖なる魔力だった。グレイスは領主シーモア公爵家に養女に迎えられた。義妹として若様と一緒に暮らせるようになったが、絶対に結ばれることのない義兄妹の関係になってしまった。グレイスは密かに恋する義兄のために厳しい訓練に耐え、封印を護る聖女となった。義兄にためになると言われ、王太子との婚約も泣く泣く受けた。だが、その結果は、公明正大ゆえに疎まれた義兄の追放だった。ブチ切れた聖女グレイスは封印を放り出して義兄についていくことにした。
【完結】『妹の結婚の邪魔になる』と家族に殺されかけた妖精の愛し子の令嬢は、森の奥で引きこもり魔術師と出会いました。
夏芽みかん
恋愛
メリルはアジュール王国侯爵家の長女。幼いころから妖精の声が聞こえるということで、家族から気味悪がられ、屋敷から出ずにひっそりと暮らしていた。しかし、花の妖精の異名を持つ美しい妹アネッサが王太子と婚約したことで、両親はメリルを一族の恥と思い、人知れず殺そうとした。
妖精たちの助けで屋敷を出たメリルは、時間の止まったような不思議な森の奥の一軒家で暮らす魔術師のアルヴィンと出会い、一緒に暮らすことになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる