四代目 豊臣秀勝

克全

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第二章

帝、衆楽第に行幸

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 天正十五年九月に聚楽第が完成した。
「与一郎、帝の行幸の手配は終わったか」
「はい。石田治部や前田玄以がよく働いてくれました」
「いや、いや、それは与一郎が差配したからじゃ。もうこの国の事は、与一郎に任せても大丈夫だな」
「殿下」
「何も言うなよ、与一郎」
「しかし殿下」
「余の後継者はそなたじゃ。孫七郎に任せる訳にはいかんのだ。余の方針に従って働くのだぞ」
「はい」
 聚楽第の完成前から、秀吉が天下人であり、天皇の庇護者であることを国中に知らしめる為に、正親町上皇と後陽成天皇を招く準備をしていた。
 天正十六年四月十四日、万難を排して正親町上皇と後陽成天皇の行幸が実施された。
 実務に携わった者達は、粗相があれば切腹モノなので、事前準備も心身共に激しく消耗する日々だったが、当日は更なる心労の時間だった。
 上皇と天皇に供奉する公卿は、長きに渡る戦乱で極貧の生活が続いていた。
 中には食べるに困って地方に下向して、大名の世話になっている時に合戦に巻き込まれ、斬り殺された者もいたほどだ。
 そんな公卿達にとって、京に治安が護られ、食べる事に困らないどころか、煌びやかな行幸に供奉出来るなど、夢のような時間だった。
 上皇と天皇に働きかけて、予定を延長してもらうほどの喜びようだったが、実務担当者には地獄の日々であった。
 一方秀吉にとっては、天皇の威光を借りて自ら出自の低さを補い、天皇の前で豊臣姓を与えた氏族に対して、氏の長者として上下関係を補完した。
 それは二日目に行われた、忠誠を誓う誓紙を秀吉に提出すると言う儀式であった。
 豊臣姓を下賜されたのは、弟の羽柴小一郎豊臣朝臣秀長や、甥の木下与一郎豊臣朝臣秀臣・三好孫七郎豊臣朝臣秀次と言った血族衆は勿論、元の主筋に当たる織田長益、織田信秀にも与えられた。
 他にも、溝口秀勝、井伊直政、榊原康政、高力清長、大久保忠隣、酒井忠次、石川数正といった、今は直臣になっているが、滅ぼしたり大幅減封したりした大名の陪臣だった者達。
 池田輝政、森長可、前田利家、前田利長、毛利秀頼、蒲生氏郷、丹羽長重などといった、織田信長に仕えていた者達。
 宇喜多秀家、筒井定次、大友義統、最上義康、龍造寺政家などといった、元は独立した大名だった者達。
 小早川隆景、吉川元長、福原元俊、穂田元清、三浦元忠、渡辺長、粟屋元貞などといった、警戒すべき大大名の陪臣達。
 秀吉による日本支配の仕組みは、着々と完成に近づいていた。
 だが、側近くで秀吉の言動を見聞きしている与一郎は、拭いようのない不安に苛まれていた。
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