異世界子ども食堂:通り魔に襲われた幼稚園児を助けようとして殺されたと思ったら異世界に居た。

克全

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第1章

第9話:ブラー古物商店

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「俺1人ではこいつらの持ち物を古物商まで運べない。
 運ぶのを手伝ってくれたら売値の1割を礼に払う。
 手伝ってくれる人はいるかい?」

「1割は美味しいね、手伝わせてもらうよ」
「「俺も手伝おう」」
「私も手伝うわ、良い古物商を知っているの」
「見かけない顔だが、信用できる古物商はいるのか?」

「一括で売るならブラー古物商店が1番信用できるだろう?
 剣や防具、古着ごとに売れば少しは高く売れるだろうけど、こいつらと同じクランの連中が来たらめんどうだから、時間をかけたくない」

「そういう事ならブラー古物商店が1番だわ」
「こいつらのクランが文句を言ってきても、追い返せるだけの力がある」
「そうだな、あそこなら買取りを拒否したり買い叩いたりしないだろう」

 僕は襲ってきた6人を丸裸にして冒険者ギルドの受付前に放りだした。
 派手で下品な受付嬢と、奥の男性幹部が文句を言うおうとしたが、僕が本気の殺気を放ってにらんだら、腰を抜かして小便をちびっていた。

 平和ボケした人なら、6人の財布まで取ったのを非難するだろう。
 だけど僕は異神眼でこの世界の事、こいつらのやってきた事を知っている。
 少しでもためらったら殺される、自分だけでなく大切な人まで殺される。

 新人の少女をパーティーメンバーにしてクランメンバーとなぶり者にした。
 危険になったら新人をオトリにして自分たちだけ逃げる。
 オトリにされた新人は魔獣に食い殺されている。

 ★★★★★★

「これは新人の食い物にしているパーティーと勝負して手に入れた物です。
 買い取るとクランはもちろん背後にいる貴族にも目をつけられるかもしれません。
 その前提で買い取りの値段をつけてください」

 僕は6人のクソ冒険者から手に入れた物をブラー古物商店に持ち込んで言った。
 運ぶのを手伝ってくれた冒険者たちがあきれている。
 バカ正直に言ったから買い叩かれると思ったのだろう。

 だけど僕には異神眼があり、クソ冒険者たちに襲われる事が分かっていた。
 絶対ではないが、何度か冒険者ギルドに通えば必ずこうなると分かっていた。
 だから手に入れた物をどこの店に売りに行けばいいか、事前に見ていた。

 実際にどうなるかは、神々の介入があるから確実ではない。
 だけど、店主の過去の言動を見れば、買い叩くか正当に買うかの判断ができる。

「その歳で、あのクソ野郎どもを叩きのめしたと言うのか?」

「王都外の厳しい環境で実戦を重ねたら、あの程度は赤子同然ですよ」

 背後に立っている冒険者たちが驚いている。
 俺が冒険者ギルドでクソ野郎どもの事を知っているような言い方をしていたから、王都育ちで後ろ盾があると思っていたのだろう。

「そうか、辺境育ちなのか、だったらくわしい事情を知らないだろう。
 気を付けろ、どのパーティーに勝ったのか知らないが、連中が所属するクランと後ろ盾になっている貴族は悪質だ。
 高値で買ってやるから直ぐに王都を出て田舎に帰った方が良い」

「心配していただいてありがとうございます。
 ですが大丈夫です、王都行政官の目が届く表通りの宿に泊まります。
 昼の間は、魔境に入ってしまえば誰にも負けない自信があります」

「どれほど実力が有ろうと、貴族の謀略から逃げきるのは難しいぞ」

「警告ありがとうございます。
 ですが僕が王都行政官に目の届く所で何かされるような事があれば、クソ貴族が罰せられる可能性が少しはありますよね?
 人の目のない魔境で襲ってくるのなら、この手で叩き潰してやります。
 王都の表通りで襲ってくるのなら、正々堂々と戦って悪事を表に出してやります。
 王都の人たちが少しでも暮らしやすくなるのなら、命を賭ける価値があると思っていますので、このまま残ります」

「そこまで言うなら好きにしな。
 そうは言っても、若い子が蛮勇で死んでいくのを見るのは胸が痛い。
 できるだけ高く買ってやる、1番高いホテルに泊まるんだぞ!」

 ブラー古物商店の店主は本当に高く買ってくれたようだ。
 1割の分け前を待っていた冒険者たちが、買取金額を聞いて驚いていた。
 クソ野郎6人の持ち物全部で切りよく120万アル、1億2000万円くらいだ。

 6人の財布には合計で7832アルしか入っていなかった。
 冒険者の多くはできるだけ現金を持たず、命を預ける剣や防具に変えるそうだ。

 この世界では金属が貴重で、剣や兜、特に鎧が高い。
 造るのに大量の金属が必要で、技術を習得した職人が年月をかけないと完成させられない鎧は桁違いに高いと、異神眼で知った。

 運ぶのを手伝ってくれた5人の冒険者に12万アル渡した。
 1人あたり2万4000アル、240万円くらいだからすごくよろこんでいた。

 手元に残ったのは108万アルだったが、銅貨だと重くかさばるので、日常使いしない分は金貨と銀貨にしてもらった。

 サクラと逃げ出した時に手に入れた財布の中には大中小の銅貨しか入っていなかったから、全部合わせても2000アル、20万円程度の価値しかなかった。

「手伝ってくれてありがとうございました」

「こちらこそ、こんなにもらえると助かるわ、ありがとう」
「あんなに交渉上手とは思わなかったぜ」
「良い度胸だが、今からでも王都から出た方が良いんじゃないか?」
「安心なホテルに行くと言っていたが、どこが良いか分かっているのか?」

「ヒューズホテルを泊まるつもりです。
 旅の貴族が利用する事もあり、多くの貴族と仲良くしていると聞いています。
 実力のある貴族でもヒューズホテルには手をだせないですよね?」

 僕は異神眼で知った情報を言ってみた。

「なるほど、ヒューズホテルなら襲ってくる貴族もいないだろう」
「かなり高いと聞いていますけど、100万アルも手に入ったのなら大丈夫ね」
「ホテルにいる間は大丈夫だが、人通りの少ない道は気を付けろよ」
「暗くなったら絶対にホテルから出るんじゃないぞ」

「はい、ありがとうございます、また冒険者ギルドで会いましょう」

 僕は心配してくれる冒険者たちと別れてヒューズホテルに向かった

手持ち金:102万9987アル
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