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第一章
第28話:口論
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神暦3103年王国暦255年6月27日9時:ジャクスティン視点
ミアの鍛錬を始めてから二十日が過ぎていた。
俺様が考えていた以上にミアの上達が早い。
細かく教えていないのに、魔力を筋肉全体にぼんやりと流すのではなく、細やかに血管や神経を通して流せるようになっている。
経絡に沿って魔力を流す事も教えれば、他の子供達と同じくらい強くなれる。
教えてやりたい気もあるのだが、ウェリントン王家に戻る事を考えれば、そう簡単い教える訳にはいかない。
「……公王、周りにいる殺気を放つ連中は何者だ」
「俺様が指示した鍛錬を超えて自分で色々と試したのか?
その探求心を一生持ち続けられるなら、俺様が衰えた時に勝てるかもしれない」
「弱った公王に勝っても何もうれしくない!
俺は全盛時の公王を破って臣従させるのだ!
それよりも周囲にいる連中は何者なのだ?!」
「さあな、少なくとも俺様が手配した護衛ではない。
そもそも俺様は家族以外のアルファを領内に入れていない。
エマがお前の護衛を寄こすとしたら、俺様に許可をもらうだろう。
だから恐らく王国や公国に敵意を持つアルファ達だろう。
はっきり言えば隙を見て俺様やミアを殺そうとしている連中だ」
「放っておく心算か?」
「襲ってこない限り此方から攻撃する気はない。
下手に負かして下につかれたら鬱陶しい。
上に立ったら役立たずでも養わなければいけなくなるからな」
「殺してしまえば養う必要もないだろう」
「我が国の人間の数、特にアルファの数は横ばいだ。
それに比べて外国人の数は年々増え続けている。
先の戦争から二十年、そろそろ前の痛手から立ち治る頃だ。
いや、愚かな外国人が前回受けた痛手を忘れる頃合いだ。
刺客として周囲をうろうろしているアルファは、対して強くもない連中だが、それでも外国人と戦う時には必要になる」
「普段の大言壮語はどこに行った。
外国軍ぐらい一人で全滅させてやると言えないの?!」
「一群で纏まって来てくれれば十万だろうが百万だろうが皆殺しにしてやる。
だが何十何百に分かれて攻めてきたら、俺の手には余るのだ。
俺様は独りしないないから、全ての国境を一度に護れない。
二十年前の戦争でも、連中は何百にも分かれた軍隊に街を襲わせた。
幾ら俺様でも数百の街や村全てを同時には護れない」
「……どれだけ強くても独りだけでは国を守れないのね……」
「そのために外国の魔術を取り入れたのだ。
ベータが外国人の使う魔術が使えるようになれば、他のアルファを頼らなくてもよくなって、外国の侵攻時に謀叛を起こすような馬鹿がいても気にしなくてすむ。
二十年前の戦争では、謀叛も同時に始まって大変だった」
「その話は聞いた事があるけれど、今回は本当に大丈夫なの?
公王が分離独立した事で侵攻と謀叛が激しくなるのではなくて?!」
「ああ、そうだな、激しくなる可能性はあるな。
今周囲を見張っている弱いアルファも、外国が攻め込んで来たら謀叛を起こす奴の下につくのだろうな」
「だったら、さっさと先に殺してしまうか支配下に置きなさいよ。
公王ならそれくらいの事できるでしょう?!」
「やってやれなくはないが、誰が好き好んでそんな面倒な事をしなければいけない?
襲ってきたらその時にぶち殺せばいい。
下級貴族や士族級のアルファなど、外国から取り入れた魔術で瞬殺だ。
外国が侵攻する気配を見せたら、その国の王都を襲って皆殺しにしてやる。
そのために大陸連合魔道学院から大量虐殺魔術を手に入れた」
「恐ろしく身勝手な人間ね!」
「お前に言われる謂れはない!
少なくとも俺様は自分から他人にちょっかい出したりはしない。
相手がちょっかいを出してきた時に初めて報復するだけだ」
「その報復が行き過ぎている気がするけれど?」
「強大な俺様は手加減が苦手なのだ」
「私には一ミリ一秒の誤差もなく身体を把握して動かせと言っていたじゃないの!」
「手加減が苦手だと言っているだけでできないと言ってい訳ではない。
手加減はできるが、先に手出ししてきた奴に面倒な手加減をしないだけだ。
恐ろしく弱くて脆い弱者を殺さないように手加減するのは面倒なのだ。
それよりは本気を出して皆殺しにした方が早くて楽だ」
「……本能に任せたアルファが見苦しいと言われたお母様の気持ちが、公王を見ていてようやく分かったわ!」
ミアの鍛錬を始めてから二十日が過ぎていた。
俺様が考えていた以上にミアの上達が早い。
細かく教えていないのに、魔力を筋肉全体にぼんやりと流すのではなく、細やかに血管や神経を通して流せるようになっている。
経絡に沿って魔力を流す事も教えれば、他の子供達と同じくらい強くなれる。
教えてやりたい気もあるのだが、ウェリントン王家に戻る事を考えれば、そう簡単い教える訳にはいかない。
「……公王、周りにいる殺気を放つ連中は何者だ」
「俺様が指示した鍛錬を超えて自分で色々と試したのか?
その探求心を一生持ち続けられるなら、俺様が衰えた時に勝てるかもしれない」
「弱った公王に勝っても何もうれしくない!
俺は全盛時の公王を破って臣従させるのだ!
それよりも周囲にいる連中は何者なのだ?!」
「さあな、少なくとも俺様が手配した護衛ではない。
そもそも俺様は家族以外のアルファを領内に入れていない。
エマがお前の護衛を寄こすとしたら、俺様に許可をもらうだろう。
だから恐らく王国や公国に敵意を持つアルファ達だろう。
はっきり言えば隙を見て俺様やミアを殺そうとしている連中だ」
「放っておく心算か?」
「襲ってこない限り此方から攻撃する気はない。
下手に負かして下につかれたら鬱陶しい。
上に立ったら役立たずでも養わなければいけなくなるからな」
「殺してしまえば養う必要もないだろう」
「我が国の人間の数、特にアルファの数は横ばいだ。
それに比べて外国人の数は年々増え続けている。
先の戦争から二十年、そろそろ前の痛手から立ち治る頃だ。
いや、愚かな外国人が前回受けた痛手を忘れる頃合いだ。
刺客として周囲をうろうろしているアルファは、対して強くもない連中だが、それでも外国人と戦う時には必要になる」
「普段の大言壮語はどこに行った。
外国軍ぐらい一人で全滅させてやると言えないの?!」
「一群で纏まって来てくれれば十万だろうが百万だろうが皆殺しにしてやる。
だが何十何百に分かれて攻めてきたら、俺の手には余るのだ。
俺様は独りしないないから、全ての国境を一度に護れない。
二十年前の戦争でも、連中は何百にも分かれた軍隊に街を襲わせた。
幾ら俺様でも数百の街や村全てを同時には護れない」
「……どれだけ強くても独りだけでは国を守れないのね……」
「そのために外国の魔術を取り入れたのだ。
ベータが外国人の使う魔術が使えるようになれば、他のアルファを頼らなくてもよくなって、外国の侵攻時に謀叛を起こすような馬鹿がいても気にしなくてすむ。
二十年前の戦争では、謀叛も同時に始まって大変だった」
「その話は聞いた事があるけれど、今回は本当に大丈夫なの?
公王が分離独立した事で侵攻と謀叛が激しくなるのではなくて?!」
「ああ、そうだな、激しくなる可能性はあるな。
今周囲を見張っている弱いアルファも、外国が攻め込んで来たら謀叛を起こす奴の下につくのだろうな」
「だったら、さっさと先に殺してしまうか支配下に置きなさいよ。
公王ならそれくらいの事できるでしょう?!」
「やってやれなくはないが、誰が好き好んでそんな面倒な事をしなければいけない?
襲ってきたらその時にぶち殺せばいい。
下級貴族や士族級のアルファなど、外国から取り入れた魔術で瞬殺だ。
外国が侵攻する気配を見せたら、その国の王都を襲って皆殺しにしてやる。
そのために大陸連合魔道学院から大量虐殺魔術を手に入れた」
「恐ろしく身勝手な人間ね!」
「お前に言われる謂れはない!
少なくとも俺様は自分から他人にちょっかい出したりはしない。
相手がちょっかいを出してきた時に初めて報復するだけだ」
「その報復が行き過ぎている気がするけれど?」
「強大な俺様は手加減が苦手なのだ」
「私には一ミリ一秒の誤差もなく身体を把握して動かせと言っていたじゃないの!」
「手加減が苦手だと言っているだけでできないと言ってい訳ではない。
手加減はできるが、先に手出ししてきた奴に面倒な手加減をしないだけだ。
恐ろしく弱くて脆い弱者を殺さないように手加減するのは面倒なのだ。
それよりは本気を出して皆殺しにした方が早くて楽だ」
「……本能に任せたアルファが見苦しいと言われたお母様の気持ちが、公王を見ていてようやく分かったわ!」
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